「退くなっ! 第七分隊に火力支援要請! 同時に再突撃を仕掛ける!」
 元優人部隊『みなづき』副艦長・川口少尉は<火星の後継者>の制服を身にまとい、手勢500人を率いて連合宇宙軍本部のなかを必死の形相で駆け抜けていた。
 銃撃を四方八方から浴び続け、その誰もが既に体のどこかに傷を負っている。
 攻め寄せてくる部隊はネルガルが金で雇った傭兵部隊。
 ヒサゴプランコロニー奪還に向かってきた統合軍をボソンジャンプ技術により蹴散らした<火星の後継者>は、態勢を整えるために野に下ることを決定した。
 その際に今後、蜂起の最大の障害となるであろう巨大企業ネルガルと連合宇宙軍に徹底的に打撃を与えるべく急襲作戦を展開した。
 士官の数こそ少ないが、兵の数では圧倒している。
 大組織であるネルガル、連合宇宙軍もそれなりの戦力を持つものの、<火星の後継者>の奇襲攻撃が見事成功したため、準備が間に合わなかった両組織は総崩れ。
 さらに数でも5倍以上の差をつけ圧倒していたため、敷地を駆け抜け本部内に一気に進入。大敵の本拠地ネルガル本社・連合宇宙軍本部の陥落まで後一歩というところまで迫った。
 ところがこの時、<火星の後継者>に予想外なことが立て続けに起こっていた。
 まず第一にして最大の誤算、彼らの野に下った後の拠点となるべき場所の情報がことごとく流出しようとしているのだ。情報を持って逃げた者の名前はアクア・クリムゾン。<火星の後継者>最大の出資者であるクリムゾン・グループ総裁の孫娘である。彼女はこの情報を元手にネルガルに取引を持ちかけているようであるが、その成立前に必ずこれを捕らえろと命令が下った。彼女を抑えない限り撤退は出来ない。通信の発信場所から彼女がここ連合宇宙軍本部にいることはわかっている。何を犠牲にしても彼女を捕まえなければならない。
 第二に、能動的撤退のために同時攻撃を仕掛けた対ネルガル部隊が降伏をしたことだ。ゴート・月臣らNSS――ネルガル・シークレット・サービス――が軸となり圧倒的劣勢を盛り返すと、ハニートラップだか新型兵器だかわからないものが戦場を引っ掻き回し、ついには機動兵器を駆る攻撃部隊長・南雲義政を倒して、全面降伏を認めさせた。
 そして第三がここ連合宇宙軍本部における宇宙軍の奮闘である。当初こそ数を頼みに圧倒していた<火星の後継者>であったが、援軍として現れた傭兵部隊により完全にその勢いを止められてしまっていた。数の上でこそ、彼ら傭兵部隊を含めてもまだまだ4倍以上の兵力差があるのだが、それをものともしない活躍を傭兵部隊は繰り広げていた。
 傭兵部隊の身元は川口も知っていた。かつて蜥蜴戦争末期に戦線を立て直すまでの時間稼ぎのために徴兵された、当時14歳から17歳までの徴兵規定年齢に達していない子供たちだ。
 和平条約締結の折に、この少年兵たちの去就はプロパガンダとして大層な報道を受けたのだが、その際に秋山たち連合宇宙軍側の人間がこれ幸いとばかりに連合軍、統合軍、果てはネルガルやクリムゾンなどから寄付を募って作った人材派遣会社がこの傭兵部隊の派遣元である。
 彼らは潤沢な予算により組まれた厳しい訓練を経て、各々が自身に適性のある分野のスペシャリストに急速に成長していた。
 なにしろ木連では特攻兵にされかかっていたところを切り抜けてきたのだ。
 文字通り死ぬ気で頑張っている。
 そして彼らを軸に興されたこの会社は、特殊な依頼にも対応すべく彼ら以外にも世界中からあらゆるスペシャリストを集めた国際的人材派遣会社へと成長していた。
 かつて彼らを助けるために祖国に弓を引いた優人部隊出身の川口としては非常に複雑な心境であった。
 ……ごくり。
 川口は息を呑む。
 この傭兵部隊が大きな成長を遂げていたことを知ってはいたが、彼らの集団としての真価は川口の想像の遥か上を行っていた。
 個々の小隊に目を向ければ、彼らは自由奔放に動いているようで、決してそれだけではない統一性を有していた。
 前衛、中衛、後衛。
 小隊単位で展開する各人は、前衛が負傷すればすぐさま中衛が、中衛が負傷すれば即座に後衛が飛び出しその穴を埋める。各人が自分の役割はもちろん、小隊内の各人の役割をそれぞれ熟知することで隊は滑らかに機能する。めまぐるしい位置変更などの連携の動きを個々人すべてが体に覚えこませて初めて可能となる芸当だ。
 さらに驚くことに、この連携の動きを彼ら傭兵部隊は大隊規模においても完璧に行っているということだ。
 熱血クーデターから3年。わずか3年で歴戦の戦士のごとく成長した少年兵たちの死に物狂いの努力に感嘆を禁じえない。
 そして彼らを導き育てたフクベ・ジンの手腕にも、だ。
 しかし。
 傭兵部隊の一斉射。
 川口の部下が1人、また1人と倒れていく。
 そんな絶望的状況で、川口は決断を下す。
「総員、敵陣中央を突破する! 私に続けェェエエッ!!」
 号令一閃。
 川口を先頭に<火星の後継者>が土石流のごとく押し寄せる。
 彼らは誰1人とて退却しない。
 アクア・クリムゾンを捕らえ、連合宇宙軍に大打撃を与えなければ、もはや自分たちに安息の場所はないことを皆が知っているのだ。そして自分たちが破れてしまえば、もはや世界中に蔓延する木連人迫害の動きを止めるものはいなくなる。いや、その動きはより苛烈を極めるに違いない。それは川口をはじめ木連人を中心として組織された<火星の後継者>各人の親兄弟、恋人、親類が迫害されることになる。
(させぬ! それだけは断じて!!)
