機動戦艦ナデシコ〜時の流れに〜アナザー
影の宰相
--------------------------------------------------------------------------------
二幕 寄らば大樹の黒い影
人材はいた、
それも雨や雲の如く。
ただトップの自分に力が無いだけである。
それは即ち社長派閥に力が偏りすぎていることと直結する。
父や兄は偉大だった、嫌な意味で。
だが彼らに比べ自分はどうか、
明らかに劣るのだ。
自分の限界がわかるだけに彼の懊悩は止むことがなかった。
積み重ねてきたものがないのだ。
一言で言うならば。
兄が死ななければ、
と何度思ったことか。
それでも事に望むに当たって最善は尽くす。
正しい情報と的確な判断さえあれば大抵の事業は成功するのだ、
本来は。
ましてやNSS(ネルガルシークレットサービス)の情報力は天下随一なのである。
クリムゾングループよりも。
だが常に自分が手がけた事業はあの狡猾な爺の翳が見えていた。
地球連邦新首都の都市建設、五大コロニーの設置、南北アメリカ全土を覆い尽くした疫病の対応も迅速だった。
何故か情報を真っ先に押えたはずの当方よりも、である。
にも拘らず利益の独占を避けているのである。
100兆円規模の大事業になると必ずと言っていいほど業務提携を持ちかけるのだ。
実際は向こうの研究チームや事業団がほぼ全ての下準備を終えているから、こちらとしては楽ではあるし、ありがたい。
しかし其の度に、
人材が抜けていくのだ。
徹底された能力至上主義に根ざしたネルガルのエリート雇用制度は自分よりその分野において優れたもの
がいればあっさり更迭される。
アフターケアは無論万全ではあるし、それによって「人材」たちの士気を高める事が狙いである。
理論としては素晴らしい。
あくまで上層部が纏まっていればである。
だがこの広い世界「人材」は幾らでもいる。
万全の状態で、最高の待遇を以ってしてもバリア研究の始祖である男は父を嫌ってクリムゾンへ流れた。
そのうえ近年、物分りの良いエリートは内訌で組織としての求心力に欠けるネルガルを避けてクリムゾンのほうに心を寄せ始めている。
だがここへ来て火星の陥落だ。
再建には莫大な利益が動く。
なにしろ星一つ創り直すのだ。
当然といっていい。
スキャバレリプロジェクトはそのための根回しと最新戦艦の宣伝、そしてネルガルの至宝ともいえる科学者を確保する為である。
以前のネルガル黄金時代も火星の植民が本格的になってから、
――――――絶頂期を迎えたのだ。
繁栄を取り戻す回天の機会は必ずある。
が、それはクリムゾンにも言えることだ。
自分の足を引っ張る、役員達は企業家としては有能だった。
今も尚、である。
22世紀のネルガル黄金時代を支えた元勲たちなのだ。
当然と言えば当然である。
自分のことを兄と比べ小僧扱いするのも。
が、現状は昔と同じではない。
以前は利益を嗅ぎつける嗅覚さえ持ち得ていればそれでよかったのかもしれない。
だが今はその上に背後から迫る強敵を追い落とすための判断力が必要なのだ。
そして今の自分に過去の元勲たちは必要ない。
手塩にかけて育てた子飼の腹心たちがいるのである。
トップの権力を脅かす存在は早急に排除させてもらう。
あくまで折をみて、だが。
--------------------------------------------------------------------------------
「あの婦警どもめッッ!!!
公道で発砲する警察官が何処に居るッッ?!
これだから国家権力は嫌いなんだッッ!!!」
忘れろ。お前の自業自得だ。
夜に日をついでココまで来たのだ。
天下のネルガル本社ビルに。
必死に
必死に、
必死にッッ!!!
だが交渉するものがまるで思いつかないのだッッ!
悲しい事に!
ジャンプの研究と引き換えに都合を図ってもらうつもりでいた。
が、それがないのでは話にならない。
すでに理性の崩壊したかもしれないにも拘らず、
テンカワ=アキトはさらに「せんそう」を飛躍させるつもりはないのである。
おそらく。
ジャンプでいきなり目の前に現れ、
『我こそは正義の使者!!!ブラックバロンなり!!!』
などという「正義の味方が助けに来たよ作戦」は余りに抜けすぎている。
親が殺されたのも、本当に唯の反乱のせいだった。
プロスペクターにかけあい「情に訴え潜入しちゃえ作戦」も使えない。
アキトは考えるのをやめた。
なぜか?
