機動戦艦ナデシコ 劇場版アフター REVENGER AGAIN
第二話 『』
ブラックサレナと夜天光が激突する。
先に拳を打ち込んだのは夜天光だった。
ゴス
夜天光の拳がブラックサレナにめり込む。
(まだ終わっていないな)
グシャァ
遅れてブラックサレナの拳が夜天光に叩き込まれた。
夜天光の胸部が陥没している。あれならパイロットは虫の息か死んでいるか。
「終わったみたいだな」
男はその場を立ち去ろうとした。だが、気配を感じて振り返る。
「列牙どの…」
「たしか、烈風だったな」
そこに立っていた男は先ほどまで機動兵器『六連』で戦っていたはずだ。うまく脱出したようだ。
「どうした?」
「これからどちらへ?」
列牙は火星の後継者が陣取っていた遺跡の方を見た。すべての機動兵器が地に足をつけている。あの電子の妖精とやらの仕業だ。
「ポイントRに向かう。そこに潜伏した後、火星を脱出する」
「ならば私も」
「お前はここまでだ」
「!?」
ズシャ
気持ちの悪い音がして烈風の首が落ちる。列牙の腕から血が滴り落ちて、大地を赤く濡らす。手刀で首を切り落としたのだ。
「お前は北辰の部下だろう。上が死んだのにのこのこ生きているんじゃない」
「なら君はどうなんだい?」
「山崎か」
現れたのは火星の後継者の科学者だった。
「草壁閣下が捕まった今、その部下はどうなる?」
「そんなものは知らん。それに我はあいつが気に入らん」
「偶然だね、僕もなんだ」
「フン、所詮お前は狐よ」
「そう、狐だよ。虎が捕まっちゃったから今度は狼でもそばにつけようかなってね。それにしてもいいのかい?北辰は君のライバルだろ?いちおう」
列牙は倒れている夜天光を見た。すぐに目を離して歩き出す。
「所詮外道は外道、友も好敵手もいない。奴とて花を供えられるよりはののしられた方が成仏できるものよ」
「それもそうだね、それにしてももったいないなぁ。遺跡はまだ調べることがたくさんあったのに」
「なぁに半年、いや一年たたないくらいでまたいじれるようになる。それまで我慢しておけ」
半年後、火星宙域、戦艦『あさぎり』格納庫
「なんだ、これは」
列牙は自分の機体を見た。青い夜天光、それが自分の機体だ。そしてそれは確かにある。あるのだが…
「新兵器の実験です。使いこなすのにある程度の腕が必要なので」
夜天光には巨大なバックパックとブースター、それに巨大なライフルを持っていた。特にバックパックとブースターを合わせると機体そのものと同じくらいの大きさがあり、とてつもなくアンバランスに見える。
「新兵器か…どんなものなんだ?」
「要するにあのバックパックは相転移エンジンです。ジンタイプよりも小型化しましたがそれでもあの大きさです。それに携帯用の重力波砲、機体そのものが重くなってしまったのでブースター」
「使いにくそうだな」
「そうですね、相転移エンジンの出力のほとんどを重力波砲とブースターにまわしてますから歪曲場は夜天光のものと変わりません。ですが以前よりもずっと速くなっていますので列牙殿の腕ならば大丈夫かと」
「そのかわり小回りがきかなくなっているだろう。射撃はあまり好きではないんだがな」
「その辺は我慢してください、夜天光に続く新型が開発中ですから。それにこれにも面白い機能があるんですよ」
「ほう?」
整備兵は手元の書類を見せた。列牙はそれをひったくるように取り、内容を確かめる。
「なんだ?この穴牙というのは」
「ジンタイプのロケットパンチを小型化したものです。敵の歪曲場に六個の小型装置を取り付けて穴を作り出します」
「そこを重力波で狙うというのか?無茶を言う」
「あなたなら可能でしょう?射撃は好きではないが下手ではない。あなた以上の腕を捜せというほうが無理だ」
「試すくらいはしてやろう」
そう言って列牙は夜天光に乗り込んだ。
戦場にはかなり速く着いた。このブースターの大きさは伊達ではないらしい。
味方は…ほぼ壊滅だ。全滅は時間の問題だろう。それも仕方がない、弱ければ死ぬだけだ。
味方の艦を見捨てて敵艦に向かう。歪曲場を作っているが今の装備なら問題ないだろう。
「行け、穴牙」
バックパックから六個の小型ユニットが射出される。それはまっすぐに敵艦に向かっていき歪曲場に取り付いた。接近しながら確認してみる。確かに歪曲場は消えている。ライフルのトリガーを引き、穴に向かって重力波を放つ。
黒い光が穴を通り、命中する。あの場所は格納庫だろうか?
