機動戦艦ナデシコSS

サレナ 〜希望の花〜
未来からのメッセージ
第五話 Aパート  新しい風、希望の花に送る歌

 

翌日のナデシコブリッジ

 

「もうみんなそろいましたか?」

『ハーイ』

幼稚園のように全員が声をそろえての挨拶。

まさにここはナデシコである!!

(戦艦のクルーがこんなんじゃぁ、おかしいんだけどね・・・・)

 

今、ナデシコのブリッジには主要なクルーがいた。

ただのコックのはずのアキトがいたが、これはプロスが呼んだのではなく

サレナにブラックサレナの操縦を習っていたアキトを、ユリカが無理矢理つれてきたのだ。

どうやらサレナと一緒にいるのが気に入らないらしい。

プロスはみんなの見える位置で眼鏡を光らせていた。

 

「では・・・・、これからのナデシコですが・・・・

これから我々は、軍に編入されます。

あ、ですがこれは形式上であって、まぁ派遣社員という扱いになります。」

プロスはいつもの接客態度でナデシコの軍への編入を発表した。

もちろんこれはナデシコクルー達に大波乱を呼ぶことになる。

 

「えぇぇ、せっかく民間の船だからって入ったのにぃ」

 

「またあんなガチガチの軍隊に戻らなくちゃいけないのかよ。」

 

「・・・・・・・」

ぶーぶーと文句をたれるヒカリと不機嫌な顔でプロスをにらむリョーコ

イズミはずっとサレナからの贈り物だった「ギャグ大辞典」を

食い入るように見ていた。

 

「バカばっか・・・」

ルリは少しばかり不機嫌そうにブリッジを見回した後で、一言つぶやいた。

 

「ふぅ、軍にまたもどるのか・・・・」

ジュンはハァーとため息をついてうつむいていた。

軍に行ったり来たり・・・・大変だねジュン君

 

「あのぉ、私たち軍隊に入っちゃうんですか?」

最も早く質問したのは軍隊に最も抵抗のあるメグミだった。

 

「いえいえ、あくまで我々は軍とともに行動するというだけです。

まぁ民間船を軍が同行させるのには問題があるので

ナデシコを軍に編入するだけです。」

さすがにプロスでもブリッジ全員の冷たい視線に冷や汗をかきながら弁明した。

 

「ふーん」

何となくキツネにつままれたような顔のナデシコクルー達。

ナデシコは軍艦になったのに自分たちは社員のままという矛盾。

何となくだまされているようだが、自分たちが軍人にならなくてもすむと

断言されたのでほっとしているようだった。

まぁ、数人いかがわしそうにプロスを見ていたが・・・・

 

「はは、これでも軍とかなりもめたんですよ。

ネルガルも社員を無理に軍人にするのはさすがに抵抗があるので・・・」

プロスは持っていたハンカチで汗を拭きながら理解を求めた。

 

「まぁ私たちはいつものようにやっていればいいんだよね。」

ミナトはなんだかんだ無理矢理納得したようだ。

そのほかのクルーもだいたい納得したようだ。

まぁ「今まで通りならどうでもいいや」というのが本音か・・・・

 

「ふーんけっきょくなにも変わらないのかぁ」

ユリカは軍に入ろうがどうしようが問題ではなく、

今までと同じようにアキトがいればどうでもよかった。

 

「あぁ艦長は一応軍に入ってもらいます。

戦艦の最高責任者が民間人ではさすがに軍も納得しないので・・・・」

プロスはユリカに、申し訳ないと頭を下げた

 

「えぇぇ私だけ軍人なのぉ。」

自分だけひとりぼっちなのが少し寂しいようで、

涙目になりながらプロスを見つめた。

だが、プロスは泣き落としで落ちるような人間ではないので、

同情の表情を見せるだけだった。

 

「まぁナデシコの自由のためには艦長が多少犠牲になってもらわないと・・・・

一応、艦長は軍では限定的ではありますが大佐扱いとなります。

あと万が一軍の命令に不服であればネルガルにもうしてください。

ナデシコの運営に関してはネルガルにも発言権がありますので・・・・」

「はーい、アキトのためだもん我慢しまーす。」

まぁこの人(ユリカ)もアキトがいれば後は本当にどうでもいいので、

何とか納得したようだ。

 

「あのぉ、私はアキト様の私有物ということでよろしいんですよね?」

すっと現れたウィンドウにプロスの顔から汗がこぼれた。

 

「はは・・・それは問題ありません。

アキトさんは軍人ではないですからな。

ただ・・・・サレナさん?・・・・ナデシコのデッキを使用している以上、

ナデシコの規約に反することはおやめださいね。」

急に現れたサレナにまたプロスは冷や汗をかいた。

 

「はぁ、分かりました・・・・」

いいたいことが言い終わるとサレナはさっさとウィンドウを消した。

 

「はぁ今度からはもう少し心臓に優しい現れ方をしてもらいたいですな・・・・

あぁ艦長は一緒に来てください、これから軍の手続きに入ります。」

 

「じゃぁ副長の僕もいった方がいいですか?」

 

「ああぁ、ご察しがいいですねぇ。

副長も一応軍に所属してもらいます。

まぁ階級は向こうの話し合いで決めるということなので・・・・」

 

「はい、分かりました。」

「はーい」

返事をしたユリカとジュンはプロスについてブリッジを出た。

 

最後に完全に蚊帳の外だったアキトがポツリとつぶやいた。

「・・・・・結局俺は何しに来たの??」

騒然としたブリッジにアキトのつぶやきにこたえる者はいない・・・・

 

 


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