活気ある呼び込み。
行き交う人々の笑い声。
品揃え豊富な露店。
賑わいを見せる路地は、ナデシコでは決して味わうことの出来ないもの。
平和な日常を感じさせてくれる、ひと時の休息。
「……いいところですね」
「そーだね、イツキちゃん。
招待してくれたルリちゃんに感謝しないとねー」
隣を歩く艦長―――ユリカさんは、物珍しそうな視線をあちこちに投げかけている。
いっしょに歩いているミナトさんとメグミさんは、ユリカさんのお供……というよりは、ラピスのお守り。フィリスさんとルリちゃんが城でいろいろ大変らしく、二人が代わりに面倒をみている。
そしてその後ろ。
前が見えないくらい積み上げられた、いろいろな包装紙の包みを抱え込んでいるのは副長のアオイさんとダイゴウジさん。
「くそー、アキトのやつ、うまいこと逃げやがって……」
「仕方ないよ。
彼はフィリスさん待つっていってたからね……」
あー、副長、それは……。
立ち止まって俯き、肩を振るわせるユリカさん。
ふるふるふる……
「副長!
人がせっかく話題に上げないように努力してたのに、貴方って人は……!」
「ご、ごめんなさい」
「あ〜あ、こりゃ当分、荒れそうねぇ」
耳をふさぎながらぼやくミナトさんは、マイペースにそう告げる。
慌てて私も耳栓。
すぅっと息を吸ったユリカさんは―――。
「アキトの、ばかー!!」
街中に聞こえるくらいの大声で叫んだ。
―――広場にある噴水のベンチで、休憩中。
「どうどう。
落ち着いてください、艦長」
メグミさんの差し出したアイスをがつがつと征服しながら、ユリカさんは、
「うー、……だって、アキト。
私のコト全然、……気に掛けて……くれないし……。
年齢も……私のほうが……フィリスちゃんより……上だし……」
こっちまで気が滅入りそうな口調でボソボソと話す。
そんなユリカさんに、メグミさんは言い聞かせるようにして、
「だったら自分からアプローチするしかないじゃないですか。
年齢なんて関係ありません!
ライバルが居るなら蹴落としてでもアキトさんを手に入れないと」
「メグミちゃん……」
私はなんとなくミナトさんと顔を見合わせる。
―――話が変な方向に進んでるような?
「そーですねぇ、まずはお約束で靴に画鋲とか。
いつも使ってる櫛に接着剤なんて効果的ですよね。
料理の調味料の中身入れ替えるのも面白いかな。
あとは下着とか制服に切れ目入れておくとか……あ、そうだ!
せっかくだから、艦長権限つかって二人のシフトを替えちゃうのもいいかもしれませんね。
絶対会えないように。
ほかにも―――」
ガクガクと震え、青ざめた表情のダイゴウジさんとアオイさん。
ミナトさんは口元を引きつらせて、ラピスの耳を両手で塞いでいる。
しーん。
「……あ、あはははは、やだな、冗談ですよ?
そんな、引かないでくださいよぅ」
……今更、可愛らしく否定されても。
「はいはい、怖いお姉ちゃん達はほっといて……。
ラピス、貴方もアイス食べる?」
こくこく、と頷くラピス。
自分で買いに行くつもりなのか、両手を差し出している。
「一人でいけるかな。
じゃ、ハイ」
ミナトさんから硬貨を受け取り、ラピスは少し離れたアイス屋に歩いていった。
見晴らしの良い広場だから、見失うことは無い。
「初めてのお使い……」
「そんな低学年じゃないでしょ。
あの歳の子なら、小学3、4年生くらいかな?」
「そーですね……」
アイスを受け取り、代金を払ったラピスは、駆け足で戻ってこようとしている―――が、ひどく危なっかしい。
コテッ
案の定、足を何かに取られて転んでしまった。
「あらら……」
ベンチから立ち上がり、ラピスのほうに駆け出そうとする私達より早く―――誰かがラピスを立ち上がらせていた。
男だった。
黒ずくめの男だった。
黒髪に、黒いバイザーで目線を隠し、黒いマントを身につけている。
――露骨に怪し過ぎる。
男は、ラピスを立ち上がらせると、髪の乱れを整え、頭を撫でて―――。
「ラピスちゃん! 大丈夫!?」
ユリカさんの声に驚いたのか、その手を引っ込めた。
ラピスが男にお礼を言って、こちらに駆け出してくる。
―――どうやら、危ない人ではないらしい。
いや、風体はこれ以上無いくらい怪しいが。
「ラピス、怪我は無い?」
ラピスはこく、と頷いてミナトの腰に抱きつき、男の様子を隠れるようにして伺っている。
「どうもありがとうございました!」
「いや……気にしないでくれ」
男は、こちらの様子を伺うようにして動かない。
その視線は見えないが、ユリカさんと―――何故かダイゴウジさんを見ているような?
