機動戦艦ナデシコ〜時の流れに〜アナザー          

 

 

                   影の宰相            

 

 

 


                   一幕   姦雄飢えて死ぬべきか              

しまった。        

 

男はそう思った。        

 

いや、そう思うはずだったのだ。          

 

まだ語弊がある思うべきだったのである。        

 

この状況でそこまでの頭が回らないのはただの精神異常者である。        

 

しかし、にだ。        

 

彼はやはり!というか、おそらく頭まで壊れたに違いない。        

 

そういうことにしておこう。          

 

何故ならそういうことにしないと話がおそらく、        

 

続かない。        

 

そしてそれは大抵の登場人物に言える。        

 

よってこの馬鹿馬鹿しい愚かな大前提に拒否反応を示さない方に

楽しんでいただける小説にしたいのである。

 

よってシリアスにもならないだろうし、女性陣をギャグに使うとあとで粛清されそうなので「敬遠」させていただく。            

 

しかしあまり女ッ気がないのも暑苦しいだけなので、            

 

どこかから引っ張ってくるか。            

 

馬鹿話が書きたいのである、            

 

馬鹿話が。            

 

多分、、、            

 

 


             

 

全身黒ずくめの若い男がさほど大きくない町の、    

 

これまたさほど大きくない銀行から長い影を従えながらため息をついて出てきた。      

 

手には何某かの手帳が開かれている。      

 

身の丈およそ175センチあまり、ぼさぼさの黒髪をした、黒瞳の・・・    

 

失礼。    

 

やはり、というか例の如く黒いバイザーをして表情は窺い知れない。    

 

だが一言で彼を呼称するにふさわしい表現がある。    

 

「ただの変態」    

 

幾らなんでもそんな格好でいたら怪しまれるに決まっている。    

 

しかも、その上にである。    

 

彼は呪詛を呟く霊媒師の如く俯きながらブツブツ妙なことを唱えているのだから、    

 

警官に職務質問されるのが当然である。                      

 

 

 

が、残念なことにそうはならなかった。    

 

彼が誘拐犯とか、ロリコンとか、女たらし!とかには到底思えないからである。    

 

明らかに、    

 

明らかに怪しい。    

 

流石に、究極的に自分の事に関しては鈍いこの男も、冷たい周囲の視線には気付いたようだ・・・    

 

そそくさと黒いマントとバイザーを脱ぎゴミ箱に捨てる。    

 

Tシャツと黒いズボンだけになったがあのままでは自分の身元が割れる、がどっちにしても危ない。        

 

かといって顔も隠さないのは間違っている彼は一時の安全を重く見た。      

 

・・・のかもしれない。    

 

そして彼は頭を抱えて近くにあった縁石に座り込んだ。  

 

         

















少なくとも彼は人間が好きだった。



           たとえ反目しても誠意をもって接すれば、いつかはわかり合える筈だと思っていた。



      否、そう思いたかった。



                 彼は普通の精神の持ち主だったのである。










                                         しかしそれは過去の話である。



                  彼は復讐に身をやつしはしたが、


                                                  得るところ何も無く、ただ虚しさだけが残った。



                     だが怒りも冷めてみると、自分自身のヲロカさが理解できた。



奴らは復讐されて当然ではあった。



                                        が自分のした事は本当に正しいのか?



