「艦長! 遺跡に取り込まれかけているブローディアから、アキトさんから通信が・・・!」


『ジャンプで逃げようにも、俺のジャンプイメージは全て遺跡にキャンセルされている・・・。
 どうやら、俺個人とお付き合いしたいらしいな・・・』


 ルリの悲鳴に答えるように、アキトの淡々とした声がブリッジに響く。


「何とかならないの!? ルリちゃん、ハッキングは!?」


「・・・そんな事、言われなくてもさっきからやっています!!」


 ピピッ


「ナデシコよりエ、エステバリスが発進! パイロットは不明です!
このコードは・・・ナデシコにあった予備機の内の一つです!」


「えっ!? 一体誰が乗って・・・」


 メグミの報告に一瞬ユリカはパニックに陥りかけるが、そこは名艦長たる所以か、すぐに気持ちを切り替えて考え始める。 
ナデシコが誇るエステバリスパイロット達は全員ブリッジに居る。 ・・・となると、誰が・・・?


「アキトッ!」  「アー君!」


「ほ、北斗ぉ!?(北ちゃん!?)」


 アキトも含め、ブリッジクルー全員が驚きの声をあげる。


「正気か、北斗! ・・・二度とこの世界に戻れなくなるかもしれないんだぞ!?」


「・・・勘違いするな。 お前の居ない世界なんてつまらん。 ・・・それで助けるまでだ」


「アー君、待っててね! きっと枝織が助けるからね!!」


 だが、北斗(枝織)の努力も空しく、それどころか北斗の乗るエステバリスにまで
遺跡は触手を伸ばし始める。 さながら獲物を捕らえたら離さないモウセンゴケの様な感じだ。


「ふん・・・俺まで取り込む気か? 欲深い奴だ・・・」


「北斗! 早くブローディアから離れろ!! お前まで巻き込みたくは無い!!」


「・・・無理だな、俺の方もコントロールを奪われている。
 不本意だが、お前の次元跳躍についていく事になったみたいだな」


 切羽詰った感じのアキトの声に、のんきに自分のエステの状態を告げる北斗。
まるで今日のキャベツの値段はいくら?みたいな感じだ。

 
「・・・よく冷静でいられるな?
 二度と、この世界に帰って来れなくなるかもしれないのに・・・」


「・・・オマエとの戦いに比べたら、な」


「・・・違いない」


 二人とも顔を見合わせると、ふっと薄く笑う。 まあ、苦笑交じりではあったが・・・。


『しょ〜がない、あたし達もアキト兄につきあうよ!』


『僕達もお供するよ、アキト兄』


 ディアとブロスの二人(?)のAIも開き直ったらしい。
ディアはため息をつきながら、ブロスは苦笑しながらアキトに話し掛ける。


「すまないな、二人とも。 俺が不甲斐ないばかりに・・・」


『アキト兄のせいじゃないって! 大丈夫、何とかなるよ!』×2


「何とかなる、じゃありません! アキトさん、どうしても駄目なんですか・・・?」


「ごめん、ルリちゃん・・・でも、俺は必ず帰ってくる。 ナデシコは、俺にとって帰る場所だ!!』


『アキト兄! ジャンプが始まったよ!!』


 ディアからジャンプが始まったという声を聞き、ブリッジに居るナデシコクルーを見渡す。
深く、そして透き通った笑顔と共に。


「それじゃ、みんな元気で・・・」


「アキト(さん・くん)!!」×クルー全員


 その笑顔に、誰もが息を飲む。 女性クルーは涙でもう前が良く見えなかった。


『最後の別れは済ませたか? ・・・ジャンプ先で決着をつけるぞ、アキト』


『アー君、枝織と一緒に遊んでくれる?』


『・・・望むところだ、二人とも』


 カッ!!


 その通信を最後に、ブローディアと北斗を乗せたエステは、ボソンジャンプ特有の七色の光とともに消え去っていた。


「アキト(さん・くん)・・・」×全員



機動戦艦ナデシコ・Next Generation
思い出を、あなたと共に
Album Number 00・終わりと始まりが交わる場所
- The place at which the end and beginning cross -






「こ、ここは・・・? たしか、遺跡のジャンプに巻き込まれて・・・って、北斗!? 枝織ちゃん!?」


 アキトが気がついた時、アキトは何も無い空間に一人倒れていた。
一緒に跳んだはずの北斗の姿が無い。 もちろん、ブローディアもだ。


「とりあえず・・・二人(?)を探さないと・・・」


 手をついて辺りを見回すアキト。 完全な虚無空間らしく、音も光もない。
夜目には自信があるアキトだが、さすがのアキトも虚無空間には勝てないらしく、
情けないカッコだが手探りで辺りを調べ始める。