空腹で死にそうだったからだ(笑)。
アキトは最寄にあるネルガル社員専用の洒落たレストランに勝手に入っていった。
が、金はない。
「お客様、ご注文は何に致しますか?」
ショートカットの小柄な、かあいい、ウェイトレスのネエちゃんが来た。
ストイックな人生を送ってきた反動だろうか、
フイに、
口説いてみたくなった。
飛び散る臓物と血飛沫に塗れた途を歩んできたのだ。
「未来」の話だとしても。
心配だった。
自分の超絶的に都合のいい「弱さ」が、
まだ残っているかが、
である。
有ると無いとでは今後の「幸福な人生」に暗い影を残す。
今の彼には以前のように「弱さ」を隠すつもりはなかったのだ。
「弱さ」は「強さ」にもなる、
だが問題なのはそのことに気付いた自分は以前のように自然体で振舞えるかだった。
進歩したようで退化したアキト(笑)
さすがネルガルの社員である制服はそこらのレストランとたいして違わず色気がないが挙措に隙がない。
(まあ、そもそも制服に色気を求めるのが間違っている気がするが・・・・)
こんな時こそ、ナデシコで得た最大の財産が役に立つ。
「日輪の力を借りてェッッッッ!!!
いまッ!!!必殺のォォォォッッッッ――――!!!!
『テンカワスマイルッッ』!!!!!!!
(綺羅ッッ♪)」
ズキュ―ーンッッ!!!!!!!!!!!
<こうかはばつぐんだ!>
彼は長年の修行で太陽光線を利用し歯を光らせる技を心得ていた。
スゴイ!スゴイよッッ!アキトさんッッ!!
「すまないけど、オゴッてくれない?」
「よ、よろこんで、うっうけたまわままります(はあと)」
彼女は慌しく走り去っていく。
オレのためにご苦労さん♪
フッ、アカツキよ、社員の教育がナってない、ナッてないぜ。
わずか2分で運ばれてきた料理は・・・・・・・・・・・・
―――――――うまかった。
ア、アカツキよ、しゃ、社員の教育がナってるな(汗)
正直言って自信なくすぞ。
オレでさえこんな上手い「お子様ランチ」は作れなかった・・・
「いやまさか!3日3晩飲まず食わずの強行軍をしてきたからにちがいない!!!
そうだ!そうに決まっている!
第一オレには木連と連邦を和平させなければならない使命がある!!!!
そんな事を考えている暇などないのだッッ!!!(号泣)」
彼は人間的に成長した・・・
のかもしれない(汗)・・・
オレは先日ハッキングしたネルガルのホストコンピューターから得た情報を整理する。
木連の侵攻の理由は唯一つ、木星圏域に自分達の存在を見つけた地球連邦の最初に送られた最後通牒が原因である。
「あなた方の先祖は100年前によくお逃げなすったが、我々もあなた方が行った場所には行けるのですぞ。」
という意味の短く舐め切った文面のものである。
どうせ木連の人間は地球の物産を狙っているんだろうな、
とアキトは思った。
が地球を助ける気にもなれない。
そう、彼には大いなる野望があるのだ。
大いなる野望が。
だがアキトの予想に反して本当に木連は戦う気すらも無かったのだ。
「武」の本質は争いを抑止すること、即ち己の闘争本能を抑える事にある。
尚武の国「木連」に於いて腐敗しきった地球はそもそも唾棄すべき対象であった。
国力の差は時間が解決してくれる。
彼らにとって問題なのは堕落した地球の愚劣なる文化に触れ木連人の最高の宝ともいえる崇高な精神を失う事であった。
それに木連本国を攻めるには補給線が延びすぎるうえ内戦が勃発しているうちに挑発するのは常識からいえば馬鹿のやる事だろう、
そう思って巡察部隊からの報告があっても気にもとめなかった。
そこへ、
あの文面である。
『自分達を侮辱されるのはまだ耐えられる、だが先祖を侮辱するとは何事ぞ!』
国民上下なく全てが憤った。
出師すべし
木連政府首相一等議員キリガサ=オモシら「穏健派」の議員達は補給線の長さを危惧し、
反対した。
「穏健派」といっても若い軍部と違い奇麗事だけでは政治の世界は渡っていける程甘くはないのを知っている古狸ばかりなのである。
