機動戦艦ナデシコ

兄弟で行こう!!


「何時かお前が「歌う詩」」・・・・アキト君の長い一日

 

 

 

 

 

パチ

ん、ここは医療室だな。

それより、どうやら、誰かが俺をここに運んでくれたみたいだな。

さて、何時までも寝てるわけにはいかんし起きるとしますか。

どっこいしょって・・・・我ながら爺じみてるな(苦笑)

クイ

あれ、左腕になんか引っかかってるな。

・・・ってルリちゃん!?

………看病してくれてたんだ。

それにしても目元が赤いな……泣いてたのか?


「……んッ…………」


あ、目を覚ましたみたいだな。


「あ、アキトしゃん…………おしゃようございまーす」


うん、見事な寝惚けっぷりだね!!


「うん、お早う」


「じゃないです!!」


「どはっ!!」


耳元で怒鳴らないでお願いだから。


「アキトさん、何考えてるんですか!!

 いくらなんでも今回は無茶が過ぎます…!!

 火星の生き残りの人達を助けたいからと言っても、あれだけ数の敵からシャトルを守りながらの一機での囮だなんて!!

 一つ間違えれば死んでたんですよ!?しかも勝手に通信まで切って!!

 ………それにこれはどう言う事ですか!!こんなの私は聞いてませんよ!?

 内出血や打撲やら全部で大小合わせて10箇所以上……!!」


と叫びつつ何処からかカルテをこっちに見せるルリちゃん。

女の子は時に男には解らない方法で色々な物を出すよな。

イネスさんのホワイトボートもそうだが………しかし女の子のカゴテリーに入れるお年ではないな、イネスさんは。


「ルリちゃん、無断で他人のカルテを見るのはどうかと……」


「そんなのはどうでもいいんです!!

 ………それより、言い訳を聞きたいんですけど?」


第三者が見たら骨抜きにされそうな極上の笑みを浮かべながら問いかけてくるルリちゃん。

ただし、俺は背中に冷たい冷や汗しか流せなかったが。


「いえ……あの、その〜」


「何が、いえ、あの、その〜なんですか!!」


ルリちゃんはギロリという音が聞こえそうな視線を向けてくる。

本人の目の前じゃ死んでもいえないけど、どっかのロリコン外道トカゲの殺気よりもこわいよ。

それにしても誰なんだ!?人が寝てる間に勝手に人の身体を調べたのは!!

今までルリちゃん達にばれないように隠していたのに!!

…………考えるまでも無かったな。

このナデシコでも、そんな事をするのはあの人以外に考えられん!!

くっ!!前回の俺に対する仕返しのつもりですか!?説明おば、もといお姉さん!!


「いいですか!!これ以上私に心配をかけさせないで下さい…!!

 その内、私は心労で倒れますよ!?

 そしたら、アキトさんに看病してもらいますからね!!」


「……解ったよ、ルリちゃん。

 今後からは出来る限り無茶はしない。」


「…………ホントですか?」


ルリちゃんはジト目でこっちを見てくる。

思いっきし私、信じてませんっていう態度だね。(苦笑)


「ホント、ホント!!」


そう、皆がピンチの時以外はねと決して口には出さず心の中だけで付け加えておく。


「………解りました。」


納得はしてないみたいだけど取り敢えずは追求はやめてくれたみたいだな。

と安心したのが甘かった!!


「あ、そうそう、ラピスと私に心配させた罰です。

 後でバーチャル・ルームに付き合ってくださいね?」


…何ですと!?


「あ、拒否権は無いので悪しからず」


くっ、逃げ道すらないのか!?


「ちなみに逃げたらスペシャルコースのお仕置きです。」


俺の脳裏に前に一度見たジュンの憔悴した姿が鮮明に思い出された。

………引き受けるしかないだろうな(涙)


「………はい、解りました。」


その後も大変だったよ。

いや、・・・マジで。

ラピスには泣きつかれるし、イツキお姉ちゃんとカイト兄さんからは戦闘中に無茶をしたからと言って説教をくらうし、ミナトさんからはラピスとルリちゃんを心配させたからといってまたお説教を喰らうし、ウリバタケさんには機体に無理をさせたという事でまたまた説教を喰らう羽目に。

その後は関係者の皆様に謝ったりしたりして大変だった。

…流石に疲れた。

しかし、不謹慎かもしれないが、こうして皆が俺の事を心配してくれるのは嬉しい物だな。

なんせ前回の説教はクルーに完璧に忌避される覚悟でやったからな。

多分、ミナトさん辺りが俺のフォローをしてくれたんだろうな。

ミナトさんには、どれだけ感謝をしてもしたりないな。

そして俺は今、救出した火星の人たちの炊き出しの為に厨房に居る。

それにしてもホウメイさんも人使いが荒い、ついさっきまで気絶していた人間をこき使うかね?

