「・・・自己紹介からはじめましょうか。
わたしの名は、テンカワ・アイカ。 18歳です。
ミスマル・ユリカ、貴方がわたしの母親です。
また、わたしの体にはアキト父さんの優性遺伝情報が伝わっていますので、
パイロットとしての能力も非常に高いです」
「う−ん、何だかよくわからないけど、とにかくよろしくっ」
差し出されたアイカの手を、嬉しそうに握るユリカ。
流石に親子だけあって、そっくりである(そっくりじゃなかったらかなりヤバイ)。
艶やかな黒髪をトップだけ纏めているというシンプルな髪型だが、不思議と
彼女の容姿とは相まって映えてみえた。
ただ、ユリカが天真爛漫であるのに対し、彼女は冷静沈着そのもの。
・・・アキトのDNAが加わっただけで、こんなにも変わる物なんだろうか・・・?
「次は、あたしの自己紹介ね!
テンカワ・ミチル、14歳!! メグミ・レイナ−ドがあたしのお母さん!!
趣味は、母親譲りの美声を生かしてカラオケで−すっ!
テンカワ家でカラオケの女王といったら、このあたし!
メグミお母さんの仕事を手伝っていて、巷では〔天使の声〕っていわれてるよっ」
「さすが、私とアキトさんの娘。 よろしくねミチルちゃん。
早速だけど、どういう声を出したら男を虜(パシリ)に出来るか教えてあげる」
「うんっ」
・・・自己紹介するなり、メグミの胸に飛び込んできたミチルを抱き止め、
とってもヤバイ事を娘に吹き込むメグミ。
彼女は髪をショ−トにしており、母親譲りのソバカスがチラホラと顔にある。
・・・まあ、親子同士の会話に僕は口出ししません。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「え? ゴメン、なんだって? もう一回言ってくれないかな?」
次の女の子は先天的に色素が薄いのか、純白の髪にアンバ−の瞳。
その純白の長い髪の毛をおダンゴに纏めており、パッと見た目は中華風の少女だ。
そして、最大の特徴は声が非常に小さい事であろう。
「いいよ父さん、俺が通訳するよ。
ミルは凄く声が小さくて、初対面の人には絶対聞き取れないからね。
えっと・・・
〔テンカワ・ミル、16歳です。 父、私の瞳、誰かに似てませんか?〕
だって」
「そうなんだよ、誰かに似てる・・・って、その瞳はっ!?」
答えが、もうすぐそこまで来ているという、もどかしさと戦いながらもアキトは答えを絞り出そうとする。
プシュ−・・・
「ふうっ、やっと酔いがぬけましたね。
まだちょっと頭がフラフラしますけど・・・。
IFS強化体質じゃなかったら、かなりヤバかったですね」
とそこに、いつものナデシコの制服に着替えたルリが
アキトを探しにブリッジに入ってきた。
「そうだ、ルリちゃんに似てるんだ!! やっとわかったよ」
「? ・・・呼びました、アキトさんにマイトさん?」
「「ぬおっ!? び、びっくりした、ルリちゃん(ルリ母さん)」」
いきなり現れたルリに、かなり驚くアキト&マイト。
いきなりの登場がかなり衝撃的だったのか、胸の辺りを押さえている。
「・・・なるほど、先程オモイカネが知らせてくれた事は、これだったんですね。
でも、よく見ると16歳の時の私にそっくりですね、彼女」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「〔そっくりなのはあなたの娘だからです、母〕だって、ルリ母さん」
マイトのその言葉に、思わずガッツポ−ズをとるルリ。
彼女だけ、子供が二人(マイトはルリの卵子をベ−スにして誕生した)いるからだ。
これでまた、他のTA同盟の連中にアドバンテ−ジが出来る訳だ。
「〔趣味は、プログラミングとハッキングです。
少々人見知りがありますが、よろしくお願いします〕だって」
とマイトが通訳し終わると、ペコリとお辞儀するミル。
でも、彼女って家族の誰かと一緒にいないと行動できない様な気が・・・?
