「そう、笑っていたい。
彼の傍で・・・・
彼が微笑んでくれるのなら、
彼の為になるのなら・・・・
あんな自分の事しか考えない娘達になんか負けはしない!
・・・・アキト殿、事が一段落したら
私も傍に居ても良い?」
何処か艶を含んだ声と表情で幻と解っている
目の前に浮かんだアキトの笑顔に向けて語りかける。
本人に会う事はもうしばらくの間出来ないから・・・。
一冊の本が生んだ哀れな男の愉快な喜劇
第4話
―逃亡者を探す阿修羅達と匿う者達―後編
作者 広島県人+アヤカ
「(うぅぅ・・・いっそ殺してほしい)」(泣)
勤務シフトの関係で不運にもブリッジに居合わせた
マキビ・ハリは心の底から一瞬で訪れる死を欲した。
防弾ガラスのハートを持つと言われる彼を持ってしても
死を望むほどブリッジの空気は重く帯電していた。
何故なら後数分で先ほど指定された6時間になるからだ。
前回の交渉(とは言えない物だったが)では
(同盟から見て)怨敵・木連大佐哀河に
直接的な力の行使を禁じられ、
その上で皮肉を的確に浴びせられる・・・
等といった散々な目にあったユリカをはじめとする某同盟は、
個人で勝てないのなら数で押す。
と作戦変更し、ブリッジに某同盟加盟者全員を集め
メインウィンドウが表示されるであろう場所を睨み付けている。
「・・・提督、お茶が美味しいですなー」
「そうだなープロスさん。
・・・お!茶柱が立ってる」
「ほー、
これから起きる事の被害が最小限に収まると良いですなー」
「うーん。そう願いたいものだなー」
「・・・無理でしょうなー(だろうなー)」×2
黄昏大人二人組はブリッジの空気には慣れたようだ、
ブリッジ後方でミナトと共にお茶を飲んでいる。
ミナトはお茶請けの芋羊羹を一口サイズに切り分け
黄昏大人二人組に渡している。
既に表面上はいつも通りのミナトになっているが、
内心は6時間前と大差がない。
ただ表に出てないだけだ。
二人組は某同盟に気を取られて
ミナトの状態をちゃんと確認していない。
ハーリーは言うまでもない。
と言うか、彼にそれを求めても無駄だ。
「・・・・・・・・・。
来ました!メインウィンドウに出します!」
「・・・ナデシコのみなさん
東です。
まずはお待たせした事をお詫びします」
「そんな事はどうでも良いです。
そちらにアキトがいるんでしょう?
アキトをこちらに引き渡してください」
「アキト殿?
アキト殿ならシャクヤクにいないけど」
開口一番の舞歌の謝罪を
『そんな事』で済ますユリカにシャクヤクブリッジクルーの
不快感が10%上昇する。
そんな事気にもかけず、いや気付かず
ユリカは(彼女等にとって)当然の主張をする。
しかし舞歌は舞歌で後ろ暗い所は全く無い、
事実を事実のまま告げる。
少なくともこの時点でシャクヤク『には』アキトが居ないのだから・・・。
「ふざけないで下さい・・・
アキトがナデシコ艦内から優華部隊の各務千沙さんと
影護北斗さんに連れて行かれた事は
既にこちらの艦内監視システムで確認済みです!」
「そうだよ!
・・・何だったらその映像のコピーそっちに送って上げるから確認する?」
「へ〜・・・
でもそれが欺瞞情報じゃないと言う証拠は?」
ルリ・ラピスの妖精姉妹がこのままでは前回の様に
皮肉混じりに論破される、
若しくはのらりくらりと話をそらされてしまう事を回避する為に
決定的証拠の提示をもってアキトの返還を求めるが、
『今の所』嘘など言っていない舞歌は
むしろ北斗達をからかうネタの収得とアキトの映像、
さらに時間稼ぎのネタも見つけて内心で邪笑を浮かべる。
「嘘だと言うんですか!?
