アクエリアンナデシコ
 

                3話  熱き男たち
 

アキトとラピスが一緒に生活を始め、数日が過ぎた。
懸念していたWIZ−DOMも姿をあらわさず、平和な一時を送っていた。


「ほら、アキト早く、早く!」
「そんなに急がなくても大丈夫だって。」
ここ数日の二人の働きぶりにホウメイより臨時のバイト料を貰い、二人は繁華街に買い物をしに来ていた。

いろいろ見て周り、それぞれが買い物を済ませて、二人はベンチで一息ついていた。
「ふうー、疲れた。」
「結構見て周ったもんね。じゃあ、ワタシ、ジュースでも買ってくるよ。」
「うん、お願いするよ。」
「じゃあ、行ってくるね。」
そう言ってラピスはジュースを買いに行った。



そんな二人を車の中から監視する、二人の男がいた。
「ふむ、どうやらあのお二人のようですね。」
メガネを掛け、ちょび髭の男がアキトたちを見ながら、もう一人いる、体格のいい男に言った。
「・・・。」
「どうやら、少年の方がマインドブレイカーで、女の子の方はダークロアのようですね。」
「・・・。」
「おや、女の子が離れていきますね。」
「・・・。」
「・・・ゴートさん、少しは返事を・・・。」
相手が返事をしないのでメガネの男はゴートと呼んだ男を見ると、
「・・・ZZZzzz・・・。」
熟睡していた。
「はあー、ゴートさん寝てないでちゃんと仕事をしてください!」
そう言いながらメガネの男はゴートの体を揺らした。
体を揺らした拍子に頭を”ゴン、ゴン、ゴン”と車内にぶつけた。

「はっ!」
何度目か頭をぶつけた所でようやく目が覚めたゴートは、一人でいるアキトを凝視した。
「ふう、ようやく目が覚めましたね。どうやら、あの少年が会長の言っていたマインドブレイカーのようです。」
「・・・・・・。」
「・・・あの〜、ゴートさん?」
「・・・。」
起きたゴートにメガネの男は説明をするが、返事をせずアキトを凝視したままだった。

数分後、ゴートはいきなり車外に出ようとし始めた。
「ミスター、では行ってくる。」
「あ、あの、ゴートさんどちらに?」
「あの、少年の所に。」
「ちょ、ちょっと待ってください、ゴートさん、私たちの仕事は彼らの監視ですよ!」
「さきほど、わが神より神託が下った。あの少年をわが教団に勧誘せよとのお告げが!」
「い、いや、し、神託って、ちょ、ちょっとまってください、ゴートさん。」
ゴートはメガネの男の静止を聞かずに、アキトのいるほう歩いていった。


「ラピス、どこまでジュースを買いに行ったんだろ?」
アキトは、そう言いながらラピスが行ったほうを見ていたら、体格のいい男が目の前にいて、自分を見ていた。
「・・・あ、あの、な、なにか?」
アキトは恐る恐る、目の前の男に聞いてみた。
「少年よ、神を信じるか?」
「へぇ?」
「神を信じるか?」
「え、い、いや、べ、別に、え、えーと、と、特には・・・。」
「それはいかん!」
「うわっ!」
そう言って男は、アキトの肩を両手で掴んで、叫んだ。
「さきほど、わが神より神託受けた。そして、君をわが教団に迎えよと!そうすれば、わが教団はさらなる繁栄をするであろうと!」
「い、いや、神託とか、教団とか興味ないんですけど・・・。」
「なにを言う!君はわが神に選ばれたのだぞ!さあ、今すぐ神の洗礼を!さあ、さあ、さあ!」
「い、いや、結構です。」
「さあ、行こう!わが神の待つ、ユートピうおっ!」
アキトを何処かへ、連れていこうとしたとき、いきなり、男が奇声をあげながら数センチ、飛び上がって股間を押さえながら
転がり始めた。
「なーに、こいつ?」
アキトは声のほうを向くと、ラピスが両手にトマトジュースを持って立っていた。
「い、いや、なんかの勧誘みたいだけど・・・、ラピス、なにやったの?」
「別に、ただ後ろから蹴りを入れただけだよ。」
「後ろから蹴りって・・・。」
「ちょっと、ジャンプしながら入れたけど。」
「そ、そう・・・。」
アキトはまだ転がり続けている男を同情の眼差しで見た。
「それより、もう行こうよ。こんなのに関わりたくないし。」
「・・・そうだね、行こうか。」
「うん、行こう。」
そう言って、アキトとラピスは荷物を持って歩いていった。


