「え〜と、ここだな・・・・・・」
アキトは、佐世保軍ドックに到着した。
「あ、すみません」
門の所に立っている警備員に声を掛ける。
「プロスペクターって言う人はいますか?」
「プロスペクター?」
「はい。ネルガルの方だそうですが」
「それで、なんの用なんだい?」
「ミスマルユリカという人に会いたいんですが、それで、プロスペクターという人に聞いて、と言われたので」
「それじゃあ入ってきていいよ。
呼んでくるから、少し待っててもらうことになるけどね」
「はい。
どうもすみません」
アキトは警備室に案内された。
機動戦艦ナデシコif
THE AVENGER
第4話
戦闘開始
「で、あなたは何故ミスマルユリカさんに会いたいのですか」
警備室に訪れたプロスペクターは、開口一番そう言った。
クリーム色のYシャツに赤いベスト。
なかなか派手な格好のおじさんだ。
「ただ単に、彼女の落とし物を届けに来ただけです」
「・・・・・・それだけの理由でわざわざ?」
「はい。・・・なにか?」
「あ、いえ。何でも。
ただ、知り合いの息子さんと、顔立ちがよく似ていたものでして、はい。
まあ、もう10年以上会っていないんですが・・・・・・
その知り合いも、10年ほど前亡くなられましたし、息子さんがどこの孤児院に行ったかも分かりませんでしたからね・・・・・・」
どこか遠い目をする。
「そうなんですか・・・」
「まあ、それはそうと、ユリカさんですね。
彼女はネルガルのプロジェクトに参加していまして・・・・・・一般の方だと簡単にお会いできないんですよ、・・・・・・すいませんがお名前は・・・?」
「テンカワ アキト、と言うみたいです」
「な、テンカワ!?」
「どうかしましたか」
「い、いえ。何でもありません。
(もしや本当に彼はテンカワ博士の息子のアキト君・・・・・・?)
そういえば・・・・・・ユリカさんのなさった落とし物とは?
それと・・・何故自分の名前に確信を持っていないのですか?」
「・・・・・・落とし物は・・・これです」
懐から写真を取り出す。
「これは・・・・・・!」
大きく目を見開くプロス。
それもその筈。
写真にはユリカと、ユリカにまとわり付かれる、迷惑そうな顔をしたアキトが写っていたのだから。
「自分の名前に確信が持てないのは・・・・・・俺が、記憶喪失だからです」
「記憶喪失・・・?」
「はい。
気が付いたら・・・・・・草原に立っていました。
そこで、偶然通りかかった人に拾われて・・・・・・
・・・それで、彼女に会えば記憶を取り戻すきっかけになるかも知れないと思って・・・・・・」
「なるほど・・・・・・
(彼に嘘を言っている様子はありませんねぇ・・・・・・それならいいでしょう)
分かりました。
本来ネルガルの社員でなければいけないのですが・・・・・・
私が同行するという形でしたら、直接ユリカさんに会うことを許可しましょう。
それでよろしければ、私の後を付いてきてください」
「わかりました」
プロスが席を立ち、アキトもそれに続く。
暫く歩いて見えてきたのは・・・・・・
「・・・・・・何です、この変な形のは」
「はっはっは。
これは手厳しい言葉ですな。
まあ、申し訳ありませんが一般の方には、まだあまり知られたくない物なのでして・・・・・・
あれに関しての説明は出来ません」
「説明?」
何処かの星の何処かにて。 by 金髪マッドサイエンディスト
「そうですか・・・」
「それではこちらへ」
アキトはプロスに付いて、変な形をしたのに入った。
その中を物珍しそうに見回すアキト。
・・・・・・まあ、実際問題、宇宙戦艦の中など、滅多なことでは見られないだろうが。
「ここがブリッジ・・・・・・
艦長・・・・・・いえ、ユリカさんがいるか、もうすぐ・・・・・・」
もうすぐ来る、と言いかけて、アキトがここまで自転車で来たことを思い出した。
「もう来ているはずの場所です」
自動車なのだから、自転車より速いのは当たり前だ。
特に交通渋滞も起きてないし。
しかし、ブリッジには、青い髪の女性はいなかった。
ブリッジにいるのは栗色の髪の、ないすばでい(死語)の女性と、紫っぽい髪を三つ編みにした、そばかすが可愛い少女と女性の中間あたりの女性、淡い水色の、ツインテールの髪の少女。
そして・・・・・・変なキノコとじっちゃん。
「あの・・・すいませんが皆さん。
艦長は・・・・・・?」
「まだ来ていませんが?」
水色の髪の少女がプロスに答えた。
「ちょっと、そいつ何なのよ!」
オカマ茸(おお、ムネ茸・・・じゃない、ムネタケの新しい呼称が今ここに!)が叫ぶ。
「あ〜ら、結構可愛いじゃない」
「ほんとですね。
あの人が艦長さんなのかな?」
「それは違うわよ、メグちゃん(呆れ)。
艦長はまだ来てないのか?って聞いてたじゃない」
「あ、それもそうですね、ミナトさん」
「でも、じゃあ何なのかしら?