良いでしょう。
ラピスちゃん、シャクヤクに例の映像送って」
「解った」
「・・・・しまった!」
「確認したわ。
こちらで偽造かどうか確認するから少し待ってくれるかしら?」
三つ編みの謀略家が舞歌の目的を一瞬遅れで理解し舞歌を睨むが、
舞歌はそんな事に頓着せず。
相手の応答を待たず通信を一方的に切ってしまう。
「く!(流石木連最高の知将ね。
こちらの心理状態を正確に把握してるわ・・・。
そしてこちらを常に激昂状態にしておく事で冷静な判断能力を奪う。
しかも着実に時間を稼いでいる。
でも時間を稼ぐって・・・・・・)」
三つ編みの・・・・めんどいな。
メグミがかなり正確に舞歌の考えを推測し、
さらに思考を進めている。
この辺り一応作戦指揮官であるユリカよりも余程
冷静に相手の思考を読んでいる。
もしかしたらユリカよりもメグミの方が
余程指揮官に向いているのではないだろうか?
一方舞歌はと言うと・・・・
アキトは若干の黙考の後、
千沙から手渡された蒼いクリスタルを握り締め
北斗と千沙の肩を抱きながらシャクヤクをイメージする。
『あ、アキト(赤)』
『あ、アキトさん(赤)』
『イメージ、シャクヤクブリッジ・・・ジャンプ!』
映像が終わった時点で、
拳を握り締めていた。
邪笑を浮かべていた。
哀河を代表にブリッジクルーはどこまでも天然なアキトと
何を考えているか表情から理解できた舞歌に対し苦笑を浮かべている。
「クスクス・・・
北斗ー・・・千沙ー・・・二人とも顔真っ赤にしちゃって
可愛いんだから♪」
既にからかう手段を決めたようだ。
次に会った時北斗と千沙がからかわれる事はこの時点で決定的となった。
当初舞歌には意外だったがこの映像を簡単な検査にかけた所
全く手を加えていない(ウィルス等が仕掛けられていない)
事がハッキリしていた。
恐らく妖精姉妹はこの映像データに触る事すら無意識の内に
回避した結果だろう。
「さて・・・後1時間ぐらい通信はしないでおきま・・・」
舞歌がそう呟いた瞬間メインウィンドウが開かれ
ナデシコと通信が再開される。
「・・・・・・・・・」
「検査、すみました?
先程言い忘れましたが、
そのデータには一切手を加えていません。
それは私達のアキトさんへの愛情にかけて誓います」
「そ、そう。
(こちらのシステムに侵入していた?
いえ、違うわね
通信を開く事自体はそうかもしれないけど、
タイミング事態は完全な『カン』でしょうね。
あの娘、メグミ・レイナード・・・だったかしら?
こちらが時間稼ぎをしてるって気付いたのね)」
絶妙なタイミングで開かれた通信に一瞬面食らった物の
すぐさま精神を復旧させ、
こちらの考えを見通そうとしている三つ編みの女性に一瞬だけ視線をやる。
取り敢えず別件で時間を稼ごうと幾つかの情報を頭に浮かべる。
「アキト殿なら
「舞歌様!!北ちゃん達がテンカワさんと地球に行ったって本当ですか!?」
「零夜・・・・」
そして言葉を紡ごうとした瞬間
東舞歌を含むシャクヤクブリッジクルー全ての思惑が木っ端微塵に粉砕される。
しかし追跡者サイドの同盟としては希望の光となった。
シャクヤクブリッジメンバーは突然入ってきて自分達(舞歌)の思惑を粉砕した
紫苑零夜木連小尉を同盟もかくやと言う目で睨み、
ナデシコブリッジに詰めている面々は一部を除き臨戦態勢に突入、
『遊びは終わりだ!!』とでも言うかのような鬼気を発している。
人外魔境が今その場にて発生したかのようだ。
「舞歌様答えてください!
本当に北ちゃん達は地球に行ったんですか?」
「零夜・・・
もう帰ってきたの?
