「今日は、呑気に曲聞いてるヒマないかな…?
 じゃあ、母さんのダリアは俺に任せて、父さん達はナデシコの護衛にまわって」

 

「…大丈夫なのか、マイト?」

 

「大丈夫大丈夫、これでも俺は〔漆黒の戦神〕、テンカワ・アキトの息子なんだよ?」

 

 心配そうに尋ねるアキトに、あっけらかんとマイトは答える。

 

「じゃ、いってきます!」

 

 そしてその一言を残し、マイトはブ−スタ−をふかして一気にダリアに向かって加速していった…。

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ 時の流れに外伝
ナデシコであった、本当に怖い話Vol.06.
未来より来たりし災厄、あるいは幸せの予兆 − その2 −
明星のワルキュ−レ Bパート

 

 

 

 

 

 

『…お前が新しくナデシコに搬入された機動兵器のパイロットか。
 …楽しめそうだな』

 

「…初めまして、かな。 俺の名前はマイト。 テンカワ・マイトだ」

 

 宇宙空間にポッカリ浮かんだダリアの100m手前で、ホワイトエンペラ−を制止させ、
自己紹介を始めるマイト。
 …緊張感もへったくれも無い。

 

『テンカワ? …アキトの弟か?』

 

「残念! テンカワはテンカワでも、未来のアンタの息子だよっ!!」

 

 その科白と同時に、激しい機動戦を開始する二人。

 

『…面白い事を。 俺とアキトの間に、お前みたいな奴が出来るというのか?』

 

「信じる信じないは、母さんの勝手さ。 でも、現に俺はここにいる」

 

 そんな穏やかな科白とは裏腹に、互いに凄まじい機動戦を繰り広げる二人。
そして今度は、DFSで切り合う。
 DFSとDFSがぶつかり合うとき、彼らに凄まじい衝撃が襲う。

 

『…なかなか、楽しませてくれるな』

 

「そりゃ、母さんの息子だからね。 …悪いけど、そろそろケリをつけさせてもらうよ」

 

『そうだな… 』

 

 二人がそう言うと同時に、ダリアは羅刹招来状態へ。
 だが、マイトはまだ何もしない。

 

「…まさか、母さんと戦うとは思ってもみなかったよ。
 来いっ、サイクロンッ! ア−マ−ドモ−ドへ!!」

 

〔おっしゃ! 待ってました!!〕

 

 ナデシコからガイアカスタム、サイクロンが飛来、変形し、
白き皇帝の身を守る鎧となっていく。

 

「いくぞ、スコット、シルビア! オメガ・バ−スト、スタ−ト!!」

 

〔おうっ!〕 〔はいっ!〕

 

『!?』

 

 マイトがそう叫んだ瞬間、ホワイトエンペラ−の背後にある三対の
機械的フォルムを持つ翼が開き、それぞれの翼からビ−ム状の翼が二枚づつ…
計十二枚現れる。 ちょうど、十二枚の翼を持つ堕天使ルシファルみたいな感じだ。

 

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

『くっ!』

 

 信じられないほどの加速で一気にダリアに肉薄し、DFSを振るうマイト。
慌てて回避行動に出る北斗だが、マイトの斬撃が一瞬早く、ダリアの右腕を切り飛ばした。

 

『ちっ…』

 

「勝負あり、かな? …そうそう、母さんに渡す物があるんだ」

 

『…?』

 

「マトイから…母さんの未来の娘から伝言を頼まれてる。 今、射出するよ」

 

 パシュッ

 

 カプセルに包まれたディスクが、ダリアに向かって飛んでいく。

 

『…ふん。 俺の未来の娘、か…』

 

 そのカプセルを、残った左手で大事そうに掴むダリア。

 

『楽しませてくれた礼だ。
 今、ナデシコに何人かネズミが紛れ込んでいる』

 

「…! …何だって?」

 

『…早く行け』

 

 そう呟き、ダリア…北斗はブ−スタ−を蒸かし宇宙の彼方へと消えていった。

 

「…どうする…?」

 

 腕を組んで、考え始めるマイト。

 

