漆黒の戦神、テンカワアキトの活躍によって終結した先の大戦からはや十数年・・・。
地球と火星、そして木連の関係は完璧とはまだいえないまでも、概ね平和であった。
これは、そんな平和な時を歩む人々の物語である・・・。




              時ナデアフター
              Milky Way へようこそ♪
              Act.01 平和なひととき





 喫茶店、Milky Way 。
火星のネオユートピアコロニーの片隅にある、何処にでもあるような小さな喫茶店である。
小さいながらも豊富なメニュー、良心的な値段、そして何より親切なオーナー夫妻は近所でも評判であった。

「今日はいい天気だなぁ・・・」

 キュッキュッキュとグラスを磨くオーナー。

「そうですね。 ここ暫く天気が悪かったですし・・・」

 その隣では、妻だろうか、女性が洗い物をしていた。
カチャカチャカチャ・・・暫く洗い物の音が響く。

「前から不思議に思っていたんですが・・・。 何故この喫茶店にはラーメンがあるんですか、アキトさん?(汗)」

「これだけは、ラーメンだけは譲れないんだよ、千沙さん(断言)」

 ・・・近所でも評判のオーナー夫妻の正体は、何とあのテンカワ・アキトと天川千沙(旧姓各務)であった。
テンカワ・アキト、そして各務千沙。 この二人は大戦時のゴタゴタ(主にTA 同盟の妨害)を乗り越え、
紆余曲折をへてついにゴールインしたのだ。

   ・・・ルリを筆頭とするTA 同盟の女性達は、どうも本人の気持ちを考えずに愛を求める傾向が強く、
アキトの事を朝から晩まで、それこそ二十四時間体制で追い続けるため、彼は心身ともに限界まで疲弊しきっていた。

 ・・・幸せな不幸だと思うこと無かれ。
何せ彼女達はアキトの行き先、食事の内容、話し掛けた人のプロフィール、果てはトイレの回数まで控えているのだ。
これじゃ殆ど○トーカーと一緒である(汗)。


 ・・・が、彼女、各務千沙だけは違った。
彼女は追い求めるタイプのTA 同盟とは逆に待つタイプだったからだ。
また、彼女はしばしばアキトの事を同盟から匿ったりもした。
・・・彼女の名誉のために言えば、決して餌付けではない・・・と思う、たぶん。

 とにかく、そんな二人が惹かれあうのは必然的であった。
彼らはゆっくりと愛を育んでいき、数ヵ月後にはめでたく結ばれたというわけだ。

 ただ、同盟から逃げるためにどうしても隠れる必要があり、そのため諜報戦のプロであるヤガミ・ナオに相談する事となった。

『だったら、再開発され始めた火星に移住したらどうだ? ・・・実はな、俺達も移住するつもりなんだ』

 その言葉が決定打となり、アキトと千沙はヤガミ夫妻と一緒に火星へと移住する事になった。
その後、二人は子宝にも恵まれ、今に至るというわけだ。


 さて、説明はこれくらいにして話を現在に戻そう。
今、Milky Way にいるのは、アキト達の他に二人。 ・・・開店当初からの常連、ヤガミ夫妻である。

「アキト、お前最近妙に爺臭くなってないか?」

「・・・大きなお世話ですよ、ナオさん。 じゃ、コレはいらないんですね、わかりました」

「ま、待てって。 俺が悪かったからエスプレッソを返せって」

 エスプレッソを片付けようとしたアキトに慌てて声をかけるナオ。 ・・・この二人は、相変わらずこの調子らしい。

「はぁ〜・・・大人気ないですよ、ナオさん」

「まあまあミリアさん、この二人にとってはコミュニケーションの様なものなんでしょう」

 ミリアがナオを非難すると、千沙がやんわりと宥めに入る。 ・・・なかなかいいコンビである。

『ねえブロス、アキト兄とナオさんって完全に尻に敷かれてるよね

『うん。 しかも、千沙さんとミリアさんのタッグって無敵だもんね、ディア』

 元ブローディアとガイアのAIであったディアとブロスの二人(?)も、
今ではこの喫茶店のウェイトレスとウェイター(注文と精算を担当)として働いている。
この二人も、この店の隠れた名物(?)だ。