 手持ちの地対地ミサイル、手榴弾の一斉射。
 次いでそれまで横一列の戦線を維持していた<火星の後継者>は川口を中心にV字型に陣形を変更。分厚い弾幕を構成しながら遮二無二突撃をして傭兵部隊の防御網を抜こうとする。
 別に川口が暴発したわけではない。
 <火星の後継者>は数だけは圧倒しているのだ。どんな形であれ前線表面を拡張したほうが相手の休憩人員を目減りさせられるため理に適っている。
「うぉぉおおおおおおっ!!」
 決して退かぬ死兵となって突撃する<火星の後継者>。
 甚大な被害を被りながらも、彼らの一部はついに傭兵部隊の防御網を突破して連合宇宙軍の中枢へと進入した。
 傭兵部隊を突破した川口ら<火星の後継者>は、アクア・クリムゾンと宇宙軍幹部を拿捕すべく連合宇宙軍本部内を駆け回る。
 包囲を突破できた数は決して多くはないが、それでもまだ充分な戦力が残っていた。
 そしてイベントホールのような広大な空間に出たところで、彼らはついにその目標を発見する。
「な、な、な……」
 川口は、しかし驚きの声を漏らしていた。
 ネルガル会長アカツキ・ナガレ、同側近プロスペクター、連合宇宙軍総司令ミスマル・コウイチロウ、同参謀長ムネタケ・ヨシサダ、そして同少将にして元木連優人部隊『かんなづき』艦長 秋山源八郎……。アクアを除く主要なターゲットがなんと一堂に会していたのだ。それもシェルターなどではなくこんな場所で。
 しかも彼らは何故か各々が楽器なぞを持っていて、みな得意げに演奏をしている。
 訳が分からなかった。
 罠の可能性も考えたが、要人をまとめて使うリスクの高さが腑に落ちない。
 よく見ると彼らのほかにも人員がおり、それがメグミ・レイナード、ホウメイガールズという芸能人であると他の隊員から耳打ちされた。
「こうして面と向かうのは初めてだね、<火星の後継者>諸君」
 驚く川口たちに、そして彼らを中継して観ているであろう<火星の後継者>の全員に対して舞台上からアカツキが言う。
「はじめまして。知っているとは思うけど、自己紹介からはじめよう。僕の名前はアカツキ・ナガレ。ネルガルグループの会長で―――」
 一拍。月臣は片頬を持ち上げる。
「―――君たちの『敵』さ」















白黒ーwhite & blackー
第漆幕 笑う悪魔
presented by 鴇

















 舞台上から川口ら<火星の後継者>を見下ろしながら、アカツキは心の中で盛大にため息をついた。
 まるで茶番だな、と。
 いや『まるで』ではなく『完全に』茶番なのだ。
 自分たちの役割はわかっている。おとりとしての極上の餌だ。
 フクベ提督ら傭兵部隊は非常に上手くこなしてくれているが、それでも所詮歩兵のみの部隊だ。こちらの対機動兵器用の戦力が乏しいことがバレた時や、業を煮やした<火星の後継者>がいよいよもって力押しできた時はもはやどうにもならない。
 だから相手にあえて教えてやる必要があるのだ。
 お前らの『敵』はここにいるぞ、と。
 アクアとの協力関係がある以上、今の面子がここから逃げることは許されない。
 だから使えるものは全て使う。要人もネルガルトップの自分から秋山まで揃えた。
 少しでも敵の気を引くためにエルビス・プレスリーよろしく腕の下にびらびら付きのラメ入り全身スーツに身を包み、派手なライトアップに効果音までつけた。華を増やすためだけに呼ばれたメグミとホウメイガールズは災難だとしか言えないが、運が悪かったと諦めてもらうしかない。もっとも、下手なところに隠れているよりも固まっていたほうがまだ安全なのだが。
 月臣がアルストロメリア奪還に向かったことは既に報告を受けている。
 この場に幹部用高出力小型ディストーション・フィールドが設置されていることも分かっている。
 先遣となる歩兵相手ならこれで十分に持ちこたえられる。
 後はこちらに注意を引きつつも月臣がアルストロメリアを奪還するまでの間、敵の機動兵器部隊を出現させないことが自分たちの仕事だ。
 そこからは月臣たちを加えてルリたちナデシコCの奇襲が成功するまでさらに時間を稼ぐ。