予定では明後日あたりに帰ってくるはずでしょ?」
状況が把握出来ていない零夜は
自分の友人の行方を上官に問いただすが、
舞歌からの一言で取り敢えず平静を取り戻し、
早期帰還の理由を報告する。
「え?あ、はい。
家族も元気でしたし、
十二分に休みました。
それに北ちゃんが何かしないか気になったので・・・」
「そう・・・」
そう、紫苑零夜は同僚御剣万葉のジャンプ能力を借り、
有給を取っていたのだ。
シャクヤクのクルーは基本的に全員がジャンパー処理を受けている。
そして優華部隊にはA級ジャンパーである御剣万葉木連少尉がいる。
ついでに航宙艦というものは一度出航するとそうそう母港には帰ってこない。
そこで考え出されたのが万葉のナビゲートによる、
『里帰り』である。
名称に若干の異論は在るが、
基本的には万葉にナビゲートしてもらい木連コロニーまで帰還し、
そこで休暇を取ると言うものである。
ちなみに万葉本人は申請しない限り、
休暇を取る人を送った後はとんぼ返りでシャクヤクへと帰ってくる。
当人曰く
「一人いくらかでは在るけど給料が増えるし、
二人に一人の確率でお土産をくれるので損はない」
だ、そうだ。
閑話休題
一方舞歌は零夜により情報がナデシコへ流れてしまった事の方が痛い。
これでは引き伸ばし工作は失敗したも同然だ。
この上は・・・・。
「はー・・・
零夜、後でお仕置きね」
「な、なんでですか!?」
舞歌が問いに答えず親指で正面スクリーンを指す。
零夜はそちらを見た瞬間、状況を理解する。
そして話でしか聞いていなかったが、
シャクヤク側としてはアキトを庇うと決まっていた事を思い出す。
どうやら自分は皆の思惑を木っ端微塵にしてしまったらしき事も・・・。
「あ、う、ぅー・・・。
お、お手柔らかにお願いしますぅ」
「駄目」(0.12秒)
「うぅーーー・・・」(T-T)
「もう、良いですか?
さて、舞歌さん詳しい話をお聞きしたいのですが?」
地獄の底から響くような低重音が通信機越しにシャクヤクへと送られる。
シャクヤククルーは既に慣れたのか諦めの極致なのか分からないが動揺も無く。
ただ自分の感情のままにナデシコへと視線を向けている。
すなわち軽蔑の視線を・・・。
哀川はそんな部下達に苦笑しながらも
自分のコンソールで何かを確認している。
舞歌は舞歌で覚悟を決めてのか不敵な笑みを浮かべている。
「そうね、ここまで来たら言わざるを得ないわね。
まず、アキト殿を救出しに行った北斗達に関して、
これは完全な『影護姉妹』の私的な行動、各務千沙は彼女の意思でこれに付いて行った。
これに対しては何ら後暗い所はないわね。
だって自分達の知人の所に行っただけだもの。
アキト殿を救出したのは彼が精神的な拷問を受けていると判断したため、
知人を助けるための行動。
アキト殿がここに来たのはただここ位しか思い付かなかっ・・・」
「舞歌さん!!
『救出』とはどういう意味ですか!?
アキトさんはそんな事望んでいるかどうかも解らないのに!!」
舞歌の話の腰を折ったメグミは『個人の意思』を『無視した』と、
つまりこれは拉致であると主張する。
同盟メンバーが残らず肯いている事からこれは彼女等の統一見解なのだろう。
誰もアキトが本気で嫌がっていた事に気づかない。
彼女等の頭の中では恐らく、
アキトは故意に嫌がって見せていて、
実は喜んでいると思っているのだろう。
正[まさ]しく『嫌よ嫌よも好きの内』これが体現されていると思っているのだろう。
・・・・普通用いられるのとは立場が180度反転しているが・・・。
しかし、彼女等は先程シャクヤクへと送った映像の事を忘れている。
いや、あえて考えない様にしているのだろうか?
アキトは同盟から逃げる為に若干の黙考の後にジャンプで逃げたと言う事を・・・。
「(この娘達更生の余地があるのかしら?
・・・・・・・・・試して、みるか)
貴女達ね、
さっき自分達が送ってくれた映像よく見たの?
アキト殿は少し考えた後で跳躍したわよ?
もし嫌なら跳躍なんてするわけないと思うけど」
「映像から見えない所でアキトさんを
脅していた可能性が在ります」
「(そんな訳ないでしょうに・・・・仕方ない。
アレを見せるしかないわね。
これを見せてダメなようなら・・・)
解ったわ、これからアキト殿がシャクヤク[こっち]で
ナデシコでの不満を言ったデータがあるからこれ見た上で
まだ言う事があるんなら聞くから・・・
ああ、それとこのデータにはアキトの居場所に関する所を
カットした以外手を加えていないわ。
私の存在その物にかけて誓う」
「ふふふ・・・
ナデシコでの不満?