オカマ茸のことばじゃないけど。
ルリちゃんはあの人知ってる?」
ミナトと呼ばれた、ナイスバディのお姉さんに聞かれた水色の髪の少女は、
「いえ、知りません。
クルーにあの人はいません」
そう言った会話のためか、それが無くてもするのか、プロスはアキトを紹介した。
「皆さん、この人は“テンカワ アキト”さんといいまして・・・・・・
艦長のミスマル
ユリカさんに落とし物を届けに来たのですよ」
「質問(挙手)」
「なんですか、ルリさん」
プロスがルリに問う。
「何でわざわざ落とし物を届けに来るんですか?
よっぽど重要なものなんですか?」
「いえいえ、違いますよ。
彼は、その・・・記憶喪失だそうで・・・・・・
その艦長の落とし物というのが写真でしてね、その写真にテンカワさんも写っているので・・・・・
艦長に会えば、記憶の手掛かりになるのでは、と考えたそうでして」
「あらまあ、かわいそうに」
「ホント・・・艦長、何やってるんでしょう」
因みに・・・・・・
艦長がこの艦に乗艦する予定時刻は午後4時。
雪谷食堂の近くを午後2時過ぎに通ったのだったら、十分に間に合うはずだ。
しかし、今は午後6時。
もう、2時間の遅刻だ。
「だからって何で関係ないヤツを乗せるのよ!」
オカマ茸が騒ぐ。
だが、だれも相手にしない。
早くもクルーは悟ってしまった様子。
その時だった。
ズガアァァァァン
凄まじい衝撃が、艦を揺るがした。
「何事です!」 (プロス)
「い、一体何なのよ!」 (オカマ茸)
そして、
ビーーィ、ビーーィ、ビーーィ
警報が鳴る。
「何これ、避難訓練かな?」 (メグミ)
「交代の時間とか」 (ミナト)
「木星蜥蜴です。
ジョロ、バッタ、計300機ほどが襲撃中。
地上軍に甚大な被害が出ています」 (ルリ)
「なによ、だったらさっさと反撃しなさい!」 (オカマ茸)
「でもどうやって?」 (ミナト)
「主砲を上へ向けて撃てばいいのよ」 (オカマ茸)
「上にいる軍人さんはどうするんですか」 (メグミ)
「そ、そんなのどうせもう全員死んでるわよ」 (オカマ茸)
「そういうの非人道的って言いません」 (メグミ)
「あなたどういう神経してるの?」 (ミナト)
「う、うっさいわね!」 (オカマ茸)
「艦長は・・・・・・まだ来ていないか」 (お爺ちゃん)
「まったく、困りましたねえ」 (プロス)
・・・全く困っているように聞こえない。
そしてそこに、
「お待たせしましたーっ!
私が艦長のミスマルユリカです。
ぶい!」
・・・・・・・・・馬鹿が来た。
本星への報告書 TA−4
やっとこさここまで来ました。
これから戦闘シーンですが・・・・・・
一話で終わるかなー?
一話一話がかなり短いからね、「THE AVENGER」は。
ま、それじゃここら辺で。
本星への報告書 TA−4 終