次は、ピシッとしたス−ツを着込んでいる黒髪をセミロングにした少女。
人懐っこい笑顔が特徴で、見た目ではキャリアウ−マンみたいだ。
「ええっと、テンカワ・アルナ、17歳です。
私の母はエリナ・キンジョウ・ウォン、母様の後をついで
ネルガルの会長秘書、そして副社長を務めています。
趣味は映画鑑賞です。 改めて、よろしくお願いします」
「やるわね、その歳で会長秘書兼副社長なんて・・・。
で、会長はやっぱり・・・アカツキ?」
ちょっとどもりながら自己紹介するアルナに、賛辞の言葉を掛けるエリナ。
さすがは私の娘、なんて思ってたりする。
「いえ、私達がネルガル重工の株券の60%を所有しているので
ネルガル重工は実質的に”テンカワ重工(笑)”となっています。
カスミとミルに手伝ってもらってますけど、株の買収は私が手掛けました。
会長は兄のマイトです」
「そ、そう。 やるわね・・・(汗)」
自分より優れた経営能力と交渉能力に、内心舌を巻くエリナ。
株券全体の6割の買収に成功するとは・・・。
なぜ、アルナの経営能力と交渉能力が凄いのか?
それは、この人達が説明してくれますよ。
イ〜ネ〜ス〜さ〜ん〜、出番ですよ−。 説明してくださ−い!
ピコッ
「明けましておめでとうございます、皆様。
光り輝く新世紀、いかがお過ごしですか? イネス・フレサンジュです。
よろしい、説明しましょ。 今回は株の事についてね。
株券全体のうち、10%を所有すると経営参加権が発生し・・・」
「50%以上所有すると、会社の経営権が発生するわけです・・・って、
何時こちらにいらしたんですか、アイカ姉さま達?」
突然ブリッジに現れるイネスとヒサメの二人のウィンドウ。
さすが親子だけに息の合った説明を嬉しそうに全員にしてくれるが、
ブリッジにいる人達はそんな話なんて聞いちゃいない。
アキト・・・娘達に抱きつかれて困っている。
マイト・・・アキトと同様、妹達に抱きつかれて困っている。
ルリ、ユリカ、メグミ、エリナ・・・アッチの世界に旅立っていきました(汗)。
残された二人・・・リミットゲ−ジ上昇中。 もう少しでリミットブレイク(笑)。
マトイ&ナオ・・・何処から持ってきたのか、座り込んで将棋をやっていたりする。
パチリッ!
「ナオ殿、王手!」
「これは・・・なかなか。 じゃあ、この手はどうだ?」
パチリッ!
「はいはい、何か話が違う方向に言っているから勝手に進ませてもらうわ。
テンカワ・ピュア、18歳。 レイナ・キンジョウ・ウォンが母親です。
母であるレイナと同じ、機械の整備が趣味ね。
後は、ある漫画を読んで〔抜刀術〕にも興味を持っています
目標は、箱の中身を切らずに箱だけを切ること、かな」
と手を鳴らして自分に注目を集めるのは、先程のアルナによく似た少女、ピュアだ。
ただ、身のこなし、足の運び方、視線の運び方から、彼女が優れた剣士であることをアキトは見抜いていた。
「ふ−ん、あなたが私の娘? なかなか気が合いそうね・・・。
でも、何時までアキト君に抱きついているつもり?(怒)」
アキトに抱きついている未来の娘、ピュアにヤキモチを妬いているレイナ。
自分の娘にヤキモチなんか妬くなよ・・・(呆れ)。
