機動戦艦ナデシコ
白銀と紫炎の双天使
第2話 落ちるサツキミドリ
「っとすると、ディオさん達より更に未来から来たと?」
「そう言う事です。」
プロスの言葉にガーネットが頷く。
「その……貴方達の所属と名前を……」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「はい。」
「それに所属なんて聞いてどうするの?確実に今の時代には無いよ?」
「それでもです。」
プロスは言う、少々興味があるようだ。
「ふぅ……土星親衛機団、
<紫炎の破壊神>ディアボロスのパイロット、アレクサンドラ=アンブローシア。」
「土星親衛機団、<白銀の戦女神>ルシフェルのパイロット、
ガーネット=アンブローシア、歳は15でアレクとは双子の関係。」
アレクとガーネットは名乗る。
「土星……ですか?」
「うん、土星。」
「2209年に土星への移民が開始したんだ………
まぁその後から、地球、火星、木星は敵になったけどね。」
アレクが面倒臭そうに言う。
「何故です?」
「土星は色々あるみたいなんだよね……例えば火星の遺跡と同じ様な物……」
「なんだって!」
ディオが驚いた。
「そして……プラント……」
「そんな!」
ヒスイが驚く。
「プラント?」
「古代火星人……で良いんですか?その人達の遺産の一つです……木星にもあったらしいです。」
「ああ………木星にはプラントがある。」
「プラントとはどのような物なのです?」
プロスが問う。
「ん〜………簡単に言うとプログラムを送ると、
そのプログラム通りの物を造ってくれる施設……ですね、
簡単に言い過ぎてあってないかもしれないけど。」
ガーネットが言う。
「ほう……木星蜥蜴はそこで造られてるようですな?」
「そう考えて良いだろう、ミスター。」
プロスとゴートが話し合う。
「土星にも火星と同じテラ・フォーミングを施したのは良いんだけど……
それが、地球・火星・木星合同連合……
略して地火木連合と土星が対立してしまう要素を創り出す引き金になったんだ。」
アレクがそこで少し区切る。
「テラ・フォーミングでばら撒かれたナノマシンが土星に在った遺跡に接触して、
プログラムが書きかえられて、土星に住む者達に………何かしら異常があったと?」
「そう………正解だよ、ホシノ=ルリ?」
「ヒスイです。」
「失礼、ヒスイさん……貴方の答えは正解だ……
遺跡にプログラムの書き換えられたナノマシンは、
土星に住みそのナノマシンを吸い込んで生きている者達の遺伝子を組み替えた。」
「特にその人達の子供にね。」
ガーネットは少し嫌そうな顔をする。
「………アレク……言うの止めない?」
「隠してて、何かから身を守るためにアレを使って化け物って言われるよりは良い。」
アレクは言う。
「どのように変ってしまったんですか?」
「まず………火星の人達と同じ……A級ジャンパーの素質……」
「…………それだけじゃないのか?」
ディオが問う、それだけだと思っていたから。
「それだけだったら、火星に住む人達は土星の味方の筈です………
それだけじゃないから……土星が孤立してるんですよ。」
「どうなったんだ?」
「『百聞は一見にしかず』………とくとご覧を…………トランス。」
キィィィンッ
アレクの腕が呟き一つで姿を変えて行く。
立った一瞬でアレクの右腕が古代西洋の剣のような形になった。
「こんな風に………体の一部を造り替える事が出来るようになってしまったんです。」
アレクはそう呟くと腕を元に戻す。
「……連合はその能力を………」
「バカな話しですよ…………人類の進化……そう思いこんで土星の人々を解剖し、実験しと……
まさに非人道的としか言いようのない事をやるでしょうね。」
「………それで………戦争か……」
「ええ………かれこれ、10年以上続いてますよ。」
ガーネットが言う。
「10年!」
「よくもまぁそんなに……」
「必死ですからね……死にたくないって………」
「確か土星側の戦死者は10人行くか行かないかぐらい、
連合側は………何百万人と越えてると思う。」
「………そんなに?」
「それほどあの機動兵器は強力なのですな?」
プロスが言う。
「一回の攻撃で百機ぐらい落とす自信はある。」
「有人機でも?」
「…ん………殺らなきゃ殺られる……戦場ってそうだろ?」
アレクはそう言った。
「土星から攻めたことは無いよ……連合が攻めてきたから出撃して、全部落とすそれだけの繰り返し。」
ガーネットは溜息をついた。
『お〜い、プロスさんよ?』
「なんですか?ウリバタケさん?」
コミュニケのウィンドウが開いて整備班長のウリバタケ=セイヤが映される。
『これっていじって良いのか?』
