Act.0 天河邸前にて
「やっほー、ミナト。
久しぶり!」
「久しぶり、ミサオ・・・・・・って、昨日会ったばかりじゃない」
ミサオの声に、ミナトが真っ白な家から出てきた。
今日はユートピアコロニーの、公立中学校の入学式だ。
だからミサオは、ミナトを中学校へ一緒に行くため誘いに来た。
そして、ミサオは4月5日から毎日欠かさず(といっても今日も含めて三日だが・・・・・・)ここに遊びに来ている。
目的は、従妹のミナトと、その義弟のアキトだ。
ミナトと遊び、アキトで遊ぶ。
・・・・・・アキトにとってはいい迷惑だ。
しかも、それを止めるべき父親と母親は、まだ新婚旅行の最中だったりする。
3日と4日こそその旅行について行ったミナトとアキトだったが、カズトとミナミのあまりのらう゛らう゛ぶりにあきれ果て、一足先に帰ってきたのだ。
「それじゃ行こ、ミナト」
「うん。行こっか」
二人は仲良く連れ立って、学校へと行く。
ミナトが着る学校指定の水色のブレザーが、陽光に映える。
ミサオが着る赤と白のチェックの長袖シャツとのコントラストが美しい。
って、ちょっとマテい
ミサオ、お前・・・・・・制服は?
機動戦艦ナデシコif
AnotherNADESICO
第2話「遭遇」
Act.1 勘違い
ミサオは、結局制服に着替え、学校に行った。
ミナトと共に、遅刻寸前だったのは記すまでもないだろう。
そして今、退屈で退屈な校長達の長話が終わった。
で、退場。
「う、うぅ〜〜ん・・・・・・」
ミナトが、入学式の行われた体育館から出てすぐ、大きなのびをした。
教室への先導は、担任のゴッツイあんちゃん。
外見からしてバリバリの体育会系で、スーツに着られている。
「あーあ、疲れた。
・・・・・・ミサオ、寝てないかしら?」
ミサオが勉強できないのにはワケがある。
彼女は、座りっぱなしということが出来ないのだ。
・・・・・・ゲームをやるためや、漫画を読むときはまた別だが。
もしも、それでもおして座りっぱなしだと、大抵寝てしまう。
退屈な長話を聞かされていたら、尚更だ。
事実、ミサオは眠ってしまい、新クラスメートに起こされていたりする。
いつもならミナトが起こすのだが、生憎と二人は別のクラスだった。
気が付いたら、二階の、一年C組ーーー ミナトのクラスーーー の前にいた。
担任の先生の、
「とりあえずさっさと席に着けー」
という言葉に従い、席に着く。
「さて、それじゃまず、俺の名前だが・・・・・・
『ルーファス=岸根』という」
そう言いながら、黒板に名前を書く。
・・・・・・意外と、黒板で済むものなのだ。
「俺が教えるのは体育だ。
・・・・・・次は出席をとる。
何か質問があったら、その後に言ってくれ。
・・・あんどー」
「はい」
「いとー」
「はい」
「いなふじー」
「はい」
・・・・・・てな感じで、出席をとっていくルーファス=岸根。
そして、ミナトの番となった。
「はるかー」
「「はーい」」
・・・・・・声が被った。
もう一つの声は、すぐ隣からした。
「え?
先生、『はるか』って、私のことですよね?」
「ええ!?
私のことじゃないんですか!?」
・・・・・・と、二人が「我こそがはるか」と言い合う。
そこに、小学校時代・・・・・・といっても十日程前までだが・・・・・・の友人がミナトに声を掛ける。
「あれ?ミナトのお母さん再婚して、名字変わったんじゃなかったっけ?」
その友人の言葉に、ミナトと一緒に返事をした女性が、やはりまたミナトと同時に言った。
「そうだけど、まだ籍は入れてないんだって。
新婚旅行から帰ってきたら入れるって言ってたわよ」
これ、ミナト。
「私の母さん別に再婚なんかしてないわよ。
大体名字で呼んでるのに何が『名字が変わった』なの?