男は転がるをやめたが、いまだ、うずくまったままでいた。
「ゴートさん、大丈夫ですか?」
いつのまにかメガネの男が来て、ゴートにたずねた。
「まったく、一応われわれの仕事のことも考えてください。大事にはなりませんでしたが、もしばれたりしたらどうするんですか?」
「うぅぅぅぅ・・・。」
メガネの男は説教を始めるがゴートはうめき声を上げるだけだった。

数分後・・・。

「・・・というわけでゴートさん、下手なことは、しないでくださいね。」
「・・・・・・。」
そう言ってメガネの男は話をしめるが、ゴートはまだうずくまったままでいた。
「・・・ゴートさん、いいかげん起きてください。」
「・・・・・・はっ!」
「ふう、ようやく起きましたね・・・・・ゴートさん?」
起きあがったゴートに声を掛けるが、ゴートは何かを捜しているらしく周りを見まわしていた。
「ミスター、あの少女のは!」
「え?あ、あぁ、あのダークロアの少女ですか?それなら、もう行ってしまいましたよ。」
「くぅ!」
「あの〜、どうかしましたか、ゴートさん?」
「さきほど、またわが神より神託が下ったのだ!」
「ま、またですか。」
「そうだ!わが神はあの少女をいけにえに捧げよと!!」
「いや、捧げよと、いわれましても・・・。」
「こうしてはおれん、すぐに捜しださなければ!」
そう言うが早いかゴートはあさっての方向に駆け出していった。
「ちょっ、ちょっと待ってください、ゴートさん。」
メガネの男もゴートのあとについて走っていった。



夕刻・・・


「けど、昼間の人なんだったんだろ?」
「あれじゃない、気候も暖かくなってきたからね。」
「う〜ん、そういうものかな。」
「そういうものよ。」
アキトとラピスは夕食の買い物をしながら昼間の男のことを話していた。
「けどさー・・・。」
「うん、なに?」
「いや、なんていうか昼間の人、その、この前の女の人と同じような感じがしたような気がして。」
「この前のって、WIZ−DOMの女のこと?」
「うん、たぶんだと思うけど・・・。」
「う〜ん、けど、昼間の人がWIZ−DOMだとして、なんであんな勧誘なんてしたんだろ?」
「さあ〜。」
「・・・まあ、WIZ−DOMがそろそろ動き出したかもしれないかもね。」
「じゃあ、今度から出かけるときは気をつけないといけないかな?」
「まあ、それほど気にすることないと思うけど、どっちにしても、来たら返り討ちにするだけだけどもね。」
「はははは、お手柔らかにたのむよ。」
「まっかせなさい!」
そう言ってラピスは、それなりにふくらみはじめた胸を張ってアキトに答えた。

それから二人は雑談をしながら歩いると、アキトは急になにか違和感を感じて周りを見まわした。
「あれ?」
「ん、どうしたの、アキト?」
「いや、なんかへんな感じがして・・・。」
「へんな感じって・・・、あれ?」
「どうかした?」
「結界の中に入っちゃてる。」
「結界って、この前みたいなやつ?」
「うん、たぶんこの近くで誰かが戦ってるんだと思う。」
そう言って、ラピスは立ち止まり、注意深く周りを見まわした。
”ドッカーーーーン”
「「えっ!」」
ラピスが周りを見まわしてから、1,2分後、いきなり近くに見える公園から爆音とともに火の手が見えた。
アキトはどうすればいいかラピスに聞いてみた。
「ど、どうしよう?」
「ちょっと、様子を見にいきましょう。」
「で、でも。」
「家にも近いし、今後のことを考えると様子だけでも見ておきましょう。」
「・・・・わかった。でも、あぶないことはしないでよ。」
「うん、わかってる、じゃあ、行きましょう。」
そう言って、ラピスは爆音のしたほうに駆け出し、アキトもそれにつづいた。


アキトとラピスがその場所に着いた時、一人の男が半裸の少女になにかを言っていた。
「わははははは、イレイザーのアンドロイドよ、見たか!このガイ様の熱き拳を!」
「・・・・・。」
そう言って、ガイと名乗った男は目の前の少女に言い放った。
少女の方は特に何も言わずに男をにらみつけていた。