ま、いいんだけどね。

俺とカイト兄さん、ホウメイガールズはオニギリを尋常じゃないスピードで握っている。

ちなみに具はスタンダードに鮭、オカカ、ウメの三つである。

ま、これなら好き嫌いがあったとしても食べられるだろうな。

さてと、次は何を握ろうかな?

等と考えていると大なべで味噌汁を作っていたホウメイさんが話しかけてきた。


「アキト、艦長の事なんだけど放っておいて言いのかい?」


「艦長がどうかしたんですか?」


「いや、相当落ち込んでいたからね。

 それにあそこまでキツイ言い方しなくても、もう少し婉曲に言った方が良かったんじゃないのかい?」


「婉曲に言って通じる相手ですか、あの艦長が?

思 い出してくださいよ・・・・あの出来事を」


そう、あれは火星に着く道中のある日に起こった出来事である。

いつもの様に昼食時の食堂の混んでいる時間帯にいつもの様に勤務時間が終わると同時に全速力で食堂に来るユリカ。

途中、ユリカの所為で一瞬にして廊下の端にボソンジャンプした整備班が多数いることから相当のスピードだと思われる。

んで、毎回のように追いかけるユリカと逃げるカイト兄さん。

最初の内は放って置いたが、この頃になると目に余る物があった。

で、昼食時の混雑が終わっても、まだ追いかけっこをしている二人。

そろそろパイロットの訓練をしなきゃいけない時間である。

カイト兄さんはその時には厨房の奥に避難した。

流石のユリカもそこまで追いかける程馬鹿じゃないみたいだな。

いつまでもいられては迷惑なので仕方が無く俺がカイト兄さんから伝言された事を伝えに行くことに。


「艦長、兄さんから伝言です。」


「え、何、何!!

 カイトからの愛の告白かしら、きゃっ!!」


「……いい加減付きまとうのを辞めろ…だそうです。」


「いや〜ん、カイトったら照れてるのね!!」


…人の話はちゃんと聞こうな、ユリカ。

と言うか一体どんな脳をしてるんだ!?

そう思い俺は呆然と立ち尽くした。


「………そういえば、そんなこともあったね。

 でも、作戦なんかだったら、ちゃんと聞くんじゃ…」


「今回の事は艦長としての自覚を促すつもりだったんですよ。

 そろそろ艦長として確りして貰わなきゃ困りますからね。

 だからこそ、あそこまでキツイ言い方をしたんです。

 まさか、俺も艦長があそこまで落ち込むとは思いませんでしたけど。

 ・・・これは少し失敗ですね。

 ま、後で誰かにフォローして貰うとしますか。」


「ふ〜ん、ちゃんと考えてるみたいだね。」


「ま、それなりには。」


…さてとユリカのフォローする人は誰がいいかな?

ま、落ち込ませた原因である俺は当然却下だな。

そんな俺がフォローすれば、逆に追い詰めるだけだろうしな。

ユリカの王子様役であるカイト兄さんだが・・・これは最後の手だな。

出来れば使いたくないな。

下手をすれば、ユリカの中の王子様と言う虚像に磨きをかけるだけだ。

んで、このナデシコ内でホウメイさんと並ぶ最後の常識の壁であり大人のミナトさん。

一応ナデシコ副長であり、地球に着てからの幼馴染のジュン。

そして、見かけは11歳だが、元ナデシコB、Cの艦長であるルリちゃん。

艦長としての重責という事では同じ道を通っただろうからな。

さて、候補は四人どうしたものか。

ま、ここは消去法でいくとしますか。

まず、カイト兄さんだが、全員が駄目だったらの場合だけ行かせよう。

次にジュンだが、正論をいってユリカを落ち込ませる可能性ありの為却下。

それに、今のユリカをフォローするのはジュンでは100%無理だろうしな。

う〜ん、残りは二人どっちにするべきか?