                             五感を奪われ、幸福を奪われ、



              与えられたのは地獄の苦しみと痛み、



        そしてなにより悲しみ、である。






















                                      ナデシコにいた頃はまだ、



                                           幼かった。








     ナデシコを降りてからは、ラーメン屋の屋台を営み、世間の厳しさというものを知ったつもりだった。



                                          つもり、だったのだ。



                                          まだ甘えがあったのだ。







                                       自分が普通の、人並みに、幸福な、



                          あくまで自分にとっての「最高」の人生を、大切な人達とおくれる、



                                           と思っていた。








                                      自分を誇らずに謙虚に生きれば、



                                       大切な人たちを守っていける。



                                       大切な人たちと一緒にいれる。



                                    大切な人たちと同じ時間を歩んでいける。








                                   だが一部の権力者がそれを許さなかった。



                                   「道具」と言うのは使ってこそ価値がある。



                                            正論だ。



                             が権力者の言う事は下層の民にとっては迷惑なだけである。



                                      人は所詮利益でしか動かない。



                   ごく一部の少数を犠牲にしてでも多数に利益を与えるのは間違った事とは思わない。



                  おそらく自分もその少数に入らなければこのようなこと考えもしなかったに違いない。








                                       ただ彼女が守りたかった。



                                 だが彼は本当は自分の選択に疑問を感じていた。



                                     逢って抱きしめてやりたかった。



                                        自分はここにある、と。



                                         ただ勇気が無くて、



                                        時間だけが無常に過ぎ、



                                       彼女の悲しみを隠した顔と、



                          自分達の係わり合いの無いところで成長していく姿だけが、



                                         彼の瞳には映った。


















                                            不甲斐無い、



                                        自分の勇気のなさを呪う。



                         結局自分はあれから何一つ変わらぬ臆病な自分のままだった。









                                          変わりたかった。



                                そのためには過去の嫌な自分を捨てたかった。



                            だがそのために過去の幸福な時間まで捨てたくはなかったのだ。


                                     思えば自分は分不相応に幸福だった。











                             だが今の自分があの修羅から彼女を守りきれるとは思えない。



                                              弱いのだ、



                                               心が。



                                             彼女を守る為に、



                                           と自分の頭に言い聞かせ



                                           彼は捨てた、守る為に。












                                             そして彼は、



                                            復讐の鬼と化す。



                                        受け身に回れるほど強くは無かった。



                                           ヤラネバヤラレルノダ。



                                            手段は選べない。



                                            人を殺しながら、



                                           自分も殺しながら、



                                               唯、



                                        彼女を守る為だけに斗った。










                                           だが時として思う。
  


                      彼女が自分が血に塗れてまで自分を守ってくれることを喜ぶのか、



                                             と言う事を。












やがて全ては終わる。

彼にとっては。













               

 

日が昇りそれが天高くまでゆき、それが沈みかける。      

 

最初彼はミスマル=ユリカに会うつもりだった。      

 

だが彼の浅はかさというか、予見の甘さはすぐに露呈した。      

 

単純に運がなかったとも言える。                    

 

 

           

 

道を行く。      

 

始まりの場所へ。      

 

ゆっくりゆっくりとゆとりを持って歩く。            

 

火星の後継者事変での反省から得た事は、何をするにしても余裕の無いうちは

何をやっても上手くいくはずが無いと言う事である。      

 

十分に時間はある。      

 

彼はそう思っていた。            

 

 

 

だがしかし、世の中過去だろうが未来だろうが今生きている時間こそが現在、

思うように進むはずが無いのである。      

 

人間としては多少なりとも老成したであろう。      

 

が、しかし「過去が未来と同じ経過をたどる」などとは誰が決めた?      

 

時間は「流れ」に大抵は沿うが、例外もある。      

 

残念な事に彼の人生はその例外の連続である。      

 

そして今回も例外のパターンである。      

 

それに人間は大抵生きているうちに変質する。      

 

何が、といえば魂である。      

 

魂が精神と何が違うかと言ったらそれは何代にも渡り使いまわされる点においてだ。      

 

頭が      

 

魂だけのジャンプを今の自分になら出来るはずだ、と彼は思った。      

 

遺跡の使い方の三割を極めた彼にとって、      

 

過去の己が魂を強制的に書き換えタイムスライドするなどということは、      

 

・・・・・・楽勝である。      

 

ありていに言うと彼は遺跡をぶっ壊すして何もかも初めに戻すより、

よほど違う未来を築ける可能性が高いと思ったのだ。                      

 

 

 

 

だがいくら人間として極北を極めても出来ない事の方が多い。          

 

見通しが甘かった。          

 

その上、運がなかった。            

 

全ての争いをなくす為に遺跡を取り込んだアキトにしては不幸だったと言える。          

 

遺跡をめぐる争いではなくなった。          

 

ただそれだけである。          

 

果たしてそれが幸運と言えるのかは謎だが。              

 

 

 

 


                   

 

仮に一つの宇宙に遺跡が一つ存在すると仮定する。      

 

それを丸ごと移して別の宇宙に移すとどうなるか?      