ウリバタケが指す方向にはアレクのディアボロスと、ガーネットのルシフェルが映ってる。
「どうします?」
「ウリバタケさん……ですね?」
『おうよ。』
「それを弄りたいのだったら、機械学だけじゃなく医学と生物学を学んで下さい。」
『なんだってぇ?』
ウリバタケが少し切れ気味になる。
「その機体は7:3で3が機械ですが……残り7はなんだと思います?」
『知るかよ!』
「生体ナノマシンです…………つまり、生物に近いんですよ………生物は壊れたら修理します?」
『…………しねぇなぁ……』
「申し訳無いのですが、何もしないで下さい………
暫くすれば自己再生プログラムが自動的に直しますから。」
『………わかったよ……だが、機械の部分のメンテだったら良いよな?』
「あ………ええ…………コックピットだけになりますけど?」
『それだけでも充分だよ!』
ウィンドウが切れる。
「ディーネ、ルシフ、コックピットのハッチ開けてあげて。」
[[了解。]]
ガーネットがサポートAIに連絡する。
「おや?今のは?」
「機体のサポートAIですよ、ここのオモイカネと同じ……ね。」
「ほう………必要なのですか?」
「必要ですよ………すぐに暴走しますから、パイロットが。」
ガーネットがアレクを見てそう言う。
「そうですか……」
「………バカ?」
「それは言い過ぎ。」
ルリとヒスイが小さな声で話してる。
「誰がバカだってぇ?」
どうやら聞えたらしい、アレクはルリの真後ろにいきなり現れて、ルリの頬を引っ張る。
「いひゃい、ひゃふぇふぇひゅひゃひゃひ。(痛い、やめて下さい。)」
「人の事をバカにした罪は重い。」
「やめいっ!」
スパンッ!
ガーネットがどこに持っていたのかハリセンを持ち出し、アレクの後頭部を叩く。
「きゅぅ………」
「ゴメンね、ルリちゃん。」
「いえ……」
いきなりの事で昏倒したアレクを引き摺って元の位置に戻るガーネット。
「大体話しはわかりました……これからどうするおつもりです?」
「帰りたくても帰れないんで………ここにいさせてもらって良いですか?」
「……ふむ…………ではこれを……」
「?」
「契約書です。
この艦はネルガルの戦艦ですから、ネルガルの社員のみが乗っているべき事なので………」
「はぁ………」
ガーネットは契約書を受け取る。
アレクはまだ目を回してるので、アレクの分も…
「ん〜………」
ガーネットは契約書の隅々まで読んで行く。
「あ、これ横線。」
ガーネットはそう言って、ピーっとペンで一番下の行文を消してしまう。
もちろんアレクの分もだ。
「後は無い…………よし。」
ガーネットは納得したのか、名前を書き入れて、契約書をプロスに返した。
「確かに………これで正式に貴方達はネルガルの社員、パイロットです。」
プロスは言う。
「はっ!俺は何を?」
「私のハリセンで気絶してただけ、この艦に乗せてもらう事になったから。」
やっと起きたアレクにガーネットがそう言う。
「了解………でさ、さっきから気になってたんだけど………ディオさん。」
「なんだ?」
ディオは声を返す。
「バイザー外して下さい、診察です。」
アレクはそう言ってディオの前に行く。
「診察?」
「そう、貴方の体がどれぐらい酷使してるか診察します。」
「何故だ?」
「治せるか治せないかを確認するからです。」
アレクのIFSが変化してディオ達でも知らない形になる。
「それは……」
「医療のIFSです………土星では主流の医療法ですから安心して下さい。」
「……………」
ディオは少し考えた後、バイザーを外した。
「……ちょっとスイマセンね……」
アレクはそう言って、ディオのおでこにIFSが浮かびあがってる手で触れる。
「(………ん〜………これかな?原因は………これを取り除くとなると……設備が欲しいよな……)」
アレクはそう考える。
「もう良いですよ………投与されたナノマシン自体は悪くないです。
毒が毒で相殺しあちゃったみたいですね。」
「だったらなんで、五感が……」
ヒスイが言う。
「それはですね、脳の方にナノマシンが異常に集まっちゃってるんです……
それで、神経が圧迫されてるわけ。」
「つまりそれを取り除けば……」
ただ聞いてるだけだったサブロウタが口を開いた。
「すぐにとは言いませんが、戻りますよ、五感全部…………少々リハビリが必要ですけど。」
「ディオ……」
ラピスが嬉しそうにディオを見た。
「治るのか?…………俺は……」
「ただ………設備が必要なんですよ、特殊な手術をする土星に在る設備が。」
「それを私に作れと?」
ガーネットが言う。
「そう、頼むぜ。」
「わかったわよ……でも、最低でも2ヶ月掛るわよ……部品やなんかも無いだろうし。」