……よし、君に決めた!!

……じゃ無くて。

ルリちゃんにしよう。

俺と一緒に未来から来たルリちゃんなら確実に俺の意思を汲み取ってくれるだろうしな。

んじゃ、決まったなら早速、連絡しますか。

ピッ


「あ、ルリちゃん?今は暇?」


「今は一応暇ですけど。……どうかしたんですか?」


「落ち込んでいるユリカを励まして欲しいんだよね。」


「はぁ、別にいいですけど。……何で私なんですか?

 もっと適役な人がいらっしゃると思いますけど?」


「ま、……色々とね。これでも考えたんだよ?

 ルリちゃんなら大丈夫だって!!

 だからお願い、ね、ルリちゃん♪」


「はぁ、……解りました。」


ピッ

よし!!ユリカはこれで大丈夫!!……だと思う………と言うか思いたい。

あ、なんか、だんだん不安になってきた。

ルリちゃんは優しいからな、傷つけない言葉を選んでユリカに通じない可能性があるかも。

ちっ!!その可能性を考えて無かった!!

これは俺のミスだな……どうするか?

仕方ない褒められたやりかたじゃないけどこれしかないかな?

プシュー

お、ルリちゃんが来たな。

ちなみに今、俺が居る場所は展望室でユリカとの会話を聞くのに十分なだけ近づいているが、俺は気配を消している為にユリカは全然気付いていない。

というか、多分あの状態のユリカなら気配を消さなくても大丈夫だろうな。

ま、用心するに越したことは無い。

俺が何でいるかというと、ま、フォローが必要になった時の為かな。

要らない事を祈っているがな。

ユリカはあの時からここでぼうっとしている。


「ユリカさん、こんなとこで何してるんですか?」


「あ、何だ、ルリちゃんか。………ぼうっとしているの。」


んなもん見れば解る。


「……はぁ」


ほれ、ルリちゃんだってどう言ったらいいか解らないじゃないか。


「いえ、そうじゃなくて。

 ユリカさんは何を悩んでるんですか?」


「うん、………私は要らない艦長なのかなって」


そうなのかもしれんな。

親切心で言うがユリカ、自分で無理だと思ったなら辞めた方がいいぞ?

……辛いだけだからな。

それに俺は中途半端な奴に自分の命を預けるつもりは毛頭無い。


「どうしてそう思うんですか?」


「……私はアキト君に指摘されるまでナデシコの現状がまるで解っていなかった。

 それだけじゃない、ナデシコの力を過信して火星に降りた後の作戦なんて何も考えていなかった。

 ………でも、アキト君は違った。

 その後にどう動けばいいか、どうすれば火星の人たちを助けられるか、そんな事までちゃんと考えていた。

 でもね、アキト君はコック兼パイロットで普通ならそんな事を考える立場じゃない。

 本来なら私が考えなきゃいけないのに…。」


ま、普通は艦長として敵地に無謀にもたった一隻で向かうんだから考えるだろうな。

艦長はクルーの命を預かってるんだ。だからこそ、考えなきゃいけない。

どうすれば、クルーの犠牲が最小限で済むかをな。

犠牲者がゼロというのが理想だが、所詮それは机上の空想、理想論でしかない。だが、現実は過酷だ。

どんなに皆が頑張っても犠牲者が出るかもしれない。

だからこそゼロじゃなく、少なくて済む方法を考えなきゃいけない。

もちろん、目標はゼロだがな。

それに厳しい事だが艦長は艦を守る為に「お前は死ね」と言う命令を出す必要が有る。

二百名近くの命とたった一名の命では天秤に掛けられないからな。

例えその一名が自分の一番大切な人だとしてもだ。

今のユリカにはそれを求めるのは100%無理だな。

ユリカは自分の感情を優先させる所が有るからな。

……………早くこの癖を直させないと。

こう考えると前回の世界で俺達が火星から脱出できたのは、本当に運が良かったというしかないな。

と言うか奇跡だったよな・・・・マジで。


「・・そして、その後の火星の人たちの救出も私が指示しなくてもアキト君がやった。

 そして、それは成功した。……誰一人として犠牲にしないでね。

 その間、私は落ち込んでいて何も指示しなかった。」


あの状態のお前に指揮を望む方が酷だって!!