 

遺跡に全ての「可能性と存在」が詰まっているので遺跡を移された宇宙は消滅する。      

 

そして宇宙全体のプラスのエネルギーが肥えていくのだそれらをもとに生命たちの活力が生まれ

発展へと繋がるのだろう。      

 

テンカワ=アキトはそれを狙っていた。      

 

尤も過去に移動するだけなのでエネルギーが暴走する可能性があったが、      

 

あのような血で血を洗うような未来よりも、      

 

この先数千年に渡ってほぼ無限に宇宙に人類のエネルギーが向いていく事を望んだのだ。      

 

利益の草刈場が無限に、無限に用意されていれば人は少なくとも争う事はなくなるのだろうと考えたのだ。      

 

それから後の事は後の人間が考えればいい、自分は今をよくするために斗うだけだと思った。                          

 

 

 

が彼は真っ先に頭を抱えなければならなくなってしまった。      

 

予想外どころか自分が全力で斗うとしても勝てるかさっぱり解からない事態になっている。    

 

ひょっとすると参戦すら出来ないかもしれない。      

 

あえて一言で言おう!                      

 

 

ナデシコの出撃は

既に終わっているのである!                    

 

 

 

 

ネルガルのホストコンピューターにもその出撃作戦時の会話記録が残っていた。                                              

 

 

 

 

 

『出撃不可能です。第二十三番ゲート封鎖されました』            

 

『フム・・・・・・、艦長このままでは最悪の方向へ行きますよ。』        

 

『提督、貴方はどう見ます?』        

 

『まだ間に合う段階だろうな・・・・・・』        

 

『そうですか・・・仕方ないですね。乙案を使いましょう』              

 

『チョット、あんた達!本気でその案を使う気!本部のワタシの印象が悪くなるでしょ!』              

 

『私たち前線の指揮官は作戦に従うこと、勝利を得る事だけ考えればよいのです。貴方の責任にはなりませんよ』

 

『それでも今回の作戦は秘匿しなければならないのよ!』                

 

『そうですか。なら壬案の「ココ一帯N2爆雷で吹っ飛ばしてもらいましょう作戦」にします?

 ナデシコクラスのディストーション・フィールドなら安全ですが?』            

 

『そんなことやったら、それこそクビよ!』            

 

『代案が無いのなら反対しないで下さい。譲歩して乙案にしますから(笑)』            

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・」            

 

『それでは皆さん乙案「道が無いんならつくっちゃえ作戦」始動します!!!』              

 

『センス悪・・・』                                                          

 

 

 

 

会話はそこで途切れていたがこの後の推移は予想できる・・・・・・・なわけねぇだろ!!    

がそれはいい、まあ許容範囲だ。俺は寛大な男だからな。                

 

 

何より問題なのは・・・                      

 

 

何より問題なのは・・・・・・                    

 

 

何より問題なのは・・・・・・・・・・                    

 

 

何より問題なのはっっっっっ〜〜〜〜〜                                                                  

 

 

 

 

 

金持って無いよ――――!!!    

腹減ったぁっっっ――――!!!                                                    

 

 

こうして彼の手の中の「幸せ人生計画手帳」には初日から真っ先に「不幸のだいあり〜」と化すのだった。

 

 

               


                               

〜後書き〜

伏線の張り方が最悪。      

まあ実験的に書いたものなんで勘弁してください。                                                

 

 

 

管理人の感想

 

 

飛燕さんから投稿です!!

プ、プロローグとの繋がりが見えないっす(汗)

う〜ん、違う意味で意表をつかれたな〜

・・・アキト、お前別にナデシコに乗らなくてもいいんじゃないのか?

だって、アカツキはまだ地球に居るんだし。

ジャンプの情報を売れば、充分に金になると思うけどね〜

 

それでは、飛燕さん投稿有難うございました!!

 

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