 ・・・むにゅ。


「・・・へっ?」


「んんっ・・・どこを触っている、アキト(照)」 「わーっ、アー君てば大胆・・・(ポッ)」


 ・・・お約束どおり、アキトの手は北斗の胸の上にあった。 ・・・ベタすぎな展開である。


「あっ!? こ、これはそのっ!!」


 慌てて弁解を始めるアキトだが、その顔は良く熟れたトマトの様に真っ赤だ。
まあ、そういう北斗(枝織)の顔も同様に真っ赤だったりする。
・・・北斗は、アビリティ『恥じらい』を覚えた!(笑)


 アビリティ『恥じらい』 − 頬を赤くして対象を魅了するアビリティである。 
普段そういうしぐさをしない人がこのアビリティを使うと効果絶大!(爆)


「ゴホン・・・。 と、とにかくここが何処なのか確かめないと」


「そうだな(残念だ、このまま最後までいっても良かったのに)」

『その必要は無いよ』


「「・・・え?」」


 明かり替わりに昴氣を体に灯して辺りを探索しようとしたアキトと北斗の二人だが(笑)、
突然聞こえてきた声に身構える。 ・・・しかし、僕は北斗さんの最後のセリフが気になるよ。


『そんなに身構えなくたって悪さなんかしないよ。 始めましてかな、二人とも。
 僕は遺跡のメインAI・・・管理人みたいなものかな?
 ・・・まだ名前は無いんだけどね、ヨロシクッ♪』


「オ、オモイカネみたいだ・・・」


 余りにも場違いな明るい遺跡の中枢の自己紹介に、思わずオモイカネの名前が口に出てくるアキト。


『そりゃあそうさ。 何せ僕はオモイカネシリーズのオリジナルなんだもの。
 ちなみに、ここは君達の世界と違う世界の全てが交わる場所・・・。
 歴史の交差点みたいなものさ。 君達のやってきた事は、全て見ていたよ』


「で? その遺跡のメインAIが俺達に何の様だ? ・・・何時まで呆けてるアキト、しっかりせんか」


 余りにも話の内容がブッ飛んでいるため、脳がフリーズしてしまったアキトに変わり、
北斗がしなくてはならないもっともな事を尋ねる。 
アキトに比べて、北斗にはまだまだ余裕があるらしい。 ・・・タフだな、北斗。


『おっと、話が逸れたね。 じゃあ、本題に入ろうか。
 ・・・アキト、君には感謝してるよ。 二度も世界を救ってくれたからね。
 僕のせいで大きな戦争が二回も起きちゃったし、君達に迷惑をかけたからね。
 君達二人には平和で普通の生活を営んで欲しいから・・・違う世界の君達と融合させる。
 これが、僕のできる最初で最後の贈り物さ』


「・・・俺も、なのか?」


 意外そうな顔でいる北斗。 
アキトは分かるとしても、戦うしか能の無い自分まで転生させられるのかが良く分からないからだ。


『北斗、そして枝織。 ・・・たしか君達二人は親から貰うべき愛情を知らないで育ったんだよね。
 だから、君達にも普通の生活を、家族の愛情の素晴らしさを知って欲しいんだ』


「・・・それはありがたいけど、俺には・・・」


『・・・ナデシコの事かい? 大丈夫、僕が何とかしておくよ。
 それに、こんな事を言うのもなんだけど、君達二人の存在は、あの世界にとって危険すぎる』


「・・・そうか・・・。 いや、わかってはいたんだが・・・」


『ゴメン、力になれなくて。 
 ・・・でも、アキトには争いの無い平和な世界で、休憩が必要だと思うんだ。
 とくに、アキトは女難に悩まされていたみたいだからね・・・(苦笑)』


 アキトの言葉に、遺跡がすまなそうに答える。
そりゃあ、素手で機動兵器と対等に戦えるのはこの世界では何処を探したって
アキトと北斗の二人しかいないだろう。


 唯一勝てるとしたら、某中○人民○和国の○行者ぐらいだろう(笑)。
・・・もちろん、違う意味でだが(爆)。 あれに戦いを挑んだやつは、精神を疑うよ。


『アキトの乗っていた機動兵器のAIの二人も人間に転生させるよ。
 彼らには、いい勉強になるんじゃないかな?』


 遺跡がそこまで言った時、アキトと北斗は自分の体が虹色に輝いているのに気がついた。
ボソンジャンプが始まった証拠だ。


『・・・本当にゴメン、力になれなくて。 でも、今度だけはいい人生を歩んでよ、二人とも・・』


 その言葉をアキト達が理解した時、彼らの姿は眩しい光と共に消え去っていた・・・。


                                        

                                         To be Continued...