そんな物あるとは思えませんが、一応見てみましょうか」
「そうしなさいな。
・・・大佐?」
「了解、送ります」
哀河が先程から念入りに確認したデータをナデシコへと送る。
哀河の声を聞いて一部同盟員が警戒の視線を向ける。
が、彼がそんな物で動揺する訳がない。
むしろ同盟メンバーを挑発するかのように嘲笑を『一瞬』だけ浮かべると
遅滞なくナデシコへとデータを転送する。
6時間ほど前彼にあしらわれたメンバーは
哀河の嘲笑を確認すると再び凄まじい鬼気を彼に向けるが、
「・・・ふっ」
鼻で笑われて無視される。
彼は不利になるような事をしていないのだから
彼女等を歯牙にもかけない。かける必要性もない。
何より当面の用事が済んだ彼は当初のシフト通り非番になっている。
そして既に同盟メンバーの事など思考の片隅に追いやられている。
ちなみに現在、自分の子供達に送る手紙の文面を考えている状態だ。
哀河志狼木連大佐・・・彼は意外と子煩悩のようだ。
そんな事実の隣で同盟は短期間2連敗という不名誉な新記録を樹立する。
しかもこれから増えていく可能性は大だ。
「では、見終わったらこちらに連絡をくださる?」
「・・・」
同盟メンバーは舞歌を完全に無視。
後ろの方で先程まで黄昏ていた大人二人とミナトがすまなそうな顔で
こちらに頭を下げている。
舞歌、哀河シャクヤク首脳陣は彼等に同情し、
苦笑しつつ気にしていない旨を手を横に振る事で表す。
何時の世も苦労するのは最期まで理性を保ってしまった人々なのだ。
(経験者は語る By広島県人)
ナデシコブリッジ
『・・・それで俺の本業、
コックの仕事時間なんて一日に二時間程度しかないんですよ!?
それにしたって何時も何時もサユリちゃん達・・・あ、食堂の同僚ですけど、
に監視されてるんですよ!?
鍛錬してる時は殆ど何もしてこないんですけど、
終わるとユリカとメグミちゃん、それにリョーコちゃんが
飲み物を持ってくるんですが・・・・
アレは飲み物なんかじゃない!!
と言うかアレを飲食物と判別する事は
一料理人として絶対に出来ない!!!
アレは一口飲んだ瞬間に気絶するかどうかのギリギリの衝撃が
味覚を破壊せず、脳に直接するんですよ!?
15歳以下の子供が飲んだら確実に死にますよ!?アレは!!
それに何でされるのか分からない「お仕置き」で
3日に1回は精神的拷問にかけられる。
その他何人かの娘から一日24時間中20時間位逃げ回って、
コックとしての仕事が出来ないし・・・。
何だかんだで心身共にクタクタになって部屋に帰って休んでれば・・・。
夜這いされるんですよ!?男の俺が!!?
それに・・・・』
これ以後さらに10分以上にわたって
アキトの泣きながらの愚痴・・・もとい、訴えは続いている。
シュンとプロス、ミナトは改めてアキトの境遇を彼自身の
泣きながらの訴えを聞いて・・・
「(ああ、テンカワさん・・・。
すみません。
貴方がそんなに大変だとは思ってもいませんでした。
艦長達の『あの』物体を飲まされるなんて・・・。
あの時お説教したのは私の間違いでしたね・・・)」Byプロス
「(アキト・・・お前かなり辛かったんだな。
すまん。
傍から見て『余りにも』楽しかったから
お前の助けを求める視線を無視してしまった!
もうちょっとお前の愚痴ぐらい聞いてやればよかったな・・・)」Byシュン
「(あ、アキト君そこまで大変な生活してたの!?