戦場の状況は一分、一秒単位で変わるんだ。

だから、あんな状態で指揮を取られたら、下手したら火星の皆を助けられなかったって!!

もしも、助けられなかったら俺がしてきた事は無意味になるんだ!!

悪いんだけどお前が落ち込む事は解っていたがそれは認められないからな。


「こうして振り返ってみると私は何も艦長としてやっていないね。」


うん、俺もそう思う。

まだまだ艦長としての経験値が足りないなユリカ。

そんなんじゃレベルアップまでは遠いぞ。


「それなら、今まで何もしていないならこれから頑張ってすればいいんじゃないですか?」


ま、そりゃそうだな。

もう終わった事をうだうだ言っても始まらん。

だったらこれから先どうするか?だよな。

人生前向きじゃないとね。まぁ、前向きすぎても困るんだが。


「そうなのかも知れない。

 ・・・でも私に出来るのかな?」


んなもん知るか。

いくら未来の出来事を知っているだろう俺達でも予言者じゃないんだからな。

そこまでの責任はもてん。


「さぁ、それは私には解りません。

 でも何かしら行動をしなきゃ始まりませんよ?」


うむ!!その通り!!

どんな結果が出るにしても行動しなきゃ始まらないからね。


「・・・うん。そうだよね。

 取り合えず、頑張ってみるよ。

 落ち込むのは、それが終わってからにしてみるよ。」


ま、ユリカらしい答えだな。

まだまだ、艦長としては甘いが一段階目はクリアかな?

ま、今の所は生ぬるい目で見届けるとしますか。

ルリちゃん、あいつのお相手・・・ご苦労様でした。

さて、厨房に帰るとしますか。

あ〜、やっぱりと言うかべきか、なんと言うかべきか。

カイト兄さんがユートピア・コロニーにチューリップを落としたのがフクベ提督だと知って暴走した。

教えたのは多分イネスさんだな。後で厳重注意しなきゃ。

確かあの時はお昼の時にいつもの様にブリッジに出前に来た時の事だった。

前回の騒動でいまだギクシャクしているクルーとの為にホウメイさんに命令されてしまった

ちなみにパイロットの待機メンバーはガイとヒカルちゃんだった。

そして、いきなりブリッジのドアを開け怖い顔をしたカイト兄さんが入って来た。

その後に続いて慌てた様子のイツキお姉ちゃんも到着。

そして憎悪の眼差しでカイト兄さんがフクベ提督を見たときに俺は瞬間的に理解した。

・・・フクベ提督を殴るつもりなのだと。


「カイト兄さん何しに来たの?」


俺はフクベ提督とカイト兄さんの間に素早く移動した。


「フクベ提督一つ訊きたいことがある・・・・火星大戦時に艦隊の指揮を執っていたのはあんたか?」


俺の質問を無視し、普段からは考えれないほど冷たい声でカイト兄さんはフクベ提督に尋ねる。

これは本気で怒っているな。

それにしても俺の事を無視とは……いい度胸だね兄さん。


「なに言ってんのカイト?

 フクベ提督が火星大戦時にを落とした英雄だって事は子供だって知ってるよ?」


「それは地球ではだろ?」


「「「「え?」」」」


「こいつが落としたチューリップがどうなったのかあんたらは知ってんのか?」


「「「「………」」」」


ブリッジに居る大半のメンバーは戸惑っているようだ。

ま、当たり前の反応だよな。

軍によって不利な情報は全て消されて、初めての戦闘でチューリップを落とした。

それだけしか情報を与えられていないんだからな。


「あんたが無意味にチューリップに特攻した所為でチューリップの落下位置が変わり、一つのコロニーが一瞬にして消滅した。

 そして、そのコロニーの名前は・・・・ユートピア・コロニー。

 あんたの所為で一体どのくらいの人間が死んだか知っているのか…!!

 お前の所為で……お前の…!!」


そう叫びつつこっちに突進してくるカイト兄さん。

ちっ!!仕方ないな。

少し痛い目に遭ってもらって正気に戻しますか。

突進して来た勢いを使って、そのまま壁に向かって思いっきし投げつける。

バン!!