そんな二人を物影から見ていたラピスは、男の顔を見て驚いた。
「うそ、なんでヤマダさんがこんな所に?」
「え、あの人と知り合いなの?」
「知り合いってわけでもないけど、あの男の人、ヤマダさんて言って、E・O・Gの人よ。」
「E・O・Gって、この前いっていた・・・。」
「そう、ワタシが所属していた所よ。」
「でも、なんであんな子を?」
「たぶん、あの子がE・O・Gの敵対勢力だからよ。」
「そ、そんな理由で・・・。」
「うん、だからワタシもE・O・Gに戻らなかったのよ。」
「・・・じゃあ、あの子どうなるの?」
「たぶん、やられるわね。」
「そんな・・・、じゃあ、たすけないと!」
「ちょっ、ちょっと待ってよ、アキト!」
アキトはそう言うと近くに落ちていた石を拾うとヤマダに投げつけた。

「イレイザーよ!ガイ様の必殺の一撃を受けて、うぎゃ!」
そう言いいながら、ヤマダは右手で少女を指差したとき、アキトの投げた石が直撃した。

その隙をついてアキトはヤマダの前にいる少女の所に行った。
「きみ、大丈夫!」
アキトは少女に聞いてみるが少女は、答えずアキトを見ていた。

「いたたたた、おい、おまえいきなり、何をするんだ!」
後頭部を押さえながら、少女のもとに来たアキトにヤマダは問いただす。
「何って、おまえこの子に何をするきだっただ。」
「何って、決ってるだろ!そいつを倒すんだよ!うん?きさま、さてはイレイザーの手先だな!」
「イレイザーて、この子が?」
アキトは少女を見るが普通の子にしか見えなかった。
少女もアキトを少し不思議そうな顔をして見ていた。

「しらばっくれても、無駄だ!二人まとめてやっつけてやる!」
そう言うとヤマダは右手を自分の顔の前に持ってきた。
「はあぁぁぁー!俺のこの手が真っ赤に燃える!!」
「え!?」
そう言った瞬間、ヤマダの右手が燃え出した。
「おまえを倒せと激しく燃える!!」
ヤマダがそう言うと右手の炎が、先より激しく燃え出した。

「・・・・。」
「・・・損傷率38%・・・稼働率47%・・・現状では回避不能・・・。」
アキトはその様子を呆然として見ていたが、少女の方は、なにやらぶつぶつと言っていた。

「ひっさぁーーーーつ!ガイ・ファイヤーーーーー・パーーーーンチ!!!」
「ほんと、うるさい人だね。」
「うぎゃーーーーー。」
ヤマダがアキトたちに殴りかかろうとした時、何時の間にかヤマダの後ろに回っていたラピスが槍で一突きした。

「・・・・ね、ねえ、ラピス、その人大丈夫?」
「大丈夫だよ、この人不死身だから。」
動かなくなったヤマダを心配して、アキトはラピスに聞いてみたが、ラピスは特に気にせずに答えた。

「・・・うぐぐぐ、き、きさま、う、後からとは、ひ、卑怯だぞ・・・。」
「うるさいな、えい!」
「うぎゃーーーー!」
なんとか気力を振り絞って起きあがろうとしたヤマダは、ラピスに文句を言うが”うるさい”の一言で槍の一突きを受けて、また倒れた。

「・・・・・。」
「ね、大丈夫だったでしょ。」
「え、ま、まあ、そうだけど・・・。」
「それより、アキト、この子どうするんの?」
「え、ああ、そうだね、えーと、きみ大丈夫?」
ラピスに言われて、アキトは少女に聞いてみた。
「・・・現在、メインバッテリー損傷の為、サブバッテリーにて稼動中、通常移動にも支障あり・・・。」
「え!?」
「ふ〜ん、やっぱり、イレイザーのアンドロイドなんだ。」
「え、アンドロイドって、この子が?」
「うん、外見じゃあ、わからないけどね。」
「そうなんだ・・・。」
「それでこれから、どうするの?」
「う〜ん、この子を家に連れて行こう、動けないみたいだから。」
「ふう、やっぱりね。ま、いっか、じゃあ、ワタシ、荷物を持つからその子をお願いね。」
「うん、わかった。えーと、俺につかまって。」
そう言ってアキトは、アンドロイドの少女に微笑みながら言った。
「・・・りょ、了解・・・。」
少女の方も顔を少し赤らめながら、アキトの言葉に従った。
「ぶう〜、アキト、早く行こう。」
ラピスはそんな二人を見て、頬を膨らませながらアキトを急かした。
「わかった、わかった、じゃあ、行こうか。」
「・・・了解・・・。」
アキトは少女に肩を貸すような感じでラピスのあとについて歩き出した。

