過去に私はあの機体にあったことがある。大切な『友達』を救うため、夢の中『彼』はあの機体に乗って戦った。そして、『彼』は『友達』を止めた・・・・

そして今、『彼』は時を得て現実であの機体と対峙している・・・・・

「ルリルリ?ルリルリ?ちょっとぉどうしたの?」

「・・・・は、はい、どうかしましたかミナトさん?」

「ボーっとして、今戦闘中なのに・・・・・まだ戦場じゃないけどね。」

「あっ、すいません・・・」

ルリは珍しく動揺していた、思い出の機体に酷似した機体を見て・・・・


三軍神参上!

第二話


(ドラゴンガンガー・・・能力は何だ?)

アキトは目の前の機体と距離を置き、相手を値踏みしていた。『鯖』と『白百合』は傷ついた機体をナデシコに運んでいるため、この場にいない。今、まさに一対一だ。

(今までの二体・・・・かなり特異的な機体だった・・・ならばこいつは?)

『マルス』と『ルナ』が戦ってた二体は噛み付きや引っ掻き、瞬縮する腕、等の今までの木連兵器とは一線を画す武器を持っていた。『ブローディア』より一回り大きい体躯、テツジンよりも兵器として洗練されたボディ、そして龍の装飾、目立った武装は無い・・・・外見からの隠し球の種類の識別は難しかった。

(油断はできない・・・・)

向こうも慎重になってるのか、自分から動こうとしない・・・中距離の睨み合いのまま時が過ぎてゆく・・・

『う〜〜〜〜、アキト兄!こーやってても事態は変わんないよ!』

『ディア!落ち着いて!アキト兄も我慢してんだし・・・』

『あんたはだまってなさい!アキト兄、とりあえずフェザーで牽制してみようよ』

こらえきれなくなったのか、『ディア』がアキトに攻撃を提案する。

「・・・確かに、事態は変わらないか・・・よし、フェザーで牽制する。」

『そうこなくっちゃあ!フェザー発射ぁ!』

『ディア』の合図と共に黒き羽が『ドラゴンガンガー』を取り囲む、その姿は黒き緞帳で見えなくなっていた。

『へへへ、それじゃあ一斉攻撃と・・・えっ?』

『ドラゴンガンガー』の周りに広がる羽が次々と落とされていく・・・

「ディア!フェザーを戻せ!、ブロス!奴の手に持ってる物を分析しろ!」

アキトが『ドラゴンガンガー』が何か振り回しているのに気付く、フェザーの幕が開き、その手の中には・・・

『アキト兄!鎖だ!鎖を振り回してる!』

両手には銀色に光る太い鎖が二対握られていた。

『鎖〜?そんな物でフェザーがやられる訳ないでしょ〜?』

『ディア・・・・これも現実だよ。』

『・・・何悟ってんのよ、ブロスのくせに生意気よ。』

『何だよ・・・そのわけわかんない理屈は、ラピ姉じゃあるまいし。』

世にも珍しいAI同士の喧嘩が始まろうとしていたが、

「2人とも、そこまでだ・・・・来るぞ!」

アキトの一言で、それは中止となる。『ドラゴンガンガー』が右手から直線的な鎖の一撃を『ブローディア』へと放ち、それを上空に避ける『ブローディア』その下を唸りをあげて、鎖が通過する。