・・・ってゆーかアンタ誰」
これが、もう一人の。
ルーファスが口を挟む。
「あー、『湊 はるか』じゃなくて、『遙
美那都』の方だ。
出席番号26番の」
そしてやっと、謎が解けた。
「あ、そうなんだ。
『湊 はるか』と『遙 美那都』か。
・・・・・・私が間違えちゃったんだね」
「うん。 ほんと、そっくりな名前ね。
クスッ・・・
よろしくね」
「こっちこそ、よろしくね」
ここに、二人の友情が生まれた。
「あー、・・・・・・そろそろいいか?」
「「あ」」
真っ赤になって、俯く二人。
周りの級友となった少年少女達に笑われる。
そしてますますと真っ赤になる。
この友情が、親友レベルのモノとなるのに、さして長い時間は掛からなかった。
Act.2 姉弟
小学校の二日目は、早々と終わる。
だからアキトは、もう家路についていた。
「オーイ、アキトぉーー」
「アキトくーーん」
「ん?」
自分を呼ぶ声に、アキトは振り向いた。
そこには、クラスメイトで親友の二人がいた。
2人との中は、典型的な幼馴染みのそれだ。
ユリカとカグヤとも、2人は幼馴染みである。
でもって、ユリカ、カグヤ、そしてこの少女の間はなかなか険悪である。
「おいアキト、聞いたぞ!」
「うん、うん!」
「え?何を? 一体何の話?
ガイ、イツキちゃん」
・・・小学生の頃から名乗っとたんか、お前は
「お前の親父さん、再婚したそうじゃねぇか」
「それで、相手の人には連れ子がいるそうじゃないの」
「綺麗な人なんだろ!?
是非とも会いたいモンだぜ!」
「そうそう」
ヤマダ
ジロウ(魂の名前(意味不明)『ダイゴウジガイ』)、イツキ・カザマの声に溜息をつく。
「・・・・・・別にいいけどさ、飯はどうすんだよ」
「あ、大丈夫だ」
「家出てくるときに、アキト君の家で食べてくる、って言ってきちゃった」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
先程よりも深い溜息。
「・・・ったく、勝手にしろよ、もう」
「ただいまー」
家人はいないが、それでもアキトは「ただいま」という。
「邪魔するぜっ!」
「お邪魔しまーす」
ガイ、イツキもそれに習う。
「って、誰もいねぇのか?」
「・・・ヤマちゃん、私たちしか、今いないよ?」
「何っ!? そうだったのか??!」
訂正。
ガイは家人がいないことに気付いていなかったようだ。
・・・・・・靴が一足も無いんだけどなぁ・・・・・・
「ま、そんなことどーでもいいや。
ほんじゃアキト、早く飯」
「・・・・・・たかりの分際で何を言う」
「ま、いいじゃない。アキトくん。
どうせいつものことなんだし、私も手伝うからさ」
再度、溜息。
「まったく・・・・・・十分ぐらい待ってろよ。
今作ってきてやるから」
「おう、任せたぜ!」
「あ、待ってよ、アキトくーん」
キッチンに入っていくアキトを追い、イツキも消えた。
ガイは迷わずアキトの部屋に直行しようとし・・・・・・
「・・・・・・何だ、この部屋は?」
アキトの部屋の、隣部屋に気を取られた。
そこは、この間来たときは空き部屋だったはずだが、今見てみると、
『ミナトの部屋』
という文字と、
『許可無く入ったらコロスわよ(はぁと)』
という文字が書かれていた。
だが、ガイは、
「ほう、ここが義姉貴の部屋か。
面白そうだな。
入ってみるか」
というわけで、ミナトの部屋に侵入した。
ミナトの部屋は、秀雅宅にあったときと同じく、少女趣味だが、大人っぽい部屋だった。
窓は東にあり、その前にベッドがある。
きっと、朝は太陽光で爽やかなお目覚めが約束されているだろう。
当然、頭は南向きになっていて、その隣には人形が幾つか乗っかった勉強机がある。
勉強机も、ベッドに付いている本棚にも、幾つかのコミックと、小説が置いてある。
教科書は、今日貰うのだから、当然無い。
小学生の頃の物は、まとめて押し入れ行き、だ。
そしてガイは、そのベッドの本棚に、『ゲキ・ガンガー3』と並ぶ“お宝”を見付けた。
「何っ! こっ、コイツはまさか・・・・・・
『○より青し』!?」
あまり知っている人を見かけないのでE.Tはとても残念なのだが、平成が誇る傑作純愛マンガ『藍より○し』だった。
このころ、マンガもアニメもバイクも車も、一昔どころか、二百年近く前のものがブームとなっている。
そうして復元された物の一つが、『藍○り青し』だった。
ガイの至宝は、ゲキ・ガンガー3だけではないのだ。
そのマンガが、恐ろしく素晴らしい保存で置いてあった。
しかも、初版だ。
復元版でない。
・・・・・・どういう保存をしたら、そこまで保存が利くのかは知らないが。
というわけ(どういうわけ?)で、ガイはベッドに上がってそのマンガを手に取り、読み始めた。
どこから取り出したかは不明だが、極薄密着の、透明ゴム手袋を装着して。
さらに、本にクセや皺が出来ないように、極度に気を遣いながら。
・・・・・・お前なんかガイじゃない!
