「ふーん、どうやら巨大虫型兵器はあらかた片付いたみたいね。報告書にも誤字脱字無しと」
艦長室の机に積み重ねられた数枚の紙をピックアップしながら満足げに呟く東舞歌。
しかしその表情が一変、何とも言えぬ微妙な物へと変わっていく。
「……あー千沙? 」
「なんでしょう? 舞歌さま? 」
同じく微妙な表情でそれに答える各務千沙、その表情からすると上司の問いとおなじ疑問を彼女も抱いていたようだ。
「この報告書の怪人マスク・ザ・ガンガーって何? 」
「さあ……? 」
「木星の都市伝説っぽいのでそんなの居なかったっけ? ホラ、人さらいの激我仮面」
「知りません」
「あれ? そう? 私が学生の頃結構噂になったんだけど」
微妙な表情のまま唸る舞歌、それに助け舟を出すように千沙が話しかける。
「本人達に聞くのが一番いいかと思いますが」
「それもそうね、じゃあ早速繋げてくれる? 」
回線をつなぎ虚空に浮かぶモニター、そこに映し出されたのは極寒吹雪く雪景色、何処からかワオーンと狼の鳴き声が聞こえる。
「……戦艦に繋げたのよね」
「……なんか回線が外部に繋がっているような」
少し晴れる吹雪、その向こうでは巨大なシベリア熊と4人の人間が戦っていた。
『クソ! なかなかやるぞこの熊!! 』
『ガオオオオオオオオオ!!』
『興奮してやがる、気い抜いたらコッチが餌にされるぞ』
『……俺が口火を切る……隙を見て……攻めろ』
『諏訪さん無理ですよ! 熊って強いんですよ!? 食料一つに命かけてどうするんですか!? 』
『だがアイツを倒せば一ヶ月は賄えるんだ、金が無い今はそうするしかない!! 逝け! 諏訪! お前の骨は俺が拾う!! 』
『ガルルルー』
『やべえぞ! 血の匂いに引かれて狼の群れが! 助けてゴバルスキー!! 』
『誰だソイツは! おーし今日は熊鍋と犬鍋でいくか』
『逃げるって選択肢は無いんですか!? 』
プツン……
どちらとも無しに通信を切る、消えかける画面の向こうで長髪の人間が熊に吹っ飛ばされていたが幻影だろう。
「後にしましょう」
「そうですね」
黙々と仕事を始める両者、追い詰められた人間は何をするかわからないという如実な例を垣間見たような気がした。
最近忙しくて彼らへの補給や何やらの手続きを忘れていたような気がするが多分記憶違いだろう。
三軍神参上!!
第十三話
「ほんとスゲエな……黒色の配色でまとめられている辺りが限定版って感じでそそるぜ……」
目の前の男が被る黒系配色を基調としたゲキガンガーを模した仮面を完全に惚れた眼で見つめるガイ、対するマスク・ザ・ガンガーは片や値踏みするような眼でガイを見やる。
そしてガイが再び仮面を触ろうとした瞬間、ガンガーのマントが翻りガイを包み込む。
何事も無かったかのように歩き出すガンガー、ガイの姿は存在が幻であったかのように見事に姿を消していた。
忙しい工具音が鳴り響き、それ負けじと男達の怒号が聞こえる。
ここは格納庫、油の匂いが充満しところせましと整備員達が駆け巡るもう一つの戦場。
そんな中一人の男が悠然と喧騒を無視しその中央に進み出る。
「な、なんだアイツ? 」
「ヤマダ? いや黒いからアキトか? 」
ざわつく整備員達、ガンガーの来訪は喧騒を止めるには十分な効果があった。
静寂を他所に辺りを見回すガンガー、その視線の先にはカスタムエステバリスがそして――
「オイオイオイ、随分手の込んだ造形のモン持ってきたじゃねえか!」
ファンとしての視線では無く一人の職人としての視線で仮面を見つめるウリバタケの姿があった。
そのまま皆が変な存在に引く中、一人だけ嬉しげに駆け寄ってくるガレキ職人。
「いいねえ、手が込んでて製作者の愛が伝わる一品だなあ。ちょっと貸してくれ、細かいトコが見たいからよ」
それに答えるように再びマントを翻すガンガー、ウリバタケがガイと同じ運命をたどるかと思われたその時、
「させるか!! 」