〔(行けよ、マイト〕

 

〔そうよ、みんなが心配なんでしょう?〕

 

「…わかった、ここは任せるよ、二人とも。
 味方にさえ攻撃しなければ、好き勝手にやってくれたっていいぞ」

 

〔〔OK!〕〕

 

 スコット、シルビアが答えると同時に、マイトはナデシコへ向けてジャンプしていた。

 

〔いくわよっ、スコット! 〔チャリオット・モ−ド〕へ!!〕

 

〔了解、シルちゃんっ! サイクロンッ、〔チャリオット・モ−ド〕へ!!〕

 

 その瞬間、ホワイトエンペラ−に装着されていたサイクロンはいったん分離し、
また新たに合体し直す。
 …そこには、両肩に120ミリカノン二門づつ、両手に40ミリガトリングガン各二門、
両腰にそれぞれグラビティ・ランチャ−、そして両足にミサイルポッドという完全武装の機動兵器…
ホワイトエンペラ−・チャリオット(古代ローマの戦車という意味)モ−ドの姿があった。

 

〔いくわよっ!!〕 〔いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!〕

 

 そしてスコットとシルビアの二人は、怒濤とも言える攻撃を無人兵器に向けて開始した…。

 

 ここはナデシコブリッジ。 時間はちょっと遡る。

 

「すごい…。 北斗と対等に戦ってるなんて…」

 

「どっちかっていうと、お兄ちゃんの方が押してるかな?」

 

 ユリカの感嘆の科白に、胸を張って答えるカスミ。

 

「さすが、アキトさんと私の息子ですね」

 

「ちょっとルリ! だからアキトはあんたのモノじゃないって…」

 

 ドゴ−ンッ!!

 

「!?」

 

「きゃっ!?」

 

「…ここまで無防備とは…。
 機動戦艦ナデシコ、恐れるにたらず…。
 この娘の命惜しくば、降伏してもらおうか…」

 

 ブリッジのドアを吹っ飛ばして侵入してきたのは、編み傘を被った連中だった。
そして、その内の一人がアズサの首に匕首(短い刀)を当てている。
どれがどれだか分かり難いので、便宜上編み傘A,B,C…という風にしよう。

 

「…わかりました。 …降伏しましょう…」

 

 唇を噛みながら、仕方無くそれを飲み込むユリカ。

 

「…マスタ−キ−をよこせ。 …そこの小娘!」

 

「ほえ? ぼ、ボク!?」

 

 突然指差され、びっくりしているイ−ナ。

 

「お主がマスタ−キ−をここまで持ってこい。 いいな!!」

 

「…」

 

 取り合えず命令に従い、ユリカの元に歩いていくイ−ナ。

 

「…マスタ−キ−、渡さないでいいよ(ヒソヒソ)」

 

「で、でも…(ヒソヒソ)」

 

「取り合えず、渡すフリだけして。 大丈夫、ボクにまかせて!!(ヒソヒソ)」

 

 困惑しているユリカに、ウィンク一つで答えるイ−ナ。
そして、そのまま彼らの方へ歩いていく。

 

「……」

 

「ふむ。 そのままこっちに…!?」

 

 ズギュゥゥゥゥンッ!!

 

 イ−ナからマスタ−キ−を受け取ろうとした編み傘Aは、最後まで言葉を紡ぐことができたなかった。

 

 …なぜなら、イ−ナが懐に隠し持っていた拳銃で彼を撃ったからだ。
そしてその玉は、狙い違わず男の胸に吸い込まれていく。 崩れ落ちる、編み傘A。

 

「なっ…!?」

 

 余りの出来事に、慣れているはずの彼らも一瞬反応が遅れる。
まさか、こんな年端のいかない少女が、四十四口径のマグナム(オ−トマチック)
を抜き打ちで撃ったとは思えなかったからだ。

 

「大丈夫だよ、暴徒鎮圧用の特殊硬化ゴム弾だから。 一応、生きてるよ」

 

 …いくらゴム弾でも、当たったら目茶苦茶痛いぞ、普通。

 

「うそぉっ!!?」

 

 また、それはカスミ達を除くナデシコクル−も同様だ。
まあ、それはともかく…話を進めよう。

 

 突然のイ−ナの反撃に、一瞬反応が遅れる編み傘連中。
そして、その隙を見逃すアズサではない。

 

「いつまで!」

 

 ゴンッ!