「はうう−、わたしの番なのです−。 テンカワ・キャル、11歳なのです−。
好きな事はおとうさんにだっこしてもらうのと、マイトおにいちゃんに
肩車してもらうのと、お菓子を作る事です−」
お次は小学生(実際五年生)くらいのポワ−ンとした女の子、キャル。
短い茶色の髪を、無理矢理ツインテ−ルにしている。
「「「「「誰の子供なの? 私達の中にお母さんいる?」」」」」
噛みつかんばかりにキャルに迫るホウメイガ−ルズの五人。
そのため、キャルはちょっと涙目である。
「うっ・・・み、みんなおかあさんです−(汗)」
「・・・えっ? どういう事?」×5
「え−と、話がややこしくなるから俺が説明するよ。
キャルはサユリ母さん達五人分・・・便宜上ホウメイガ−ルズっていうけど、
DNAを引き継いでいるんだ。 だから、キャルは母さん達全員の才能があるわけ。
特にお菓子作りの才能に関しては、アズサ以上かもしれない」
「・・・手ェ抜いたわね、Excaliber・・・」×5
・・・その件に関してはノ−コメントです。
「・・・じゃあ、この最後の子は誰の子供なの?」
「うわっ!? い、何時の間に・・・」
何時の間にか、ブリッジには無数のウィンドウが開かれている。
代表的な人はミナトさん、プロスさん、シュン提督。
某同盟と某組織の人達、残りのテンカワシスタ−ズが知らない間にブリッジに集まっていた。
・・・話を元に戻そう。 今はこの見知らぬ女の子についてだ。
「ふうっ、やっと私の出番なワケ?」
と、腰に両手をあて、ヤレヤレと息をついている少女。
歳の頃はマイトと同じかちょっと下、栗毛色の長い髪に大きな眼鏡。
・・・そう、どっから見ても完璧なガリ勉少女だ。
「失礼ね! 私の何処がガリ勉少女なのよっ!!」
「・・・誰に言っているのよ、アテナさん・・・」
突然叫び出す少女に、何時の間に厨房からブリッジに現れたアズサが突っ込む。
どうやら、アズサはボソンジャンプでここにやって来たようだ。
「あ、アテナお姉ちゃんも来てたんだ。 どう、初めてボソンジャンプは?」
「そ−ね−。 ・・・初めてボソンジャンプしたけど、ボソンジャンプって便利ね−」
自分達の会話をしているカスミとアテナ。
だから、話が続かなくなるんだってば。 ナオさん、進行役は任せました。
「はいはい。 ・・・で、君はアキトと誰との間に生まれたんだい?」
「・・・あっきれた、普通雰囲気で分からない?
・・・って、眼鏡かけてちゃ分からないわよね。
・・・これでどう?」
ナオの問い掛けに、眼鏡をスッと外す少女(アテナ)。
その途端ナオの顔が驚愕に、ついでマイトの顔が恐怖に歪む。
彼女の顔は東洋人と西洋人の特徴が程よく混ざった顔(要するにハ−フ)で
結構童顔、そして垂れ目だった。
そして、このお話に登場するオリキャラの例に漏れず美少女である。
「ミ、ミリアそっくりだ! ・・・て事はまさか!?」
「やっと気付いたの? 相変わらず鈍いわね、お父さん」
と、ナオにニッコリ笑ってみせるヤガミ・アテナ。
「年齢はマイトと同じで18歳。 取り合えず、今は家事手伝いをやってます。
大学はマイトと一緒に卒業したからね。 趣味はガ−デニングとハ−ブ栽培、
後はマイトをからかって遊ぶ事、かな」
「そんな事はどうでもいいっ!