 カランコロン♪

「ただいま」

 店のベルを鳴らして喫茶店に入ってきたのは、セーラー服に身を包んだ中学生の女の子。
少々ウェーブのかかった長い緑色の髪を無造作に後ろに流している。

「「おかえり(なさい)、千聖」」

 それを笑顔で迎え入れるアキトと千沙の二人。
彼女は天川千聖、十五歳。 近くの中学校に通う中学三年生である。
母親の千沙曰く、『千聖は昔の私にそっくりですね』だそうだ。

 その証拠に、彼女に来るラブレターの99.9%が女子生徒(しかも下級生!)からなのだ。
・・・最も、彼女はそんな趣味はないのでうんざりしている様だが。

「おう、千聖ちゃんお帰り。 お邪魔してるよ」

「お邪魔してます」

 カウンターに座っているナオとミリアの二人も振り返って彼女に声をかける。

「こんにちは、ナオおじさんにミリアおばさん。 ゆっくりしていってね。 ・・・お父さん、カフェオレ」

「了解。 ・・・ところで千聖、和人と理沙の二人はどうしたんだい?」

 コトッ

 千聖の前に出来上がったカフェオレを出すアキト。

「和人のヤツは部活だけど、まだ帰ってきてないの、理沙?
 ・・・ん、お父さんのカフェオレは何時飲んでもいい味よね」

「・・・誉めたって小遣いは増やさないからな、千聖」

「・・・期待はしてなかったけどね・・・ケチ」

 ふくれた千聖が可笑しいのか、笑いながらコップを磨くアキト。

「ア、アキト・・・お前ってヤツは少女趣味だったのか!?
 考え直せアキト、まだ間に合うぞ。 ・・・千沙さんの泣き顔が見たくなければな」

「・・・今、何て言いました、ナオさん?(怒)」

「わ、悪かった、俺が悪かったから昴氣に包まれた震える拳を下げてくれ、アキト!!(汗)」

 不気味な笑みを浮かべるアキトに慌てて謝るナオ。 ・・・この脅しを受けて平気な顔してたらそいつは絶対変人だ!!

「自業自得ですよ、ナオさん。 わざわざ逆鱗に触れなくてもいいでしょうに・・・(溜息)」

 そんなナオを横目で見つつ、ロイヤルミルクティーを啜るミリア。 ・・・結構いい性格をしている。

「またですか?」

「何時もの事ですよ、千沙さん」

「ホント、お父さんもナオおじさんも飽きないわね・・・」

 女性陣三者三様の科白。 ・・・キッツイお言葉である。

 カランコロン♪

「たっだいまー! やったよ、親父、母さん!
 1年にしてレギュラーに大抜擢!!・・・って、こんちは、ナオのおっちゃん、ミリアおばさん」

「パパ、ママ、ただいまですッ。
 お兄ちゃんの部活を見学してて遅くなっちゃったんです、ゴメンなさい・・・。
 でも、お兄ちゃんかっこよかったですー(はぁと)」

「興奮しすぎだよ、理沙ちゃん(苦笑)。
 でも大変だねカーくん、明日からまた追っかけが増えるね?」

「それが不思議なんだよなー、俺なんか追っかけて何が楽しいんだろう? う〜ん・・・謎だ」

『遺伝って恐ろしい(わね/ですね)・・・』×8

 首を捻る少年に、アキトを除く全員が突っ込む。
・・・彼の名前は天川和人、十三歳。 名前の通り、アキトと千沙の間に生まれたサッカー少年。
彼は今年中学校に入学したばかりのピカピカの一年生で、姉である千聖と同じ中学校に通っている。
アキトそっくりの容姿を持つ彼は、父アキトの負の遺産である女難まで受け継いでしまったらしい。
持ち前の容姿と運動神経で、千聖を除く全女子生徒をわずか三日で骨抜きにしてしまった(汗)。
・・・まさに、この親にしてこの子あり・・・である。

 話はちょっと逸れるが、学校には女子生徒が組織した天川和人後援会
男子生徒が組織した天川和人死ね死ね団なる二つの組織が設立されたらしい(汗)。

 和人の後ろに引っ付いている緑の髪のショートカットの女の子は、末っ子の天川理沙だ。
今年十一歳になる彼女は、千聖達が通う中学校付属の小学校に通っている。
彼女は自他ともに認める甘えん坊で、常に誰か(主に家族)と一緒にいる事が多い。
何故か、「えぅ〜」が口癖(笑)。