「怪我が無くてよかった。
気をつけるんだな」
「はい……あのう、何処かでお会いしましたっけ?」
ユリカさんがそんなことを呟く。
……?
「さあ、知らないな。
―――邪魔をした、失礼する」
「はぁ」
男は、首を微かに曲げて礼した後、踵を返して―――雑木林のほうに消えていった。
一度も、こちらを振り返ることは無かった。
名前も、名乗らなかった。
機動戦艦ナデシコ
ROSE
BLOOD
第19話
著 火真還
事の始まりは昨日のお昼過ぎ。
待機命令を解かれ、いろいろあって後方支援に廻されたナデシコは、地球でのチューリップ掃討をやってます。
非常に退屈で……張り合いの無いお仕事。
ただ、私はそろそろ来る筈の機影を待っていたので、それほど退屈はしていませんが。
ぴ
「レーダーに機影。
小型のシャトルです。所属は―――ピースランドの王族専用機。
武装は、ありません」
「へ?」
続いて、メグミさんも、
「その小型機から通信来てます。
着艦許可を求めているんですけど、どうしましょう?」
「ふむ、ピースランドと事を荒立てるのは避けたい所です。
なにせあそこは永世中立国。お金、持ってますからねぇ」
「むう」
プロスさんとゴートさんの提案を受けて、艦長は、
「じゃあ、受入準備よろしくお願いします!
メグミちゃん、あちらの要件が何か、分かる?」
メグミさんはヘッドフォンを耳に当てたまま、ちょっと待ってくださいとジェスチャー。
「……はい、……はい、確かにこちらに居ますけど……はぁ?
……はぁ……ええと、ちょっと待ってください」
困惑したままの顔で、メグミさんはちらっと私に視線を向けた後、艦長に報告しました。
「ルリちゃんに用事があるらしいんですけど。
あと、後見人とか親権がどうとか、なんか聞きなれない言葉を連発されちゃったんで」
「なにそれ」
艦長は、メグミさんの話だけでは察する事が出来ず、頭を捻りました。
一方のプロスさんは、なにやら気になることがあるのか、
「……もしかすると。
フム、艦長。どのみち、お相手しないわけにも行きませんし……ひとまず出迎えてみましょう。
艦長と私とゴートさんと、もちろんルリさんと……あと、フィリスさんにも」
「フィリスちゃんですか?」
一見、部外者とも言える人選に、プロスさんは苦笑いを返しながら、
「あの方はルリさんのお姉さんなワケでして。
それに、居てくださると何かと心強いんですよ、こちらとしても」
―――変なとこで頼られてますよ?
フィリスお姉さん。
オモイカネにシャトル着艦準備を指示しながら、私はそんな事を考えていました。
***
ナデシコ後部デッキに着艦したシャトルから、衛兵と一人の老齢の紳士が出てきました。
永世中立国の王族に仕える執事らしいです。
「―――突然のことで驚かれましたでしょうが、この度は急な訪問を早急に聞き届けていただき、ネルガルの迅速な対応には驚くばかりでございます」
「いえ、困った時はお互い様と申しますか。
私どもネルガルとしても、ピースランド王国には何かと便宜を図って頂いておりますので、お役に立てるようでしたら仰ってくだされば……」
非常に堅苦しい挨拶を交わすピースランドの執事とプロスさんの言葉を聞き流しながら、私はフィリスさんを見上げました。
何故か、表情が冴えない様子。
「どうしました?」
訊ねるとフィリスさんは、いや……と言葉を濁し、
「今回はどうするのかと思ってな。
前はアキトと二人で行っただろう?」
「はあ。
面倒ですからナデシコごと行くつもりでしたけど……」
「そうか。
……実は、この前の木連の騒動からこっち、どうも『あちら』の動きが気になってるんだ。
まさかピースランドにまで襲ってくる事は無いだろが……気にしすぎかな」
そーゆーことですか。
「ま、来た時はしょうがないですし。
その時はその時で」
「ふむ」
「―――ということで御座いまして、我々の調査によれば、ホシノルリという少女がピースランド国王のご息女に当たるのではないかと突き止めたのです」
「なんと……それは。
本当ですか?
まさかそのような事件があったとは……我々の調査不足でした。面目御座いません」
「いえ、いえ。
そのような醜聞を世間に公表するわけにも行かず、我々も極秘で調査をしてきた次第です」
「なるほど、なるほど」
「勿論、現在の姫様の立場が御座いますでしょうから、こうして恥を忍んで馳せ参じた次第でして、つきましては一度、我がピースランドに……国王、王妃にお顔を見せて頂ければと思いまして……」
「ほえー、ルリちゃんお姫様だって」
「らしいですね」
「らしいですねって……」
唖然とした艦長の視線を受けて、私はちょっとだけ得意げ。
いえ、まあ、たまにはこんな役所があっても……いいですよね?