この話を総合するとアキト君って一日一時間半位しか寝てないんじゃ・・・。
しかも起きている間は延々緊張のしっぱなしで、
自室で寝るとルリルリやラピラピ『に』襲われるの!?)」Byミナト
三人はアキトに対しての自分達の対応を悔やまずにはいられなかった。
プロスは眼鏡を取り目頭にハンカチを当てながら、
シュンは周囲に表情を見せないように天井を見上げ、
ミナトは眉間に軽く握り締めた拳の人差し指を当てながら、
アキトに対して心の中で最大限の謝罪をする。
ハーリーは同情どころか殺意を募らせている。
彼はルリに夜這いをかけられた事に対して嫉妬しているのだ。
「なるほど・・・
アキトさんが逃げ出したのは
『艦長』と『メグミさん』と『リョーコさん』の
手作りの『物体』を飲まされたからですか」byルリ
「そのようね。
あれって同じ効果のある薬品を作ろうとしたんだけど出来なかったのよね」byイネス
「アキトさん『一料理人として』とまで言ってますし、
よっぽどの物なんですね」byアリサ
「そうね。
・・・でも、アリサ。
私個人としてはルリちゃん達がアキトに夜這いをした事の方が気になるわ」byサラ
彼女等は映像を見る前に手を加えられた所を探す為、
電子の妖精タッグによる調査を実行していた。
しかしアキトの居場所に関する所のみカットされているようで、
その他の場所には一切手を加えられていない。
それを確認するとブリッジに詰めているクルーで見たのだが、
責任の擦り付け合いが始まってしまった。
『自分は悪くない。
アキトが逃亡したのは他の人のせいだ』
これが彼女等の統一見解だが、
一番立場が悪いのはユリカ・メグミ・リョーコだ。
なんと言っても一番強く拒絶されたのが彼女等の料理と言う点が
最大の弱点となっている。
ルリ・ラピスの夜這いに関しては二人が巧妙に話を
ユリカ達に向けるので余り目立っていない。
ユリカ達にしてもなんとか話をルリ達に向けたい、が
策士メグミと言えどお荷物(ユリカ・リョーコ)を抱えては困難なようだ。
苦肉の策として責任を回避したいメグミは話を根本から変える事にする。
「待ってください。
今こんな事を論議するよりもアキトさんを北斗さん達から『救出』して、
直接話を聞く方が早いです。
一刻も早く舞歌さんからアキトさんの行方を聞く事が急務では無いんですか!?」
「・・・・」同盟メンバー全員
「・・・仕方ありませんね。
ではこの事はアキトさんを救出して直接聞く事にしましょう」byルリ
「仕方ないわね。
でも後々しっかり決着を付けるわよ」byエリナ
「そうですね」×複数
どうやらメグミの策は半分成功したようだ。
メグミ以外のメンバーはこの件を理由に
最近裏で力を付けているメグミ(ついでにユリカ・リョーコ)の力を
削ごうと言う魂胆らしい。
・・・・某無人島サバイバル番組真っ青の泥沼人間関係だ(爆)
シャクヤクサイド
「三時間、か・・・・
彼女達意外と纏まりがないのか、
それともあの訴えを聞いて反省しているのか・・・」
「・・・閣下、
私個人の意見ですが、
彼女らが反省して今後の対応を考えているとは思えません」
「やっぱりそう思う?」
「はい」
ブリッジには非番のはずの哀河がいた。
何故彼がいるかというと、
三十分ほど前に一時間にも及ぶビデオレターを作成し終わり、家に送る。
私用が終わってしまうとする事が無くなってしまい。
どうせなら事の成り行きを見届けようと再びブリッジに上がってきたのだった。
舞歌は現在勤務中だが、元々有能な彼女は
(千沙が八割方終わらせていたため本来の仕事量の二割ほどの)
仕事を既に済ませていた。
もっとも仕事があったとしてもそれを処理しながら
同盟と交渉するつもりだし、
それをこなすだけの実力が実際にあるのだが。
話がそれた。
現在舞歌・哀河のシャクヤク2トップが対同盟戦の最前線にいるのだ。
二人はほぼ正確に同盟が何をしているかを推測していた。
即ち、
『まずは仲間割れ』続いて『反省もせずに再びアキトを追う』
「私としては彼女等にもう少し理性があると思っていたんだけど・・・」
「自分も同感です。
しかし、そうでは無いようですな。
あの会話だけで判断するのは早計かもしれませんが、
彼女等はテンカワ氏に依存しすぎです。
さらに言えば、テンカワ氏を人では無く『モノ』として見ている傾向があります」
「そうね、同感だわ。
・・・いくら何でもそろそろ来るかしら?」
「これ以上時間を稼ぐのを止めるのですか?」
「アキト殿が地球にいると知られた時
既にこちらが時間を稼ぐ為のカードは殆ど無くなったわ。
これ以上やると彼女達本当に暴発しそうだもの。
