バシュ!バシュ!バシュ!

木星虫型戦闘機ゲンゴロウ、それの巨大版から無数の魚雷が放たれる。

魚雷が向かう先には一体の機体がいた、遊人部隊所属の内の一機、水中戦対応のジュウジンだ。

ドゴーーーーーーーーーーーーン!!

ジュウジンの周辺で凄まじい爆発が起こったが、水煙が晴れたときジュウジンの姿はなかった。

ジュウジンを見失った巨大ゲンゴロウが、海底すれすれを高速で移動する何かに気付く。

ザシュ・・・

それがジュウジンであると気付いたときには巨大ゲンゴロウの首筋の辺りに深い裂傷が走っていた。



三軍神参上!


第九話



周りでブリザードが吹き荒れる南極、ここの上空で木連遊人隊所属の二機、リュウジンとバクジンが海面を眺めていた。

「もう一度確認しよう。」

リュウジン搭乗の大島が突然呟く。

「うむ。」

バクジン搭乗の富士も相槌を打つ。

「ジュウジンが水中に突入して巨大ゲンゴロウを誘き出す。」

「ああ」

「そして三機で一気に叩く、そんな作戦だったよな?」

「そうだな」

「・・・・・でてこないな」

水中に入ってから小一時間たつ、水中で爆発音が響き続けている・・・・

「前回、あいつ出番なかったからな・・・ストレス溜まってたんだろうな・・・」

「確かに、あいつ軽いバトルジャンキーだし・・」

ジャバァ・・・

「「!」」

水中から巨大ゲンゴロウが顔を出し、それを見た二機が構えたが、

バシャーーーーン!!

海中から出てきたのは、削り取った巨大ゲンゴロウの顔面を両手で抱えたジュウジンだった。

「驚かすな!」

「お前は某水中悪魔超人か!?」

二人が安堵と共にジュウジン搭乗の諏訪に話しかけると

「・・・・・すっきりした・・・安心しろ・・・やつはバラバラにして来た・・」

やけに爽やかな口調で諏訪が満足げにしていた。

「諏訪〜はなっから一人でかたずける気なら一人で来いよ〜。」

「そうだぜ、何が楽しくて用も無しにこんな寒いところに・・・」

作戦無視より出番がなかったことに不満を漏らす二人・・・軍人としてこれでいいのだろうか(笑)

「・・・お前等は・・・前回・・・暴れられたんだから・・・今回はいいだろうが・・・・それに・・・まだ終わりではない・・」

諏訪が巨大ゲンゴロウの顔面を差し上げながら呟き、

シュッ・・・

手の中のそれをいきなり氷山にめがけて投げた。

「・・・早く出て来い・・・もうばれている・・・・・・・」

ガン!ガラガラガラ・・・・・

崩れ落ちた氷山の向こうには意外な機体がいた。

「なんと!」

「おいおい・・何でこいつがこんなとこにいんだ?」

「・・・・元々・・地球側の・・・息がかかった機体だ・・・ほかに何機かいても・・・おかしくない・・」

氷山の崩れた先には未塗装の神皇機がいた。

「敵かな?」

「さあな?ま、味方だったら裏でこそこそ覗いたりしないだろうな。」

「・・・他の連中も・・いつまでも・・・隠れていないで出て来い・・・」

スッ・・・・

諏訪が広域通信で台詞を言った直後、四方八方から未塗装の神皇機が多数取り囲むように出てきた。

しかも御丁寧に銃口をこちらに向けている。

「敵だねぇ。」

「敵だなぁ。」

その光景を見て大島と富士が相手の意思を理解した。

「・・・・・ちょうど物足りなかったところだ・・・・まとめて始末してやる・・・・・」

諏訪が心底嬉しそうに呟く、どうやら先程の巨大ゲンゴロウ戦はすこぶる物足りなかったらしい。

「じゃあ、まあ・・・とりあえず。」

ジャリ・・・

リュウジンが両手にあふれんばかりの量の鋲を掴む。

ジャキ・・・

それを見た周りを囲む神皇機が、いっせいに銃口をリュウジンに向けるが、

「開始の合図と行きますか!!」

パーーーーーン!!!

