格納庫に着いたアキトを、整備員達が取り囲んだ。
彼らは、殺気立っていた。
その理由は。
「おい、お前・・・・・・テンカワ、だっけか?」
「は、はい」
ウリPの迫力に圧されて、ぎこちない応答。
「テンカワよ、二つお前に聞きたいことがある。
一つは、お前が大丈夫かどうかだ。
もう一つは、お前本当に戦闘経験・・・・・・いや、エステに乗ったこと無ぇのか?
戦闘経験があったとしても、あそこまでエステの性能を引き出すことはそう簡単にゃ出来ねえ。
エースでも引き出せるかどうかだ」
「そ、そんなこと言われても困りますよ!
オレ、何も覚えてないんス!
あのロボット乗って、地上に出て・・・・・・それであいつ等を見たら、なんか・・・・・・
・・・・・・気が付いたら、医療室で寝てたんだ・・・・・・」
「・・・・・・そうなのか?
だったとしたら、俺達にゃ何も言えねぇな。
俺達が言いたかったのは、例えエステの性能ギリギリを出せたとしても、危険な戦い方はやめて欲しかったんだ。
ゴートの旦那とかなら気付いてたかもしれんが、無茶苦茶すぎる・・・・・・エステの性能を超えた機動もあったからな」
「ロボットの限界を超えた動きって・・・・・・悪いんですか?」
アキトの言葉に、ウリPは盛大に溜息を付いた。
「カーーッ!
お前が素人だってのは本当だなっ!
・・・限界性能を超えた機動を行うのは、確かに神業級だ。
だが、限界性能を超えてるっつーことはだ、『設計限界』も超えちまってる(こともある)わけだ。
そうするとどうなると思う?」
「壊れる・・・・・・ですか?」
「その通りだ。
まあ、多分平気だとは思うが、限界機動以上の機動をしているときに攻撃をもらえば、いっかんの終わりだな。
・・・・・・とりあえず、頭の端っこでも良いから覚えとけや。
自分の意志で、あの機動を出来るようになったときのためにな」
機動戦艦ナデシコif
THE AVENGER
第九話
艦内制圧戦(前)
「前方にチューリップを発見。
本艦に気付いたようです。
海中より浮上しながらバッタを放出してきました。
数、30」
ルリの報告が、ブリッジに響く。
「パイロットに出撃準備をさせてください」
とユリカは言いつつ、
「アキトぉー!アキトは戦わなくて平気だからね!
全部ヤマダさんに任せればオッケーだから!!」
と、コミュニケでアキトに通信を入れる。
その突然の通信に驚いたアキトは、洗っていた皿を落とし、それに動揺して積み重ねていた皿にぶつかる。
ついでに、何故か落ちていたバナナの皮でこける。
俗に言う、『マーフィーの法則』というヤツだ。
「艦長、ヤマダさん、まだ足の怪我治ってないそうです」
と、メグミ。
「ええ〜〜〜!!!?」
ユリカはアキトへのウィンドウを開けっぱなしにしていたので、驚いたアキトが、更に皿を割った。
しかも今回は、ホウメイガールズの5人も、洗ったり拭いたりしていた皿を落として割った。
挙げ句の果てには、ホウメイまでもが驚いた拍子に野菜を切っていた包丁に力を入れすぎ、まな板を切ってしまった。
「そ、それじゃあアキトが戦わないといけないの!?
・・・・・・アキト・・・・・・・・・私たちの命、あなたに預けるかもしれないわ・・・・・・」
『勝手に預けるな〜〜!!』
なんだかんだで、アキトは昨日乗ったピンクの塗装の為されたエステバリスに乗り込んで待機に入る。
「アキトを危険な目に遭わせるわけにはいきません!
絶対にこれで決めます!
……ルリちゃん、グラビティブラスト一撃じゃ終わらないよね?」
「はい。
フルチャージしても、一撃で墜ちる確率は1%未満です」
「・・・・・・それじゃあ、バッタだけを落とすのには、何%の出力がいる?」
「30%です。
より確実を期すためには、35%程です」
「フルチャージ後、33%でグラビティブラスト発射。
その後フィールドを切って、その分のエネルギーをグラビティブラストの充電に回してください。
それから、レールガンでチューリップのフィールドに過負荷をかけ、ミサイルを放出、グラビティブラストでミサイルを誘爆させます」
ユリカは、毅然とした態度で言った。
「何か質問は?」
「それでチューリップが墜ちなかったらどうするのぉ?」
「その時は、アキトに時間を稼いでもらいます。
グラビティブラストの充電をしながら移動、背面ないし側面から、これを撃破します」
ミナトに続いて質問をする者はいなかった。
ナデシコ就航から2度目の、そしてナデシコ自身にとっては初めての戦いが、始まった。
本星への報告書 TA−9
久しぶりの「THE AVENGER」です。
どうもコイツはうまく文が書けない。
ダークにしようと思うのに、何故かギャグになる。
どうすりゃ良いんだ? 一体。
普通のシリアスならまだできるんだが、ダークは体質的に書けないのだろうか?
まぁいい、精進あるのみ!
本星への報告書 TA−9 終
代理人の感想
ん〜む。
私がダークじみたものを書く時は、大抵感情をぶつけて書きますので
「理論的にダークを書く」のは実は苦手だったりします(苦笑)。
まぁ、どうしても書けないというならETさんにダークを書く為の素養が無いか、
あるいはこの話のキャラがETさんの頭の中では
「ダークをやるキャラ」として認識されていないかのどっちかでしょう。