機動戦艦ナデシコSS サレナ 〜希望の花〜 未来からのメッセージ |
第二話 Aパート 懐かしき世界、新しき可能性 |
エステバリスは大量のバッタの中にいた。
「くそぉ」
今までのバッタとは違いライフルを当てても、なかなか壊せない。
火星からチューリップに乗ってやってきたのは敵のど真ん中
後方に宇宙軍がいるらしいがここに到達するまではまだ時間がかかるらしい。
「落ちろ・・・落ちろ・・・落ちろよぉぉぉ」
ナデシコのグラビティーブラストも火星での戦闘のためだいぶ威力が落ちている。
さらにバッタたちのバリアの強化・・・・
「はやく・・・・はやく・・・・なにやってんだよ!!」
宇宙軍到達まであと45分
バッタの群の中でコック兼パイロットのテンカワ アキトはエステバリスで
必死の抵抗を続けていた。
「このバッタ堅くなってる〜〜」
いつもならライフル一発で確実に破壊されるはずのバッタだが、
今は2発当てても向かってくる場合すらある。
「バッタのディストーションフィールドの出力が上がってるわ。
これは今までのようにはいかないわね。」
今までと段違いのフィールドの出力にナデシコのエステバリスは翻弄されていた。
「くそぉバッタのくせにしぶといぞ!!」
リョーコが叫びライフルは効果が薄いとにらんだのかパンチでバッタを破壊している。
確かに格闘戦ならフィールドは関係ないが、殴ればこちらも痛い・・・・
格闘戦にはこちらも腕の関節に負担などのダメージがあるのだ。
だがそれはナデシコの実力なら折り紙付きのパイロット(性格は・・・・)
満身創痍だが30分の間戦い続けた。
「くぅあと15分・・・・やるぞぉぉ」
「ほえぇぇ後一息だねぇ」
「おなかが痛いわ・・・・盲腸と・・・もうちょっと」
3人のエステバリスは腕などが多少がたついていたが戦闘を続けられる
コンディションを保っていた。
実力の差だろうか他のエステバリスと比べアキト機の損傷が多かった。
もう艦隊からの援護射撃がここまで届き始めている。
それが、後少しで助かるという確固たる証拠だった。
「・・・・よし、助かる助かるんだ!!」
アキトも今までの焦りが消えだいぶ本来の調子に戻りつつある。
「よし、最後の勝負だ。」
ナデシコにとりつこうとしているバッタを倒せば自分の役目は終わりだ。
後は3人が何とかしてくれるだろう。
「いくぞ!!」
そういった瞬間、エステバリスの画面いっぱいに警告が表示される。
「なんだ??なんなんだ???」
アキトの座るコックピットの前に小さなディスプレイが表示される。
「今この機体は何者からのクラッキングを受けています。」
「何だって・・・・なんとかしてよ!!」
クラッキングなどパイロットにどうしようもできる物ではない。
アキトはすぐにオモイカネに助けを求めた。
「ごめん、ルリがナデシコに精一杯なのでクラッキングの防御が完全に出来ない・・・・」
「くそ、だれからだ!!」
バッタがエステバリスにクラッキングを仕掛けるなんて聞いたことがない。
訳も分からずアキトは叫んだ。
「わからない・・・」
「じゃぁナデシコに戻るぞ・・・・」
こうなった以上戦闘は続けられない。
あのバッタはリョウコちゃんにでも任せるしかない。
アキトはそう思いエステバリスを動かそうとしたが・・・・
「だめ・・・メインシステムが乗っ取られかけてる。
システムが不安定になってエステバリスが制御できない。」
「どうなるんだよ!!」
ただアキトは叫ぶことしかできなかった。
ズドォ〜〜ン
「うわぁぁ」
敵からの攻撃だと思われる衝撃がエステバリスをおそった。
「壊れた?どこが・・・・え?脱出装置??」
「オモイカネ・・・・おい返事をしろよ・・・・」
さらにナデシコからのエネルギー供給圏外の表示・・・
「だれか答えろよぉぉぉ」
アキトの乗ったエステバリスは戦場を舞いそのままきえていった・・・・・
「あれ・・・パイロットはアキト君!?
いまたしか家にいるはずだよね。
それにやけに若いし・・・・」
アカツキがディスプレイに映し出された映像を見て思わず声を上げた。
「ええ、確かそのはずよ。
しばらくは養生しているっていってたから・・・」
そう、アキトはまだ戦闘ができるレベルまで回復していない。
エリナは分かれる前にアキトにしばらくは養生するよう説得したのだ。
もう機動兵器に乗る必要のないアキトに拒む理由はなかった。
「・・・・これは・・・・・」
イネスはじっとディスプレイを凝視していた。
そしてふと顔を上げた。
「イネスなにかわかったの?」
長年のつきあいである者たちはすぐにイネスが何かに気づいたことが分かった。
「サレナ進入したコンピューターから現在の時刻と座標をしらべて」
イネスは顔を上げサレナに聞いた。
「はい・・・時刻は21XX,YY/XX AM xx:yy 広域座標は6226:4682:0017です。」
周りに動揺が広がる。
「え・・・それって4年前??
確かそのときは・・・」
エリナは何があった日か思いだそうとしていた。
だが日付だけでは人間はそう思い出せる訳じゃない
「僕とエリナがナデシコに入った日だよ。」
しかし、アカツキはあの記念の日を忘れることはなかった。
「・・・・なるほどね」
何かに気がついたイネスがポツリとつぶやく。
「僕も何となく分かったよ。」
アカツキも何かに気がついたようだ。
「え?なに?どういうこと??」
全く理解できないエリナ。
「つまりいまサレナは過去のエステバリスに繋がっているというわけだ。
・・・・・・・・・・・・
だけどへんだな、向こうのレーダーでは周りに軍の艦隊が見えないけど・・・・」
ふと思いついた仮定だが、一つ重大な問題があることに気がついた。
「・・・・歴史が変わったという可能性もあるわね。
向こうでは火星からボゾンジャンプした直後だと思われるわ。
私たちの介入でジャンプアウトの時間が少し早くなった可能性があるわね。」
まだ人類はジャンプについて何も分かっていない。
どんな些細なきっかけでも重大な問題が発生することもあるのだ。
「ところで・・・向こうのアキト君は何ボーとしてるんだい?
敵がいるのに回避行動取ってないじゃないか?」
まぁあの当時はそれほど強くなかったのだが、
ディスプレイに映るエステバリスは全く動かないでいた。
「いえ・・・・私の介入でエステバリスの運動システムの一部が損傷したようです。
現在操縦不能のハズです・・・・」
サラリと何の罪悪感も持たない声が響いた。
「・・・・・おいおい・・・それってまじで・・・・」
『まずいじゃない(か)・・・・・』
全員一致の意見だった。