嫌動戦艦ナデシコ わんだふる・ふぃっしゅ
新型チューリップの調査のため、テニシアン島に来たナデシコ。
勿論、須らく心の中に棚を持つクルーは調査のことなど忘れて、南の島でのバカンスを満喫していた。
「パラソル部隊急げェ〜ッ!!」
リョーコの号令を機に女子クルーは一斉にビーチへ向かって駆け出す。
「女子に負けるな〜ッ!!」
こちらも負けじとアカツキの号令の下、ビーチへ飛び出す男子クルー。
「皆、元気だなぁ〜。」
苦笑いを浮かべながら、その光景を見ていたアキトは思った通りの事を呟いた。
三度の飯よりイベント好き、誰が言ったかは知らないがナデシコのクルーを一言で表す名言だと思う。
そんな事を思いながら、アキトは自分も遊ぶべく、ビーチへ駆け出していった。
「テンカワ〜、せっかくだからビ−チバレーやろうぜ!!」
ビーチボールを持ったリョーコが浜辺で寝そべっていたアキトに声を掛ける。
「そうそう、テンカワ君。せっかくだから、やろう。」
リョーコに続いて、やって来たアカツキもアキトを促す。
「別に良いけど・・・チーム分け、どうすんの?」
あ・・・どうしよう?と固まる二人。
ビーチバレーに参加しているのは男子がアカツキと(1)カイトの二人。
女子はリョーコ、ヒカル、イズミ、イツキの四人。
アキトを入れたとしても七人となり、どちらかのチームが一人足らなくなってしまう。
ウリバタケの浜茶屋から、それを見ていたジュンが「僕が入ろうか?」と言いかけた瞬間・・・。
「ふはははははは!!俺を忘れてもらっちゃ困るゼッ!!」
「この声は・・・ヤマダ!?何処だ!!」
「見ろ!!あそこだ!!」
リョーコが指を指した先・・・ウリバタケの浜茶屋の屋根の上では、
何故か赤いふんどし・・・通称『赤ふん』一丁のガイが己の筋肉を誇示しながら高笑いをしていた。
「ふっふっふっふ。この俺が入れば、百人力いや(2)百人兄貴だぁ〜ッ!!」
「何なんだよ、その百人兄貴って・・・。」
アキトのツッコミを当然の如く、無視したガイは「とうッ!!」と叫ぶと屋根を蹴って、空中に飛び出す。
そして物理法則を全く無視して、一旦空中で停止すると一回転し、そのままアキト達の目の前に着地・・・するかのように思えたが、
「不潔よぉ〜ッ!!」
何処からかハリセンを取り出したイツキに空中コンボをかまされる。
「不潔不潔不潔不潔・・・不潔よぉ〜ッ!!」
「おふうはふうおふうはふうおふうはふうおふうはふう・・・。」
瞬く間の内に新しい関節が出来ていくガイ。
「ああ・・・素敵だ。姉さン。」
「あ、相変わらず、イツキさんはごっついのう・・・。」
何やら涙を流して感動しているカイトを他所に、冷や汗を流しながら、アキトとアカツキは呟いた。
数分後、流石のイツキも疲れたのか攻撃の手を休め、肩で息をしている。
そして全身を真っ赤に染め、明らかに関節の数が多くなったガイがスローモーションのように地面へと落下を始めた。
(しかし、これで終わる筈がない。何かが、まだ何かが起きるッ!!)
ニュータイプのように額に何かキュピーン!と光が走ったアキトは己の『ごっつい嫌な予感』に震える。
(テンカワ=アキトは伊達じゃないッ!!)
そんな事を思っていたかどうかは知らないが、アキトの予感は見事に的中した。
「スバル・ホームラン!!」
ガイが地面に着く瞬間、何時の間にかバットを構えていたリョーコに打たれる。
ガイはもう・・・飛ぶ飛ぶ凄い飛距離。
ビーチの裏手にある森を越え、森の奥深くにある屋敷を越え、そして・・・バリアーを破って新型チューリップに激突。
ズガァァァァァァン
島中に響いた衝撃音を聞いたアキトが首を傾げて呟いた。
「あれ?ガイが何かに当たったのかな?」
そしてアキトが呟き終わった瞬間、辺りは白い光に包まれ・・・。
チュドォォォォォォン!!!!
テニシアン島に巨大なキノコ雲が上がる。
そして(3)島に居たナデシコクルーは、
無論、全員アフロだ。
<特殊用語解説>
(1) イツキと共に補充パイロットとしてナデシコに来たイツキの弟ミカヅチ=カザマは、
妙に顔が犬チックだという事からユリカが以前飼っていた犬の名前(カイト)で呼ばれるようになった。
以降、彼が本名で呼ばれる事は一回もない。
(2) 超人パワーに換算すると100万パワー。
つまり一人兄貴が1万パワーに値する。
なお、ガイの超人パワーは100万ではなく、95万。
本人は百人兄貴(100万)だ、と言っているが、それは彼の間違いである。
(3) この時、テニシアン島に居たのはアキト、アカツキ、ジュン、カイト、故ガイ、ウリバタケ、ムネタケ、ゴート、プロスペクター。
リョーコ、ユリカ、メグミ、ヒカル、イズミ、イツキ、ルリ、ミナト、イネス、ホウメイ、エリナ。
ルリだろうが、ホウメイだろうが、年増イネスだろうが、無論、全員アフロとなった。
今回は、いまいちパワー不足だなぁ・・・。
代理人の感想
いえ、充分「嫌」のパワーが溢れてます(爆)。
そりゃもう炉心からだだもれしてチェレンコフ光を発しそうな位に(激爆)。