 

「私の!」

 

 ガスッ!

 

「体に!」

 

 ベキッ!

 

「さわってるのよっ!!」

 

 ドゴシャッ!!

 

「ぐはっ!?」

 

 しゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…… ← 煙を吹き上げている音。

 

 凄まじい音を立て、床に沈む編み傘B。

 

「私に触っていいのは、お父さんとマイト兄さんだけなんだから!!(ポッ)」

 

「す、すげ−…」

 

 最後のアズサの科白はおいといて、感心しているナオ。
ちなみに、彼女が先程何をやったかというと…

 

1. 羽交い締めされた状態から、人中(鼻と上唇の間にある人体の弱点の一つ。
  ここに衝撃をくらうと、一時的に神経伝達が鈍り動けなくなる)に頭突き。
2. 怯んだ瞬間、水月(人体急所の一つ。 要するに、鳩尾)に肘鉄。
3. 羽交い締めが解けた瞬間、左足を軸に鋭い回し蹴り。
4. 両手を組んで、頭におもいっきり叩きつける(要するに、ハンマ−ナックル)。

 

という風になる。 おわかり戴けたでしょうか?

 

「あらあら、二人ともやるじゃないですか。 では、私もやらないと駄目ですね」

 

と、今まで黙っていたメイナが、腰に付いているリレ−のバトンの様な棒を取り外した。

 

「ポチッと」

 

 そして、そのバトンに付いている赤いスイッチを押すと…

 

カシャ! カシャカシャカシャカシャッ!!

 

という音を立てて、みるみるうちに彼女と同じくらいの長さの棒になる。

 

「…私のお相手をしてくれる方は、どなたかおりませんか?」

 

 ノンビリとした口調で、編み傘連中を挑発するメイナ。

 

「…小娘が…なめるなぁッ!!」

 

 一気に肉薄し、木連式抜刀術で切り裂こうとする編み傘C。
その瞬間、誰もが切り裂かれたメイナを想像した。 だがしかし…。

 

 キィンッ!!

 

「あらあら、こんな腕で私を倒そうなんて、十年早いですね」

 

「な…!?」

 

 そこには、先程の棒で刀を弾いたメイナの姿があった。

 

「それじゃ、今度は私の番ですね? …はっ!」

 

 それと同時に、飛び上がるメイナ。
 何時の間にか、彼女の持っている棒には真っ赤な刃が出来ていた。

 

「テンカワ流槍術・奥義! 風竜旋空斬!!」

 

 そう叫ぶと同時に、槍を頭上で勢いよく回転させるメイナ。

 

その瞬間、彼女を中心にして赤い竜巻が発生する!

 

「な、なにっ!?」

 

「…行け」

 

 ゴォォォォォォォォォォッ!!

 

 メイナより生まれし赤い竜は、狙い違わず編み傘Cを飲み込む!
そして赤い竜が去った時…そこには、赤フン一丁の(笑)男が倒れていただけだった。

 

「ど、どうやってあんな凄い非常識な技を!?」

 

 ミナトさんが納得出来ない、という様に叫ぶ。

 

「「よろしい、説明しましょう!!」」

 

と説明と聞いて出てくるのがお約束の、説明お姉さんコンビ…
イネス・フレサンジュとその娘、テンカワ・ヒサメのコンビだ。

 

「久し振りに長い科白が言えるわね。 それでは、説明しましょう。
 竜巻というのは、温かい空気が冷たい空気を巻き込んでいく現象の事をいいます。
 では、どうやって彼女、メイナちゃんが竜巻を発生させたかというと…」

 

という所で、隣にいるヒサメを見る。

 

「はい、ここからは私、ヒサメが説明させてもらいます。
 メイナ姉さまの持っているフィ−ルドランサ−が発する熱で温まった空気に、
 槍を回転させる事で冷たい空気を送り込み、人工的に竜巻を発生させているんです」