サングラスの乱入者の飛び蹴りがガンガーの頭部に突き刺さった。
ウリバタケの脇をちょうど良くすり抜け吹き飛ばされるガンガー、その勢いは工具棚に突っ込む事で止められた。
「お、おい。いきなりなんなんだナオ? 」
「逃げろ班長!! コイツはヤバイ!! 」
先程のガイがマントに呑まれる光景はオモイカネを通じ取り急ぎ警備班的な立場の人間全てにその情報が伝えられた、既に関係各所にも伝える準備は出来ている。
コンピューター制御の戦艦は振って湧いたような潜入者の存在も見逃さない。
「ヤバイのかよアイツ!! でもよあんな一撃くらったら流石に……」
格好の滑稽さからかその存在の恐ろしさが今ひとつ認識できないウリバタケ、しかしその油断は一気に吹き飛ばされた。
浮き上がる巨大な工具棚、それを片腕で持ち上げるガンガー、その光景は明らかにバランスに欠けた異様な物だった
「あれってよお……中が空でも持ち上げる時リフトつかわにゃ動かないんだが」
「ははは、どうやら俺はトンでもない化け物に喧嘩売ったみたいだなあ」
あまりに常識ハズレな光景に逆に落ち着く二人。
その平穏が気に入らなかったのかガンガーはその手に差し上げていた工具棚を思いっきり二人に向けぶん投げた。
「のおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「伏せろー!! 」
ナオが瞬時にウリバタケの頭を押さえ地面へと伏せる、地面ギリギリを平行に飛んで行く工具箱はそのまま壁にぶつかり爆砕する。
ゆらりと幽鬼のような足取りで二人へと近づくガンガー、その無機質な眼に写るのは完全なる殺意。
「整備班は逃げてくれ……アイツは俺がくい止める」
その殺気を外しながら立ち上がるナオ、その横顔には軽い冷や汗が流れていた。
「……わかった。死ぬんじゃねえぞナオ」
自身にできる事は無い、悔しいが出来るのは逃亡のみ、既に他の整備員達は入り口に向かい走っている。
だが雑魚は不要とばかりの足取りで二人へと近づき懐から大鎌を取り出すガンガー、その射竦めるオーラには死神を気取る資格が十分に有る。
「……無理かも」
「ナオ! 」
バチーン!!
気に呑まれそうになったナオの横っ面を張り飛ばすウリバタケ。
「気合いれろ! お前は強いんだ! 自信もちやがれ!! 」
そういって背を向け走るウリバタケ、紅葉を残す一撃、だがそこに有るのは痛みではなく吹っ切れた事によるある種の爽快感。
「そうだな……俺は強いんだよな。回りが規格外ばっかなんで忘れてたぜ」
右腕を懐に入れた変わった構えをとるナオ、刹那、死神がソレを待ち構えていたかのように奔った――
ナオの眼前に迫り鎌を縦に振るうガンガー、だがそれに怯む事無くナオは逆に左肩を突き出し体をガンガーへと滑り込ませた。
ボキ!
刃に当たることは無いものの柄の棒が盾となったナオの左肩を容易く砕く。
「クッ……痛てえなオイ!! 」
体勢を崩されるがなんとか右腕を引き出し拳銃を取り出す。
響く銃声に揺らぐ体、拳銃による一撃はほぼ零距離でガンガーの体に撃ち込まれていた。
その揺らぐ一瞬の隙を突きガンガーの喉元を拳銃で思いっ切りカチ上げる、そしてそのまま上がった手で振り下ろすように拳銃で殴り付ける。
単純な殴打による勢いある一撃に膝を付く死神、ナオは休む事無くその膝を踏み台にしてシャイニングウィザードの要領でこめかみに強烈な膝蹴りを放つ。
しかし攻勢は続かず、届く前に空いた手でその膝を鷲掴みにされる。
今までの攻勢など無かったかのようにそのまま無言で立ち上がるガンガー、その手には逆さ吊りにされたナオが居る。
そのまま人をぶら下げた腕を思いっ切り縦に振るう、ナオの体は凄まじい勢いで床に叩きつけられた。
「ぐお……」
体に響き渡る痛みに思わず漏れる苦痛の声、しかしガンガーはそこで掴みを緩めずに腕を上に振るった所で一気に離した。
飛んでいく体、重力無視の飛び方でそのまま天井へと叩きつけられる。