「ぐっ!!………く……そ…!!」


よし!!気絶させる事に成功!!

……でも、ちょっとやり過ぎたかな?


「イツキお姉ちゃん悪いんだけどカイト兄さんを医療室まで運んで」


「解ったわ。」


「あ、じゃあ、私も!!」


「私も行きます!!准看護婦の資格持ってますし」


「艦長と通信士は持ち場を離れないように」


「「ふみゅ〜〜〜」」


「泣きまねは却下です」


「「う〜〜〜〜!!」」


「怒っても無駄ですよ」


さてと、約2名のお子様は放っておいてと


「フクベ提督お怪我はありませんか?」


「ああ、大丈夫だ。

 でも、君は怒らないのかね?

 君もユートピア・コロニーの出身だろう?

 故郷を消した男は憎くないのかね?」


「もしも、あなたを憎めば皆が帰ってくるのであればいくらでも憎みますよ。

 でも、憎んだところで皆は帰ってきませんからね。

 それに貴方のあの時の行動は自分の仲間を守る為には仕方なかったんでしょう?」


「・・・・・・・」


「さて、ここには居づらいでしょうから部屋まで送りますよ。」


「済まないな」


「いえいえ、お気になさらずに」


プシュー

        パタパタパタ・・・


「フクベ提督、火星の人たちを助けたからって自殺とか考えないで下さいね?

 言っときますけど、それは贖罪じゃなく単なる逃げですよ」


「………………解っている」


以後フクベ提督を部屋まで送る時に俺達には会話は無かった。


「さてと、ここですね」


「ふむ、助けてくれたお礼に茶くらいだそう。

 それに君も私に何か話があるのでは無いかね?」


ふ〜ん、流石は亀の甲より年の功ってとこかな?


「ええ、まぁ、その通りなんですけどね」


「では入りなさい。」


プシュー

ふ〜ん、フクベ提督の部屋は予想通り純和風の部屋だな。


「さて、私に話しがあるみたいだが、一体何の用かな?」


俺は何も無い虚空に向かって顔を向ける。


「ま、その前に………ルリちゃん、ラピス覗き見はあまり、いい趣味とは言えないよ?」


ピッ

お、かなり慌ててるな。


『アキト何時から気付いてたの?』


『と言うかどうやって気付いたんですか?』


「ま、何となく見られてる感じがしたからかな?

 それよりもこれから先のこの部屋での会話の記録、オモイカネに頼んで消しといといてね? 」


『解りました。

 オモイカネ、これからの提督の部屋の出来事の映像と記録を、全部消去しといて。』


『OK、ルリ!!』


『出来ましたよ、アキトさん。』


「ありがとう、ルリちゃん。

 それにしても二人ともそんなに気になるんだったらこっちに来ればいいでしょうが。」


『『「うっ!!』』


「フクベ提督、二人が来ても構いませんか?」


「なに、別に構わんよ。」


「だって。どうする二人とも?」


『じゃあ、今からラピスと一緒に行きます。』


『今から行くから待っててねアキト』


んで、二人が来るまではフクベ提督とお茶を飲む。

なかなか、いい茶葉だな。

茶に関しては素人の俺が美味いと思うんだから。

等と感想を抱いているとルリちゃん達が到着した。

プシュー


「お待たせさせて済みません!!」


「アキト、言っとくけど遅れたのは私の所為じゃない。ルリの所為だから。」


「ラ、ラピスなんて事を言うんですか!!

 他人様の部屋を訪ねるんだから何かを持って行くのは当たり前でしょう!?」


「それはそうだけど、でもルリ……買いすぎだよ」


………確かにね。

ルリちゃん、他人の部屋を訪ねるんだから何かを買うのは解るんだけどさ。

流石に両手一杯は買いすぎだよ?

と言うか4人では食べられないよ。

それにそのお煎餅が好きなのはキャラじゃないから皆にばれるのは嫌だったんじゃ?

ま、好きなのはいいけどさ。

でも、あんまりそういうのばっかり食べるのは身体に良くないよ?


「ま、まぁ、この際この事は置いときましょう」


ルリちゃんが自覚があるのか珍しく焦ってる。

ま、あんまり苛めててもしょうがないから話を先に進めますか?