 

「わかったような、わからないような…」

 

 恐らく、ブリッジにいる過半数の人が言っている意味を理解していないだろう。

 

「…油断するな。 こやつら、なかなか強い!」

 

「…今頃気がついたのか、愚か者が」

 

「「「!!!」」」

 

 何時の間に背後に回り込んだのか、残りの編み傘D,E,Fの背後にいるマトイ。
腕を組んで、不敵に笑っている。

 

「…久し振りの実戦か。 体が鈍ってなければいいが…」

 

「「「愚か者はお主だ! 武器も持たずに何が出来る!!」」」

 

 マトイの恰好を見て、嘲笑する編み傘三人。
 そう、マトイは剣道着を着てこそいるが、武器は何一つ持っていなかった。

 

(さっき、ナオに白刃取りされた時、刀をナオに取り上げられた)

 

「…そんなに私の武器が見たければ、望み通り見せてやろう!!」

 

 フワリ、と風が無いのに、マトイのポニ−テ−ルがユラユラと揺れる。

 

「…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

 

 ブンッ…

 

 マトイの体を、緑色の光が包み込んでいく。

 

「うそっ!?」

 

「ま、まさか…」

 

「あ、アキトや北斗とおんなじ…」

 

「ぶ、武羅威…?」

 

 ナデシコクル−は驚きで声も出ない。
が、そんな事はマトイにとっては関係ない事である。

 

 そのうち、マトイの体を包んでいた光は、マトイの左手に収束していく。

 

「……はっ!!」

 

 パシンッ!!

 

 自分の右拳を、左掌に打ちつけるマトイ。
 そして、間髪容れずに右手を左手から引き離す!

 

 ブオンッ!!

 

 …という鈍い音を立て、マトイの右手には刀が握られていた。

 

「ど、どうやって刀を…」

 

「これはいくらなんでも、聡明な私でも説明出来ないわね…」

 

 ルリの科白に、悔しそうに答えるイネス。
 説明できないのが、よっぽど悔しいらしい。

 

「はい。 じゃ、また私、ヒサメが説明しましょう。
 マトイ姉さまは昴氣を実体化、物質化出来るんです。 
 マトイ姉さまが望めば何にでも…そう、刀でも槍にもなるんですよ」

 

「そ、そうなの…(汗)」

 

 余りにも無茶苦茶な話に、驚きを通り越して呆れるクル−一同。
 …流石、アキトと北斗の娘だと感心していたりする。

 

「…テンカワ・マトイ、参る」

 

 ブンッ…

 

 何時の間にか小太刀位の刀を二刀流にしているマトイ。
右手は普通に、そして左手は逆手という、一風変わった構えを取っている。

 

「…出るよ…マトイお姉ちゃんの必殺技…!」

 

「そうだね」 「そうですね」 「そうね」 「そのようですね」

 

 テンカワ姉妹達が呟いた瞬間、マトイの姿が風となる。
余りにも高速移動したため、人間の目には捕らえきれないからだ。

 

「テンカワ流剣術・二刀流奥義!
 武神舞王剣・連斬!!!」

 

 カッ!!

 

 辺りに眩しい光が満ちるが、それも一瞬の事。
マトイの姿が現れたとき、編み傘Dはまるでボロギレと化していたのだ!

 

「な、何が起きたのッ!?」

 

 状況が把握出来ないユリカは、近くにいるカスミ達に説明を求める。
一瞬、嬉しそうな顔をしたヒサメだが、他のテンカワ姉妹に睨まれて大人しくなった。
…どうやら、出番ありすぎと無言の圧力を彼女達から受けたようだ(笑)。

 

「何って…ただ単に切っただけだよ?
 …マトイお姉ちゃん、何回切ったの?」

 

「…40回だ。 これでも手を抜いたのだが…」

 

 チラリ、と自分の切った相手を見るマトイ。

 

「…いまいち、加減が足りなかったようだな」

 

 そして、残り二人に向いて構え直す。

 