「誘導性に問題があるな。微調整は慣れれば何とかなるか」
二発目を放つ。今度は機関部に当たったようだ。歪曲場が消える。止めをさしておくか。
敵艦の艦首の目の前に来る。ライフルを向けてトリガーを…
敵艦の乗組員が見えた。まだ若い、20いっていないくらいの女だ。必死に祈っている。何をやっているんだ?
戦場で頼りになるのは力だ。正義を振りかざしたところで、神に祈ったところで何も起きはしない。
「死ね」
三度重力波を放つ。艦首が消滅した。痛みを感じないのはせめてもの救いだろう。
さて、残った機動兵器を。
「!?」
夜天光が揺れる。もう一方の機動兵器が体当たりを仕掛けてきた。なかなかの腕前だ、同時にナイフを突き立てている。
取り付いた機動兵器を蹴り飛ばして距離をとる。バランスを崩している相手に重力波を打ち込む。
「惜しかったな、コクピットに当てていれば貴様の勝ちだったろうに」
重力波の直撃を受けてそいつは消滅した。この距離ならば無理もない。さて残った奴を…
またも衝撃、残った奴がバックパックにナイフをつきたてている。
コンピューターが緊急状態を告げる。当たり所が悪かったらしい。バックパックとライフルを排除する。
そいつは何も持たずに突っ込んでくる。バカが。
ミエミエの動きだったので余裕を持って避ける。パイロットの腕は悪くないがまだ荒削りなようだ。それに機体の性能差がある、このあたりが限度だろう。
夜天光の拳を叩き込んでやる。胸部に直撃したようだ。だが、浅い。
もう一発と思ったところで手が止まった。なぜだ?
コンピューターが異常を示している。最初の奴のナイフがきいているらしい。
それに敵の援軍が来ているようだ。あの形は…ナデシコか!
その場を立ち去ろうとする、が、ちょっとした戯言を思いつき敵に通信を入れる。
『命拾いしたな』
なぜこんなことをしようと思ったのか自分でも分からない。まあいい、最近面白いことがなかったせいだろう。
『先ほどの奴に感謝することだ。奴がいなければお前は死んでいた』
相手は今どのような顔をしているだろうか?
『援軍も来ているし、ここは退却させてもらう』
「ガ、フガッ」
声にならない音が聞こえる。食道か肺か、どちらかを傷つけているようだ。このままでは長くないだろうが、今来ている艦が回収すれば生き残るだろう。
『名前を聞きたいか?いいだろう我が名は列牙、坂崎列牙だ』
さて、次に会うときが楽しみだ。復讐の刃を磨いたあいつはどこまで強くなるのか?こんなことを考えるから我は完全な外道でないのだろうな。
『ユリカ、一人だけ生き残っているぞ』
アキトのエステバリスカスタムが夜天光の一撃をうけた量産型を引っ張っている。
「分かったわ、医療班の準備をしてください。私も格納庫に行きます。ラピスちゃん、ちょっとお願いするわ」
「わかった、ユリカ」
ナデシコB艦長、ミスマル・ユリカは格納庫に走っていった。いつもならアキトを迎えに行くのだが、今回は純粋に救出されたパイロットの心配をしていた。
「アキトパイロットの人は?」
格納庫に来たユリカはアキトを見つけて話しかけた。
「もう医療室に行ったよ。怪我はひどいけど、一、二ヶ月ほどの入院かな?それよりも…」
「?」
「あの人の目が気になった」
「目?」
「あの目は以前の俺と同じ目だ。悲しみと絶望と、怒りと復讐に染まった目だ。あのままじゃ、あいつは…」
「だったら、それを助けるのはアキトの役目だよ。アキトはその状態から帰ってきたんだから」
「そうだな、あんなことになるのは俺ひとりで十分だ」
〜あとがき〜
原作キャラをギリギリにすると言いましたが、それはみんなもう帰っているからです。あのメンバーは火星の後継者に対応するため一時的に集められたわけですし、まあ全部入れるのは難しいかなぁと思い。
同時にオリキャラも少なくします。オリキャラばかりだと人物が分かりにくくなると思いますので。
それと今回のことをいくつか。
ユリカがナデシコBに乗っているのはまたスパロボMXラストから持って来ました。
アキトはパイロットです。まだ五感は完全に直っていません。だからラピスもナデシコBに乗っています。
エステバリスカスタムなのはブラックサレナはネルガルが隠したからです。あれはコロニー襲撃したものですから。
この辺でしょうか?続きは速めに書きます。
代理人の感想
会話だけの文章がちょっと気になったり。
それに最後の会話の部分、「間」が空いてないのでアキラピのセリフが棒読みに聞こえます。
折角決めるシーンなのに勿体無いかと。