『へっへぇ〜ん、あたんないよ〜』

『ディア』が小馬鹿にしたように挑発すると、

「馬鹿にするにはまだ早い!」

『ドラゴンガンガー』から若い男の声で通信が入ってきた。次の瞬間鎖が緩くなり、鞭の様に上空の『ブローディア』を襲う。

ベシッ

緩急ある攻撃、アキトも流石にかわしきれず肩をかする。

「ば〜か、当たってんじゃん!あ〜〜〜〜ほ」       ブチッ

それだけ言い残し通信が切られた。

『誰がアホよ!誰が!?』

『ディア』の怒りも何処吹く風で、『ドラゴンガンガー』は左手の鎖も打ち放つ、双鞭が『ブローディア』に襲い掛かるが・・・

         ズバッ

                                   ズバッ

二本とも到着前にDFSに断ち切られる。『ブローディア』は動きを止めずにそのまま『ドラゴンガンガー』に突っ込む、すると、

ビシッ                   ビシッ                ビシッ

        ビシッ                      ビシッ                       ビシッ

無数の飛礫が『ブローディア』へと襲いかかり衝撃で一瞬動きが止まる。

「ちっ!」

正体不明の攻撃を受け、警戒し距離を開ける『ブローディア』・・・・





「アキトさんと互角・・?」

メグミが信じられないように呟く。

「そんな!?今時あんなのがいるなんて!?」

エリナも流石に驚いているようだ。いや大なり小なり皆動揺はしていたが、

「・・・・ルリちゃん、ラピスちゃんと二人であの機体を分析して。」

動揺できない立場の艦長が落ち着いて指示を出す。

「は、はい!」

「わかった!」

二人が答えたのを確認すると、格納庫に連絡を入れる。

「ウリバタケさん、エステのほうはどうですか?」

「『ガンガー』『煌』『マルス』『ルナ』はしばらく無理だ!『ジャッジ』は応急処置で『鯖』と『白百合』についてった!」

「わかりました。ミナトさん、スピード上げてチャッチャとアキト助けに行きましょう!」

「了〜解!!」







「一体何が・・・ブロス!」

アキトが正体不明の攻撃の分析を『ブロス』に指示する。

『・・・アキト兄!アイツ鎖を千切って投げてきたんだ!』

先ほどの衝撃の正体は鋲だった。『ドラゴンガンガー』に眼をやると腰の二つのサイドパックから鋲を取り出し、一瞬で繋ぎ一本の鎖を作る。

「鎖術か・・珍しいな。」

アキトの知識や経験の中には木連に鎖術使いはいなかった、初見の技の数々に興味を覚える。

『アキト兄!なに感心してんのよ!』

『ディア』がマスターであるアキトを怒鳴りつける、さっきのアホ呼ばわりが、かなり頭に来てるようだ。

「落ち着け『ディア』・・・・ココは近距離戦で行く。さっきの鞭の攻撃をかいくぐって一気に距離を詰める!」

『了解!フェザーバリア全開!』

『ブースター全開!』

『ブローディア』のオーラが変化する、しかしそれに構わず『ドラゴンガンガー』が双鞭を振るう。波打つ鉄鎖が襲いかかる!

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

上下左右の回避運動で距離をつめる『ブローディア』一気に懐に入り込もうとするが

     ビュン
                         ビュン

背後から再び鎖が襲いかかる。

「甘い!」

しかし『ブローディア』は勢いを緩めずに回避し、DFSで切りかかる、

               ガキッ

だが束ねた鎖でDFSを受け止めた。至近距離でせめぎ合う『ブローディア』と『ドラゴンガンガー』・・・

「さっきのは俺を狙ったんじゃなくて・・防御用に鎖を戻したのか・・・」

アキトが呟くと、

「その刀、何でできてんだ・・・鎖が軋んでる・・こいつも結構丈夫なんだけどな・・・」

再び男の声で通信が入った。

「普通幾重に重ねても、斬り裂けるんだけどな!」

「反則だ・・・そんな刀はな!」

      ガシッ
                    バキッ

『ドラゴンガンガー』が蹴りを、『ブローディア』がパンチを繰り出し同時に距離が開く。

再び対峙する二体・・・・・






ダダダダダダダダ
           ダダダダダダダダ
                       ダダダダダダダダ

『ドラゴンガンガー』に対して無数の銃弾が発射される、

  カンカンカンカンカン・・・

さきほどフェザーを打ち落としたように、鎖を振り回し銃弾を打ち落とす、銃弾が発射された方向には戦列に戻った『ジャッジ』『鯖』『白百合』がいた、背後にはナデシコも見える。再び『ドラゴンガンガー』から通信が入る、

「邪魔がきたな・・・あいつらから潰す!」

すると『ドラゴンガンガー』がボソンジャンプし、その場から消えた。

「!みんな、気をつけるんだ!」

アキトが全回線で警戒を呼びかけるが・・・・

          ヒュン・・・

『ドラゴンガンガー』が現れたのはアキトからかなり離れた場所だった、しかもナデシコやエステからも遠い。

「へっ!一体でハンデ戦なんてやってられねーよ!今日は終わり!」

いきなり言い放つ『ドラゴンガンガー』、

『何よ〜それ!正々堂々来なさいよ!』

『ディア』が怒鳴りつけるが、

「うるせえ!ジャリガキ!意地で命は賭けねえよ!」

そう言い残し反転する『ドラゴンガンガー』、先には黒い中型艦が見える。

「アキト!逃がさないで!」

ユリカの通信が入る、

「わかってる!」

『ドラゴンガンガー』を追う『ブローディア』、すると黒い艦から白い煙が出てきた。風に巻かれ『ブローディア』に煙が襲いかかる、次の瞬間『ブローディア』のモニターにノイズが走った。