もしそうなったら・・・
考えたくないわね」
「ナデシコが来る前にデータの一部を完全に破棄しておいて正解でしたな」
既に分かり切った事かも知れないが、
シャクヤクの記憶媒体にアキトが西欧方面に行った事を示す所は全くない。
アキト達が出発してから哀河の指示の元、
徹底的にそのあたりのデータを削除したからだ。
これによりナデシコのハッキングを受け、
データの検索をされたとしてもアキト達の行方に関しては
シャクヤククルーにに聞かない限り分からない様になっているのだ。
舞歌・哀河のシャクヤク2トップが
会心の悪戯を仕掛け終わった子供の様な笑顔を浮かべていると
ナデシコから通信が入る。
「・・・こちらナデシコ艦長ミスマルユリカです」
「優人優華部隊指令東舞歌です。
お話は終わりました?」
「ええ、アキト本人にきちんと話をする事になりました。
それでアキトの居場所を教えて頂きたいんです」
口調や態度だけ見ると反省しているように感じられる。
しかしこれは完全な演技だ。
目が口ほどに物を言っている。
他の同盟員も同じ、態度だけは反省している様だが・・・・
こちらを見る目が尋常ではない。
後ろでシュンとブロスが
『騙されるな!!演技だ!!』
と同盟員に気付かれないように
ブロックサインをしているが教えられるまでもない。
ミナトは何故か疲れ果てたかの様に自分の席に突っ伏している。
どうやら同盟を抑えようとした様だが・・・・失敗したのだろう。
「(ハルカミナトさんだったかしら?大変ね〜
成功してないけどその努力は評価するわ。
彼女達は・・・更生の余地なし。ね)
それなら構わないけど、
私達が言えるのは彼らが地球にいるという事だけよ。
それ以上は彼との約束だから言えない」
「・・・・そうですか。
では、お騒がせしてすいませんでした。
・・・『ごきげんよう』」
「ええ、『ごきげんよう』」
言葉だけ聞くといかにも礼儀正しい女性二人の別れ際、
といった感じではあるが、
実際の所ユリカは『満面の微笑み』と言う仮面を被っているにすぎない。
舞歌を見るその目は地獄の業火すらもマッチの炎に見える程の炎を宿している。
他のメンバーも似たり寄ったりだ。
対して舞歌は見たまま笑顔だ。
ただし多分に哀れみの籠もった目をしているが。
通信が切れると同時にオペレーターをしていた士官が舞歌を見上げる。
「閣下、閣下の推測どおりナデシコ側からのハッキングがありました。
ご指示通り気付かない振りをしておきましたが、
ここ5日間程の記録を根こそぎ持っていかれました」
「そう、やはりハッキングしてきたわね」
「そうですな・・・。
まあ、精々間違った所を捜索してもらいましょう」
「しかし、ナデシコのオペレーターは凄いですね。
予め注意していなかったらハッキングされたことに気付きませんでしたよ」
「ええ、彼女達は精神的な事を別にすれば
能力的には超一流よ」
オペレーターの発言に能力限定で賛辞を送る舞歌。
ただ肯く事で同意する哀河。
この二人の頭の中ではこれから起こるであろう事に対しての
シミュレートがされていた。
TA同盟彼女らがアキトを再び捕捉するのは何時の事だろうか?
30分後
ナデシコブリッジ
「つまりアキト君は地球の何処かにいる事は確かだけど、
それが何処か解るようなデータは一切合切消されていたと言う事?」byエリナ
「そうだよ」byラピス
「まあ、これはこちらの予測範囲内です」byルリ
「そうですね。
あのオジサンと舞歌さんがこちらの手を推測して記録を消す事を
怠るなんて事無さそうですし」byメグミ
現在ナデシコブリッジでは某同盟による作戦会議が開かれていた。
先程シャクヤクから得た情報を電子の妖精姉妹が解析し、
その要点のみを発表したのだ。
しかし得た情報は『アキトは地球にいる』
といった情報以上の物はなく、空振りに終わったといってもいい。
ブリッジの隅ではプロス達が改めて哀河達に尊敬の念を寄せ、
安心した面持ちで玉露を飲んでいた。(プロスの取って置きらしい)
彼等なりの祝杯らしい。
「・・・ですが地球と絞れただけでも良いでしょう。
アキトさんが地球で土地勘がある場所というのはかなり限られます」byルリ
「そうね。
アキト君なら・・・」byエリナ
「日本ですね」byホウメイガールズ
「それ以外考えられないわね」byイネス
「それでは、
私がイメージするからルリちゃんナビゲートお願い。
ラピスちゃんディストーションフィールド全開。
エリナさんチューリップに入ちゃって下さい」byユリカ
ナデシコはシャクヤクから十分離れた所に設置されていた
チューリップを使い地球へと向かうようだ。
しかし良いのだろうか?