なんでオマエがここにいるんだっ、アテナッ!!」
「・・・アンタを追いかけて来たに決まってるでしょ?(ギロリ)
大体、私がいないとアンタは何にも出来ないんだから・・・(ニヤリ)」
「ぐっ・・・余計なお世話だっ!」
「なによっ! やる気ッ!?」
グヌヌヌ・・・という効果音がバックに似合いそうな勢いで睨みあう二人。
彼らの間に飛び交う火花が、その睨み合いの激しさを如実に物語っている。
「あ−っ、また始まったよ。 マイトお兄vs.アテナお姉!」
「二人とも、ホントよくやるわね」
「まったく・・・。 ・・・兄上もアテナ先輩も素直じゃないからな・・・」
「そうそう。 お互い素直になればいいのに」
「そうですね」
「・・・・・・(コクコク)」
「あらあら、これがあの二人の愛情表現の仕方みたいですしねぇ」
「でも、もうチョット仲良くした方がいいとボクは思うよ」
「ねえアルナ、どっちが勝つか賭けしない? 賭け賃はアキトお父さんの写真ね」
「いいわね、ピュア姉さん。 私、乗ったわ」
「・・・賭事はやめなさい、二人とも」
「マイトおにいちゃんもアテナおねえちゃんもがんばるです−」
その口喧嘩を止めるわけでもなく、面白そうに観戦しているテンカワ・シスタ−ズ。
ある意味、図太い神経を持った少女達である。
上から順にミチル、アズサ、マトイ、カスミ、ヒサメ、ミル、メイナ、イ−ナ、
ピュア、アルナ、アイカ、そしてキャル。
・・・キャラの書き分けが大変だ。
「じゃあなに、あの二人は恋人同士なの?」
「恋人も何も・・・あの二人は幼馴染みで、許嫁同士なんだよ」
ミナトの問いに、いともあっさり答えるのはイ−ナである。
「ええええええっっっ、許嫁!!!!!?」 → ナデシコクル−全員。特にナオ(笑)。
「本当は、二人ともお互いに好きらしいんですけど・・・。
どうしても素直になれないらしくて・・・」
「・・・まあ、そこがあの二人があの二人である所以だがな」
ヒサメとマトイの溜め息まじりの科白に、ウンウンと頷くテンカワ・シスタ−ズ。
妹達に心配されているマイトって・・・(汗)。
ピコッ
〔は−い、ラブラブカップルはおいといて、あたしも自己紹介ね。
あたしはパヴァ、ブル−マジシャンのメインA・Iやってます。 よろしくね−〕
ブリッジに現れる、もう一つのウィンドウ。
そこには、ピンクの髪に尖った耳(要するにエルフ耳)の女の子が映っていた。
「・・・彼女が、私のサポ−トをしてくれるパヴァ。
カスミがプログラム・コアを作り、ミルが仕上げたA・Iです。
・・・無茶をするのが玉に傷ですが」
淡々とした口調で、パヴァを説明するアイカ。
〔あ、そうだ。 忘れてたけど、もうそろそろ未確認艦隊が見えると思うよ〕
「えっ?」 → ブリッジ要員&ウィンドウの人達全員
「パヴァ、それを早く言いなさいっ!
仕方ありません、ナデシコは今の状態では動けませんし・・・
私達が操船しましょう。 メイナ姉さん、準備はいいですか?
カスミとミル、あなた達はルリお母さんのサポ−トをお願い 」
「ええ、バッチリですよ。 久し振りにやりますね−」
嬉しそうに、指をコキコキ鳴らしながら答えるメイナ。
「りょ−かい」
「・・・・・・(コクリ)」
嬉しそうにIFSシ−トに飛び込むカスミ、ミルの両名。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!
メイナちゃん、さっき君日本酒一升(!?)飲んでなかったか!?」
「大丈夫ですよ」
「そうそう、心配いらないよ。
メイナお姉ちゃんはちょっとやそっとのお酒じゃ酔わないからね。
泡盛(沖縄産のお酒。 とっても強い)くらいを開けないとね」
アキトの叫びに、事も無げに答えるメイナとカスミ。
・・・メイナの肝臓は、一体どういう構造になっているのだろうか?
「アイカお姉ちゃん、識別コ−ド判明したよ!
・・・この時代の、北斗お母さんの乗っている船だよ!!」
こころもち、嬉しそうな声で報告するカスミ。
そして、北斗と聞いて思わずビクリと反応するマトイ。
「何、母上がっ!?」
〔・・・ふん、貴様が俺の未来の娘のマトイか・・・。 楽しめそうだな〕
〔違うでしょ、北ちゃん(汗)。
明けましておめでとうございます、ナデシコのみなさん。
今年もよろしくお願いします〕
物騒な事を言う北斗を、挨拶しながら宥める零夜。
彼女も(いろんな意味で)大変だ。
「・・・で、用件は何でしょうか?