「さて、残りは…。 …そうだな、兄上にまかせるか」

 

 マトイが呟いた瞬間、虹色の光を纏ったマイトが、ボソンジャンプで直接ブリッジにやって来る。

 

「ありゃりゃ、これはずいぶんとハデにやったな、四人とも。
 もうちょっと、加減した方がいいんじゃないか?」

 

 スタッと着地し、ずり落ちたメガネを直しながら、マイトがその様子に呆れた様に呟いていた。

 

 まず、イ−ナがマグナムで撃ち倒した編み傘A、次にアズサが殴り倒した編み傘B、
メイナが風竜旋空斬で倒したフンドシ一丁の編み傘C、そして最後に
マトイが武神舞王剣・連斬で切り倒したボロキレこと編み傘Dが、そこにいた。

 

 …しかも、全員息をしている(!)。

 

 …彼女達が、如何に自分達より優れているか、まざまざと見せつけられた編み傘六人衆だった。

 

「さて、みんなに手を出してくれた礼だ。 …苦しまずに、一撃で葬ってやるよ」

 

 ブォン…。

 

 予備動作もなしに、銀色の昴氣を実体化させた刀を青眼に構えるマイト。

 

「…かかってこいよ」

 

「「キィェェェェェェェェェェェェェェェッ!!」」

 

 二人同時に切りかかる、編み傘E&F。 一人は切り倒されても、
その内のもう一人がマイトを仕留められるという、苦肉の策である。

 

「…いい判断だけどね…」

 

 自分に迫り来る編み傘E&Fの刀を横目で見ながら、ゆっくりと刀を振り上げ、
マイトが静かに言う。

 

「けど、もう遅いんだよ!!」

 

 パチッ、パチパチパチッ…。

 

 マイトの持っている刀が、徐々に帯電していく。

 

「テンカワ一刀流・最終奥義!
 ・・・次元断裂剣ッ!!」

 

 グゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!

 

 刀を振るった瞬間、空間に音を立てて裂け目が出来る!

 

「「な、なにぃ!!?」」

 

 異変に気付いた編み傘二人だが、気付いた時にはもう遅かった。

 

「「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!? す、吸い込まれる!?」」

 

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……。

 

 マイトが刀を収めたとき、編み傘二人の姿は、何処にもなかった。

 

「…安心しろ。 何処かに出られるさ、多分。 …ん?」

 

 トコトコトコ、と黒い空間の裂け目に向かい、歩き始めるマイト。

 

 ズボッ!

 

と思ったら、いきなり腕を裂け目に突っ込むマイト。

 

「…ウリバタケさんとアカツキさん、ジュンさんも紛れ込んでたけど…?」

 

 そう、前前回で彼らはユリカ達の発生させたブラックホ−ルに飲み込まれ、
行方不明になっていたのだ(笑)!!

 

 ま、何はともあれ、よかったね三人とも。

 

「そういえば、そんな事もあったね(わね、ましたね)」 ← クル−全員

 

 すっかり存在を忘れ去られているこの三人。
 マイトがこの技を放たなかったら、恐らく一生生きて出てこれなかっただろう。

 

 …かなりの幸運の持ち主である。

 

「…俺、ここに来たの間違いだったかな…(汗)」

 

 頭に大きな汗を浮かべたマイトが、誰ともなしに呟いた。

 

 

 

「…って事があったんですよ、アキトさん」

 

「へぇ−…」

 

 ブリッジで、事の顛末をルリから聞いているアキトの姿があった。

 

「…そういえば、その編み笠連中はどこへ行ったんだい?」

 

「それですが…イネスさんとヒサメに連行されていきました。
  恐らく、二人とも人体実験の真っ最中でしょう」

 

「…そう」

 

「…はい」

 

「「……」」

 

 一瞬の間。

 

「…ルリちゃん、オレ、風呂入ってくるよ。 汗でドロドロだし」

 

「…はい、お疲れさまでした、アキトさん…」

 

  イネスとヒサメの凶行を、忘却の彼方へと置き去りにしてナデシコ大浴場へと向かうアキト。

 