誰も見ていないとは言え木連の所有物を勝手に使っているのだが(汗)
誰もその事に突っ込みを入れる事は出来ない。
何故なら、
少しでも彼女等の邪魔をすればその後に待っているのは
最も死に近い部屋(通称お仕置き部屋)へ直行だからだ。
こうして彼女等は政治的問題を平気で起こしつつ地球へと向かう。
その顔は生け贄の羊(テンカワアキト)を
求める悪魔のような表情を浮かべている。
彼女等は知らない。
今までどれだけ自分たちが迫っても成し遂げられなかった
『アキトと一線を越えた関係を持つ』
と言う事をこの時点で既に成し遂げた女性が
『4』人いると言うことを!!
さあ、踊るが良い!某同盟よ!!
君達にはアキト達とは違うダンスをプレゼントさせてもらうよ!
あとがきと言う名のお詫びっす
広島県人(以後、広):
えーこんな話を読んで頂いている皆さん。
お久しぶりです。
作者その一広島県人です。
アヤカ(以後、ア):
お久しぶりです。
最近余り仕事をしていない気がする作者その二アヤカです。
広:
えーまず誰か(アヤカを見ながら)に突っ込まれる前に
お詫びします。
すいません!!
当初の予定ではこの話で同盟サイドが一段落し、
次の話から再び逃亡者サイドへと変わるはずだったんですが・・・・
当初の予想以上に話が膨らみもう一話同盟サイドをする事になりました。
ア:
・・・何で私を見ながら言うかな〜。
お兄ちゃんが殆ど書いたのに。
広:
お前な、
零夜の里帰りは当初仕事と言う事にしていたのに、
それをお前が
「戦争終わったんだし、
偶には家に帰らせてあげた方が良いじゃない!
ちょうどナデシコにはジャンプって言うのが在るんだし、
万葉ちゃんがいるから調整を受けた人なら大丈夫だよ!」
って言ってごり押ししたんじゃないか!?
んな事そうそう軍隊が許可する訳無いのに・・・・
ア:
にゅ〜・・・・
で、でも舞歌さんなら許可しそうだよ!
広:
・・・・そ、それは有り得そうだけどな(汗)
ア:
あっと・・えーと・・・そ、それよりも!
哀河大佐人気が出たね。
広:
ん?まあな。
これは結構予想外だったな。
彼には俺のやりたかった突っ込み、もしくは
挑発を代わりにやってもらおうと登場させたんだが・・・・
キャラ一人一人ならともかく、
『同盟』と一括りになると彼女等は嫌われるようだからそれが原因だろう。
ア:
お、お兄ちゃんがあとがきで真面目に話をしてる。
・・・・じ、実は誰かの変装?
広:
・・・・・・・・お前は俺の事そう言う風に認識していたんだな。
兄として悲しいよ。
まあ、俺だって最近書き始めた話がシリアス調でなければ
ここまで変わらんかったろうが・・・・
ア:
う〜・・・(ちょっと引いている)
そ、そろそろ終わりにします。
では、次回作出来るだけ早くなるように、
そして次こそ作者その二としてちゃんと仕事が出来るように頑張ります!
広:
次は少々遅くなるかもしれませんが、
気長に待っていただければ光栄です。
ア:
う〜〜!!
お兄ちゃん!何時ものお兄ちゃんに戻ってよ〜〜!!
代理人の感想
丁丁発止の陰謀劇、あるいは狐と狸の馬鹿しあい…かと思ったら。
バキッ
と腰を折ってくれましたねぇ、零夜ちゃん(笑)。
いっつそーないす!HAHAHAHAHA!
>ユリカよりも余程指揮官に
「策士」は往々にして指揮官よりは参謀に向いているかと。
特に策士ではあっても「普通の女の子」であるTV版のメグミの場合、
指揮官に必要な「図太さ」「精神的タフさ」に欠ける所がありますから尚更ですね。
ついでに言うとそう言うタイプの人間は
自分自身を「実行と責任を要求される位置」に置く事はまずありません。
他人を動かすのが彼らのやりかたなのです(笑)。
>「じ・・・・実は誰かの変装?」
>「お前はおれのことをそう言う風に認識していたんだな。哀しいよ」
どこぞの蒲鉾とその友人の会話に恐ろしいほど酷似していますねぇ…………
ひょっとして広島県人さん素質ありデスカ〜?(核爆)