<ああっ テンカワアキトっ>






 あの忌々しい戦争が和平という奇跡の幕を閉じ。

 激戦をナデシコの面々も、今は平和な世界へと溶け込もうとしていた。



 しかし、その平和を享受できぬ不幸な男が一人・・・



 これは、その男の愛と戦いの話である。





 




 シュン



 部屋の自動ドアが開き、一人の男が入ってくる。

 そして、おもむろに目の前に座っている男性に、質問する。

「・・・・・・アカツキ、一体何のようだ?」

「・・・・・・それはそうと、またやつれたんじゃないかい、テンカワ君」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「で、昨日は一体どうしてたんだい?」

「昨日は、海岸で結婚届持ったサラちゃんとアリサちゃんから逃げてた」

「まったく、どちらかの書類に判子を押したらいいんじゃないかい?」
 
「それじゃ意味がないだろ!」
 
「ま、それもそうだね。

 そうしたら今度は離婚届を持った他の娘たちに追いかけ回されるだろうね」

「・・・・・・分かってるなら最初から言うな・・・・・・・・・(怒)」

「まぁまぁ、そう言わないで。

 せっかく彼女達から逃げられる素晴らしい方法を教えてあげようと思ったのに」

「なにっ!?

 い、一体どんな方法だ!?」

「それはだね・・・・・・・・・」



 数分後、ネルガル会長室から晴れ晴れとした顔で出てくるアキトが確認された。

 その後のアキトの行方はようとして知れない。










 Chapt.0  新しき生活









 今、私の目の前に、新しい家族がいます。

 彼は、私の兄になるらしいわ。

 別に私には片親しかいなくて、その親が再婚した、なんてワケでじゃないんだけど。

 彼はうちの養子になったの。

 何でも友人に紹介された、なんて言ってたけど・・・・・・・・・

 それでなんで養子になるの?

「今日から森里 明人になります。

 よろしくお願いします」

「よ、よろしく」

 え、笑顔が・・・・・・眩しい・・・・・・・・・。

 はっ、そっ、そうじゃなくてっ。

「ところでなんで家に?」

「まあ、いろいろと有ってね。

 友人が知り合いに『息子が欲しい』って言ってる人がいるから、って。

 それで養子にさせて貰ったんだよ」

「いろいろと・・・、ってなに?」

「は、ははは・・・・・・・・・。出来れば訊かないでほしいな〜」

「ま、まあいいけど・・・・・・。

 それとさ、私はあなたのこと、なんて呼べばいいの?」

「う〜ん・・・・・・特に思いつかないし、ご自由にどうぞ」

「それじゃあ・・・・・・・・・」

 明人。アキト。あきと。あっクン。あっくん。アッくん。あっちゃん。あー君。あーちゃん。アキちゃん。アッキー。お兄ちゃん。兄ちゃん。
お兄さん。兄さん。明人兄。アキト兄。アキ兄。etc,etc 

 どれがいいかなー?

 アキちゃん・・・・・・かな?

「それじゃあアキちゃんって呼ばせて貰うわ」

「わかったよ。

 それじゃ今日からよろしくね、恵ちゃん」










 恵・・・・・・・・・ナデシコのメグミちゃんを思い出しそうでなんかちょっと嫌な名前だな〜〜。

 でも、妹になる・・・・・・なったんだし、そんなこと言えないよね。

 頑張って名前に関するトラウマを乗り越えよう。 ←トラウマになってんのか!?



 そんなことを思いながら俺は宛われた部屋で勉強していた。

 勉強内容は・・・・・・まぁ、大学受験+大学一回生のものだ。

 はっきり言って・・・・・・全く分からん。
 
 やはり基礎からやった方がいいのか?

 しかしそれだと、高校一年・・・・・・いや、中学2、3年レベルからやらなくては思い出せそうにないな。

 さて、どうするか・・・・・・・・・




 
 パーン、パラパラパラ・・・・・・
 


 なんだ?この音は。

 バイク・・・・・・かな?



 気になったので外に出てみると、恵ちゃんがバイクに乗っていた。

 俺は恵ちゃんの乗っているバイクの名前を知らなかったが、カワサキKSR−Uというと後で知った。

「やぁ、恵ちゃん。何やってるの?」

「見れば分かるでしょ、アキちゃん。

 バイクに乗ってるのよ。

 そういえばアキちゃんはバイクとか乗るの?」

「うーん・・・・・・乗れないことはないと思うけど・・・・・・・・・乗ったことはないな〜」

「免許は持ってるの?」

「ま、一応ね」

「じゃ、買えば?バイク。

 車でも良いけど」

「一応そんなことやってる暇はないんだよね〜」

「・・・・・・・・・(汗)。

 そんなこと言いながらなによ、その『乗ってみたいよオーラ』は」

「あ・・・・・・あは、あははははは」

「乗ってみる?」

「いいの?」

「まあ、急ぎの用事じゃないしね」

「それじゃぁお言葉に甘えて・・・・・・」





 初めてのバイクは、とても気持ちのいいものだった。

 俺の持ってる(偽造)免許は車のものだから、本来は50CCのものにしか乗れない。

「う〜〜ん・・・・・・。

 バイクの免許取るか」

 そしてバイクにはまった。





 そして数週間が経った。

 俺は、バイクの免許も取り、恵(何時の間にやら呼び捨て)にも負けず劣らずのバイク整備&改造&etcの技術を身に付けていた。

 運転技術?