***
流石に国王―――親との面会に付いて行くわけにもいかないだろう。
ナデシコがピースランドに到着し、ルリは一人で謁見する為、王宮の奥へ通されていった。
とりあえずその場までついていった俺たちナデシコクルーは、一般公開されている一階を散策した後、早々にピースランドでの休暇に入っている。
「すぐ戻ってきますので、後で一緒に街に行きましょう」
「ああ」
ルリにそう言われた俺は、暇つぶしに庭園を散歩している。
…………。
庭園は、幾らかの区画に分かれていた。
綺麗に手入れされている路地を、特に何をするわけでもないが―――歩く。
久しぶりの穏やかな時間だった。そう感じるのは今までが忙しすぎたからだろうか。
「…………」
「…………」
「…………」
後ろを振り返ってみる。
「……街にでも出てみたらどうだ?
ここで油を売ってないで」
アキトと、今や弟分となっているらしいハーリーが着いて来ているのは分かっていたが、黙ったまま傍に居られるのは居心地が悪い。
「フィリスさんは?」
「ルリが待っててくれって言ってたからな。
勝手に帰るわけに行かないだろう」
「なるほど」
―――何がなるほど、なんだか。
そんな言葉を飲み込んで、大木の木陰にあるベンチに座る。
当たり前のように、アキトとハーリーは隣に座った。
「今ごろナデシコで、ウリバタケがブラックサレナの起動テストやってるはずなんだが……」
「あ、そうなんスか」
「知ってろよ……自分の機体なんだから」
「アハハ」
ため息。
「あ」
ハーリーが、今更気づいたかのように声を上げる。
「そーいえば、フィリスさんって男言葉つかってますよね?
何か理由があるんですか?」
無邪気な質問だった。
唐突で、思わず声が詰まる。―――男だったから、では拙いだろうか。
「……特に理由は無いが……強いてあげるなら、そのほうが自分らしいからだ」
「はぁ」
おそらく分かってないだろうハーリーの返事を聞き流しながら、俺は目を閉じた。
昼寝にはちょうどいい風が吹いている。
ベンチに背を預けた。
「あ」
アキトの息を呑む声に、目を開ける。
ルリと王妃が歩いてくるのを見て―――俺は、立ち上がった。
「お久しぶりですね、フィリス」
王妃の言葉を理解するのに、数秒を要した。
「「……は?」」
お久しぶり?
ルリがこちらをびっくり顔で見上げているが―――俺にもさっぱりだった。
そんな記憶は無い。
「もう5年前の事ですけれど……お忘れになりました?
ちょうどこの子と同じくらいの歳に、招待させて頂いたのだけれど……」
ルリにチラリと視線を向けた後、不安げな眼差しでこちらに視線を移した。
「……悪いが憶えてない。
俺が、昔ここに来たことが―――あるのか?」
「ええ。
私と貴方は……同じ体質で、似たもの同士でしたから。それが縁で、色々とお話して。
……私はずっと、お友達のつもりで居たのですけれども。
そういえば、髪の色が違いますね。言葉使いも―――本当に、貴方はフィリス?」
そんな言い方をされると、自分が偽者にでもなった気分になる。
「……俺には16歳以前の記憶は無い。
記憶喪失というか……まあ、そんなところだ。
―――すまないな」
「そうだったの……」
少し残念そうに呟き、しかし王妃はポンと両手を合わせて、
「後で、私の部屋に来てくださいな。
美味しい紅茶を振舞わせていただきますから」
そう言って微笑んだ。
***
滅多に人が立ち入ることは無い、薄暗い雑木林の奥で、編み笠の男は日が沈むのを待っている。
草壁中将により、マシンチャイルド暗殺を命じられた北辰である。
乾いた音を立てる焚き火の炎を囲むように、持参した携帯食料の缶詰が掛けられている。
彼は、ピクニックに使うような布製の椅子に座し、腕を組み、目を閉じたままで考えを巡らせていた。
―――まだ午後を少し廻ったぐらいか。やらねばならぬことは幾らかあるが……。
人の警戒の薄れる深夜までには、情報収集を終えておかなければならないだろう。侵入経路、部屋割り、逃走経路、人の配置……。
もっとも、脱出にはボソンジャンプを用いるつもりだから、目的さえ果たせれば後はどうにでもなる。問題があるとすればそれは―――。
他人の気配を感じ、そちらに視線を向ける。
そこに、黒づくめの男―――天河明人が姿を見せた。
「……この国の地図と、王城のパンフレットを買ってきた。一般開放されている一階の間取りぐらいは分かると思う。
とりあえず迷子にはならないだろう、これで」
天河明人がポンと投げ渡した真新しい地図に目を通しながら、北辰は口を開いた。
「フム。やはり連れてきた甲斐があったというものだ。
―――我らは、地球での振る舞いに慣れておらぬからな」
「振る舞い以前に……その格好が問題だな。
完全に変質者だ」
自分の姿を心の棚に上げ、天河明人は嘲笑った。
「―――フン、そうやって笑うが、想像してみると良い。
我にこの姿以外が似合うと思うか」
黒服。
ジーンズ。
カジュアル。
一通りポーズを決める北辰の姿を想像して、明人は素直に頭を下げた。
「俺が悪かった」
「分かれば良い。
……さて、飯にするか」
北辰は、焚き火で温めていた携帯食料の一つを明人に手渡す。
微かに味がする程度には、味覚は回復している。視力も、まったく見えないわけではない。
それくらいには、回復している。……他ならぬヤマサキの薬で。
奴を『殺した』時の感触は、今も思い出すことが出来た。
目の前に居る北辰を『殺した』ときも、同じだった。
彼の復讐は、既に終わっている。
この世界で―――まだ、自分の敵となっていない彼らを殺す?