(まったく綱渡りだよねぇ)
 もう一度、心の中でため息をついてからアカツキは川口に話し続けた。
「大したもてなしも出来ないで悪いが、せめてひと時このショーで楽しんでいってもらいたい」
「…………」
 対する川口は無言。
 罠の可能性を考えて思考を張り巡らすが、しかし即決即断。
 彼は部隊に指示を出すとその火力を舞台上からこちらを見下しているアカツキに集中させた。
「天誅ぅぅぅぅっ!!」
 数十もの機関銃の火線、数百数千もの弾丸がアカツキに殺到する。
 しかし、それらは全て彼の前方数メートルほどの距離で見えない壁に阻まれた。
「……次元歪曲場か」
 半ば予想通りの光景に苦々しく呟く川口。
 その横に1つのコミュニケが出現した。
『何が狙いです?』
 それは生真面目そうな木連然とした青年。
 <火星の後継者>の事実上のナンバーツー、シンジョウ・アリトモであった。
 川口たちを通じてモニターしているとは思っていたが、まさかこんなにも早く掛かってくれるとは思わなかった。
「君と話がしてみたかった、では駄目かい?」
 気楽そうに言いながら、アカツキは心の中でほくそ笑んでいた。
 罠であるかそうでないかが分からない以上、シンジョウの立場的に強攻策は採り辛いだろう。
『私と話が?』
「ああ。今回、君の策略にはまったくしてやられたからね。あそこまで踏み込んでおいてまさか大規模撤退を始めるとは恐れ入ったよ」
『……それは皮肉ですか? 我々はそちらのアクア嬢によって苦境に立たされているというのに』
「いや。ただの本心さ」
『それでは次に私が要求することも分かっていますね。単刀直入に申し上げます。アクア・クリムゾンをこちらに差し出していただきたい。リミットは15分。おとなしく差し出せばよし。さもなくば積尸気(ししき)による武力行使をさせていただく。如何に強大といえど個人レベルのディストーションフィールドでは防げませんよ』
 15分。微妙なところだが腕の見せ所だ。
 口八丁手八丁でもう30分稼げばあわせて45分。
 それだけあれば少しは態勢が整えられる。
 なんとかナデシコCの強襲まで持ちこたえられれば……
『―――と、思っていたのですが』
 必死に頭を回転させるアカツキをあざ笑うかのようにシンジョウが言葉をつなげる。
『気が変わりました。現場での緊急対応として即刻武力行使させていただきます』
「……なッ!!?」
 アカツキの台詞を言う暇もあればこそ。
 突如ホールの天井を破壊し2体の積尸気が出現した。
 積尸気は着地と同時に人に向けるには凶悪すぎる大口径ハンドガンの銃口をアカツキに向ける。
 シンジョウの言うとおり流石にこれは防ぎきれない。
『実はあなたを見た瞬間に私は機動兵器部隊の移動を命じていました』
 驚きを隠せないアカツキに淡々とシンジョウが述べる。
『手の内は見えています。いくら強力といえど傭兵部隊に守備を委ねなければならないその苦境。なにより囮としてあなたまで現れたそのこと自体が語っています。あなた方は何かを待っている。そしてそのための時間稼ぎをしているのだと』
 つまり、最初からアカツキは手のひらの上で踊っていたのだ。
 ……狸が。
 おくびにも出さなかったシンジョウを苦々しげにアカツキは見返した。
「僕に手を出したらアクア・クリムゾンの居場所が分からなくなるよ」
 精一杯の虚勢を張るアカツキの言葉に、しかしシンジョウは首を振る。
『ここにいるのは分かっているのです。それなら辺り一帯を制圧した後にしらみつぶしに探すまでです。仮に見つけられなくとも、あなたたちを一掃できればアクア嬢だけで出来ることなどたかが知れているでしょう』
 詰め将棋のように1つ1つアカツキたちの退路を断っていくシンジョウ。
 その詰め将棋に、新たな一手が打たれたのはその時だ。
「あらあら。私との鬼ごっこを放り出してどうするつもりですの?」
 その場にいた全員が弾かれるように振り向くと、アカツキたちの背後から、ちょん、と姿を現すアクアがいた。
「……馬鹿なッ!!?」