 そんなもの、教習所の教官たちが(いい方の意味で)度肝を抜くほどのものだったさ。

 ブレーキターンやドリフトやスピンターン・・・・・・・・・。

 冗談でそれを教えてくれた教官の前で、教官の動きを再現して見せたら、腰を抜かしていた。

 まぁそれは置いといて。

 今、俺は一つのバイクを持っていた。

 そのバイクは意味無くサイド付きに改造したオスカー・リーブマン(復刻版)だ。

 後で知ったことだが、こいつに乗せたエンジンは、サイドカーレース用に多く使われていたため、マシン選択としては正しかったらしい。

 最近、バイクや自動車は、1980年頃〜2000頃の物の復刻版が流行っている。

 しかも、強度・耐久性は当時のまま。

 違うところと言えば、排ガスの恐ろしいまでのクリーンさだろう。

 エンジン出力は当時のままだが、排ガスは現代の物と変わらない。

 エンジンの静粛性なんかも当時のままだ。

 バイクの楽しいところは、直接肌に触れる風、サドルから伝わってくるエンジンの振動だ。

 だが、最近のバイクだと、その振動が全くと言っていいほど無い。

 だから、俺はオスカー・リーブマンなんて古いバイクの復刻版を選んだんだ。

 他にもいろいろな復刻版のバイクが置いてあったけど、なんか俺に買ってくれ、って言ってるように見えたしな。

 実際、買って良かったと思う。

 だが、一つ問題があった。

 それは、勉強だ。

 バイクにかまけていたお陰で、10月から通うことになる大学(どうやったのかは知らないし興味もないけど、アカツキが手を回した)
の勉強に付いていけるかどうか・・・・・・・・・

 ・・・・・・そんなことを言いながら、俺はもう大学入試レベルの学力を超えていたりするが。

 え? 何時の間にそれだけの学力を付けた、だって?

 ふっ、それは恥を忍んで恵に教えてもらったり、本当に中学生レベルのものから勉強し直したからさ。

 ちなみに、その中学生レベルというのが中学一年生レベルというのはここだけの秘密だ。

 後は10月までの授業で進んだであろう所まで頑張ってやるだけだ。









 そして、10月になった。

 俺はしっかりと大学の勉強に付いて行けていた。

 ただ、ここでまた一つの問題が発生していた。

 部活・・・・・・って言うかサークル活動である。

 先輩に無理やり自動車部に所属させられた。

 まあ、楽しいからだけどね。別に。

 でも、入った寮がその先輩と同じ所だ、って言うのがね〜。

 それにしても、こんなになる前にルリちゃんやラピスに見つかると思ってたんだけど・・・・・・意外だ。

 アカツキの考えは正しかったんだな〜、と今更ながらに思う。

 そのアカツキの考えとは、

「彼女達の裏をかくんだよ。

 彼女達・・・・・・特にルリ君やラピス君は電算関係を完全に掌握していると言っていい。

 だからこそ、逆に正規のルートでテンカワ君が名前を変えるんだ。

 ただ、本当に名前を変えることになると裁判を起こさなくてはいけないから、100%見つかるだろう。

 それを解決する方法はただ一つ。

 君が養子になればいいんだ。

 まぁ、安心してくれ。

 別に婿養子になれ、なんて言っているワケじゃないから。

 知り合いに『息子が欲しい』とか『息子が居たらいいのに』って言っていた人が何人かいるからね。

 そこにある箱の中にその人たちの住所がある。

 そこに行って交渉してみてくれ。

 ちなみに、僕はその人たちの電話番号しか知らない。

 その人たちにも、電話番号を変えるように頼んであるから、彼女達に見つかることはほぼ無いだろう。

 例え僕や、工作に協力してくれたウリバタケ君、ハーリー君が彼女達の武力の前に屈したとしても、だ。

 彼女達はまさかテンカワ君が正規のルートで名前・・・・・・名字を変えているとは思わないだろう。

 それに養子に入って名前が変わっているんだったら、おそらく婿養子を想像するだろうから、無意識的にその手続きは無視するだろう。

 それと、君には今年度中に一回生として大学に通って貰うからね。

 彼女達も、君が大学に通うとしても、もう大学一回生として通っているとは思っていないだろうからね。

 そうなればテンカワ君。

 後は君の行動、運次第だよ」

 ・・・・・・と言うものだった。

 そしてそれは正解だったらしく、名前を正規のルートで変えて数ヶ月。

 まだ彼女達に見つかっていない。










 そして運命の日まで後僅か・・・・・・・・・










 本星への報告書 A−0

 これの元ネタ分かる人、いる?

 って、ほとんどの人が知ってそうだなー。

 そう。「ああっ ○神さまっ」だよ。

 俺、好きなんだよなー、これ。


 えーと、MC25さんに『KSRの排気音はそうじゃないよ』というお手紙を頂きましたので、そこんトコとちょっと細かいとこを修正しまし
た。


 ま、そゆワケ(どーゆーワケよ?)で、この辺でさようなら。
本星への報告書 A−0 終





 いろいろありまして、再度修正させていただきました。

 例えば、「何時の間にそこまで学力が付いたのか納得いかん」という意見があったため、「こういう勉強をしたんだ」とはっきり(はっきりだよな、アレは)記した、などです。


 なお、Chapt.1も修正した個所があるので、よろしければお読み下さい。



 それでは。