「ただいま〜」
「おっじゃましま〜〜す」
ミナトが、はるかを連れて、帰宅。
その2人に、
「「お帰りなさーい」」
見事な呼吸で、ハモるアキト&イツキ。
「あれ?
アキト、誰か来てるの?」
「友達が2人。
義姉さんも知ってるでしょ、イツキちゃんとガイだよ」
「ああ、あの2人」
イツキもガイも、ミサオと同じ陸上部に入っていたため、ミナトと面識がある。
・・・因みに、ガイは漫研にも所属している。
「イツキとガイ、って?」
はるかはミナトとは違う小学校に通っていたため、2人のことを知らなかった。
「私の後輩」
そのはるかに、薄笑みを浮かべながらミナトが答える。
そしてミナトははるかを伴って、アキトの声がするキッチンへと向かった。
「久しぶり、イツキちゃん」
どこか、ぞんざいな言い方。
「え!? ミナト先輩??!」
チャーハンを盛るために持ってきていたお皿を、取り落としそうになる。
「あ! イツキちゃん、お皿お皿!」
「あ! ・・・っと(汗)」
なんとかバランスを取り戻し、三枚のお皿の命(笑)は守られた。
「・・・・・・驚いちゃいました。
アキト君のお義姉さんになったのが、ミナト先輩だったなんて」
「そお?人生何があるか分からないんだし、そんなに驚くことじゃないと思うんだけどなぁ」
はるかを見ながら、しみじみと呟くミナト。
「って義姉さん、そっちの人は?」
イツキはアキトの言葉に、今更ながらにはるかの存在に気が付いた。
「今日できた友達」
「湊 はるかよ。
よろしくね」
ミナトの言葉に継いで自己紹介するはるか。
「「・・・・・・・・・」」
その、ほんとにミナトにそっくりな名前に驚く。
「・・・義姉さん、人生何があるか分からないって、そんな名前の人と知り合った、ってことなの?」
「クスクス・・・・・・それもあるわね」
「似た名前くらいで驚いちゃ、同姓同名の人に会ったらどうするのよ」
と、はるか。
「・・・・・・確かに」
イツキはそう言いながら、吹き出してしまった。
「ところでアキト、そのチャーハン、私とはるかの分もある?」
「うん、大丈夫。
義姉さんの分も作っとくつもりだったから、ガイに少し我慢してもらえば5人分あるよ」
「そお?
それじゃ私、ちょっと部屋に荷物置いてくるね」
そう言って、ミナトは台所から去った。
「あ、電話貸してね。
お昼、ここで食べるって母さんに伝えなきゃいけないから」
「うん。 どうぞ」
はるかは、イツキにリビングルームにある電話機まで案内してもらった。
そして、電話する。
用件を伝え、電話を切ったとき。
「キャアアアァァァァァァァ!!!」
悲鳴。
何事かと3人が駆け付けると、そこにはベッドの上で万字固めを決められた男:ガイと決める女:ミナトがいた。
「・・・・・・・・・何やってるの、義姉さん」
アキトの呆れ果てた声にミナトは怒声で答える。
「この変態クソガキが私のベッドに寝っ転がってたの!!\(>_<#)/」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
ガイは、口から泡を盛大に吹いている。
彼は必死に「ギブギブ」と何回と無く言ったし、抵抗もした。
それでも、オチた。
・・・・・・恐るべし、ミナト。
ふと、イツキがいった。
「そういえばアキト君、お料理、大丈夫?」
「あっ、忘れてたっ!」
ドッピューーン!
などという擬音が聞こえそうな勢いで、アキトはキッチンへと走り去った。
そのスピードは、ミサオと同レベル以上のものだったことを記す。
Act.3 ミナトとイツキ
結局、チャーハンは無事だった。
チャーハンの匂いに釣られて完全復活したガイを交え、5人は昼食を食べた。
「・・・・・・アキト君さ、将来コックになれるよ!」
それが、アキトの真正面に座るはるかの感想だった。
アキトはその言葉の意味するところを正確に察知し、満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう!」
アキトの隣に座っていたミナトとイツキは、それを間近で直視した。
とりあえずユリカとカグヤを除外しておくが、テンカワスマイルにやられた最初の人間がこの2人+はるかだった。
さっきのマンガ
アキトとミナトが洗い物をしに、ガイはミナトの許可を得て 藍 青 の続きを読みに消えて、ダイニングルームにははるかとイツキの2人が残された。
そして徐に、
「ねえ、イツキちゃん。
イツキちゃん、アキト君のこと、好きでしょ」
「えっ!(///)」
イツキは飛び上がって驚いた。
誰にも話したことはないのに、どうして初対面の人に?
