アキトの心にあの一瞬が鮮やかに甦った。それだけで全身に迸るような力の高まりを感じる。

慢心を捨て、無我の境地に己を置く。そう、ただそれだけで。

アキトの両手が自然に「智拳印」を結び、その闘気が金色に輝く。

解放された胸のエネルギーマルチプライヤーが燃える。

背中の六枚のフィンが放射状に展開し、溢れるエネルギーが日輪を描く。

腕に装備されていた青い追加装甲がスライドし、指先から手首まで、手の甲の側をすっぽりと覆う。

背中に輝く日輪の中央に光の粒子が集まり、右手が赤く燃え始める。

顔の前にかざしたアキトの手に、キング・オブ・ハートの紋章が燦然と輝く。

くわっ!と見開かれたアキトの目から黄金色の闘気が迸った。  

 

「俺のこの手が真っ赤に燃えるぅっ!

勝利を掴めと轟き叫ぶ!

爆ぁく熱!ゴぉッド!フィンガァァァァァッ!!」

 

ゴッドナデシコの右手から発せられた溢れんばかりのエネルギーが、

稲妻の鎚ごとゼウスナデシコの右腕の肘から先を蒸発させる。

「ぎゃあああああっ!?」

生まれて初めて経験する苦痛と熱さにロバートが悲鳴を上げ、のけぞる。

超高熱を発する右の貫手がゼウスの胴に叩きこまれ、

そのままゼウスナデシコの重量級の巨体を片手で持ち上げた。

「う・・・うごぉぉぉぉっ!」

手首まで深深と突き込まれた貫手から燃えるような熱さと破壊的な震動が広がる。

爆熱の波動がゼウスナデシコの全身を駆け巡り、反復し、増幅される。

ロバートは今、自分の肉体が内部から焼き尽くされ、崩れてゆく感覚を味わっていた。

ゼウスナデシコのその輝くボディが熱で赤く輝き始め、細かい震動と共に崩壊を始める。

 

「ヒィィィトォッ!エンドッ!」

 

アキトの気合一閃。 ゼウスナデシコが爆散し、もうもうたる黒煙がリングの上を覆った。  

 

 

粉微塵に爆散したゼウスの中から煙を突きぬけて人影がリングに落ちる。

ロバート・クリムゾンである。

白目を剥き、泡を吹いて痙攣するその姿にかつての威圧感は微塵もなかった。

黒煙が晴れる。

ロバートを見下ろす様に立っていたのは、ゴッドナデシコ。

放射状に開いていた放熱フィンが水平に畳まれ、四十五度の角度で下に下りる。

瞬間、それまで声も無かった会場に大歓声が轟いた。      

 

 

メグミ首相が薄い笑みを浮かべながら両手を打ち鳴らす。

「素晴らしい、実に素晴らしいですね、アキトさんは。さすがはホウメイ先生のご推挙です。」

かつての弟子に対する賞賛を聞きながらホウメイが口元を歪めた。

(フン・・・やりおったか、テンカワ!)

それは彼女なりの祝いの言葉であったのかもしれない。

だが、それは同時にこれからの戦いの始まりを告げる宣戦布告でもあった。      

 

 

ガイと肩を組んだアキトがダッシュたちに向かって大きく手を振る。

ブロスとディアが歓声を上げ、ダッシュが笑顔で手を振り返す。

「お見事!ハーリー虫の勝利ですね!」

「訳のわからん、得体の知れないスパイスのな!」

「あははは、やっぱりばれてましたか。」

笑顔のままで頭を掻くダッシュ。

悪びれた様子はちっともない。

片目をつぶってアキトが親指を立てる。

ガイが妙な顔をしてアキトの顔を覗きこんだ。

「なあ、アキト、ハーリー虫ってなんだ?」

「はは。いや、まあ、その、なんだ、聞かないで置いてくれ。」

「なんだよ、おい。教えてくれたっていいじゃねえか!」

「まあ、そんな事よりお祝いだ!俺と・・・・ゴッドナデシコの初勝利にな!」          

 

 

「初登場だったのに・・・初登場だったのにぃ・・・・」

その頃、病院のベッドの上では紹介も無いままゼウスナデシコに倒された

ネーデルナデシコのファイター、氷室耕太が怒涛の涙を流していた。      

 

 

 

 

 

次回予告  

 

皆さん、お待ちかねぇ!

アキトの次の相手は、ネオインド代表マタンゴナデシコ!

ナデシコがキノコなら乗っているファイター、ムネタケ・サダアキもキノコ!

しかも、キノコの卑劣な策略によって

ガイが瀕死の重傷を負ってしまうのです!

機動武闘伝Gナデシコ、

「不破の誓い!友に捧げた大勝利」に

レディィィ!Go!

 

 

 

あとがき

あ〜、馬鹿(笑)!

『脳味噌まで筋肉』な悪役高笑いのロバート爺というのもこれはこれで楽しいな(笑)。

「時の流れに」本編とは全くの別人だ。←確信犯

まあ、本当の意味でのゴッドナデシコデビュー戦ですから派手に行かないとね。

ついでに、決勝リーグに集まっている連中はアキト君を持ってしても、

なかなかに一筋縄では行かない連中だ、ということです。

そう言うバラエティ豊かな連中がこれからは大挙登場しますので、乞うご期待。

早速次回から・・・ふふふふふ。

 

 

 

管理人の感想

 

 

鋼の城さんから連載第二十六弾の投稿です!!

ふふふ、筋肉バカのロバート(苦笑)

まあ、なんだか納得出来る配役でしたが(笑)

でも、あのお爺さん一家にあの兄弟をあてるとは・・・やりますな(ニヤリ)

止めは何を言ってもハーリー虫でしょう。

ええ、もうこの一言しか出てきません!!(大馬鹿)

 

では、鋼の城さん!! 投稿有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この 鋼の城さん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!

 

 

ナデシコのページに戻る