HISTORY
プロローグ 「全ての始まりに…」
「準備はもうできたのか?」
ここは世に名高いネルガル重工、その会議室。
そこで話し合っているのは、数人の重役と一人の女性。
「は、既に実行段階まで進んでおります。」
「そうか、すると後は待つだけだね……」
この男はここにいる重役達の中でも上の者のようだ。…社長だろうか。
「もうすぐ……なんだよね。」
そう呟いた女性…なにか病にかかっているのか、顔にはあまり生気が感じられない。
「向こうでは僕が話をつけておくから君は打ち合わせどうり頼むよ。」
先程の社長らしき人物が、女性に言った。彼女は頷き、それから独り言のように呟いた。
「待っててね……アキト。」
まわりの敵をゴミのように倒していく、宇宙を駆ける漆黒の機動兵器。
そのパイロット、テンカワアキト。
火星の後継者…彼を地獄に突き落とした者達…との戦いに、彼は勝った。だがそれは…それで良かったのだろうか。
「なにも変わらん…あのときからずっと…」
彼は戦いに勝利したあと、彼の愛した人…ミスマル ユリカにも会わず…ただ後継者達の残党狩りをし、自分の心を貶めていくばかりだった。
『アキトさんは逃げてるだけです!』
(そうかもな…)
『やるだけやって後は知らないなんて、勝手すぎます!』
(だけど…しょうがないんだよ!)
彼の義娘…ホシノ ルリになんと言われても、彼の意思は変わらなかった。
ドォゥゥゥゥン!!!
バァァァァァン!!!
「俺みたいな奴が、今更…」
1機、また1機と相手を破壊する。
(何人もの命を殺めたこの手で…何をしろというんだ!)
自分の心を紛らわすように、敵を倒しつづける。
「貴様で終わりだ!」
ガァァァァァン!!!
彼は最後の1機を墜とすと、彼の母艦…ユーチャリスに戻っていった。
アキトは帰艦した後、シャワーで体を流し、コーヒーを飲んで休憩していた。
(俺はいつまでこんなことをやってるつもりなんだろうか……)
グシャリと缶を潰し、心の中で自分に責める。
「ふ…俺らしくないな。もう、割り切ったはずだ…」
冷静さを取り戻し、自嘲ぎみに笑う。
(しかし、こんな事も何時かは終わる……俺はそのときどうするだろうか。)
「そんなこと、その時になってみないとわかるわけないか…」
疑問を打ち消すと、さっき飲んだコーヒーの苦さが心まで沁みるような気持ちになった。
(アキト、敵が来たよ…)
しばらくすると、リンクしているラピスから報告が来た。
(ああ…すぐ行く。)
ひしゃげたコーヒーの缶を捨て、歩いていく。彼の心と同じ…漆黒の機動兵器、ブラックサレナに向かって…。
いつもと変わらないはずだった…だが、彼の運命を揺らすような事が今から赴く戦場にまっていようとは、彼は知るよしもなかった……
「今日はやけに数が多いな…まあ、数ありゃいいって物じゃないが。」
ドン!ドン!ドン!
バァァァァァァン!!!
次々と敵を撃墜していくアキト。数が多いだけで、他は何も変わらなかった。
「どうした…そんなので俺に勝てるものか!」
虫けらのように破壊されていく敵機達。いつもだったら、彼には余裕をもってできることだった。
(こんなことをやってて楽しいわけじゃない…だけど!)
この前の葛藤が、再びアキトに広がっていった。
このままで良いのか?……こんなこと続けてどうするつもりなんだ?
俺は……
そんなことを考えている油断が、命取りになった。
ガァン!!!
「な…背後をとられた!?」
たったの一撃で、それもたいしたダメージは無かったのだが、急な不意打ちにアキ
トは焦った。……焦った人間は、失敗し易いものだ。彼もまた、冷静さを欠いて、と
にかくこの戦場から逃げるなどという事を考えてしまった。
「く…このままでは!」
ボソンジャンプで退こうとしたとき……
「ジャンプフィールドに異常!?くそっ!」
(このままでは…)
どこに跳ばされるかわからない。それがどれだけ危険なことか…彼は理解していた。
「クソッ!こんなところで……!」
(死んでたまるか!)
だが、彼の理性は既に死を感じているようだった。今までの出来事が、走馬灯のようにうかんでくる。思い出しては、忘れようとしていたこと。
自分の死を痛感した時、彼の心は一つの思いに埋まった。
「あの頃に、戻りたかった……」
無理だと分かっていても、何故か彼は本気でそう思ったのだ。
(できるよ!)
誰だ…?
(無理なんかじゃない。一緒に行こうよ!)
何を言っている…?本当に行けるのか…?
(ほら!)
行けるのなら……
そして、アキトは消えた。
後書き
わかると思いますが、直しました。全部。自分勝手ですみません。
前よりは良い作品にするつもりです。もう途中放棄はしませんから。(多分)
まだまだな私の作品ですが、よろしくお願いします。
代理人の感想
一年ぶりの更新ですね〜。
確かに随分変わってるような。
それはそれとして、やっぱり前置きだけだと感想の書きようがないですねぇ(苦笑)。
まぁ取り合えず次回に期待。