銃口が火を吹く前に、リュウジンは鋲を持ったまま柏手を叩いた。

ビシビシビシ・・・

周りの神皇機に鉄の雹が襲い掛かり、一瞬戸惑いが出来た。

バシッ!

バキィ・・・!

グサ!!

その隙に三機が三方に散らばり、それぞれが鞭打、パンチ、爪、それぞれの攻撃を目の前の神皇機に叩き込んだ。



「やっぱり・・・あいつらね。ま、大体予測はしてたけど。」

ピ!

「隊長!四号、九号、十四号それぞれ撃破されました!」

「・・・見れば解るから。わざわざ報告しなくて良いわ。」

「は!申し訳ございません!」

「もうちょっとしたら私も手伝うから、それまで耐えてね。」

「は!解りました!」

プツン・・

「さて・・・・久々に三馬鹿トリオの活躍でも見ますか。」




「こいつ等何機いるんだ?」

ガシッ!
                ドガッ!

目の前の神皇機を鎖で絡めとりニーを打ち込む。

「さてねぇ・・・後から後から湧いてきやがるな。」

バシュバシュバシュバシュバシュ・・

ドゴーン!!

指から放った五連レーザーの一本が神皇機の一体に直撃する。

「・・・量産型・・・なんだろうな・・・」

グシャ!

ガシュ・・ガシュ・・ガシュ!

牙を剥き出しにして神皇機の首筋に噛み付く。

それぞれの攻撃手段で神皇機を落としていくが、まだ周りには無数の神皇機がいた。

「ま、三人そろえば俺等は無敵ってか?」

「ゲキガンガーかよ・・」

「・・・俺らに・・合わんがな・・・」



ピッ!

「全機体の三割が撃破されました!」

「わかった、わかった。今から手伝うから、少し落ち着きなさい。」

「は!了解しました!」

プツン・・・・

「ま、腕は錆付いていないようね。・・しかしあんな機体どこから持ち出したのかしらね?」




ボン!
             ガシッ!
                               ギシギシ・・・・

バクジンが腕を伸ばし、神皇機を一体捕まえ、そのままアイアンクローで締め上げる。

ダダダダダダダダダダダダダ!

しかし次の瞬間、集約された弾丸がブリザードの向こうから神皇機の腕の一点めがけ打ち放たれた。

「ちぃ!」

ブチ!
                             
伸び切って薄くなった装甲では耐え切れずバクジンの片腕が千切れる。                      

「富士!」

「・・・・・大丈夫か・・」

腕を破壊されたバクジンのカバーに回るためリュウジンとジュウジンが脇に立つ。

その隙に残りの神皇機も距離をとって三機と対峙した。

「ああ・・・大丈夫だ。」

「しかし・・前回の砂漠戦の時と言い、この馬鹿みたいな射撃能力。まさか・・」

「・・・・有り得る事だ・・・奴が・・・身を奉げたのは・・・確か・・・」

バシュュュュュン!

「!」

ジュウジンめがけ一束のビームが打ち込まれ、ジュウジンの機体すれすれの所を通過する。

「身を奉げたって・・・そんな表現は私に対していらない誤解を招かせるわよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

諏訪が沈黙し、

「その声にその射撃能力!、やはりお前か!黒木!」

大島が声に向かって叫んだ。

ヒョォォォォォォォ・・・・

次の瞬間ブリザードが止み、相手の姿が見えてきた。

「!?」

「ありゃあ確か、戦神が前に乗ってた・・・」

「サレナ・・・だったか・・・」

そこには迷彩柄で、両手に大降りの銃を二丁持った、サレナに酷似したモノアイの機体がいた。

ブォン・・・

「お久しぶり。」

三機に対して映像通信が入る。

映ったのは黒髪に白のメッシュの長髪、冷静な顔立ちの美女だった。しかし、顔立ち以上に右目に着けている黒い眼帯が目立つ。

「黒木・・・挨拶にしちゃあ物騒だな。いきなり人の片腕を吹っ飛ばすとは。」

「再会は派手なほうが良いでしょ?」

少し笑みを浮かべ黒木が答える。

「・・・・・度合いによる・・・それより・・貴様には・・・説明してもらいたいことがある・・・」

「それはこっちの台詞よ。あんたたちこそ、校長が死んでから木星の片隅でくすぶってたでしょ?何で今、地球で暴れてるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