しかし重力のせいで衝撃が弱められたのか衝撃音は先程の一撃に明らかに劣る。
ただ体は重力に従いそのまま落ちて来た。
それに合わせガンガーが大鎌を差し上げ跳ぶ、宙を舞うナオの体を途中で追い越し天井を足場に使い勢いを増して落下という重力無視の動きでその首を狙う。
振るわれる大鎌を追従する様に光る閃光、しかしその光は首に届く一寸手前で掻き消えた。
断ち切られていた大鎌の柄、刃は落ち鎌はただの棒へと存在を落とす。
意思無き怪人に一瞬生まれる動揺、そこを突くかのように巨大な弾頭がその体に打ち込まれた。
「……!」
炎上し吹き飛ばされるガンガー、その体は焼けたまま地面へと落ちる。
「やれやれ困りますねえ外来者はちゃんと入艦手続きを取って貰わないと」
「ミスター……いきなりナパーム弾を撃ち込んでから言うセリフではないぞ」
大振りなグレネードランチャーを抱えるプロスペクターと落下するナオの体を抱きとめたゴート、修羅場に慣れた様子で目の前の怪人を見やる。
「しかし何処の方ですかな? 」
「木星だろう、あんな格好をするのはそれ以外に考えられん」
炎を払い起き上がる死神を尻目に平然と会話をする二人、それに怒りを感じたのかガンガーの視線が二人へと向けられる。
「あ、そこの貴方。私たちに構っている暇は無いですよ」
プロスの年上じみた忠告、ガンガーの真上には先程鎌を断ち切った存在が刃を構え襲いかかろうとしていた。
「うおおおおおおおおお!! 」
気合と共に振りかざされるDFS、急いで飛び退く獲物、だがその閃光の如き一撃は見事に標的の体に縦一文字の傷をつける。
そのまま着地のタイムラグ無しに退いたガンガーに向かい跳びかかるテンカワ=アキト、それに対しガンガーは棒となった鎌を槍の様に構え迎え撃つ。
直後無数に突き出される棒、その連打は明らかに今までの鎌の振り等比べ物にならない速度を持っていた。
それを横に跳ぶ形で避けるアキト、だがそれを読んでいたのか棒は追う様に横に薙ぎ払われる。
アキトの手に持つDFSを弾き飛ばし腹に叩き付けられる棒、その体は勢いにまかせ遠くへと吹き飛んだ。
「なんと! アキトさんが? 」
「ううむ……中々の技だな、あれと怪物的な身体能力が備わればテンカワや羅刹に匹敵……」
「それは無理だな」
動揺する二人、そんな中ゴートに抱きかかえられていたナオが眼を覚まし、痛む体を押し立ち上がる。
「ナオさん? 大丈夫ですか? 」
「あいつは確かに強い、だけど読みが単純すぎる。アキトが吹き飛ばされた位置を見てみろよ」
「なるほどな」
「確かに読めてませんねえ」
アキトが寝る位置の近くにある物を見て納得する二人。
「人間としての予測機能が無い奴じゃあアキトにも北斗にも勝てない、サイボーグじゃ自身の有り方に悩むぐらいの感情はあるブーステッドマンにも勝てないぜ」
皮肉げに口を歪ませるナオ、その顔には勝利への確信が見て取れた。
うつ伏せに寝るアキトへと駆けるガンガー、棒を振りかぶり延髄を砕こうと狙う。
「今だ! ブロス! ディア! 」
叫ぶアキト、その瞬間アキトの背後に位置していたブローディアの眼に光が灯り動き出す。
それを見て一瞬動きが止まるガンガー、そんな事なぞ気にせずにブローディアは片手を突き出しガンガーを捕まえる。
『へへ〜ん大成功! やったねアキト兄』
『大丈夫? アキト兄? 』
ブローディアの内蔵AIであるディアとブロスがそれぞれ対照的に己が主へ問いかける。
「ああ、大丈夫だ」
何事も無かったかのように立ち上がるアキト、まだまだ余裕はあるらしい。
動こうとするガンガー、しかしその体はブローデイアの片手に掴まれ身動きが取れない。
『動くな! 動くと握りつぶすよ! 』
「まてディア、ガイがさらわれたんだ。場所を聞いていないのに握りつぶしたら手がかりが途絶える」
「なるほど捕獲しようとしてたからわざと一撃を容易く受けた訳ですな」
「ええ、ガイの居場所を聞き出さないと助けられませんからね」