みんなでお正月を祝おうというのなら、大歓迎ですが・・・」
・・・そんな事、あるワケないだろ。 → ブリッジにいる全員の心の声
〔さすがはナデシコ艦長、読みが深いわね。 ・・・その通りよ〕
と、ここで東舞歌嬢が乱入してくる。
・・・マジかよ、トップの考える事はわからねえ・・・。 → 全員の心の声
〔新年くらいは、戦争や和平の事なんか綺麗サッパリ忘れて
飲み合うのもいいかなって思ってね。 どう?〕
「いいですね、それ。 お待ちしてま−す」
受け入れる方も受け入れる方か・・・と、諦めム−ド全開のナデシコブリッジ。
アキトは何かもうどうでもよくなってしまったし、マイトは未だにアテナと口論中。
テンカワ・シスタ−ズは、それを面白そうに見ている。
「ホントにこれでいいんでしょうかね、シュン提督?」
「いいんじゃないか? ・・・でも、何とか登場出来てよかったぞ」
「・・・僕はこの一行の科白だけですか・・・(泣)」
「泣くのは止めたまえ、アオイ君。 僕等もそうなんだから・・・」
「・・・オレは冒頭の名前と、この科白だけじゃねえか。
整備班四人衆より出番が少ねえんだぞ・・・(泣)」
「・・・うむ」
彼らが言うと、妙に説得力がある(特にジュン、アカツキ、ウリバタケetc.)。
・・・何故なんだろう?
ガヤガヤガヤガヤ・・・・・・。
ナデシコ・展望台は、もはや激戦地である。
元々の乗組員に加え、新たにやって来た北斗達をもてなすためだ。
もちろん、アキトはホウメイガ−ルズの五人と一緒にホウメイさんの手伝いに大急がしである。
テンカワ・シスタ−ズのみんなは、それぞれ母親と一緒にお喋りしたり・・・
「メイナッ、限界までチャレンジするわよ!」
「いいですね、お母様。 付き合いますわ」
とこんな感じでお酒を飲み合っているのは、サラとメイナの二人である。
「昴氣を扱えるとは・・・お前、なかなか出来るな。
さすが、俺の娘であるだけはあるな」
「ありがとうございます、母上。 ですが・・・母上ほどではありませんが・・・」
また、マトイは北斗と一緒に剣術や格闘技の話題で盛り上がっている。
そして、その隣で羨ましそうに指をくわえて見ているのは、零夜だ。
マトイに〔母上〕なんて呼ばれて、ちょっと照れている可愛い北斗である。
「何でオマエが来るんだよ、アテナ」
「悪かったわね、マイト。 だからアンタのお酌してあげてるんじゃない」
ちょっと離れた静かな場所で、アテナの手酌で熱燗を飲むのはマイト。
なんだかんだ言ったって、仲はやっぱりいいのである。
「いや−、そこの君かわいいねぇ−」
「ふっ・・・君の瞳の魅力に僕の心は釘付けさ・・・」
そして、イソイソとナンパに勤しむのは木連のナンパ男であるサブロウタ。
ナデシコの大関スケコマシ、アカツキもナンパに勤しんでいる。
ぎゅうぅぅぅぅぅぅぅ
「い、いひゃいんへふへほ・・・(泣)」
「・・・フン!」
そして、三姫に頬をつねられて退場していくサブロウタ。
一体なにやってんだか・・・。
「う−ん、あと四年後が楽しみだねミル君」
キラ−ンッ
と歯を光らせてミルに笑いかけるのは、アカツキである。
・・・お前って、ロ○コンだったの・・・(汗)。
「・・・・・・(泣)」
アカツキの笑い顔に恐怖を覚えたのか、涙をボロボロと零し始めるミル。
書き忘れたが、彼女は泣き虫で恐がりだったのだ。
「・・・よくもミルを泣かせてくれたな・・・」
ブォン・・・
何時の間にか昴氣を実体化させ、刀を二刀流に構えているマトイ。
「ミルを泣かせた罪は、重いわよ・・・」
パチッ・・・パチパチッ。・・・
空気中の静電気を収束させ、己の拳に帯電させるアズサ。
「ちょっと、やり過ぎだと思うよ・・・」
カシャン・・・
イ−ナ専用にカスタマイズされたSOCOMピストル
(メタルギア・ソリッドでお馴染みの、45口径でレ−ザ−ポインタ−付きの銃)のマガジンを、
暴徒鎮圧用ゴム弾から特注の硬化ゴム弾に入れ換えるイ−ナ。
「そうですねぇ・・・。 いくらアカツキさんでも・・・」
カシャッ! カシャカシャカシャカシャッ、カシャ!!