まだ犯してもいない罪に、自分が死という罰を与えても構わないのか?
いや、既に犯罪は起こしている筈だ。……被害者は自分ではないが。
その代理として……牙を剥くか。
ざわめき立った心を落ち着かせる。
―――そういう問題ではないんだ。
俺は、木連から―――彼らから離れられない理由があるからこそ、こうして生き恥を晒している。
それを忘れるな……。
短い食事を終えると、天河明人は瞑想を続ける北辰に尋ねた。
「……何故、俺を連れてきた?」
彼の脳裏にあった疑問だ。
―――北辰は、俺が暗殺の手伝いなどするはずが無いことは分かっている。
かといって、本当に情報収集させるために連れてきたわけでもあるまい。
北辰はうっすらと笑みを浮かべた後、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「……フム、お前の真意が何処にあるか見せてもらおうと思ってな。
我は、お前が完全に閣下に屈しているとは思ってはおらん。
―――いつ何時(なんどき)、牙をむいて来るかと楽しみにしていたのだが……。
そうも言っていられなくなった」
日中でありながら薄暗い森の中で、焚き火の照り返しが、北辰の顔をより不気味に見せる。
「どういう意味だ」
「……その身体、既に崩壊の兆しが見えておるな。我の目は誤魔化せん」
「…………」
胸に突き刺さる言葉に微かな動揺を見せながら、天河明人は沈黙で返した。
「そういう事だ。
今回のチャンスを逃せば―――我は唯一、宿敵となり得たかも知れぬ男の剣を受ける事は無くなる。
それではつまらんのでな……いい機会だと思ったのだ。
もし我の任務を邪魔するようであれば、遠慮なく切り捨てる事も出来る」
「その期待には……悪いが答えられないな。こっちにも、都合がある。
だが……『戦いたい』というのなら―――良いだろう、刀を寄越せ」
ニヤリ―――と、北辰は口の端を吊り上げた。
北辰は、初めからこれを狙っていたに違いなかった。
つまらない暗殺という任務より、よほど刺激的で―――戦い甲斐のある強敵に対峙することが、彼の目的だったのだ。
「……ククク、命だけは勘弁してやろう。
お前の望みどおりにな。
―――だが、手足の一本は覚悟しておけ」
「お前がな―――」
投げ渡された刀を受け取った瞬間、戦いは始まっていた。
キン!
挨拶代わりの一閃を弾き返し、明人は後方に飛び退った。北辰はその動きに対して満足げに頷き返し―――。
「安心したぞ、天河明人。
動きはまだ鈍ってはおらぬ様だな」
挑発するような言葉に、返答はしない。明人は低空から接近し、刀を迅速に突き出す。目も覚めるような一瞬の攻勢に、北辰はその刀の軌道を読んだ上で僅かに身体の位置をずらしつつ、明人の刀を弾き返した。
身体の細胞が戦闘を望んでいるような歓喜に包まれ、北辰は陶酔したように呟く。
「久しく感じなかった―――スリルだ。
楽しませてくれる」
「……!」
空いた手で明人の伸びきった腕を掴もうとする。明人はそれをさせまいと逆手に握り返した刀でなぎ払った。しかし、既にその場所に北辰の姿はない。体重を感じさせない北辰の身体は、小さく円を描いて明人の側面に降り立った。
何時の間にか左手に収まっていた刀が、わき腹に差し込まれる前に、明人は身体を地面に投げ出すようにして逃げる。しかし、北辰はすぐに後を追った。体勢の崩れた明人は、繰り出される刀の軌道を追いきれないと判断したのか、無理な体勢から身体を捻り、刀の一閃によってそれらを弾く。
それくらいでは、北辰の愛刀は壊れはしない。
刃の綻びさえ見せぬ鉄の白さが、僅かな森の明かりに反射する。
北辰が一瞬身体を引いたあと、姿を消した。
「打ち合うだけでは分からんな……我と互角か、それに近い。
―――これではどうだ」
声は後ろから聞こえた。
ゾクっと身を強張らせる『前』に……身体が反応して、首筋に差し込まれようとした刀を、自分の刀で受け止める。数センチというところで止まった刃は、しかし遅滞なく滑り、首筋に伸びた。
……!