本気で握りつぶそうとしたディアを慌てて止めるアキト、そのせいで一瞬ブローディアの片手の拘束が緩くなる。
瞬間、ガンガーは右腕をマントの端と共に抜き出し巨大に広がったマントをブローディアの顔面を覆う様に投げた。
『マントでか!! 』
『きっと体にたくさん巻いてたんだよ』
胎動するマント、そしてその漆黒のような布から生えるようにして未塗装の機動兵器の腕が突き出される。
その腕は正確に無防備なブローディアの顔面を捕らえた。
『キャァァァァァァァァ……』
『うわーーーーーーーーー』
吹き飛ばされるブローディア、その隙にガンガーは拘束を抜け出しアキトに向かい飛び蹴りを放つ。
しかしそれに気付きガードを固めるアキト、中空からの蹴りを腕一つで空中へ弾き返してしまった。
「くそ……ディア! ブロス! 大丈夫か! 」
吹き飛ばされた自身の子供とも言える存在に慌てて声をかけるアキト、一瞬ガンガーから注意をそらしてしまう。
「アキト! 上だぁぁぁぁぁぁぁ!! 」
ナオの叫びに注意を取り戻し上空を見やる、そこでは弾き返されたはずのガンガーが綺麗に弧を描く様に跳んでいる。
「まさか……」
「反転キックか!?」
アダルト二人がその技の実に気付いた時には、再びガンガーの飛び蹴りがアキトに向かい凄まじい速度で突き刺さろうとしていた。
「ちぃ! 」
再び腕を固め叩き落そうとするアキト、しかし今度の蹴りはそのガードを容易く破りアキトの体へ足刀を炸裂させる。
ほとんど地面を擦るような勢いで吹き飛んでいくアキトの体、その勢いは壁にぶつかっても止まずにそのまま壁を貫通し消えてしまった。
「アキトさん!? 」
「成る程な……幾重にも巻いたマントを取った姿はヒーロ……だからあんな技使いやがったのか」
マントが外れた事によりあらわになったガンガーの体、それは黒いボディースーツで覆われており各部には黒光りする鉄製のアクセサリー、その姿はまるで特撮のヒーローのような格好。
そのまま地面に落ちたマントを拾い駆けるガンガー、そのまま跳躍、マントを大きく広げダウンから立ち上がろうとしているブローディアに勢い良く覆い被せた。
マントの中へと消えていく機体、あっという間に先程のガイと同じ様にブローディアも消えてしまった。
「なんと……ブローディアまでもですか」
「ぬう、手品とかの次元ではないな」
「前言撤回する、アイツは強い、あそこまで改造されて変な道具もってりゃ先読みする必要ないぜ」
少し離れていたせいか冷静な眼で目の前の非現実的な光景を見つめる三人。
其れを無視しガンガーは落ちたマントを再び翻し身にまとう、まるで仕事は終えたと言わんばかりに。
しかし其れを許さぬように何かオーラのような物を纏った弾丸がガンガーへと襲い掛かった、それを首の動作で避けるガンガー、だが弾丸は掠めただけでガンガーの仮面の右目の辺りを大きく砕いた。
「……」
倒れる事は無かったがよろめくガンガー、破壊された部分から少し痛んだ黒髪と怨念に塗れた眼が姿を現す。
「ただで帰れると……思うなよ」
壁の向こうからよろよろと姿を現すアキト、その手には細部を細かく改造された拳銃が握られている。
「あれは……確か試作型のフェザーブラスターじゃねえか、どっからあんな物……」
「ああ、それはアレですよ」
ちょいちょいとアキトの吹き飛んだ辺りを指差すプロス、その指の先には最早瓦礫と化した『瓜畑秘密研究所』の文字があった。
「このブローディアとかいう機体は解る……だがコイツは誰だ? 」
「ああこの方は確かヤマダ=ジロウさんですね、確かナデシコのパイロットの一人です」
「私はテンカワ=アキトを連れて来いと言ったんだ!! 生身でも超人的なあの男を!! 」
「まあまあ……彼も十分優秀な人ですよ、それに生命力は怪物の域に達していると聞きます。素体の資格は十分かと」
「なるほどな、ならば良し。リクガンは手術室にコイツを運べ! ウミガンはガンガーに撤退命令を出せ! 」