「フクベ提督………単刀直入に訊きます。

 この戦争の真実………知りたくありませんか?」


「ほぅ、君は知っているのかね?」


「ええ、まぁ、信じられないような話ですけど。

、・・・でも、どうしてそれを知っているのかは訊かないで下さい。」


「それで信じろと?」


普通は信じないよな。そんな話なんかはさ。

でも、俺を信じてもらう以外に方法がないよな。


「ええ」


俺の目とフクベ提督の目が絡み合う。

互いに相手の目から真意を探るように。

そして暫くそのままで居る。


「ふっ、年は取りたくないものだが年を取ると人を見る目だけは鍛えられるな。

 ………君の目は嘘をつくような目ではない。

 解った。君の言う事を信じよう。」


「では、言います。

 俺達が闘っている相手……100年前に月自治区で起こった独立運動家の子孫です。」


「……………」


「そして、当時の軍は・・・彼等を開発途中の火星に追い詰め。

 さらにはその小さな実験区に核を打ち込んだ。

 その火星の生き残りが更に逃げ延びた先が木星でした。

 そして彼等はそこであるモノを発見した。」

 

「あるモノって・・・何なのかねアキト君?」


「・・・簡単に言えば、オーバーテクノロジーの塊ですね。

 あの無人兵器やチューリップはその産物です。そして、このナデシコもね

 少しずれましたね。

 生き残った彼らは力を手に入れ復讐を望みました。

 とは言え100年も前の事です。

 そこで、彼等は地球に通信を入れました。

 『過去の事件を発表し、謝罪をするなら・・・共に歩もう』と。

 しかし、この文章は軍にいる上層部の人間によって握りつぶされました。

 この事実を知っているのは、ネルガルの上層部とクリムゾンと繋がっている軍人だけです

 そして、その力に溺れた木星の一部の軍人と、クリムゾンが手を結び

 今に至るという訳です。」


「ふっ、恥ずかしい限りだな。

 過去の過ちを認めたくない。

 ただ、それだけの理由で軍が守らなければならない多くの民間人を巻き込んでいるとは。

 それで何故私に話したのかね?

 理由がちゃんとあるのだろう?」


「ええ。

 ルリちゃん、ラピス例の物ある?」


「ラピスが持ってます。」


「うん。

 私がいつも肌身離さず持ち歩いているから。

 はい。」


ラピスからFDを受けとりフクベ提督と話を続ける。


「俺が知る限りフクベ提督、貴方は軍人では珍しく信頼できる人物です。

 それに、もう退役したとはいえ軍内部での貴方の発言には影響力があります。

 だからこそ、話しました。

 このFDは軍の上層部、しかもクリムゾングループの息が掛かった者の過去の汚点を記録したものです。

 例えば、誰が何処でどれだけクリムゾンから金を貰ったとかね。

 他にも脱税など、ばれれば一発で首間違い無しのが入ってます。

 言っときますけど情報は確かですよ?

 ルリちゃんとラピスが睡眠時間を削ってまで集めた情報ですからね。

 まず間違いないです。

 貴方が信頼の置ける人物……例えばミスマル提督とか…と一緒に軍の方を和平の方にまとめてくれませんか?

 ………褒められたやり方じゃないのは解ってますが、これは保険です。

 使う、使わないの判断は貴方達に任せます。

 ………これから先、当然命を狙われる可能性だってあります。そこら辺の事も考えてください。

 これを受けとるか、受けとらないかは貴方次第です。

 もしも受けとらないのであれば、今までの話は聞かなかったことにして下さい

 それでどうしますか?」


「………アキト君その役目やらせてもらおう。

 私は仲間を守る為とはいえ多くの人を死なせてしまった、後悔の毎日だったよ。

 本当は火星の人たちを助けたら死ぬつもりだった。

 しかし、君の言った通りそれは逃げだな。

 確かに私がいくら悔やんだ所で、ユートピア・コロニーの人達は生き返らない

 ならば、和平を実現する事で多くの人が血を流さなくて済むのならば喜んでやらせてもらおう。

 それに自分を見詰め直したいしな」


「そうですか。」


「最後に一つ聞きたい・・・君は何者だね?」


「単なるコック…じゃ納得してくれませんよね。

 …………The prince of darkness……そう呼ばれていた事もありますね」


「「アキト(さん)…セリフは格好良いんだ(です)けどお茶を啜りながらじゃ決まらないよ(りませんよ)?」」


…ほっといてくれ!!