後書き




 お久しぶりです、緊張感高まるアメリカよりExcaliberです。
NATTOに所属してるんだから、北斗×アキトSSを書かねば!と一念発起したというわけです。


「・・・お前、このお話で完璧にTA同盟を敵に回したぞ(汗)。
 3M(無茶・無理・無謀の略(笑))はしない主義じゃなかったのか?」


 ・・・やっぱりそう思う?(汗) でも、これだけは譲れないね。
昔掲示板で北斗×アキトで学園物をやるってカキコしたしね。
前から北斗×アキトSSは書いてみたかったんだ。 緑麗さんのSSに触発されてね。
う〜ん、今までみたいにギャグじゃないし、おまけにキャラが少ないから書きにくい〜(汗)。


「それはただ単にオマエが下手なだけだろ」


 ・・・そうだけどさ。
ちなみに始まり方が緑麗さんと似てますけど、ちゃんと緑麗さんから許可は取ってあります。
緑麗さん、どうもありがとうございます。
 そして涼水夢さん、レスのカキコ出来なくてすみませんです(汗)


「・・・随分と楽しそうですね、Excaliber・・・。
 よくも前回、スパイダーベノムで麻痺させてくれましたね・・・(怒)」 ←彼方より・・・最終話後書きを参照のこと 


「TA同盟全員を敵に回したのに、随分と余裕だね〜(怒)」


 ・・・妖精と小さき妖精。 ・・・フッ(ニヤリ)。



「「何がおかしい(の/ですか)!?(激怒)」」


 二人の時代は終わったって事だ。
・・・これからは、北斗×アキトSSの時代なんだよっ!!(ニヤリ)  
だから、TA同盟の人達はアキト達の敵として出てくるだろう(激ニヤリ)。
ちなみに、舞歌さん、イネスさん、エリナさん、金と銀の糸姉妹の五人はお気に入りだから、
美味しいポジションは確定だな。


「え、Excaliberの、く、口調が変わった!?」


「しかも一人称が『僕』から『俺』になってるよ、ルリ!?」


 ふ・・・普段出ているExcaliberは俺の表の人格にすぎん。
今の俺は・・・NATTO構成員下っ端のBig Dipperだ!!
ちなみにBig Dipperの意味は英和辞書を使えばすぐに分かるぞ! さあ、急いでひいてみよう!





 二重人格という衝撃の事実が明らかになったExcaliber、いや、Big Dipper。  ←別に衝撃でもない
ヤツの真の目的とは一体・・・?  ←北斗×アキトSSを書くだけだってば





 おまけ・・・というか、舞台裏





『・・・どうやら、無事にジャンプできたみたいだね・・・。 よかったよかった』


「でもさ、何でアキト兄達を別世界へジャンプさせたの?」


「そうだよ〜。 別に必要ないんじゃないかな〜?」


『あ、ディアとブロスの二人はまだ送ってなかったんだっけ。
 それなんだけど、あの二人が僕に関わらなければ、どういう風に人生を歩んでいたかが知りたいだけなんだ」


「「ふ〜ん」」


『さて、アキト達は何処へ飛んだのかな? 実はあまり考えないで送っちゃったんだよ。 大丈夫かな?』


「「・・・テキトーにやってたんかい、オマエ」」


『そ、そんなわけないじゃない、アハハ・・・(汗)。 えーと・・・って、げッ!!』


「「どうしたの?」」


『これから戦いが起こる世界に送っちゃったみたいだ、はは・・・(汗)。 ま、何とかなるか、あの二人なら』


「「ならないって!!(汗)」」


『アキト、そして北斗。 君達二人ならこの困難を乗り越えていけると信じているよ・・・(遠い目)』


「「ごまかすなぁ!!(怒)」」


『・・・さて、君達も送らないとね。 アキト達の事、頼んだよ・・・』


「「こらっ、まだ話は終わって・・・!!」」


 ブンッ!! ← ジャンプさせた音


 ・・・これが、アキト達がジャンプさせられた舞台裏だったのである。
随分といい加減な始まり方だが、とにかく物語は始まったばかりだ。
二人の繰り広げる普通な生活、そして新たな世界での戦いとは・・・?

 

 

 

 

代理人の感想

 

いや普通な生活じゃないし。

 

そもそも、あの二人と同盟面子がいる時点で普通にはなりえないでしょう(笑)。

 

 

 

 

追伸

 

Excaliberさん、ひょっとして新宿でせんべい屋か何かやってらっしゃいます(爆)?