折り畳み式の槍を、伸ばし始めるメイナ。
「これだけは、許せないわね・・・」
クンッ・・・
愛刀〔十六夜〕を、鞘に収めたまま抜刀術の構えを取るピュア。
・・・今ここに、テンカワシスタ−ズの中でも最強の少女達が降臨した!
もちろん、他のテンカワシスタ−ズを始めナデシコクル−も非難の目でアカツキを見ている。
「・・・なっ、僕が一体何をしたんだい!?
ただ僕は、ミル君の将来が楽しみだねって言っただけなんだよっ!?」
「・・・自分の胸に手を当てて考えてみて下さい、アカツキさん。
艦長命令です。 マトイちゃん達、アカツキさんを殺っちゃって下さい」
静かにアカツキに死刑宣告をする、ユリカ。
どうやら今年最初の被害者は、ネルガル会長のアカツキ・ナガレらしい。
「テンカワ流剣術・二刀流奥義!
武神舞王剣・連斬弐の型、“旋空”!!」
ギュオオオオオオオオオオッッッッ!!!!
二刀流のマトイが、昴気を纏って高速回転をしながらアカツキを連続で切り刻む。
その様子は、まるで荒れ狂う一陣の旋風のようだ。
「はぁッ!」
ドンッ!!
止めに下段から切り上げて、アカツキを食堂の天井近くまで吹き飛ばす!
そしてさらに追い打ちが・・・。
「アズサッ! まかせたぞ!!」
何時の間にボソンジャンプしたのか、空中にアズサがジャンプアウトしている。
拳の電撃は、目に焼きつくほどの眩しい光を放っている。
「いっくわよ−っ! テンカワ流格闘術!! “雷神破鋼拳”!!!」
ドゴッッッッッ!
聞くに耐えない鈍い音と同時に、高電圧(およそ一億ボルト!)を受けて
黒コゲになったアカツキがもの凄い勢いで落ちてくる。
「落ちるのはまだ早いよ。 今度はボクの番だよっ!
・・・“クロスファイア・ショット”っ!!」
ガオンッ!!
イ−ナの放つ銃弾の雨が、アカツキの体に十文字状に食い込んでいく。
この時点で普通の人なら死んでいるが、これはSSである。 全く問題ない。
「まだまだ、この後には私とピュアがいるんですよ?
・・・天陽槍天神流槍術・壱式! “鬼刃連爆突”!!」
シュバババババババババッッッッ!!!
地面に落ちる前の状態ではなす術も無く、無数の突きを体で受け止めるアカツキ。
ホントに彼は生きているのだろうか?
「じゃ、しんがりは私が務めさせてもらうわね。
テンカワ流抜刀術・壱の型! “空牙神速剣”!!」
落ちてくる、アカツキだったモノに抜刀術を放つピュア。
・・・チンッ 刀を収めた音
ドサッ アカツキが倒れた音
刀を収めると同時に、アカツキが床に倒れる。
あまりにも速い抜刀のため、傍目には抜いていないように見えるが、
アキトや北斗、そしてマイト達はその抜刀が見えていた。
当然だ、彼らには戦闘で鍛えた優れた動態視力があるのだから。
「・・・安心して、峰打ちだから。 死にはしないわ」
「・・・いや、もう死んでるんじゃ・・・(滝汗)」
何でもない様な顔をしているピュアに、青い顔をしたユリカが答える。
自分で言った手前、良心が責めるのだろうか?
「いや、そうじゃなくて。 いじめる楽しみがなくなるから」
・・・アカツキはそういう存在だったのか・・・。 不幸・・・だな。
「あれ、ピュアお姉が使ってる〔十六夜〕って、逆刃刀じゃなかったけ?