イツキがそう思うのに無理はなかった。
「やっぱり図星?」
「ど、どどど、どうしてそれを・・・・・・」
「だって、イツキちゃん、ガイ君を見る目とアキト君を見る目、全然違ってたもん。
多分、気付いてないのって鈍感な男子共だけだと思うよ」
「そ、そそそ、そんなに分かり易い・・・・・・ですか?」
「分かり易いわよ。
ふふふ・・・・・・、ミナトも手強いライバルがいたものよね・・・・・・」
「えっ!? ミナト先輩が??!」
「多分、ね。
アキト君のこと話すとき、ミナトの顔、すごい輝いてるんだもん。
自分じゃ気付いてないみたいだけど」
あんた、本当にミナトと会ったばっかか?
・・・・・・イツキとも。
「そっ、そんな・・・・・・ミナト先輩が・・・・・・・・・?」
イツキにとって、ミナトは良い先輩だった。
その先輩と、アキトを巡ってライバルになるとは・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・。
決めました。
私、負けません。
いくら相手がミナト先輩でも、アキト君は渡さないわ!
それに、胸の大きさだったら先輩よりも私の方が・・・・・・」
「私がどうかした?」
ひょいと、ひよこエプロンをつけたミナトが姿を現す。
「うぇ!? い!いえ、別に何も!」
「そお?」
こうして、アキト(八歳)の周りの人間関係は、混迷を深めていくのでした。
Act.4 水面下
午後2時、ネルガル本社、会長室にて。
「・・・・・・会長、ああは言ったものの、本当にいいのですか」
「構わない。
プロフェッサー・テンカワが死んでも、ドクター・イネスが居る。
彼女は未だ12歳でしかないが、プロフェッサーと、何ら遜色ない能力を持っているからな」
「・・・そうですか」
そこでは、重役達が集まり、会議を開いていた。
重役用の会議室もあるにはあるのだが、そこよりも、会長室の方がなお、機密性の高い会話をできる。
「それでは、決行日は何時で?」
「明日。クリムゾンあたりにでも偽の情報を流して、プロフェッサーの乗る旅客機を墜とさせる」
その日の深夜。
「・・・・・・再考の余地は?」
『ないな』
ヒデマサの言葉を、通信機の向こう側の相手は切って落とす。
『これはもう、重役会で決まったことなのだよ』
『それに君も、その覚悟をして娘を嫁がせたんだろう』
『安心したまえ。
事故でも起こらない限り、君の娘は無事だよ。
・・・・・・事故が起こらなければね』
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ヒデマサは、何も言うことは出来なかった。
「(・・・・・・せめて連絡が取れれば良かったのだが・・・・・・・・・)」
この旅行の時、カズトもミナミも、通信機の類を持っていかなかった。
オリキャラ設定(その2)
ルーファス=岸根(ルーファス=キシネ)♂
○ミナト、はるかの担任。
○ごっつ体育会系。
○容姿は某『フィールド
オブスターライト』の登場キャラ、【ルーゴッチ=斉藤】のイメージ。
○熱血教師系だが、とても良い先生。
○ミナトが教員を目指す原因となった人。(他にも理由はあるが)
オリジナル設定(その1)
ミナトの制服好きは、この中学校の制服に始まったものだ。
「遙 美那都」の字も、オリジナルだ。
ガイとイツキが同じ学校で同じクラスなのも。
後書き
まずは最初に、別人28号さんの許可の元、「湊はるか」は出演しております。
えーと、次に、
「ナデ青」、計画中!
藍青、いいですよね。
今のところ六巻まで所持しているので、そこまでのキャラを決めたとこ。
7巻は出ているのか?
それともまだ出ていないのか?
気になるところですね。
・・・・・・これの元を書き終えたのは2002/1/28だったのですが、1/30に7巻を発見しました。
キャラ配役は秘密です。
ところで、一人だけ配役の決まっていないキャラがいるんですが、誰が良いと思いますか?
ティナ役は。
ナデシコ(本編)、(姿形も名前も)外国の方少ないからさ、決まらないんだよね。
イネスさんはもう割り振ってあるし。
誰かいいキャラあったら教えてください。
テレビ+劇場版ナデシコのキャラだけですので。
それでは。
おまけ
「イツキちゃん」
「なんですか、はるかさん」
「イツキちゃんには悪いけどね、私はミナトを応援させてもらうわよ」
「はい! 望むところです!」
「(ふふふ、小学生の頃、『キューピッドはるか』と呼ばれたこの私・・・・・・
ぜーーーったい、ミナトとアキト君、くっつけちゃるーーーっっ!!!)」
おしまい
代理人の感想
ボケ少女ですな、湊はるか(笑)。
普通出欠席で呼ぶのは名前でなく姓の方でしょ〜に。