 最後にヤガミ・メティス、十三歳。
ナオの血をこれっぽっちも受け継いでいないらしく、容姿、性格ともにミリアに似て穏やかである。
小さい頃から和人と幼馴染をやっているので、最近はお目付け役兼操縦役としてサッカー部のマネージャーを務めている。

 ちなみに、彼女が言った『カーくん』というのは和人の事で、『ぐっ!』としか言わない
カレー好きな黄色い謎の生物の事ではない。
・・・これわかった人、何人いるかな?(苦笑)

「・・・へぇ〜、和人がレギュラー入りねぇ・・・。 ・・・サッカー部ってボンクラしかいないのかしら?」

「・・・姉ちゃん、何気に酷いこと言ってないか?(汗)」

「気のせいよ、気のせい」

「でも、ホント凄かったんですよ、お兄ちゃんのシュート。 ゴールポストが歪んじゃったんですッ」

「ディフェンダーとキーパーもろともシュート決めたしね。 カーくん、もしかしてあのシュートって・・・」

「おう! ○ェクトシュートをヒントにして自分なりにアレンジを加えてみたんだ。
 ちょうどむかつく先輩だったし、いい実験台になったぜ」

「・・・アンタ鬼よ、和人。 でもそいつ誰?」

「え〜と、確か・・・三年のサイトウって人だったよね、カーくん。
 ・・・でも、あの人口で言ってるほど上手くないよね」

「そうですッ、私をナンパするようなロリコン野郎は女の敵、ひいては人類の敵ですッ!!」

「・・・理沙、アンタ自分が凄い事言ってるのわかってる?(汗)
 そう言えばアイツ、私にラブレター寄越してきたことがあったのよね」

「「「で? その後どうした(んだ/んですか/の)」」」

「・・・資源の無駄遣いだから、読まずにその場でリサイクルしたけどね。 泣きながら走っていっちゃったけど、何が悪かったのかしら?」

『『『(姉ちゃん/お姉ちゃん/千聖さん)の方が鬼(だって/ですぅ/だよ)・・・』』』

『『『『そのディフェンダーの子も可哀想に・・・』』』』

 千聖の辛らつな言葉についていけない残りの全員。

『さっき病院にハッキングして調べたんだけど、サイトウって人全治二ヶ月重症だって。 ・・・和人、ちょっとは手加減したらどう?(汗)』

『その運ばれた病院なんだけど・・・飛厘さんが勤めている病院なんだよね・・・(汗)』

 ディアとブロスも呆れ顔である。

「・・・全治三ヶ月に延長だな・・・可哀想に」

「「「(そうだな/そうですね)」」」

 苦い顔して呟くアキトに、溜息を付きつつ同意する大人三人。

 ・・・あの木連版イネスの飛厘の事だ、きっと患者で人体実験を行うだろう。 いや、絶対。
アキト達には、妙な確信があった。





「もうこんな時間か。 そろそろ帰るわ、アキト」

 時間は既に七時を回っている。 懐から財布を取り出しながら立ち上がるナオ。

「長い間お邪魔しました」

「お邪魔しましたー!」

 それに倣う様にして立ち上がるミリアとメティの二人。

「もう行くんですか、ナオさん? 夕食でも一緒にどうかなって思ったんですけど・・・」

「そうですよ、もしよかったら・・・」

「それは嬉しいんだけどな、今日はこれだからさ」

と左手の薬指を見せるナオ。 その隣ではミリアが顔を真っ赤にして俯いていた。

「「なるほど」」

 納得がいった、という顔のアキトと千沙の二人。

「「おめでとうございます、二人とも」」

 カランコロン♪

「それじゃ、またな」

 二人から逃げるようにして Milky Way を出るヤガミファミリー。

 パタン

 ドアが閉まる音が、誰も居ない店内に響く。 ついでに言うと、今日は定休日なため他の客はいないのだ。

「・・・アキトさん」

「なに、千沙さん?」

 カウンターを拭いているアキトに、静かに話し掛ける千沙。

「・・・私、今凄く幸せです。 貴方がいて子供達がいて。 ・・・戦争中では考えられなかった事です・・・」

「・・・・・・」