身体を前に投げ出しながら、足で北辰の腕を蹴り上げる。しかし、その動きは読まれていたのか、北辰は既に身体を退いている。
……首の皮が切られる痛みは感じられない。冷たさが過ぎ去った後、ドロリとした感触があった。首の皮一枚、破れたらしい。
「殺すつもりが無いとは言いながら―――やってくれるな」
「いかんいかん、我に課した誓いを破るところであったな……。
よくぞ死の刃を避けたものよ。
それより、木連式暗殺術に通じておるとは……まさに我が宿敵に相応しい」
「そう……かい!」
明人は刀をだらりと下げ、横に走った。遅れて北辰は追撃に移る。背中に追いついた北辰が刀を突き出す前に、明人は身体を沈ませて速度を落とした。予測はしていたがタイミングを崩された北辰の刀が背中の肉を削るのも構わず身体を捻る。血飛沫が飛んで、北辰の顔を塗らした。目を一瞬つぶった北辰の隙を逃さず、明人の刀が脇から突き出され、北辰の腕を両断しようと旋回した。骨に削られて刃が滑り、北辰はたまらず身を引いた。
「…………」
北辰の右腕からドロリと血が落ちる。明人は背中を真紅に染めながらも、刀を下ろさない。
―――既に言葉は意味を成さなかった。北辰は愉悦の―――狂気の笑みを隠さず、刃に滴る血を舐める。
その殺意は―――命を絶つまで治まりはしない。
明人は北辰の狂気に……『やりすぎた』ことを悔やんだ。ココから先は殺し合いだ。
もはや、命までは取らぬという約束も憶えてはいないだろう。
しかし、後悔しても始まらない。刀を構え、本気になった北辰の動きを見極めようとして―――。
ズキ……
身体から熱が消えていく。頭の中を流れる血管の音が聞こえる。
手から刀が滑り落ちる。既に握力を失った手がだらりとさがる。膝に力が入らず、明人はその場に崩れ落ちた。
ドサッ
―――もう、時間が切れたのか。
戦闘によって、薬の成分―――抑制剤が予定より早く尽きたのだろう。
ナノマシンの暴走が始まったのだ。
活発化したナノマシンが身体のエネルギーを吸い取り、明人を内部から食い荒らす……その痛みは、想像を絶する。
自分の意志で動かせるものは何一つ無い。筋肉が弛緩したまま、呼吸も困難になる。
その中で、痛みだけが自分の感覚であるかのように、自己主張する。
「かはっ……あ……く」
その明人の無様な姿に、北辰は―――舌打ちして刀を納めた。
「興が殺がれたな……。
天河明人よ、それでも―――まだ、生きるか、叶わぬ目的とやらの為に」
返事も出来ぬ明人に近づき、液体カプセルを口の中に入るように潰す。
ドロリとした液体が口内に浸透し―――やがて、明人の呼吸は納まった。
痛みは、すぐになくなった。
しかし、動く気力はまだ、無い。
「…………」
「…………」
仰向けになった明人の目に飛び込んできた、森の隙間から見える青い光は優しく―――儚く。
「……死ねないな。
ここは、眩しすぎる」
***
別に、紅茶を飲むために正装しなければならないという義務はないでしょう。
しかし、ナデシコの制服は、母―――王妃のプライベートなテラスにはあまり相応しいとは言えないのかもしれません。男性であれば妥協も許されますが、流石に私とフィリスさんはそう言う訳にも行かないみたい。
……そう、着替えの真っ最中です。
「息を吐いてください〜」
「はー」
ぐっっ……
「う゛……っ」
コルセットのお腹を締め付ける感覚に、フィリスさんは息を漏らしました。
見かけは華奢な女性でも、アキトさんのトレーニングに付き合ってたお陰で筋力は鍛えられてます。脂肪のように弛(たる)んだお肉ならともかく、柔軟の無い筋肉でお腹を引き締めるのも無茶な話ですが、付添いのメイドさんはあきらめません。
「ハイ、もう少しがんばってくださいね〜。
息を吐いて〜」
ぎちぎち……
「ぐえ……、無茶言うなっ! あんこが出るわ!
死ぬ、これ以上締めたら死んでしまうっ!」
珍しく取り乱すフィリスさん。ちょっぴり涙目になってたりして。
「何を言ってるですか。
女性のウエストは細ければ細いほど美しいとされるのですよ?
これくらい我慢しないと立派なレディにはなれませんですわ」
心外だとばかりに不満を漏らすメイドさんに、
「あのな、社交界デビューとかじゃあるまいし、たかだかお茶ご馳走になるくらいでドレスアップする必要が何処に―――」
「あのですね。
王妃様のテラスで紅茶を振舞われるコトなんて、頻繁にあるものではないのですよ?