「ディア!ブロス!」

『・・・・・ダメ!探査系能力の全てに邪魔が入ってる!』

『しかも・・・さっきからあの艦レーダーに映ってなかった・・・』

「くっ!みすみす逃がすのか・・・・・」

煙が晴れた後には一体と一艦は影も形も無かった・・・・・






「説明しましょう!」

ブリッジにいきなりの声が響く。

「・・・・・・イネスさん、今からブリーフィングなんですが。」

「突っ込むだけ無駄だよ、ユリカ・・・・」

ジュンが妙に悟りきってユリカを止める。

「いい判断ね、ジュン君。さて、今から説明するのは最後にアキト君を撒いた霧についてです。『ブローディア』に付いた物質を調べた結果、あの霧には思いつく限りの撹乱物質が高密度で入ってたわ・・・ま、採算度外視の高級品ね。」

「でも・・・戦闘中に撒かれたら・・・」

誰かが呟くが、

「あっ、その点は大丈夫よ。戦闘中に使わなかったことから見ても、あの三体にも防御手段は無いと考えられるわ。まぁ、強盗するほど切迫した財政ならそんな使わないでしょ?・・・・さてこのままあの三機についても説明したいとこだけど・・・・ここは専門家にまかせるわ。・・・・ってみんな何驚いた顔してんの?」

イネスが周りを見渡すと皆驚いた顔をしていた。

「いや・・イネスさんが人に説明まわすの珍しいんで・・・」

ジュンが代表して突っ込む。

「ふふふ・・・いくら私でも説明できない物はあるわよ。」


(あるの!?)クルー一同心の叫び


「じゃあ専門家にしてもらいましょう。ヤマダくん?」

「おう!任せろ!って・・・俺はダイゴウジ=ガイだ!」

「まあそんな事はどうでもいいとして、流石に私もゲキガンガーのことはわからないの、だからヤマダくんに・・・・」

「どうでも良くは無い!俺は・・・すいません、ちゃんと説明いたしますので、そのなんか変な薬品?しまっていただけないでしょうか?」

流石にガイもイネスが懐から取り出した人類未発見の色の薬を見て、自己主張をやめ、本題に入る。

「あの三体のモデルだが・・・俺をぶちのめした二体には正直見覚えが無い!多分木連の連中が勝手に作った奴だろう。だが、最後にアキトとやりあった奴、あいつには心当たりがある・・・アレはドラゴンガンガーに近い!」

「はい」

ラピスが手を上げる。

「なんだ?」

「私暇なときにゲキガンガー全部見たけど、そんな機体無かったよ?」

「おう!いい質問だな!ドラゴンガンガーは作中には出てない、いわば資料内だけの幻の機体だ!なので武装や性能は一切不明、解ってるのは『最強』これだけだ!」

「ヤマダくんどうもありがとう。おかげでいい説明ができそうだわ。」

「おう!・・・ってドクター!何度も言うが俺の名は・・・あの〜もう説明の邪魔しませんので、その注射器?こっちに向けないでいただけますか?」

さっきの薬品を注射器に入れるのを見て、逃げ腰になるガイ。イネスはそれを見届けると説明を再び開始した。

「さて、本題に戻るわ。敵は三体でそれぞれまったく別のタイプとなっている・・・・それはわかるわね。」

コクコク

皆がいっせいに頷く。

「それぞれ一部に特化した性能を持ってるわ。『ウミガンガー』タイプは格闘戦、機動力。『リクガンガー』タイプは砲撃戦、重装甲。『ドラゴンガンガー』は・・・これは情報不足ね。」

「すいません・・・・・」

「ごめん・・・」

調査が間に合わなかったことについて、ルリとラピスが謝る。それを見てイネスが慌てて付け加える、

「いや、別にルリちゃん達を攻めてるわけじゃないのよ。あの時間じゃ流石にね・・・ま、ここは交戦したアキト君に意見を聞いてみましょう。」

皆の目がいっせいにアキトに向けられる。

「・・・・・あの短時間じゃな、詳しいことは解らなかった。だけど、奴について解ったことが二つある。一つはあの鎖術、アレはたぶん機体能力じゃない、あの汎用性や判断力に使用法、多分操縦者の得意技だ。」

「なるほど・・・あと一つは?」

シュン提督が相槌を打つ。

「これは奴等三人全員に当てはまるんだけど・・・なんていったらいいのかな・・・臭いが違うってトコかな。」

「臭い?」

ブリッジの全員が首をかしげる。

「いやさ、死角からの奇襲、通信を使っての挑発や、『意地で命はかけない』ってセリフとかが・・・今までの相手とは一寸違うような・・・とにかく、機体、戦法、思考全てが風変わりな連中だ。」