 震える千沙の細い体を、後ろからそっと抱きしめるアキト。

「幸せすぎて・・・怖いんです。 もしかしたら、これは夢なんじゃないかって・・・」

「千沙さん・・・大丈夫、俺は何時までも千沙の側にいる・・・約束しただろう?」

「アキトさん・・・」

 千沙を抱きしめる腕に力を込めるアキト。
火星の空には、そんな二人の様に寄り添う二つの月が瞬いていた・・・。




「まーたやってるよ、あの二人。 飽きないよなぁ」

「いいじゃない、私達が知らない辛い出来事を二人で乗り越えてきたんだし。
 ・・・でも、万年新婚ボケだけは早く治して欲しいわね」

「えぅ〜、羨ましいです〜。 いつか私もパパとママみたく素敵な恋愛がしてみたいですぅ・・・」

 ・・・ちゃっかりドアの影から覗いている子供達であった。

「さて、あの様子じゃ長引くだろうからご飯作るわよ、二人とも。
 今日は・・・寒かったから体が暖まる鍋物にでもしよっか」

「「了承(ですッ)!」」

 ・・・なんだかんだいって両親の事が大好きな三人であった。







 おまけ





「ふふっ・・・今宵のメスは血に・・・違った患者に飢えているわ・・・(ニヤリ)」

「あ、あの・・・インフォームド・コンセントは無いんですか・・・?(汗)」

「いんふぉーむど・こんせんと? ・・・私横文字苦手だからわからないの」

「おい!? アンタよくそれで医者になれたな!?」

「さて、本日のビックリメカ・・・違ったビックリメディシンは?」 ←思いっきり無視(笑)

「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「ほほう・・・これはお目が高い。 とある雪国名物謎ジャム(!)を選ぶとは・・・」

「帰る! 俺は帰る!!(汗)」

「そうは問屋が卸さないわよっと」

 プスッ

「! ・・・・・・(ガクッ)」

「ふふふ・・・非常に優秀なサンプルを送ってくれた和人君に感謝しなきゃね・・・」

 何やらヤバイ科白がとある病院から聞こえてきたような気がする(汗)。
この病院のいつもの光景らしい・・・。 ←(オイ)

 まあ、一部の例外があるとはいえ、火星は概ね平和であった。












 後書き



 どうもこんにちは、Excaliberです。

「理沙で〜すッ」

「和人で〜す」

「千聖よ」

 ん? ・・・アキトと千沙の二人はどうしたんだ三人とも?

「「「あれからずっとあのまんま」」」

 あのまま・・・?(汗)

「「「うん」」」

 まあ、あの二人は幸せだろうから置いといて、だ。

「何でアキト×千沙SSを書いたの? しかも連載で?」

 ・・・突然電波を受信して書いてしまった。 ただそれだけだ。

「「そういえば、私達の名前って・・・」」

 そう、君達の母親である千沙の名前から一字づつ貰ったんだ。 ・・・ただ単に思いつかなかった、っていうのもあるんだけどね。

「「「ふーん」」」

 ちなみに、千聖と理沙は Kanon の美坂香里と栞がモデル。 和人はデジモンの八神太一・・・かな?

「私のモデルは?」

 ああ、メティちゃんは下級生の結城瑞穂がモデルだ。 ・・・何かギャルゲーばっかりだな(苦笑)。

「「「「で? 次回は?」」」」

 取り合えず、あの人を登場させようと思う。 誰の事かはお楽しみ。
それでは、次回作でお会いしましょう!

「「「「まったね〜♪」」」」



P.S. なぜなにナデシコいんゆーえすえーは、htmlに変換するのに結構時間がかかると思います。 気長に待ってて下さいね〜。










代理人の感想

は〜、さっぱりさっぱり。

・・・・いや、ぎゃるげの名前並べられてもわからないので(苦笑)。

 

>その場でリサイクル

・・・・その内、「お前を、殺す」とか言い出しそうですね、このヒト(笑)。

まぁ、相手は全校のアイドルのお嬢さまでなくて冴えない上級生だからいーですけど(爆)