校長といわれたとたん、諏訪が沈黙する。

「校長は死んでねえだろうが!行方不明だ!それより黒木!なんだその機体は!サレナのパチモンか?」

大島が少し強引に話を変える。

「失礼ね、一応この機体もサレナの亜種よ。名前は『陽炎』、ま、私好みに改造してもらったから別物だけどね。」

「陽炎・・・確かに・・・砂漠での・・・出現の仕方は・・名を現していた・・」

「ありがとう。さてと、貴方たちの機体は?随分変わった機体だけど?」

黒木が三機に目を向ける、見慣れない機体に興味があるようだ。

「俺のは『リュウジン』。」

「俺が乗ってるのは『バクジン』だ。」

「・・・・・『ジュウジン』・・・」

三人がそれぞれ名乗った後、

「それ以上はノーコメントで。」

大島が締めた。

「さて、じゃあ再会を機に殺りあいますか?どうせ戦闘目的で喧嘩ふっかけってきたんだろ?」

「・・・・・ま、交渉しあうのも時間の無駄ね。双方とも引けない理由があるだろうし。」

「よくわかってんじゃねえか。」

「・・・・・・多言は無駄か・・・・・・・」

四者四様それぞれの割り切ったセリフと共に再び戦闘が始まった。




神皇機が向かってくると同時に、ジュウジンが突っ込み、片腕のバクジンが後衛にまわろうとするが

ダダダダダダダダダ!

その隙を突き陽炎からバクジンめがけ右の銃から実弾の連射が放たれる。

カンカンカンカンカン!

しかしリュウジンが鎖を振り回し弾を弾いた。

「すまん・・・」

「油断はまずいから・・・アイツは狡猾、奸智、性悪、銃マニアだからな・・・ここは俺に任せてお前はあの乱戦に乱入を!」

少し離れたところではジュウジンが神皇機十機に囲まれ苦戦していた。

「片腕無しでもあの乱戦中なら陽炎に狙撃されることもない!」

「いや・・・しかし」

バシュウ!!

富士がためらっている間にリュウジンめがけ、陽炎の左の銃から集束ビームが放たれる。

「のわっ!」

リュウジンが間一髪、擦れ擦れの所で避ける。

「狡猾、奸智はともかく・・・性悪と銃マニアはどう言う事?」

凄まじい殺気を放つ陽炎と、リュウジンが対峙する。

「いや・・・つい本音が・・富士やっぱり手伝ってくんない?」

「!諏訪がピンチだ!片腕では不安だがここは玉砕覚悟で神皇機どもをぶちのめして来るぜ!」

やけにわざとらしいセリフを残してバクジンがジュウジンの援護に向かう。

「ほんとに変わらないわね・・あんた達・・」

黒木の顔が一瞬優しくなるが、

「しかし、いつまでも昔を背負わない!」

そう言い放つと陽炎は右の実弾銃を連射した。

「人の根っこはそう簡単に変わるもんじゃないだろ!」

リュウジンも負けずに鋲を投げつける。

バシッ!

             チュン!

それぞれの攻撃が肩をかすると同時に、リュウジンが陽炎に鎖を放つが、

「甘いわ!」

ダダダダダダダダダダダダダ!

右の銃の連射で鎖の軌道を変え、打ち落とし、

バシュゥゥゥゥゥゥゥ!

左の銃からビームを発射する。

ガガガガガガガ!

リュウジンが身をよじるが間に合わず、肩の装甲を削る。

「のわっ!?・・・・・・・くそ!あいつとあの機体、相性よすぎるぜ!諏訪!富士!どっちか援護にこれないか!?」

「無茶ぬかすなや!」

「・・・・そんな余裕はない・・・」

ジュウジンとバクジンも神皇機に押されていた。相手も十機から七機に数は減っていたが、全体的に二機が押されている、

三機ならともかく、どうやら二機では流石に数の原理に勝てないらしい。

「あー!八方ふさがりかよ!」

「・・・・ワザとそんなわかり易いセリフ言っても引っかかんないわよ。あんた達と何年付き合ってたと思ってんの?

