「ふん、何者かは知らないが・・・なかなかやるな。」

「北ちゃん・・舞歌様が言ってたように、攻撃を仕掛けるのは正体を見極めてからにしてね・・」

「ふふふ・・・・・」

「もしかしたらクリムゾン系の人達かもしれないから、舞歌様の前にまず千沙さんが優華部隊隊長として通信を・・・って北ちゃん?聞いてる?」



三軍神参上!


第六話



「何でいんだ!あいつら!」

大島の予測ではナデシコ襲来にはまだ時間があった。

しかし現実目の前にはナデシコ(らしき)影が見えていた。

計画ではナデシコが来る前に戦神+エステ四機を撃墜および大破に近い傷を負わせる予定だった、

しかし現在、エステ三機は撃墜した、しかし『ブローディア』は傷を負ったものまだまだ動けそうだ、『白百合』にいたってはまだ海中にいるがほぼ無傷・・・

こちらの状況は・・・

『リュウジン』・・・小破、まだまだいける

『バクジン』・・・中破、しかし『ジュウジン』を抱えてるため戦闘参加は無理

『ジュウジン』・・・動けそうに無い大破、諏訪の意識も無い

ここにナデシコ控えのエステ三機が来たら・・・

(・・・・・・・・・・・・・・・・・絶対勝てねえ!)

自分が戦神に劣る気はないが、援護無し+エステ三機増加は痛すぎる・・・

その時、ナデシコから何体もの機動兵器が出てきた。

「こうなったら玉砕覚悟で・・・」

『マルス』のアサルトピットを握ったまま物騒な事を考える『リュウジン』。

「お〜い、大島・・・」

富士が通信を入れてくる、

「?どうしたん?」

「あれナデシコじゃないんじゃ・・・?」

「・・・・なんで?」

「確かに報告と数が・・・」

市川の通信も入る、数えてみると3機どころか7,8機はいる。

「・・・・・幻覚?」

「いや!その一言で済ませていいレベルじゃないだろ!・・・戦神も動いてねえし。」

見ると今は挟み撃ちの好機のはずなのに『ブローディア』は警戒姿勢のまま微動だにしてなかった。

「じゃあ、あの戦艦なんだ?」

その疑問を解消するための通信が二機に入った。



ヴォン・・・

通信が機動兵器の一体から入る、女性の声だ。

「・・・その機体デザインからして木星軍所属の機体ですね・・こちらは優華部隊隊長の各務千沙です、そちらの所属と戦闘目的をお願いします。」

(げっ!優華部隊!?)

(ってことは・・・あれが噂の戦艦シャクヤク+神皇シリーズ+リーサルウエポン『ダリア』か?)

(とりあえず味方みたいですね、だったら通信を・・)

大島、富士、市川がこっそり話し合う。

(ちょっと待った!いっちゃん!通信はやばい!)

(・・・なんでですか?助けてもらえば戦神から逃げられますよ?)

(・・・市川、所属はいい所属は・・・だが・・戦闘目的は?)

戦闘目的・・・・実験のため(内緒で)&暇つぶし&ガチで最強部隊とやりあいたかった&・・・

(・・・・・ダメですね・・)

(どう考えても実験レベル以上の戦闘行為だよな・・・)

(しかも強盗経験あり・・・言い訳聞きそうに無いし・・・)



「・・・・・どう?」

「だめです、通信返ってきません。」

「ってことは・・・何か後ろめたい事があるってことね。」

「どうしますか?」

「・・・・あの三機の拿捕をお願い。興味があるわ。」

「了解しました。」



「くっ・・・まさか『ダリア』が来るとは・・・」

『どうするのアキト兄?今のうちにあいつ等をたたいといた方が・・』

「だめだ。今『リュウジン』の手にはリョーコちゃんが握られてる・・・」

『ってことは・・うかつに動けない・・・待ちの一手だね』



(・・・・うしろに戦神・・・前には羅刹・・・)

(まさに前門の虎、後門の狼・・)

(投降するならせめて同胞の方が・・・)
    
(・・狼はどーにかなるかもよ。)