ましてや姫様の姉同然ともあろう御方が、そのような振る舞いでは困ります」
バッサリ切り捨てられて、フィリスさんは口をへの字に曲げ、ボソッと。
「……頑固なメイドだな」
「お褒めに預り恐悦至極です。
……まあ、いいでしょう。これくらいならなんとか淑女に見えるでしょうし……」
誉めてない―――口の動きだけでそう吐き出したフィリスさんでしたが、残念ながら次の試練が待っていました。
「次はドレスですね。
どれが良いかしら……」
「どれでも良いから動きやすい奴を頼む。
ルリの着てるようなフリルが無い奴だとなお嬉しいな」
「……似合いませんか?」
私が自分の服を見下ろして、フリフリとポーズを取りながら言うと、
「ルリはいいさ、まだそういう服が似合う歳だと思う。
―――ただ、俺はちょっと……勘弁してくれ」
「となるとこちらの系統ですね。
色は何色が?」
カーテンで仕切られた隣のレーンを引っ張り出しながら、メイドさんは訊ねます。
しばし考えを巡らせてフィリスさんの口から出たのは、
「……黒がいいな」
「黒は無いですね〜、せめてここにある色を選んでくださいませ」
ずらりと並べられたドレスに視線を向け、フィリスさんはその一つに目を止めました。
銀糸で薔薇をあしらった模様がある、紅のドレス。
「……これは?」
「あ、それはですね。
王妃様が大切なお友達に差し上げる為に購入した―――」
「貴方のですよ、フィリス」
控え室に顔を出した母がそう言ってにっこりと微笑みました。余りに遅いから心配して見に来たみたいです。
「昔、貴方が17歳になったら手渡そうと思ってたの。
居なくなってから、どうしようかとずいぶん迷ったけれど、貴方が17になるまでは置いておこうと思って。
―――少し早いけれど、貰って下さいます?」
「……あ、ああ。
そうだな、そういうことなら……着てみるか。いや、そうじゃなくて―――ありがとう」
「どういたしまして」
***
ナデシコ格納庫では、ウリバタケの指示でブラックサレナの最終調整が行われている。
ブラックサレナ。
漆黒に赤のライン―――それだけで、およそのイメージは湧く。
それは、正義や法からは遠く、死と恐怖の具現、復讐の牙。
まさに今、テンカワSplを包まんとしているその武具は、エステバリスという人間が纏う、絶対的な力と言えるのかもしれない。
そんなことを頭の片隅で思いなら、アカツキはため息を吐き出した。
「やれやれ、こっちもようやく形になったワケだ」
「長かったですね……改修というより、作り直しに近いような」
「少なくとも、開発につぎ込んだお金はアルストロメリアの5倍以上らしいよ。
ウリバタケ君の作った設計書、見るかい?
出力と機体強度がハンパじゃない。
……その分、パイロットは耐Gスーツでもなきゃ潰れてしまうような機体なんだけど」
ブラックサレナの改造に、二人は関わっていない。
ウリバタケとイネスによって現時点最高の性能を注ぎ込まれた機体は、金額的にも性能的にも、二人の思惑を超えてしまっていた。もちろん、技術的にフィードバックできるモノは少なくないので、金銭的損失は後で幾らでも補完できる。
エリナは脳内で電卓を叩きながらも、アカツキより手渡された設計書に目を通す。
アルストロメリアから取り入れられている技術もある。ディストーションフィールドに指向性を持たせ、高圧縮により実現するディストーションシールドは、テンカワアキトの戦闘経験によって早くも有効性が認められている。しかし、まだ既製品が無い状態のため、製造コストが割高になってしまっているのは仕方の無いところだろう。
「……商品には出来ませんね。
会長は試してみられたんですか?」
「シミュレーションをちょっとね。
テンカワ君に手伝ってもらったんだけど……進んで乗りたい機体じゃないな。
高機動モードで10秒弱」
「は?」
苦笑いしながらアカツキは肩を竦めて見せた。
「格闘戦はなんとか身体が反応できるんだけど、Gがきつくてねー。
まさか気絶しちゃうなんて思わないよなぁ……」
「……気絶したんですか、会長が」
唖然とした顔でエリナは曖昧な記憶を辿りながら、
「会長とアキト君って、それほど腕前に差があるとは思いませんでしたけど……」
「エステ同士ならね。
それでも今じゃ、近距離戦闘で5本に4本は取られる。
―――中、遠距離ならこっちに分があるけど……」
「はぁ」
「近距離が得意なリョーコ君とヤマダ君なら、いい勝負になるんだけどね。
……それでも、ボソンジャンプがある以上、テンカワ君が有利だ」
「ボソンジャンプは、CCが無ければ使えない筈―――まさか!?」
「そう、遂に―――出来ちゃったらしいよ。
機動兵器でボソンジャンプが可能なユニット―――あの機体には、それが搭載されてる。
こいつはちょっとしたパラダイムシフトさ。
相転移エンジンもそうだったけど、こいつはもっと凄い。
ワープとかテレポーテーションなんて実際、漫画とかアニメの世界じゃない?」
「怖いですね……」
エリナはボソンジャンプの浸透した後の世界を想像しようとして身を強張らせた。
移動が時間を伴わない世界。
ジャンパーとそうでない者の確執。
混沌。―――そして生まれるだろう新しき秩序。
それは、いったい誰の手によるものなのだろうか?
