ナデひな
 第X+4話 ナデひな一発劇場part-5〜お料理コンテスト・番外編(前編)〜





 崖の下を見に行ったときにはすでにいなかったし、もしひなた荘に戻っているのだったら、ハルカから報告が入るはずだが、未だ連絡は入らない。

 あの崖の下は結構木が生い茂っている。

 そのことを考えれば、なるは間違いなく生きている。

 だが、怪我がないわけはない。

 少なくとも絶対に骨折ぐらいはしているはずなのだ。

 そうすれば動けるはずはない。

 だが、そこの雑木林には誰一人いなかった。

 アキトが素子に気付かれる覚悟で辺りの気を走査(誤字にあらず)したが、やはり人の気配はなかった。

 ・・・・・・・・・圧倒的に大きい気の反応があったが、それは一瞬後に消えた。

 その時に何か大質量を持つ物が倒れる音がした。

 素子はその気に気付かなかった。

 正確には、気付けなかったのだ。

 あまりに巨大すぎる気故に、体がその気を無視したのだ。

 そこでスゥの提案により、チームα(アキト&素子)、チームβ(キツネ&スゥ)、チームΩ(ハルカ&しのぶ)の三グループに分け、捜索を開始した。

 そして、今。

 成瀬川なる捜索隊が発足してからすでに数時間が経過した。

 スゥが開発した新型コミュニケ「さんじやんクン一号」を装備して、だ。

 どこら辺が従来の物・・・・・・というか、つい最近まで最新式だった、っつーか今だ最新式のナデシコで使われていたものと違うかというと、その多機能性だろう。

 まずナデシコで使われていたコミュニケの能力は全て持っている。

 そこに、受信側の設定によって相手の感情・声の大きさの如何に問わず、画面の大きさを一定に出来る能力が付加。

 他にも通信範囲が半径1km以内で、それ以上でも間にさんじやんクンが有れば、それを中継することも可能。

 それから日本全国どころか世界中の千分の一の地図(!)がインプットされているし、防犯ベル機能や護身用のディストーションフィールド、DFS発生装置なんかも付いている。

 おまけにレーダー機能も持たせてある。

 だが、生憎となるはこれを持っていない。

 まあ、当然と言えば当然なのだが。

 だって、なるを探しに行くときになって、スゥがみんなに渡したのだから。

 なお、何で・何処に、そんな物を持っていたのかは考えたらいけない。





「は〜、なるちゃん、一体何処に行ったんだ?」

 チームα(命名・スゥ)のアキトと素子が町中を歩いていた。

「全くだ」

 こうして二人が歩いていると、どことなくカップルに見えてしまうのは何故だろうか。

 それはやはり少し照れくさそうに頬を微妙に桜色に染めた素子の顔のせいだろう。





「ったく、なるのヤツどこほっつき歩いとるんや〜?

 足がガクガクやんか」

「なるなるレーダーでも作った方がえかったかな〜?」
 
「作れるんやったら作っとけやっ!」
 
「怒りすぎると皺が出来るで〜」

「はぁ・・・・・・」

 チームβのキツネ、スゥはチームαとひなた荘を挟んで反対側を捜索していた。





 その頃ひなた荘では。

「!

 はるかさん!」

「どうした、しのぶ」

「今ニュースでなる先輩らしき人を発見しました!

 体格など、特徴・・・・・・触覚があるなど・・・・・・が、完全になる先輩と同じです!」

「なにっ!?

 どこでだっ!」

「今キツネさんの居るところから100mほどの地点にある格闘道場です。

 道場破りが現れて、門下生約100人が全員血の海に沈んだそうです」

「まさか、それをやったのがなるなのか・・・!?」

「信じられないことですが・・・」

「至急チームα、並びにチームβに連絡を取れ!」

「了解!」





 数時間前のなる。

 彼女は崖から落ちる前、光速を超えた。

 これにはれっきとした理由があったのだ。

 崖から落ちたなるがまず一番最初に感じたのは、その体の軽さだった。

「なに・・・・・・体が軽い・・・・・・?

 ううん、違う。

 これは・・・・・・・・・」

 ただ体が軽いのとは違う感覚がし、何気なく木を殴ってみた。
 
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
 
 殴った木が倒れた。

「この力は・・・・・・?

 ? それと私の周りを包むこの光は何?」

 そう。

 なるの周りを血(静脈血)の色の光が包んでいた。

「まさか!
 
 これが昂気というモノなの!?
 
 ふふふ・・・・・・
 
 しのぶちゃん、私はこの力であなたに勝ってみせるわ!」
 
 シュタッ

 次の瞬間、なるの姿は消えた。

 その近くにひなた荘の住人たちが来ていたことを、彼女は知らない・・・・・・




 
「弱い・・・・・・
 
 弱いわ・・・・・・
 
 弱すぎるっ!
 
 それで神奈川の光○館を任せられる身なの!?
 
 出直しなさい!」
 
 なるがその言葉を言い終わった後、光○館最後の生き残りが倒れた。
 
 なるは昂気を身に付けて数時間にして、すでにその力を我が物とした。
 
 アキトや北斗並・・・・・・もしくはそれ以上の資質。

 彼女は成瀬川なる捜索隊の到着を待たずして消えた。

 文字通り消失した。

 突如彼女の姿が掻き消えたのだ。

 その後には、空間の揺らぎ・・・・・・そうとしか形容できない、揺らめきしか残っていなかった。

 そして・・・・・・

 彼女が見つかるのは結局二日後となる・・・・・・





 本星への報告書EX−5

 今回はほとんど・・・・・・ってーか、全くギャグ無し。

 ただし、次回は恐ろしいことになります。

 なるが○○の世界に乱入。

 そこで拳王の座を賭け、死闘を繰り広げます(予定)。

 まぁ、楽しみにしていて下さい。
本星への報告書EX−5 終