三者三様の思惑が戦場を駆け巡った。



膠着状態の中『リュウジン』が、左腕に『マルス』のアサルトピットを抱えて、右腕を天高く差し出した。

「・・・・・・困ったら・・・とりあえず逃げる!でろ!『陰月』!!!!!!!」

パチィィィン・・・・・・

『リュウジン』が指を鳴らした瞬間、海底で何かが揺れた。



「ガイさん・・・大丈夫ですか?」

『白百合』が海底に叩き落された『ガンガー』を救い出した。

「・・・なんとかな。すまねえ・・・あいつ等・・止められ無かった。」

「いえ・・しょうがないですよ。」

ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・

なにかの駆動音が聞こえる。

「?なんだ?」

「・・・・何か、大きな機械の音が・・・」

次の瞬間、廃棄戦艦の一隻が動き始めた、外装がはがれ、中から黒い中型艦が出てくる。

「ありゃあ・・奴等の船じゃねえか!こんな近くに隠れてやがったのか!」

「!まずい!あの船のそばにイズミさんが!」

先ほど『ガンガー』を助ける為に、傷ついた『鯖』を廃棄戦艦の上に置いてきたが・・・奇しくも偽装戦艦の上だった。

「なんだと〜!」

ガイの叫びが海底に響いた。



ザバァァァァァァァァ

海中から黒き戦艦『陰月』が姿を現す、なぜか甲板をよく見ると四肢が折れ曲がった『鯖』が乗っていた。

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・

『陰月』から前回ナデシコから逃げたときに使用した撹乱霧が噴出する。

辺り一面が靄に包まれる・・・・・



『アキト兄!例の霧だ!』

ブロスが叫ぶ。

「!やばい!このままだとイズミさんとリョ−コちゃんが捕まる!」

『リュウジン』の手の中には『マルス』のアサルトピットが、『陰月』には『鯖』が引っ掛かっている。

このままだと『ゲキガン三人衆』(仮名)に今まで以上のイニアシチブを握らせる事になる・・・・・

「ディア・・・・ブロス・・・ナデシコとの通信回復後、承認が取れ次第フルバーストを・・・」

『!アキト兄』

「逃がせない・・多少無理をしてでも止める!」

「別に無理しねえでいいぞ。」

『バクジン』のパイロットの通信が聞こえた次の瞬間

ブン・・・・・・・・・・

『鯖』が『ブローディア』に向け飛んできた。

「!?」

ガシ!

慌てながらも『ブローディア』は『鯖』を受け止める、

ポ〜ン・・・

続いて『マルス』のアサルトピットが飛んできた。

パシッ!