「さぁて、そろそろ僕らも城のほうに行こうか。
一応は歓迎されてるみたいだし」
「……そうですね」
パーティーまではまだ時間があったが、気分を変えたほうが良いのかもしれない。
一度だけブラックサレナを振り返った後、エリナはアカツキの後を追った。
***
アカツキ達が着いたころには、パーティーは既に始まっていた。
ナデシコクルーの集まっている一角にたどり着いたアカツキは、壁際に立つフィリスの姿に感嘆の言葉を漏らした。
「こりゃまた、何処のお姫様かと思ったよ」
アカツキはワインを差し出しながら言葉を付け加える。
「そりゃどーも。
本物のお姫様なら隣に居るんだが……」
ルリを見下ろすフィリスの言葉に、
「流石に年齢が違いすぎるからね、ルリ君は。
それより、後で踊らないかい?
壁の花で終わらせておくのは勿体無いよ、フィリス君。
とりあえず乾杯」
「……お前、俺が未成年だってこと忘れてるだろ」
とは言いながらも、フィリスはグラスを受け取る。慣れた手つきで一口含み、
「少し甘いな。
……味が上品すぎる」
「年代モノなんだけどねぇ。
じゃ、後でまた」
肩を竦めるアカツキと、呆れたような顔をしたエリナは、少し離れた席に座った。
「…………」
―――出来ればブランデーのほうが嬉しかったんだが……まあ、良いか。
そんな事を思いながら、ワインを呷る。
「?」
アキトの視線を感じて、フィリスは手にしているワインから顔を上げた。
「どうした?」
「え、あ、いえ、……フィリスさん、お酒強かったんスね。
……未成年なのに」
マズイモノを飲まされたような顔をして、フィリスは言い返す。
「別に、普通だろう?
―――なあ、ルリ」
「……同意を求めないで下さい。
私、少女ですから」
ジュースを口に含みながら言うルリに、
「何をつんけんとしてるんだ、お前は……」
「アカツキさんの誘いをキッパリ断らない優柔不断さを呆れてるだけです。
アキトさんが褒めた時は、―――あれ?」
ルリが何かを見咎めて言葉を切った。
妹の言わんとしたことに反論しようとしたフィリスだが、ルリが―――驚いた様子で指し示す先を何気なく見て。
ワイングラスを落っことした。
がしゃん。
「わ、何やってんスか、フィリスさん」
「…………」
「…………」
アキトがグラスの欠片を拾い集める。
近くで待機していたメイドが掃除道具をすばやく持ってきている。
そんな周囲の状況など、目に入らない。
…………。
気が付けば、フィリスに手を差し伸べる黒いバイザーを掛けた男の姿があった。
姫に跪く騎士のように、礼儀正しく礼をして、フィリスの手を取る。
―――ダンスに誘っているらしい。
その突然で、不躾で、不遜な誘いを―――。
彼女に断る事が出来るわけが無い。
「うそ……」
「え」
ルリと、アキトの戸惑いの言葉を最後に、フィリスは踊りの只中に放り出された。
曲を知らない。
ダンスの仕方もわからない。
しかし、なんとか周りに合わせれば付いていける、スリーテンポの曲。
いや、そんなことはどうでもいい。
―――こいつ……まさか!?
「昼に、ガイを見かけた。
―――よく、生きてたな、アイツ。……正直、目を疑った」
「……!」
バイザーの下に潜む素顔がアキトのソレ以外であったとしても、そう言える人間など他にはいない。
フィリスが身体を強張らせた事に、バイザーをつけた紳士は彼女の背中をぽんぽんと叩きながら、宥めるように小声で続ける。
「驚く事は無いだろう、お前がやってきた事だ。
フィリス・クロフォードか……まあ、間違いじゃないが……いまいちピンとこないな。
―――お前は、俺なんだろう?」
フィリスの困惑は、恐怖のそれに取って代わった。
この男が―――逆行したテンカワアキトであることを、フィリスは知った。思い知らされた。
否定は出来なかった。この場にいて、どう考えても不自然なテンカワアキトは、自分の方だったからだ。
そして、自分はそうとも知らず、ナデシコに乗っていた事になる。―――自分をアキトだと思い込んだまま。
ショックに、身体の力が抜ける―――前に、明人が支える。
曲はまだ続いている。明人はフィリスの胴を抱くようにして、耳元に顔を寄せた。
「……すまん、言い過ぎた。ショックを受けるのも無理はないか。
でも、これだけは言っておかないと。
俺は別に、お前をそうさせて―――ナデシコに乗るように仕向けたわけじゃない」
「な……に?」
「お前の知識と記憶は……」
自分の頭を指し示し、明人は皮肉を込めた口調で告げた。
「お前の中に、俺の頭の中のナノマシンが入っているからさ。
初期化されたお前の脳に注入されたナノマシンはたぶん、そのとき俺の記憶を修復してしまった。
―――他ならぬ、お前の頭の中に。
そんな実験は止めさせたかったが、そのときは俺にも意識が無かったからな……すまん、止められなかった」
実験―――それは、つまり。
「ナノマシン?