 どうせなんかたくらんでんでしょ?」

一切動揺せず、陽炎が二丁の銃をリュウジンへと向ける。

「黒木、人を信じられないのは、とても醜いことだとおもわないか?」

「いや、今更そんな事言われてもね。撃ち抜かれる前になにか言いたい事は?」

「・・・・・・・・性悪銃マニア・・」

「・・・・どうやら命はいらないみたいね。」

「なぜ聞こえた!」

「ま、付合うのもここまで。・・・・死になさい。」

バシュゥゥゥゥゥゥ

ダダダダダダダダダダダ!

陽炎の左右の銃からビームと実弾が一斉に放たれる。

しかしリュウジンは微動だにしない、

「ふふふ・・・・お前はいつもそうだ。俺の事を読みきった様で読みきれてない・・・」

ピンチのはずなのに大島が余裕を持って言い放つ。

「?」

「俺の鎖はしぶといんだよ!」

グッ!

リュウジンが右手の鎖を引っ張ると、

ザバァァァァァァ!

鎖に引っかかった巨大オケラの残骸が、陽炎の斜線上に飛び出してきた。

「!」

ドゴォォォォォン!!

残骸に動力部かミサイルのうち残しでも残っていたのか、予想以上の爆発が起こり、周りを噴煙が覆い視界がふさがる。

「富士!諏訪!海中に逃げろ!海中なら俺らのほうが上だ!」

大島が叫び、

「おっしゃあ!」

「・・・・水中は・・・俺の庭・・・・」

富士、諏訪のセリフの直後、

ボチャン!     ドボン!      ボチャン!

何か大きな物が水に飛び込む音が聞こえる。

「くっ!やってくれるわね・・・・」

「隊長!追いますか?」

神皇機の一体が黒木に判断を求める。

「・・・・・ちょっと人数を確認してみて。」

「えっ、あ、はい・・・・・・・!自軍三機足りません!」

「煙のドサクサ紛れに三機海に叩き落して海中に逃げた振りをしたのよ・・・すぐ分散して周りを散策!味方機の救助は後回しで!」

「わかりました!」

残り四機の神皇機が探索のため散っていく。

「ふふふ・・・そう簡単にうまくいかせないわよ・・・」

そう言い残し陽炎も散策へと向かった。





「・・・・・・・・・・・どうやらばれなかったみたいだな。」

「たぶん三機をおとりにして逃げたと思ってんだろうぜ。」

「・・・・三人寄れば文殊の知恵・・・いくら奴の頭が切れようとも・・・ここまでは読めない・・・」

黒木の予想に反し三人は海中にいた、海底には三機の神皇機が沈んでいる。

視界がふさがった瞬間、三機は自分に一番近いところにいた神皇機を捕まえ、

リュウジンはパワーボム、バクジンはワンハンドチョークスラム、ジュウジンはイヅナ落としで三機を道連れに海中へと飛び込んだのだ。

「黒木が気付く前にさっさと逃げるぞ。あ、お前自分の腕拾ってけよ、いっちゃんの手間がはぶけんだろ。」

「あいよ。しかし・・・厄介な奴とやりあうことになったな。」

「・・・・・これも運命か・・・・・」

三機はそう言い残し消えていった・・・・





陰月の格納庫で市川がバクジンの腕を修理している、そこに富士がやって来た。

「市川、なんか手伝うことあるか?」

「・・・・・・とりあえず無いですが・・・ちょっと聞きたい事があるんですが。」

「なんだ?」

「木星第五士官学校一期生って・・何者なんですか。」

「急にどうしたんだ?」

「黒木さんでしたっけ?あの化け物みたいな射撃能力は何なんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「教えてください。木星第五士官学校一期生について、ここまでの人材を多数生み出した過去を。」

「・・・・・良いだろう。そろそろお前も知っておいたほうが良いだろうしな・・・ただし・・」

「ただし?」

「少し長くて・・悲しい話だぞ・・・」




〜続く〜





後書き

設定や伏線については次回で大幅に消化されます。なので今回は多くを語りません。

それでは次回またお会いしましょう。

 

 

 

代理人の感想

女だったかーっ!

ううむ、こりゃ意外や意外。

男塾みたいなところ想像してましたからねぇ・・・・・(爆)