 …内心、今回はそんなに不幸じゃなかったということを喜びながら。

 

 しかし、そうは問屋が卸さない。 君には、もっと不幸になってもらわないと(ニヤリ)。

 

「お父さん、一緒にお風呂入らない?(ポッ)」

 

「おとーさん、オフロはいろー♪」

 

「そうですね、私も汗をかきましたし」

 

「そうだな」

 

 ガシッ×4

 

「へっ?」

 

  いつの間にやって来ていたのか、未来のテンカワ家姉妹がアキトの背後に回り込み。
 そして間髪容れずに抱きついてきた。
 マトイとアズサがそれぞれ右腕と左腕、イーナはアキトの腰、
そしてメイナはアキトの首に手を回している。

 

「あーっ! お姉ちゃん達ずるいっ!!」

 

「…抜け駆けはいけませんよ、姉さま達…」

 

 ガシッ×2

 

「ひ、ヒサメちゃん? 医務室にいたんじゃ?」

 

「ジャンプで飛んできたんです!」

 

「パパッ! 私も一緒に入りたい!!」

 

「……(大汗)」

 

 本来なら、美少女六人に抱きつかれて、そのうえ一緒にオフロに入ってなんて言われたら、
(男にとっては)嬉しい限りなのだが…アキトにとっては地獄への旅立ちの狼煙でしかなかった(笑)。

 

「…フフフ。 アキトさん、モテモテですね…」

 

「全くね!」 ← 他のTA同盟の方々。

 

「……(滝汗)」

 

 恐怖で足がすくんで動けないアキト。
 哀れアキト、このまま総勢二十一人(!)の女性の毒牙に掛かってしまうのか!?
 (普通反対じゃん(笑))

 

「父さん、逃げるんだっ!!」

 

 ボボンッ!

 

「きゃっ!?」

 

「なにこれ!?」

 

「え、煙幕…!?」

 

 アキトを中心に、白い煙が広がっていく。
…そして煙が晴れた時、アキトの姿は当然なかった。

 

「あっ! 逃げたっ!」

 

「みんなっ、あそこ!!」

 

とユリカの指差す先には、二人肩を並べて走るアキトとマイトの姿があった。

 

「…逃がすものですかっ! みなさん、追いかけますよ!!」

 

「もちろんっ!!」

 

 ズドドドドドドドドドドドド……。

 

 逃げるアキト、マイトの二人を追いかけて、地響きを立てながら走るTA同盟の方々。
 周りへの迷惑なんて、お構いなしである。

 

「「何でこうなるんだーっ!?」」

 

 …自分で蒔いた種でしょうが。 自分で刈り取ってくれ。

 

「お前が蒔いたんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 …ナデシコに、(端から見れば幸せな)不幸な青年二人の絶叫が響きわたった…。

 

 …結局彼らは、これから二時間も鬼ごっこをしたらしい。
 そしてそのあと、ルリ達の罠にはまって無理矢理風呂に入れられたらしい…。

 

 

 

                                                                       Fin

 

 

 

 

 お・ま・け♪

 

 

「北ちゃ〜ん、ゴハンだよ〜」

 

「……」

 

 ここは某木連戦艦内。 北斗の返事が返ってこない事を不思議に思った零夜が、
北斗の部屋に聞き耳立ててみると…

 

「…俺とアキトの子供、か…。 …楽しみだ」

 

「!!!???」

 

という北斗の、端から聞けば100%誤解を招く呟きを聞き、固まる零夜。

 

『そんな…嘘だよね…北ちゃん…』

 

 …北斗の名誉のために言っておくと、彼女は自分と対等に戦える、自分の未来の
息子と娘(さっき、マトイの自己紹介ディスクを見た)に、純粋な興味を持っただけなのだが…。

 

 そんな事、零夜の知ったこっちゃない。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!
 ふ、不潔よ北ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!(泣)」

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドド……。

 

 泣き声を上げながら、戦艦内を暴走する零夜。

 

「どうしたんだ、零夜ちゃん? 泣いたりなんか…」

 

 ドゴッ!!