「さて、長居しすぎましたね。ルリちゃん、ラピス戻りますか?」


「はい、フクベ提督お茶美味しかったです」


「うん、お邪魔しました。」


俺達が部屋を出ようとすると


「アキト君………君は何を悩んでいるのかね?

 君が悩んでいる事がどんな事なのかは私には解らない。

 しかし、君は一人ではない。

 その事だけは忘れない方がいい」


………やっぱり伊達に年を取ってないな。


「ええ、肝に銘じときますよ」


プシュー


「くすっ、アキトさんフクべ提督の言う通りですよ?

 あんまり一人で抱え込まないで下さいね?」


「そうだよアキト。

 アキトには私達が居るんだから!!」


「そうだね。」


まだ、苦しいけど、立ち止まるわけにはいかないからね。

大切な人たちの為にも、そして俺自身の為にも今は前に進むのみ!!

さてともう一人の悩んでいる方にも行きますか!!

   パタパタパタ・・・

プシュー


「あ、イツキお姉ちゃん。

 カイト兄さんはまだ目覚めない?」


「うーん、多分もう直ぐ目覚めると思うんだけどね。

 それにしても、もう少し手加減しても良かったんじゃないの?」


「これでも、かなり手加減したんですけどね。

 はぁ、それにしてもカイト兄さん何時までも伸びているとは情けないな。

 今度から訓練の内容をもっとシゴク様に変えるかな?」


「そ、そう。

 (アキト君は今よりも、もっと酷くするの!?

 下手したら死んじゃうわよ?

 ま、そうなったら、カイト、迷わずに成仏してね?

 骨くらいなら拾ってあげるからさ。)」


「それにしても何でイツキお姉ちゃんは提督の事を怒らなかったんですか?

 自分の故郷を消されたのに」


「そう言うアキト君はどうなの?」


「俺は怒っていませんよ。

 冷たい言い方かも知れませんけど、見知らぬ他人が死んでも悲しくないですから。

 それに、俺にはフクベ提督を責める資格はありませんからね。」


「それってどういう意味?」


「さぁ、それは秘密です♪」


「う、う〜ん」


お、ようやく起きたなカイト兄さん。


「「おはよ。」」


「ああ。」


「カイト兄さん受身くらい取れなくてどうするのさ?」


「んなこと言われてもな」


「それよりカイト兄さん、フクベ提督が本当に後悔して無いはずが無いよ。

 あの時にはあれ以外仲間を守る為には方法がなかったんだよ。」


「解ってる…!!

 頭では解っているんだ!!でも、理屈じゃないんだよ!!

 納得出来ないんだ!!」


「ま、それさえ解っていれば良いんじゃない?

 後は時間が解決してくれるよ。」


「そうかな?」


「うん、多分ね。

 それじゃあ、後の事、よろしくイツキお姉ちゃん。」


「ええ、任されたわ。」


こうして、一部のクルーの内面に多少の傷を残しながらナデシコの地球への帰路第1日目が終わった。

 

 

 

後書き

取り合えずこれは地球への帰路の前編です。
書こうと思ったことを書くととんでもない長さになってしまう為です。
後編は番外編になる予定。これも病院で書きました。 今回は完璧オリジナルです。多分次回もですが。
どうだったでしょうか? お爺ちゃんにはやっぱり予定どうりになってもらいましょう。
さて、ユリカの扱いですが精神崩壊起こしても良かったんですが、それじゃ可哀想かな?と思ったんで一応残ります。
う〜ん最近、思うこと。オリキャラ、出そうかなと思うんですがセリフがね。それに名前も。
我ながらネーミングセンスなし。皆さんはオリキャラの名前を決めるときはどうしてますか? 教えてください。

 

 

管理人の感想

ギャッチさんからの投稿です。

カイト・・・良いとこなし(苦笑)

まあ、気持ちは分からなくもないですがね。

こんな弟を持った事を悔やんでください(爆)

ユリカ・・・立ち直ったとは言い難いような気がしますけどねぇ