「ということは・・・・」

ユリカが口を開き、

「変な人達って事だね!」

そう結論付けた。







「「「へックシ!」」」

三人同時にくしゃみをする。

「風邪ですか?」

艦のコントロールパネルを調整しながら、市川が声をかける。

「いや、なんか急に・・・」

「噂か?」

「・・・・何か・・・遠いところで・・・馬鹿にされたような・・・・」

大島、富士、諏訪の三人が鼻をすすりながら答える。

「ま、しばらくは修理とデーター整理で動けませんから、ゆっくりして下さい。」

「・・・・・・こんな・・・ところでか?」

「『陰月』の実験とはいえなぁ?水中じゃねえかココ。」

四人を乗せた新型偵察艦『陰月』は今、海中にいた。

「しょうがないですよ・・・木星には海が無いですから・・・海での実験データーは、戦艦開発部に絶対とって来いって念を押されましたからね。」

「ま、しょうがないんじゃん?ここならそう簡単に見つかんないでしょ。」

大島は納得したようだ、それを聞き、

「まあ、お前がそう言うのなら・・・」

「・・・・別に・・・文句は無い・・・」

富士、諏訪も不承不承ながらも納得する。市川がそれを見て、本題に入る、

「で・・戦ってみてどうでした?」

「面白いね!」

「強いな。」

「・・・・美味い奴等だ・・・」

三人とも久々の戦いに満足したようだ。

「奴等の成長が早いのか、それとも木連のシミュレーターがしょぼいのか・・・実際やってみると、かなりの物だったな。」

「・・・・・『赤』・・・・次は・・・喰い殺す・・・・・」

富士と諏訪がそれぞれの意見を述べる。

「なるほど、大島さんはどうでしたか?」

「・・・・戦神、流石に有名人、かなりの野郎だ!」

「?大島さん押してたじゃないですか、それでも?」

「甘いぜ、いっちゃん。木連式鎖術を使うのは多分俺だけ、つまり奴にとって初見の技・・・それをあそこまでいなすとは思ってなかった。ま、手の内を明かさないままさっさと逃げたから・・・・お楽しみはここからだ!」

「何でテンションが高いんですか・・・そういえば鎖術って何処で習ったんですか?あんまり他人が使ってんの見たこと無いですし。」

ルーツを聞かれた瞬間、大島の顔色が変わった。

「・・・・・悪い、聞かないでくれ・・・」

始めてみるような、沈んだ顔から何かを察知し

「すいません・・・」

市川が謝罪する。

「いや・・・別にいっちゃんは悪くない。ゴメン、いつか話すから・・・」

周りの空気が心なし暗くなる。

「俺の『バクジン』と諏訪の『ジュウジン』の修理はどれぐらいかかるんだ?」

空気が重い中富士が声を発する。

「あ、二、三日で終わります。資材をかなりいただいたので、バッタをフル稼働すればそれぐらいで。」

「いっちゃん、俺の『リュウジン』は?」

先ほどとは打って変わった口調で、大島が質問する。

「ほとんど傷ついてませんから、今すぐにでもいけますよ。」

「ふ〜ん、そ〜解った・・・じゃ、俺は寝てるから、しばらく起こさんでね。」

そう言い残し、大島はブリッジから出て行った。

「おやすみなさい・・・ってお2人とも?何でそんな不安そうな顔してるんですか?」

市川が諏訪と富士に眼をやると、二人とも大島の消えた後を凝視していた。

「いや・・・あいつがなんかたくらんだ顔してたような・・・」

「・・・あの顔は・・・・大概・・・・・ろくな事を・・・・・起こさない・・・・」

この2人の予感は四時間後に的中する。






〜続く〜







後書き?


「ついに登場三回目の解説!スパットだ!今日は『バクジン』について解説しよう!


バクジン(爆神)

パイロット   富士信也少尉

装甲、火力重視の機体。サイズはデンジンと比べて大して変わらないが、他の二体のサイズダウンが大きいため、数字よりも大きく見える。武装は指先からのビームランチャー、胸部のグラビティブラスト、収縮自在の腕など。デザインや能力的にも従来のジンシリーズに一番近い。この機体も出力部がアンノウンとなっている。機動性は低い。


・・・・・ガン○ンク・・・・それじゃ!また次回に会おう!」










代理人の感想

ああ、要するに真○ッター3と(爆死)。

それはさておき8mのブローディアより一回り大きいということは大体10〜12m程、

普通のエステの1.5倍くらいでしょうか?

ジュウジンも同じサイズだとすると・・・・・

ふむ、ジュウジンのイメージは「接近戦に特化したブラックサレナ」で決まりかな?(爆)

それとリュウジンが使ってるのはDFを纏ったバイクのチェーンみたいな感じでいいんでしょうか?

鋲をまとめてるというとそうとしか(爆)。