空いている手できちんとキャッチする『ブローディア』。

「お〜うまいうまい。」

セリフの直後、霧の中『バクジン』が目視距離に出てきた。

「・・・俺の手をふさいで、そのスキに吹き飛ばす気か?」

今『ブローディア』の手の中には『鯖』と『マルス』がいる、両手はふさがり攻撃手段は封じられていた。

「おいおい!俺だってガタガタなんだぜ!手負いの獣とやりあうほど馬鹿じゃぁねえよ!」

確かに『バクジン』の体はボコボコだった、胸部のグラビティブラストも削り取られて発射できそうに無い。

「目的は何だ?」

「いやちょっと頼みがあってなぁ。」

「頼み?」

「いやよ、今から逃げようと思ってよ。背後からねらわねえで欲しいんだよ。」

「?・・・逃げる?貴様等、木連じゃないのか?」

てっきり優華部隊と挟撃を図ると思っていたためアキトは煙に包まれた顔をする。

「・・・・いろいろ事情があってよ。どうすんだ?イエスかノーか?」

霧にも限界時間があるせいか、『バクジン』は答えを急がせる。

「・・・・ノーなら?」

「お前はノーといわねえだろ、回りを気にせずに戦うほどの狂人には見えねえ。」

両手の二人にくわえ、海中にいる「ガンガー」もかなり傷付いている、流石に三人を守りながら戦うのはアキトでも難しかった。

「ふっ・・・イエスだ。」

「じゃあ、お前等もこの霧に乗じて逃げな、今の状態で優華の相手するのはきついだろ?」

今、『ブローディア』は動けないほどではないが傷を負っている。少しのミスが負けにつながる『ダリア』との戦いには致命的だった。

「確かにな・・・お言葉に甘えさせていただくか。・・・一つ聞きたい事があるんだが。」

『バクジン』が消えようとしているところをアキトが引き止める。

「なんだ?」

「なぜ人質をとらなかった?俺に最初に二人を渡さずに交渉すればもっと優位に立って交渉できただろうに。」

「・・・・・・・・・・・・・さあ?何でだろうな?ただ・・・」

「ただ?」

「今度会った時も・・後腐れなく戦いたいからな・・・」

そう言い残し『バクジン』は霧の中へ消えていった。

『・・・・またやる気なのね』

『いつ来るかわかんないから・・・・ウリバタケさん・・今日も徹夜で修理だね。』

「カラスは買ってでもしろ・・・CROWは・・・苦労は買ってでもしろ・・・いまいち。」

交渉を見守っていた、ディア、ブロス、イズミが好き勝手に喋った。



「あの煙何!」

「レーダーがうごかんと!?」

「どうやらアレにはかなりの撹乱性があるみたいね・・」

撹乱霧初体験の優華部隊の面々がそれぞれ動揺するが・・

「それがどうした・・こんな物を撒いたという事は、奴等に投降する気は無いと言う事だろ。」

約一名全く動揺してない者がいた。

「舞歌・・交渉は決裂だろう?だったら俺がひっつかまえて来る。」

「そうね・・・北斗は霧の中へ突入。千沙、あなたたちは霧を囲むように散開・・・逃がさないでね。」

「「「「「「了解!」」」」」」

「北ちゃん・・・気をつけてね。」

零夜が心配そうに声をかける。

「ふ・・・あの中にはアキトが居る・・・楽しい事になりそうだ。」

そう言い残し『ダリア』は霧の中に入ろうとするが、

「あ、アキト含むナデシコ部隊、霧の反対側に逃げました。この位置だと・・・追尾不可ですね。」

シャクヤクのオペレーターが突入直前に萎える報告をする。

『ダリア』の動きが一瞬とまり、

「ふふふ・・・あの三機、アキトの分も楽しませてくれるかな?」

やけに殺気だった声を残し霧の中に突入していった。

舞歌がこそっと呟く、

「北斗・・・目的は捕縛ってことおぼえてるかしら?」

「舞歌さま。」

副官の氷室が呼びかける。

「何?」

「通信が入っておりますが。」

「通信?何処から?」

「はあ、それが・・・・多瑠研究所と言うところからなんですが。」

「多瑠?・・・開発部にいた多瑠博士の事かしら?繋いで見てくれる?」

「解りました。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「なるほど、そういう事でしたら・・・」

「あ、大丈夫ですか。使いにくい連中だと思いますが、無能じゃないんで・・・お願いします。」

プチン・・・・

「ふう〜」

多瑠との通信が終わり、舞歌が深く溜息をつく。

「・・・多瑠博士・・信用できるのですか?」

氷室が舞歌に聞く。

「まあ・・とりあえずあの四人と会って見るわ。」

丁度その時千沙から通信が入った、

「舞歌さま、風が出てきました・・霧が晴れます。」

少し霧が晴れるとそこには、

ギギギギギギギギギ・・・・・・・・・

「まさか・・俺相手に・・・アキト以外でここまで粘れる奴がいるとはな・・・」

ギギギギギギギギギギ・・・・・

「俺が・・木星の片隅でくすぶってる間に・・・こんな化け物がデビューしてたんか・・・」

『ダリア』と『リュウジン』が刀対鎖で競り合っていた。

「・・・・・北斗殿と互角ですか・・」

氷室が呟く、

「確かに無能じゃないようね、むしろいい買い物だったかしら?・・・あの『リュウジン』って機体に通信を・・・」

事態は大きく動き始めていた。




〜続く〜



後書き

今日は真面目に後書きです。今回は戦闘シーンもほとんど無い地味な展開になりました、話の繋ぎと思って平にご容赦ください。あ、次回予告だけは彼に頼みます。

解説スパット「ついに話は大局へ!多瑠が四人を舞歌に預けたわけは!四人に与えられる任務は!ターニングポイントとなる次回!ご期待ください!」

・・・・・・とのことです。次回、物語は大きな変革を迎えます、なのでしばらくお待ちください。









解説スパット「・・・・氷室って誰だっけ?・・・・・・オリキャラ?」

作者「・・・・・めちゃくちゃ失礼だなお前・・・」

 

 

代理人の感想

強ぇ(笑)。

 

いやどこがって、エステ隊はまだしもブローディアやダリア相手に

12mクラスの機体で機動戦を挑んで互角、と言うのが。

ブローディアと同じスーパーロボットだから、多少の機動性の差は考えなくてもいいとしても、

やっぱこいつらの腕はアキトと北斗に匹敵するわけですよね。

 

現状、ガチンコが割と一方的でいささか消化不良の気はあるのですが、

今後の熾烈なバトルに期待させていただきます。