北斗人気投票一位獲得記念SS

これから始まる物語

 

 

 

 

 

 

それぞれの操縦者を象徴するが如く、

その身を血の紅と闇の黒に染めた機体が火星の空に舞っていた。

 

 

 

紅の機体が華麗に舞い、黒い影から放たれる光弾を躱す。

一筋の閃光と化した紅の影が瞬時に間合いを詰めた。

振るわれた必殺の一撃を、辛うじて黒の戦士が間合いを外して避ける。

極限まで高められた互いの技量は全くの五分と五分。

ただ、精神力と時の運のみがこの勝負の行方を決しうる。

 

 

 

だが、戦いをじっと見つめる目があることには二人とも気が付いていなかった。

あくまでも冷静に、しかしどこか狂熱をはらんだ瞳が二人の実力を推し量り、

戦いの行方を見守っている。

その奥には隠しようも無い凶暴な飢餓、戦いへの渇望が底光りしていた。

それはまさしく、餓狼の目。

 

 

 

二人の戦いは続いていた。

あるいは天高く舞い、あるいは地に踊る。

二体の機動兵器が見せる、戦いと呼ぶには余りにも、

いや、生死をかけた戦いだからこそ華麗な、死の舞踏。

どちらかの、あるいは双方の死のみがこの舞台に幕を引く。

 

 

 

底光りのする光を湛えながらも微動だにせずそれを見守る一対の目。

それに向けて、か細い声が投げかけられる。

「どう?」

「・・・僅かにテンカワアキトが押されている・・・が・・・。」

それきり口を閉ざし、また不動に戻った。

声もそれ以上問いを重ねない。

そして、舞台はいよいよクライマックスを迎えようとしていた。

 

 

 

既に、双方とも全ての武器は失われている。

残ったのは拳にまとわせたディストーションフィールド。

そして、血を吐く思いで身に付けた技のみ。

紅の拳が黒い鎧の胸元に吸いこまれた。

紅の影が勝利を確信し笑みを浮かべたその時、だが執念の拳がそのコクピットを貫いていた。

一瞬遅れて、今の一撃を防いだ事で力尽きたかのように黒い鎧が剥がれ落ちる。

その下にはかつての、ナデシコ時代の彼を思い出させるピンクのエステバリスの姿があった。

 

 

 

 

「フン・・。テンカワアキトが勝ったか。・・・俺の手で親父をぶち殺す事は出来なかったな。」

「・・・最初からわかっていたの?」

「まさか。ただ、執念と言う奴かな。アイツにはそんな物が感じられた。

 それに、親父の強さはもうアレが限界だったが、アイツは・・テンカワアキトはまだ強くなる。」

「ホクちゃん・・・ダメだよ・・・絶対にダメだよ!?」

「わかっているさ、零夜。舞歌に貰ったこの命だ・・・とことん生き抜いてやるさ。

 行き着く所まで、な。」

「・・・・本当?」

上目づかいにこちらを見る幼馴染に、つい苦笑する。

「お前に嘘をついてどうする。それに・・・」

「何?」

「アイツとは必ず出会うことになる。必ず、だ。」

「どうして?」

「ただ、そんな気がするのさ。」

「・・・・・・・・・」

「さて、行くか。お前はどうする、零夜?」

「ホクちゃんについてくよ。・・・ホクちゃんったら危なっかしいもの。」

「フッ・・・お前もたいがい物好きだな。まあいいさ、好きにしろ。」

 

 

 

 

西暦2201年。

A級ジャンパーの誘拐、殺害により独占したボソンジャンプ技術とその武力を持って

クーデターを画策した「火星の後継者」はナデシコCの前に敗北し、

テンカワ・アキトの手によってクサカベの影、北辰は倒された。

ここに一つの物語が幕を閉じた。

そして、漆黒の修羅・テンカワアキトと真紅の羅刹・北斗の物語がここより始まる。

 

 

 

 

北斗一位記念SSのあとがき

祝!北斗人気投票一位獲得!

真紅〜の羅刹♪お〜まえには、て〜きは無い♪

真紅〜の羅刹♪い〜ち秒も、無〜限大♪

 

ついつい歌ってしまいましたが、兎にも角にも嬉しゅうござんす。

と、ゆー訳で「北斗一位獲得記念SS・これから始まる物語」をお届けします。

おかしいなぁ、本当なら発表の翌日に仕上げるつもりだったんだけど(笑)。

やはりあんなSSを書いていたのが悪かったか。

頭を切り替えるのにだいぶかかったしね(苦笑)。

 

今回は、以前から話のあった「正史の北斗」です。

TV版から劇場版へ繋がる流れの中で、北斗はいかにして生きたか?

なんてことは全く書いてありませんが、読んでもらえればわかるとおり、

劇場版のラストで北斗はいずこかへ去って行ったのです。

いずれ出会うであろうライバルとの戦いに備えるため、

あるいは自分の新しい道を見つけるために。

 

火星の赤い土を蹴って走り出した北斗は、これからどこへ行くのでしょうか?

そして零夜はどこまで彼について行ったでしょうか。

それは、読者の皆様にお任せしたいと思います。

 

(もっともらしい言葉で己の不精を繕い、結末をうやむやにする・・・・人、それを書き逃げと言う!)

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

鋼の城さんから十四回目の投稿です!!

おお、正史版の北斗参上ですか!!

う〜ん、鋼の城さんらしい切込み方の作品ですね。

でも、優華部隊は不在のようですね(苦笑)

まあ、あの優華部隊はBenじゃなくて読者の発案から生まれましたしね。

・・・それを採用して本編に絡ませる、Benが異常なんだと思いますが(爆)

 

では、鋼の城さん!! 投稿有難うございました!!

 

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