代案としては「北斗七星」を地球に送り込み地球連邦の要人、政治家を片っ端から暗殺する案が出された。
だが軍令部は義の為の戦に謀略を用いてまで勝つ気はないと言い切った。
無論表面上の話で有る。
年少者の若さ故の未熟を補うのは年長者の助言を素直に聞き入れる謙虚さこそ大切である、
と幼少から教え込まれているのである。
愚かな意地にこだわって敗北すればようやく安定してきたこの国も一転して亡国の危機に瀕すのである。
家族を守る事こそ国を護る初めの一歩と考えられてきた木連に於いて勝つためなら手段は選ばない。
「北斗七星」が動くのは半ば以上暗黙の了解とされた。
そしてクサカベ=ハルキ中将率いる戦艦六百七十八、戦闘員十二万余の連邦討伐の師が起こされた。
木連の全動員兵力が動いたといっていい。
それは方に怒涛、
と言うにふさわしい攻勢であった。
開戦から二月余りで火星は落ち現時点では掃討戦に入っている。
だが、しかし月にまで侵攻するほどの余裕はなく
連邦名物のゲリラ戦法に完全に手間取っているようだ。
だがアキトが得た情報では現時点での戦力差は地球の方が無駄に多い。
軍需産業と連邦軍政部が結託して潤いあった結果ではある。
が、将官たちの戦術指揮能力に於いて天と地の差があったのだ。
無駄に土地を使えない木連は宇宙で訓練するしかなかったが、
燃料費すら満足に出ない実働部隊は白兵戦、地上戦には強いが、宇宙戦の訓練は積んでないに等しい。
骨抜きにされているのだ。
クリムゾングループに、である。
ネルガルを叩き潰すには実力が足りないのだろう、
アキトはそう思った。しかし結局のところクリムゾングループの援助がない木連に勝ち目があるとは思えない。
同盟とは使いようによっては実力を倍にも、3倍にもしてくれる。
それのない木連にはどうあがいても勝てるとは思えない。
だが連邦も内戦状態で主戦力の大半を鎮圧に向かわせている。
それくらいの神経くらい連邦の人間も持ち合わせているということか・・・
内乱が早期に解決すれか地球圏のコロニー連合から援軍が来れば勝率はグンと上がるだろう。
自分の知る歴史とは大分違う。
勢力関係が、だ。
遺跡一つの存在でここまで歴史が変わるかと思うとアキトは不意に自分が恐くなった。
「と言う事は、オレひとりが最強?、ということか?」
彼は頬ずえをついて考える。
彼は人間的に成長した・・・
はずだ。
膝に足を掛け腕を組んで悩ましげな顔を見せた自分は結構様になっている・・・
と、アキトは思った。
お前アホだろ、じつは。
そして暫く時間は流れる・・・
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・時間は流れる。
〜〜〜〜〜〜〜〜時間は流れるッッ?
(馬鹿な!!!)
バンッッ!!
アキトは机に掌を打ちつけ、立ち上がって辺りを見回す。
バッ!バッ!!
少々血走っている目を浮かべながら彼の余り太くはない首は左右に動いた。
やはり、
不気味だった。
変質者として通報されても怪しくない挙動である。
だがやはり彼は寛大な男だった。
自分に対して(笑)。
第一、先ほどから妙な事をブツブツ呟いている変な兄ちゃんにときめく「美少女」が何処に居る?
無視された事に血の涙を浮かべアキトは心の中で咆える。
くわッッ!
(気付けっっ!女どもよッッ!!!
おまえらのためのファンサービスなんだぞ!!!(泣)
黄色い声援を送ってくれないと
やる気がでないじゃないですかァッッ!!!(血涙))
・・・・・・テンカワ=アキト18歳(26歳)一応未来の英雄になる男では有る。
・・・・・・多分。
このままでは自分がよりいっそう惨めになるだけなので彼は椅子に座った。
一応それくらいはわかる。
一般常識は別として(笑)
が進退窮まった、今の自分には無駄な事一切する暇ナッシング。
考えて行動せねばならない。
再び思案にふけるアキト。
そして彼に一筋の光明が見えた。
ヤクでもやったのか?
ピキュィィィィンッッッッッッ―――――!!!!
