死神が舞うif黒衣の死神〜序幕〜


(注:この話は『死神が舞う』のアナザーストーリーになっており、

   第一話の話を読んだ後のアナザー第二話以降としてお楽しみ下さい。

   また読むにあたって、

   第一話まで読んでいることをおすすめします。

   詳しくは、本編第二話のあとがきで…。)




 「やっと会えるね、アキト。」


 近くの電柱に立ち、病院の一室を眺めてそう呟いたのは妙齢の少女だった。

 黒いフードを全身に纏い、手には自分の体ほどの大きな鎌が握られていた。

 フードからわずかに見える口元には笑みがこぼれていた。


 「長かったよ、本当に…。」


 歪めていた口元を再び結び直すと、少女は思い出に浸った。 


 「長かったんだから…。」


 






 ブリッヂ内に衝撃がはしる。


 「何だ!」


 アキトが叫ぶ。

 それと同時に私のウィンドウに文字が表示される。


 『ランダムジャンプの確率99.887%』


 ダッシュだ。

 私は緊急回避システムを作動させるようにダッシュに言う。


 『無理、こちらでは制御不能』


 ある意味わかりきった結果だった。


 「アキト、どうにも出来ない。」


 アキトの考えが分かる。

 だから私は返答した。


 緊急用のアラームが鳴り響く中、アキトは立ちすくんでいた。


 「私はアキトの力になれないの?」


 私が自問すると、アキトは声を出した。


 「そんなことはない。

           まずい、跳ぶぞ!」


 そこから先は記憶が無い。

 ただ、気がつくと…







 気がつくと…見覚えのあるような、それでいて思い出せない場所にいた。

 周りを見渡す。


 見えるものは、カプセルのようなものとガラスケース、外にも似たようなものが…、

 そっか、私はカプセルの中にいるんだ。


 アキト、アキトはどこ?

 アキトとリンクを試みる。

 だめ、繋がらない、分からない、こんなの初めて。

 アキトとお話できない。

 それだけで私はものすごく寂しい気分になる。

 
 「アキト…」


 名前を呼んでみても答えは無い。


 「アキト、アキト、アキト」


 アキト、アキト?カプセル?実験室。

 ここは?ここは、そうだ、ここは実験室で、私は…

 私の脳裏に忌まわしく、封印した思い出がよみがえる。


 「イヤーーーーー!!!」


 『おい、実験体が叫び出したぞ』『急げ』などの言葉を聞きながら、

 私の意識は途切れた。







 「いやだよ、アキト。」


 何かをつかもうとして手を突き出したのか。

 私は自分の手を見ながら自分の声で起きた。



 起きて一番初めに気がついた事は、

 カプセルではなくベッドで寝てた事や見ていた夢の内容よりも、

 自分の手が小さいことだった。


 なぜ?

 ベッドから降りてみる。

 目線が低すぎる。

 小さくなったの?何で…。



 理由は次の実験の時に分かった。

 研究者の目を盗んで検索をかける。

 ジャンプする前の時代にはここはもう無いし私の身体を考えると時代はナデシコが動いた年。

 アキトは、いない?

 違う、この時期アキトは火星か地球に飛んで、今は日本!

 アキトに会いたい。

 でもどうすれば…分からない。





 時間がたつ。

 私の気持ちに変化が出てきた。

 『どうすればいい?』ではどうにもならない。

 ここでは、私のしたい事に手助けしてくれる人はいないから。

 だから考えないと、考えて。

 でも考えるだけじゃだめ、行動しないと…。

 そうじゃないとアキトに会えない、私の望みは叶わない。


 実験を片手間にアキトに会う方法を考える。

 でも、実験をあっさり片付けてしまったのがいけなかった。


 能力が上がったことに気がついた研究者達は理由を見つけないと気がすまないらしく、

 私が叫んだときに打った鎮静剤とナノマシン、マシンチャイルドの関係について考えだし、

 私相手に人体実験した。







 あつい、あつい。


 「あつい!」


 「おい!熱が異常にあるぞ!何を打った!」


 「いや、ただの鎮静剤だ。」


 「そんなものを打ってこんなことがおこるわけないだろう!」


 「しかし、これは、ん?これは鎮静剤じゃない!何だ!」


 「早く救護室へ、こんなところで実験体を失うわけにはいかない!」


 身体が焼けるようにあつい。



 


 再び目覚めると私の手が大きくなっていることに気づいた。

 今度は身体があのときと同じになっていた。

 身体のあちこちがきしむ。

 でも、ホストコンピュータにいかないと、あそこには私のデータが…。

 そのとき私の周りが光った気がした。

 次の瞬間、私は実験室にいた。

 みんなが奇異の目で見ている。

 やだ、戻らなきゃ。

 また光る。

 今度はベッドの上。

 私はジャンプできたの?ジャンプできるの!

 アキトのもとへ、アキトの所へ、お願い跳んで!





 「うわっ!またか。」

 
 私の目の前にはアキトがいた。

 自転車と荷物が後ろの方に倒れていて、かすり傷があるけどアキトだった。


 「アキト!」

 
 私はアキトに抱きつく。


 アキトは困ったような顔をすると。


 「ちょっと離れてくれる?」


 と言った。


 「うん。」


 あまりにも突然でびっくりさせちゃったのかもしれない。



 アキトは私を見る。


 「あのね。」


 「何、アキト?」


 「君、だれ?」






  つづく








  あとがき

  ひとみ みともです。

  死神が舞うif黒衣の死神〜序幕〜いかがだったでしょうか。

  前回のあとがきどおりにラピス15歳の話を書きました。

  書いた上で変化が生じました。

  
  一つ目は題名です。
  
  題名は上記のように変わりました。

  理由はラピス15歳だと、ストーリーのダークさがでないので…。


  

  二つ目は話の長さです。

  死神の終章の時では、この話は短編になる予定でした。

  結果は言うまでもありませんが続き物です。

  こうなることぐらい、ちゃんと考えれば分かることだったのに…。


  >いろいろな世界を見て、渡っているうちに力と心の歪みが増すラピス。
 

  具体的にはどんな世界を渡り、どんな経緯で力と心の歪みが増すのか?




  >色んな世界をまたにかけ、いい意味でも悪い意味でも活躍するラピス。
  
 
  具体的にはどんな活躍をしたのか?




  >ラピスは『漆黒の死神』とよばれる存在になっていた。

  
  何故、黒衣の死神(こちらに変えました)と呼ばれるようになったのか?



  これらの疑問を自然に解き明かしつつ、

  ラピスの心情を書くことはみともには短編では無理です。

  最低でも5〜6話かかります。

 
  という訳で連載にします。(週間あたりで…)



  ところで、大まかな話とイベントは分かっているけど、この先どうなるか分からない話。

  ちょっと逆行気分になりません?(みともだけでしょうか?)



  次の作品はこの続きではなく、
  
  短編のような作品を用意しているので、そちらでおめにかかりたいです。

  (黒衣の死神はあくまで週間連載にしたいので…)



 

 

代理人の感想

CCはどうしたーっ!?

よくある「S級ジャンパー」というアレでしょうか?

まさか鎮静剤の代わりに怪しげなナノマシンでも投与したんとちゃうやろね?(爆)

 

 

>ちょっと逆行気分

・・・・・・・いや、そもそも逆行物では?(爆)