マシンチャイルドのか?」
顔を強張らせる。明人は軽く頷いて、
「そうだ。
だから、お前がナデシコに乗る確率なんて、俺がわかる筈が無い。
……そんなつもりなんて、本当に無かったんだ。
だから、驚いたよ、ガイが―――アイツが生きてたことに。
お前が、助けてくれたんだな」
懐かしむように、明人はそう言って苦笑する。
本当は自分が助けたかったのだろうか。
自分が、歴史を変えたかったのだろうか。
―――生きていたのなら、自分がナデシコに乗れば良かっただろうに。
「何故だ……お前がテンカワアキトだと言うなら……何故、ナデシコに乗らなかった?」
問い詰めるが、明人は少しの間、沈黙を返す。
不意に身体の位置が入れ替わった後、ダンス曲のメロディラインが最高潮であることに気づいた。
手が伸ばされ、身体が密着する。耳元にまた、明人の口が寄せられた。
「行ける状態じゃ無かった。
CCは無かったし……マントも、お前を助ける為に使った」
テンカワアキトの着ていた黒いマントは、跳躍するための機能を備えた特注品だ。
今は、ナデシコの彼女の部屋のハンガーに掛けられている。
そのことに気づいて愕然とする。
では―――逆行したアキトは、自分を助けたが為に……ナデシコへ乗ることが出来なかったと言うのか。
そのことをフィリスが口にする前に、明人は言葉を続けた。
「気にしないでくれ。
そのときは、そうするしかなかったんだ。……後悔はしてない。
ヤマサキの元にいるから、寿命も少しばかり延びた。
身体の不調も、気にするほど悪いわけじゃない。
それに―――やらなければならない事も出来た」
「やらなければならない事……だと?」
「気にするな、こっちの都合さ。
……そんな顔をするなよ、お前は間違ってない。
お前は―――お前達はこのまま進んでいけ。後ろを振り返るな。
草壁は手ごわいぞ」
曲が終わりに近づいていた。これ以上は、ダンスを見物してる北辰の要らぬ気を引く事になる。
しかし、明人はふと思い出したかのように唐突に訊ねた。
「―――ああ、一つ聞きたいことがあったんだ。
ユリカは……アキトと上手くいってないのか?」
胸を抉る質問に、フィリスは顔を強張らせる。
「すまん……俺がアキトに干渉しすぎたせいで、ちょっと……」
神妙にそう告げると、肩を震わせて明人は笑った。
フィリスが何を言いたいのかは、すぐに悟ったらしい。
「ま、いいさ。
俺が過ごした時間は、もう帰ってこない。
アイツには、アイツの道があるんだろう」
手が離れる。
その一瞬で、曲が終わったのが分かった。
―――振り返ると、既に黒いバイザーの男はいなかった。
フィリスは、何時の間にか丸めた紙片が手の中にあることに気づいた。
次の曲が流れ出すのも構わず、フィリスは手に握った紙を握り締める。……その手は、やり場の無い怒りに震えていた。
「……俺がアキトの……複製か」
人には聞こえないほど小さな声で呟く。
受け入れるには―――あまりに唐突で、残酷な真実だった。
知らないほうが良かったのか。
いや、そんな筈は無い。現に、フィリス・クロフォードについての知られざる過去は、他ならぬ明人によって明かされたではないか。……それが、真実かどうかはわからなかったが。
―――しっかりしろ、フィリス。
自分に叱咤しながら、彼女は仲間達のいる一角へ戻る。
くしゃくしゃに丸まった紙には、明人の伝えたかったメッセージが書かれているのだろう。
だが、今はまだ観衆の前だ。北辰の目が届いていない保証は無い。
「……お節介なヤツだ。
まあ、気持ちはわからんでもないが、な」
無理をしている自覚はあっても、そうしなければならなかった。
でないと、不安で押し潰されそうだったから。
中書き (流石にここで後に引いて、また次回待ってて〜とは言えんよ……)
ども、火真還です。
というわけで、ピースランド編、前後に分けました。
分けた理由は……26話まで……話数が持ちそうになかったから(おいおい
おかげで、本来戦う予定が無かった北辰VS明人とか書いちゃったし……。
名前が無いくせにメイドががんばってるし……。
解説。
メグミ、本性を現す。
黒アキト、ラピス誘拐を企てる。
北辰、無理に笑いを取る。
の3本でした……というオチは置いておいて。
というわけで、黒アキトが本格的に登場したわけですが……既に死相がでてないかお前……大丈夫か?
フィリスにとってはきっつい話になっておりますが、後半はさらに辛いかも。それでは引き続き後半をどぞー。