そして考える事小一時間、彼に月曜7時半の少年名探偵なみの「電波」が
来た来た来た来た来たぁぁぁッッッッッッ!!!!!!!!!!!
「フッ、フフッッ、フハハハハッッッッッッ!!!!クァッッッカッカッカッ!!!!
なんだか知らぬが今のこのオレは最強よッッッッ!!!
断言しようッッッッ!!!
北辰なんぞメではないとッッ!!!
連邦に木連、ネルガルッッ、クリムゾンッッ!まとめて叩き潰した後は
世界征服までまっしぐらよッッ!!!!!
御都合主義の神よッッッッ!!!
我に七福八幸を与えたまえェェェッッッッ!!!!!!」
不意に視界が暗くなる。
警官が2,3人アキトを囲んでいる。
やはり、
というかナンというか通報されたみたい(笑)
「で、お前は何を目的とする変態なんだ?」
取り出されたるは一枚の警察手帳。
<国家権力の犬どもが現れた>
がしかしッッ、これに対して我らのアキトクンはまったく動じない!
流石は主人公!!
この境地に達するともはや只の変態などとは口が裂けてもいえないッッ!!!
ならば何と呼ぶか?超スゴイ変態(笑)。
アキトは警官達を指差し意味のないポーズを決め猛々しく咆える!
ビシッッッ!!
「目的?そうか知りたいか!知りたいのかッッ!!
国家権力の犬どもよッッ!!!
世界(の女)の、世界(の女)
による俺の為だけのユートピアッッ!!!
それを築くことが世界にとっても最大の利益なのだッッ!!!!」
警官たちが目を合わせる。
客もおびえる。
うえいとれすのネエちゃんたちも怯える。
黙っていれば好青年、というカンジの青年が腹の中ではこんな訳のわからんことを考えていたのだから
当然といえば当然だ。
一瞬の静寂がこの混沌とした地球の大地のこの場、この刻に訪れる。
やがて幾重もの乾いた銃声が辺りに鳴り響いた。
ズギュ―――ン
ズギュ―――ン
ズギュ―――ン
「市民の皆様ご安心を。不穏分子は射殺しました。」
そこにはアキトの「死に体」があった。
腹部を貫いた三発の銃弾。
アキトの白いシャツはみるみるうちに赤く染まる。
顔面を蒼白にした客のひとりが警官に尋ねる。
「幾らなんでも、このような変態を始末するのに銃火を用いる必要がありましょうか?
手錠をもって監獄に縛り付けるのが妥当と愚考しますが・・・。」
警官たちはさも当然のように嘯く。
「戦時中ですから。」
客は
「うう、日本は法治国家なんだ。これは夢だ。夢に違いないッ。」
と小さくうめくと気を失って、近くにあったシートに倒れこむ。
警官たちは客を気遣うよりもアキトの「死に体」を車のトランクから持ってきたシートに包んでパトカーの後部座席に放り込む。
諦めろッッ!!!これが現状だッッ!!!
因ってテンカワ君がこの国を革命しようとしても一般常識から言えば許される。
その後の統治者が彼では問題ありすぎだが・・・・・。
がしかし、
がしかしッッ!
がしかしであるッッッッ!!!
テンカワ=アキト、昼飯時に死すッッ!!!
続かねばッッ!!!
--------------------------------------------------------------------------------
コメント:こんにちは飛燕です。
ネタと方向性は決定。ウけるかどうかは別ですが。
というより序幕をまじめに書きすぎたな・・・
でもあっちの方がこの世界のより核心に近い部分だったりする。
複雑だな、自分がなに書きたいかすら読めん。
多分この作品は100%クライマックスで、(何時終わるかわからない)
200%シリアスで、(のつもり)
300パーセントギャグ!(笑えるのか?)
というひどい小説です。(一体どういう確率なんだ?)
なるべく真面目なの書くようにしますからご勘弁を。
キャラクターや情景描写の文章表現力が欲しい・・・・(ため息)
管理人の感想
飛燕さんから投稿です!!
死んじゃったの?
アキト君?
かなりキてて気に入っていたのに?
・・・大丈夫、この手のキャラは次の回には何事も無かったように復活するんですよ。
そうですよね、飛燕さん?
それでは、飛燕さん投稿有難うございました!!
感想のメールを出す時には、この 飛燕さん の名前をクリックして下さいね!!
後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!
出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!