確か、アキトお父さんが普通の日本刀じゃ危ないからって」
「あ、そういえば・・・」
ミチルの冷静な指摘に、チラリと倒れているアカツキを見るピュア。
問題:逆刃刀の峰で人を切ると、どうなるか?
ドクドクドクドク・・・・・・ 何か、赤い液体が流れる音(汗)
答:切れます。 いや、そりゃもうスッパリと。 だって、峰と刃が逆なんだから。
「・・・き、気にしない気にしない!
人生前向きが一番! レッツ・ポジティブシンキング!!」
頭にでっかい汗を浮かべたピュアが、刀の血糊を懐紙で拭いながら言う。
誤魔化したな、お前・・・。
「ヒ、ヒサメ! あなたの出番よ。 いちおう、治してあげてね」
「はい。 ・・・でも、よく生きてますねアカツキさん・・・(感嘆)。
今回の実験に、使えそうですね(喜)」
呆れながらも、イネスと一緒にアカツキを医務室に運んでいくヒサメ。
ちょっと、いやかなり嬉しそうなのは、決して見間違いでは無いだろう。
「・・・・・・(滝汗)」
シンと静まるナデシコ展望台。 そりゃそうだ、目の前であんな惨劇が起きれば。
「・・・ふん。 マトイも強いが、他の奴も強そうだな・・・。 未来が楽しみだ」
ただ、それを嬉しそうに見ている北斗。
彼女にとっては、自分の将来の事の方が興味があるらしい。
「さ、さあっ、こんな事忘れてパ−ッとやりましょう!」
「そっ、そうね!!」
ユリカの科白に、すぐに賛成する舞歌。 どうやら、無かった事にしたらしい。
実にいい判断だ。 ポジティブシンキングは大事だね。
「お−っ!!」
ナデシコクル−も、この出来事を無かった事にしたらしい。
また、騒がしい元の大宴会に元通り。
・・・ただ、誰もが
〔テンカワ・シスタ−ズを怒らせてはいけない〕
という事を、今日の出来事から学んだようだ。
この大宴会、元日と言わず正月三が日を含め、一週間も続いたらしい。
みんな、よくやるよ・・・。 ホントにお疲れさん・・・。
Fin
お・ま・け
〔・・・この番組は、あなたの夢を届けます〔Action株式会社〕。
どんな病気も、メグさまの恵みでバッチリ! メグミマ−クの〔Enopi製薬〕。
割り箸からミサイルまで、あなたのニ−ズに答える〔ネルガル重工〕。
ご覧のスポンサ−の提供で、お送り致しました〕
ピッ
相変わらず感情の伺えないテロップを、問答無用で他の番組に変える青年。
「いやー、あんなに自分の娘がいたらどうなるんだろうね、成瀬川?」
「何言ってるのよ、あれはドラマよ? 実際にあるわけないじゃない」
こたつに入って、お雑煮を食べながら正月特別番組を見ていたのは
御存知〔ラブひな〕のメンバ−十人である。
(ちなみに今話していたのは、浦島景太郎と成瀬川なるの二人)
「く−っ! 朝から酒飲んでお節食って雑煮食って。 日本の正月はこうでないとな−」
「・・・失礼ですがキツネさん、かなりオヤジ臭いのでは・・・?」
相変わらず、朝から酒をかっくらっているのは紺野みつね(通称キツネ)で、
そして冷静に突っ込んだのが青山素子である。
「はるかさん、この黒豆私が煮たんですけど・・・どうですか?」
「・・・うむ、うまい。 しのぶはいい嫁になれるな」
恐る恐るはるかに黒豆の出来を尋ねるしのぶに、薄く笑いながら答えるはるか。
「はっはっは、お正月を大勢で迎えるなんて久し振りだねぇ。
おっ、サラはお酌をしてくれるのかい?」
「へっへ−、アタシがお酒をお酌するのはパパだけだけどな」
まるで親子の様な雰囲気で和んでいる瀬田とサラの二人。
「お正月は、やっぱりスイカにかぎりますねぇ」
「みゅう」
おっとりお姉さん代表の乙姫むつみと、温泉ガメのタマちゃんの一人と一匹は、
冬だと言うのにスイカを食べていた。