 

 サブロウタが科白を言い終わらぬうちに、走り抜きざま零夜の鉄拳がサブロウタを襲う。

 

「お、俺が何をしたっていうんだ…(ガク)」

 

 そんなサブロウタの科白は、誰にも聞き取られることなく、虚空へと消えていった。
 …最後の最後まで不幸なのね、お前…(呆れ)。

 

 

 

 

 

 

 後書き

 

 

「ふーっ、いいお湯だったー(ほこほこ)。
 …やっぱり、お風呂上がりにはフルーツ牛乳だよね♪」

 

「…何時まで落ち込んでいるんですか、兄さま? もう、後書きなんですよ?」

 

「お前らのせいだろうが…(涙)。 …あれ? Excaliberのヤツは何処にいった?」

 

「Excaliberなら、日本に帰る準備とかで忙しいから、来てないよ」

 

「ということで、司会進行はこのテンカワ・ヒサメが務めさせていただきます。
 メモによると・・・各人の特技紹介ですね」

 

「マトイは剣術、アズサは格闘術、イーナは銃、そしてメイナは槍術か…。
 テンカワ家でも、最強の顔ぶれだな」

 

「でもおにーちゃん、ボクの設定はちょっと無理があるよ。
 普通マグナムなんて女の子は扱えないよ」

 

「そうですね、成人男性でも、一発撃つと掌が痛くて駄目だっていう話ですし。
 …これは、Excaliberの体験談から来ているようですが。
 …銃なんて撃つ物じゃない、と思ったようですね」

 

「まあ、漫画だからね」

 

「マトイお姉ちゃんの技、『武神舞王剣・連斬』もすごいよね。人間じゃ絶対出来ない技だし」

 

「…それをいうなら、メイナ姉上の『風竜旋空斬』の方も不可能だと思うのだが・・・」

 

「そういえば、そうですね。 あの技を使っているとき、私性格変わってましたし」

 

「でも、一番無理なのはマイト兄さんの『次元断裂剣』よね。
 空間に穴を開けちゃうわけだから」

 

「…文句はExcaliberに言ってくれ。 …おっと、そろそろ時間だ。
 次回作は……

 

 ラブひな外伝
 ひなた荘であった、本当に怖い話Vol.02
 クリスマス大作戦 イン ひなた荘

 

 だって。 みんな、楽しみにしてて下さい」

 

「でも、どうしていきなりクリスマスなの〜? まだ、十一月だよ?」

 

「本当は、ハロウィーンを題材にしようかなって思ったらしいんだけど、
 日本に帰っちゃうからしばらく書けないし、しかも時季外れだから
 クリスマスにしたんだって、イーナ」

 

「そうなの、アズサおねーちゃん?」

 

「ああ、マガジン本誌でも、ハロウィーンをやったみたいだしな」

 

「あらあら、無計画ですねぇ」

 

「メイナ姉さま、Excaliberは気分屋ですから。 今回に限ったことではありませんよ」

 

「そうそう、テンカワシスターズが全員そろったら、メカなども含めた
 設定集を作るって言ってたよ、お兄ちゃん」

 

「一体、何時になる事やら」

 

「マイト兄さん、そんなこと言っちゃ駄目よ。 一応、あれでも筆者なんだから」

 

「それじゃ、またねー!! 今度は『ラブひな』で会おうねっ!」

 

「…何時の間に入れ替わったんだ、キリン(汗)?」

 

「ヒ・ミ・ツ(はぁと)」

 

 

 

 

管理人の感想

 

ExcaliberさんからSSの投稿です!!

今回は長編ですね〜

しかし、マイト君の姉妹って(笑)

いきなりナオは斬られてるし(爆)

北斗は・・・なんだか大人しいし(核爆)

それとオリキャラのオンパレードでしたね〜

意外なのが既婚者が多い事(苦笑)

それでも、彼等もやはり某組織のメンバーなのでしょうか?

 

では、Excaliberさん投稿、本当に有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この Excaliberさん の名前をクリックして下さいね!!

後、掲示板になら感想を書き易い、と言う方もおられるので。

この掲示板に出来れば感想を書き込んで下さいね!!