その場に、動かなくなったヤマダ、一人残して・・・。



場所が変わって、とある高層ビルの一室でメガネの男が部屋にいる男に報告をしていた。
「それで、どうだった、プロス君。」
「はい、少々トラブルがありましたが確認できました。」
プロスと呼ばれた男は冷汗をかきながら答えた。
「トラブル?ま、いいか、それでどんな子だった。」
「はい、ダークロアの少女を確認しました。」
「ほう、ダークロアか、それで現在の居場所は?」
「はあ、そのことなんですが、その・・・、トラブルがありまして、まだ確認が出来ていません。」
「確認が出来ていないって、珍しいねプロス君にしては。」
「はあ、申し訳ありません。」
「で、いったい、どんなトラブルがあったんだい?」
「それがですね・・・。」
プロスが言おうとした瞬間、ドアが開きゴートがいきなり部屋に入ってきた。
「ゴ、ゴートさん!?い、今は報告中ですから、もう少し待ってください!」
プロスは入ってきたゴートを止めようとするが、それを聞かずにゴートはもう一人の男の前に行った。
「会長!」
「な、なんだい、ゴート君。」
「あの、ダークロアの少女を私にください!」
「え、ゴ、ゴート君、き、君が、そ、そうゆう趣味だとは知らなかったよ。」
と言って、男はゴートから距離をとる。
ゴートの方はあさっての方向に向いて叫び出した。
「あの少女に股間を蹴られたとき、神託が下り、あの少女をいけにえに捧げよと!!」
「し、神託って、ゴート君、またかい。」
「は、こうしてはおれん!すぐに儀式の準備を!!」
言うが早いか、ゴートは急いで部屋から出ていった。
部屋に残された二人は呆然としてドアを見つめていた。

「・・・プロス君、トラブルというのは・・・。」
「はい・・・、また、ゴートさんが・・・・。」
「そうかい、・・・いったい、何がいけなかったんだろうね?」
「・・・さあー。」
「・・・ともかく、その件については、また後日調べてくれ、今はあの男の方に集中してくれ。」
「わかりました。」
そう言うとプロスは部屋から出ていった。



後書き

どうも、冬川です

プロス、ゴート、そして熱き男ヤマダ登場です
プロスとゴートは今後あまり出ませんが、ヤマダはちょくちょく出す予定ですが出るたびにラピスにやられるでしょう
ただ、ヤマダはそのうち、パワーアップをさせる予定です
そうなれば、ラピスといい勝負が出来ますが・・・


今回出てきた人の解説

  プロス   E・O・G属性  クラス  サラリーマン(課長)
        前回、出てきたエリナさんと同じ位の能力者です

  ゴート   WIZ−DOM属性   クラス  司教
        元はE・O・G属性だったけど、会長にマインドブレイクされた際にWIZ−DOM属性にクラスチェンジ
        精神攻撃が得意です

  ヤマダ   E・O・G属性  クラス  ファイア・スターター
        超能力により火を作り出せる人です 
        本来は作り出した火を相手にぶつけたりするのですがヤマダの場合、自分の手に火をまとわせて、殴ります
        その為、耐火性のグローブをはめてます
        特殊能力 精神を集中することにより攻撃力(火を大きくする)を上げることが出来ます
             ヤマダの場合、あの台詞を言わなければ、精神集中が出来ません
             必殺技は”ガイ・ファイア・パンチ”(注 本来のゲームでは必殺技はありません)
                                
  以上です

アキトたちが助けた少女については、次回で


それでは次回で


   

 

代理人の感想

・・・・ガイ、完全にギャグキャラなのな。

パワーアップというと「ヤマダ・ジロウ」が「ダイゴウジ・ガイ」になるとか(爆)?