「治るのなら………いつでも……」
ディオがそう言った。
◆
数時間して、パイロットと宇宙専用のゼロG戦フレームは補給されるサツキミドリが見えてきた。
「艦長、サツキミドリから脱出艇を数機確認、一機こちらに向かってきます。」
「え?なになに?どうしたの?」
ユリかは慌てる。
「どうしたんでしょう?」
「通信繋げます。」
ルリは通信を繋げる。
「やぁ、ナデシコか?」
「どうしたんですか?脱出艇で……」
ユリカがウィンドウに映った中年の男に問う。
「何か知らんがエマージェンシーコールがいきなり鳴り出したんだ、
何があったかは確認してないが、何かあったと判断してな、逃げ出してきたわけだ。」
男は言う。
「それと、そっちに乗るはずのパイロット達が残ってる、
ゼロG戦フレームを持ってきたから速く行ってやってくれ。」
「了解しました、ルリちゃん、
サブロウタさんにゼロG戦フレームをスーパーエステバリスで持って来るようにと伝えて下さい。」
「わかりました。」
ルリは言われた事をサブロウタに伝える。
『了解、サブロウタ、出ます。』
サブロウタがスーパーエステバリスで脱出艇へ行き、ゼロG戦フレームを運ぶ。
『運搬終了、お気を付けて。』
サブロウタは脱出艇が去って行くのを見る。
『そちらも気をつけて……』
中年の男がそう言い、ウィンドウが切れた。
「エマージェンシーコール………なんででしょうか?」
「さぁ………知りません。」
「僕にもさっぱり。」
「ラピスもわかんない。」
ルリの呟きにヒスイ、ハーリー、ラピスがそう言う。
「(………この3人の悪戯ですか……)」
[ルリ、サツキミドリで戦闘光、木星蜥蜴とエステバリスが戦闘してます。]
「え?!……艦長!サツキミドリで戦闘が始まってます!」
オモイカネの報告でルリはそう言う。
「パイロット全員出撃しちゃって下さい!」
ユリカがそうすぐに指示を出した。
「アレク、行きます。」
「ディオ、ブラック・サレナ、出る。」
「ガーネット、出撃します!」
「タカスギ=サブロウタ、行きます。」
ゼロG戦フレームのエステバリスが二機、
スーパーエステバリスとブラック・サレナが出撃して行く。
「あれ?でぃあぼるすとか言うのは?」
「ディアボロスです艦長。」
「損傷が激しいそうで、治るのには時間が掛るそうです。」
「だから代りにゼロGエステ。」
ルリ、ハーリー、ラピスが言う。
「あ、そうなんだ。」
ユリカはそう言った。
◆
「ちっくしょ〜ぉ!数が多いぜ!」
『ヤバイって感じだよねぇ。』
『やばい………やばい…………屋台?………ちょっと苦しいわ………』
『そろそろナデシコが来ても良いはずです、持ちこたえましょう。』
サツキミドリを護ろうと戦う4機のエステバリス。
ナデシコの補充パイロットで上から、
スバル=リョーコ
アマノ=ヒカル
マキ=イズミ
イツキ=カザマ
の4人である。
「うおおおおりゃあああああ!」
ラビットライフルを連射してジョロとバッタを一掃するリョーコ機。
「このこのこのこの!」
ヒカル機も同様だ。
「花火にな〜れ…………くくくくくく。」
気色悪い微笑みを浮かべるイズミ。
「ここ!」
一発一発を冷静に撃つイツキ。
「くぅ!」
『リョーコちゃん!』
「げぇっ!」
リョーコ機の目の前にはバッタ。
「(殺られる!)」
死の恐怖がリョーコを縛り付ける。
『スバルさん!』
『くっ!』
ドォンッ!
その場の4人は絶望したが、何故かバッタが爆発した。
『ギリギリだったけど………ナイス射撃。』
『任せといてよ。』
『こちらナデシコのエルテバリス、援護する、ナデシコまで逃げろ。』
いきなり開いたウィンドウには双子らしき少年と少女、さらに黒づくめの男が映っている。
「ちょ、ちょっと待てよ!今逃げたらサツキミドリが!」
『乗員は既に脱出艇で逃げている………人は生きてるから、物は諦めろ。』
「くっ!わかったよ!」
『サブロウタさん、4人のエスコートよろしく。』
『了解、こっちだ。』
スーパーエステバリスに付いていく4機のエステ。
『さて、時間稼ぎと行きますか。』
アレクはそう言い笑った。
リョーコ等がナデシコに付いたのを知ると、アレク、ガーネット、ディオはすぐにそこから引き、
ナデシコに帰艦する。
その数分後、サツキミドリは大きな爆発を起した。
<作者の後書き>
うふ♪
イツキをだして見たりした……
さて……誰と誰をくっ付けようかなぁ……
ディオ×ミナト?アレク×ルリ?アレク×ヒスイ?
アキト×リョーコ?サブロウタ×メグミ?………ん〜……
いっぱいあって良いねぇ……
読者の皆様の好みはどうなんでしょ?
ぜひ教えて下さいねェ♪
ではでは♪