ちなみに、ここにはスゥの姿はない。
この間の騒動で崩壊した日向市を復旧させるために、土木作業をするメカタマ6達の監督作業に
精を出している。 ・・・まあ、自業自得である。
「次のニュ−スです。
昨夜、氷漬けになった男性二人が、日向市の路上で雪掻きをしていたM・Oさんが
発見し、警察に通報しました。 奇蹟的に彼らは酷い怪我と凍傷を負いながらも生きており、
警察で今身元確認を急いでいます・・・」
偶然流れてきたニュ−スの内容に、はるかと瀬田以外の動きが止まる。
「こ、これってまさか・・・」
「あの時(クリスマス大作戦 イン ひなた荘!を参照の事)の・・・」
「二人じゃ・・・」
景太郎、なる、そしてしのぶの顔が真っ青になる。
そりゃそうだ、後でちゃんと掘り出してやろうと思っていたのをすっかり忘れていたんだから(汗)。
・・・死体遺棄事件だぞ、ホント・・・(大汗)。
「気にしない、気にしない。 さっきのドラマもそうやけど、
人生前向きが一番やで。 ポジティブシンキングや!!」
キツネが手酌で日本酒を飲みながら、他のみんなをなだめる。
いや、そうじゃなくて。 少しは気にした方が・・・。
「私達の生活を覗いていた奴らだ。 これくらいしてもかまわんだろう」
と、これは素子。 だから、犯罪なんだってば。
彼らの頭の中からは、灰谷と白井という不幸な男二人の存在は完璧に消えてしまっていた。
彼らも不憫だな・・・。
彼らも、正月三が日と言わず一週間もの間飲めや歌えやの大宴会を繰り広げたという・・・。
後書き
明けましておめでとうございます、Excaliberでーす!
今更ですが、今年も宜しくお願い申し上げまーす!!
「ヨロシク−! ボクはアシスタントのイ−ナだよっ」
しかし・・・やっとテンカワ・シスタ−ズを全員登場させることが
出来てよかったよ。 自分で書いてて何だけど、かなり辛かったんだよね。
「例えば、どんな所が?」
SSに出る登場人物の数を増やすと、一人称の書き分けが難しいんだよ。
イ−ナとかヒサメは、わかりやすくて楽だったけどね。
「一人称がボクだから? で、ヒサメおね−ちゃんは自分の名前だから?」
その通り。 学校が一月三日に始まったからなぁ、執筆もなかなか進まないし。
御陰でこんなにずれこんじゃったんだよね。 すみませんです。
「よく言うよ、冬休みにスキ−行ってたくせに。
で−? 次回は〔ラブひな〕なの?」
いや、〔未来シリ−ズ〕の設定資料集だよ。
覚えているうちに書いちゃわないといけないし。
そして最後に、このシリ−ズを書くにあたって、お世話になった人達。
本当にありがとうございました(特に神威さんには大変お世話になりました)。
実は、僕が書いたテンカワ・シスタ−ズの殆どは(カスミ、ヒサメ、マトイ以外)
神威さんのアイディアなんです(さすがオリキャラの父ですよね。 尊敬してます)。
それでは、また今度! 設定資料集でお会いしましょう!!
「まったね−♪」
管理人の感想
ExcaliberさんからSSの投稿です!!
とうとう勢揃いしましたね、テンカワシスターズ(笑)
しかし、こんな妹達に囲まれればマイトが逃げ出したくなる気持ちも解りますね(苦笑)
でも、彼女もいたのね・・・妹達公認の(爆)
それがナオとミリアの娘とはね〜
ま、未来でも両家の間には深い交流があったと言う事ですか(笑)
では、Excaliberさん投稿、本当に有難うございました!!
感想のメールを出す時には、この Excaliberさん の名前をクリックして下さいね!!
後、掲示板になら感想を書き易い、と言う方もおられるので。
この掲示板に出来れば感想を書き込んで下さいね!!