睨みあう両者、その視線に共通する物は殺気、全てを射殺そうとするまでの怨念。
引いたほうが負ける視殺戦、だがそのぶつかり合いは急に片方が無機質な眼になった事で意味を失う。
すっとマントを引くガンガー、
「待て! 」
アキトの恫喝が格納庫に響くがその姿は陽炎のように殺気も残さずあっさりと消えてしまった。
後に残されたのはいたる所にある破壊痕に煙のように現れた死神への困惑、恨み、怒り。
そして床に転がる仮面の破片――
「……美味い……スジばっていて……俺好みだ」
「ふ、調理に手間をかけたからな。犬とて調理法を工夫すれば一級の食材になると山岡さんも言っていた」
「ほんといけるなあコレ。今度シャクヤクに帰還する時手土産に持っていくか鍋用に下ごしらえして」
「いやー熊は良いと思うんですが狼はどうかと。何だかんだいって犬ですし、女性の方が多いシャクヤクでは受ける食材じゃないですよ」
「そうだなあ、じゃあくっちまうべ。なんか持ち込むとエライめに会いそうな気がするし」
ばくばくと戦艦のブリッジにコタツを持ち込み肉鍋を喰らう大島、諏訪、富士の3人に+1の市川、どうやら生命としての生存を賭けた勝負には見事勝利したようだ。
「しかし激我仮面が今頃出現するなんてなあ」
富士が嘆息し呟く、その眼にはなにか遠くを見るような懐かしい物になっている。
「ちがうってばよ。マスク・ザ・ガンガー、俺がせっかく命名した意味がなくなるじゃないか」
「……第一……激我仮面なぞ聞いた事がない……」
「ああ、おまえらは世代的にな。アレはもう一世代上で流行った怪談だ、友情無き人間は激我仮面にさらわれるってな」
「じゃあ知ってる人間はある程度トシなわけだ」
平穏な会話を続けながらも鍋の上では箸によるチャンバラが繰り広げられている、必殺肉隠しや奪い箸が飛び交う様は正にヴァーリトゥード、気弱の部類に入る市川は既に肉をあきらめ野菜に集中している。
「そうだよ俺はもうちょっとで三十路だよチクショウ……まあでも木星で流行ったのは怪談、俺達が探してるのは現実の殺人鬼だ」
「いいんですか? 命令も無しに追跡なんかして」
「いいんだよ、状況からして巨大バッタと激我仮面は関連性がありそうだ。後顧の憂いは絶っておいたほうがいいだろ、それに跳躍の形跡が薄すぎて時間を置いていたら辿れなかったしな」
「……確か……もう直ぐ……だな……」
「さあてと、乱闘前に栄養付けたし行きますかぁ!! 」
モニターに眼をやる四人、そこにはブリザードに包まれた極寒の廃都市の姿が有った。
あとがき
ふじい「よかったじゃないか! 出番があったぞ!! 」
大島「CIMA直伝一撃必殺シュバイィィィィィン!! 」
ふじい「ぐはあ! 」
大島「熊と戦って肉食ってただけじゃねえか! 俺のイメージステカセキングにやられたウォーズマン並みにガタおちだよ! 」
ふじい「いやーお前ら最初から底値だし、小学生にガチで負けた紅赤朱のお嬢様の胸並みに登場から今までまったいらに」
大島「はははー微妙に死にたーい」
ふじい「ま、それはそれとして」
大島「IT,s! 始まるよ! 」
ふじい「話題転換を始まりにしないでくださいと……まあいいや好きにやってくれ」
大島「おお、気前が良いじゃん。でもさなんで? 」
ふじい(妙に優しい眼をして見つめる)
大島「なんだその『この人は明日死ぬんだから好きにやらせてやろう』みたいな悲しい眼は」
ふじい「……さよなら! 」
大島「おいちょっと待て逃げるな! 俺ひょっとして次回やばいのか!? むしろヤマダの方がって、おい……」
(声が徐々にフェードアウト、それと同じスピードで幕も下りていく)
PCが起動する時に「It's!」と喋らせている代理人の感想
ま、それはそれとして!
行動は死神っぽいんだけどやっぱなんつーか緊迫感が(爆)。
ここは一発イメージを吹き飛ばすほどの迫力ある文章で乗り切って欲しいところです。