 驚いたのはむしろアカツキたちのほうだ。
 この場はアクアの所在をカードに少しでも有利に進めようとしていただけに、当のアクアにノコノコと出てこられたのではカモネギではないか。
 非難めいた視線がアクアに突き刺さるが、それがどうしたとばかりに彼女は応える。
「私も本来ならこのような鉄火場に来るのは遠慮したいのですが、今回ばかりはそうも言ってられませんの」
『……こちらとしてもまさかそちらから現れるとは思っていませんでした』
「うふふふ。このタイミングでここに来れば下手に逃げ回るよりもずっと安全ですのよ?」
『戯言を。アクア殿、命が惜しければデータをこちらに渡して降伏していただきたい』
 言いつつ、シンジョウは積尸気の狙いをアクアに変えさせる。
 自身の首よりもよほど太い銃口が無遠慮に向けられるが、アクアは片頬を持ち上げながら応えた。
「だから言ったでしょう? 安全ですのよって」
 彼女を守るものはあくまで個人用の薄いディストーションフィールドのみ。
 対するは直撃を避けたとて衝撃波と破片だけで十分にダメージを負う威力の代物。
 そんな凶悪な武器を持つ積尸気の腕を―――
 斬撃一閃!
 ―――さらに凶悪な獣の爪が斬り飛ばした。
 突如ジャンプアウトしたアルストロメリアの一撃だ。
 いきなりの出現に一瞬の思考停止に陥る<火星の後継者>たち。
 しかしアルストロメリアの攻撃は終わらない。
 まず腕を斬り飛ばした目の前の積尸気の、急所の1つである腰部ジェネレーター接続ケーブルをすれ違いざまに強打。
 さらに勢いを殺さずに脚部キャタピラの爆発的な推進力でもう一体の積尸気に肉薄。コックピットハッチをクローで引っ()がしてむき出しになった操縦用コンソールを叩き潰す。
 一瞬の出来事。
 そして、実に鮮やかな手並みだ。
 アカツキは頭を痺れさせて、大きく目を見開いた。
 アルストロメリアのコックピットハッチが開く。
 その中には予想通りの人物、月臣元一郎とウィーズ・ヴァレンタインの姿があった。
「タイミングが良すぎてちょっと照れるわね」
 頬をかきながらウィーズは笑って言う。
「外もあらかた鎮圧した。諦めて投降しろ、シンジョウ大佐、川口少尉」
「つ、月臣中佐っ!?」
 未だ戦意をなくしていない川口が月臣の姿に反応する。
 彼は信じられないというような顔で月臣の顔を見返していた。




 川口は月臣がネルガルに降ったという情報をずいぶんと前に知っていた。
 知っていたが、しかし、まさかあの月臣中佐が、という気持ちが常にあった。
 だが、目の前で起きた日本刀のような切れ味の機体操縦は、紛れもなく川口の記憶にある優人部隊時代の元上官である月臣元一朗の動きを彷彿とさせた。
 コックピット内の月臣も、あの熱血クーデターの時と同じく純白の優人部隊の制服を着てたたずんでいる。
 彼らにとって正義の象徴であった優人部隊の制服を、だ。
「何故だ、月臣中佐ッ!」
 気がつけば川口は銃口を月臣に向けて叫んでいた。
 彼の目に映るのは怒りと困惑と、そしてある種の羨望だった。
「何故、熱血クーデターの後に我等を見捨てて地球へ行った!?」
 川口は熱血クーデター直後は大きな希望を持っていた。
 これでようやく戦争が終わる。国民たちの苦難も軽減される、と。
 しかし、クーデター成功の立役者の1人であった月臣はクーデター終結のドサクサに紛れて地球へ行ってしまった。
 そして和平交渉こそ上手くいったものの期待された地球への移民については、目も当てられないほどに失敗した。
 川口と彼の家族は執拗な木連バッシングに晒されてノイローゼ一歩手前まで追い詰められていた。
 <火星の後継者>が川口に接触してきたのはそんな折だった。
「中佐さえ残っていれば、木連の牙は残っていた! 中佐さえその気だったら今の木連の現状もなかったはずだ!」
 <火星の後継者>に行った川口が草壁からまず最初に叩き込まれたことは、徹底的な合理主義と不退転の決意だった。
 木連の民を救うため、修羅の心を身にまとえ。
 折れず、曲がらず、砕けず、最後の一瞬まで敵の喉笛を食いちぎる決意を持ち続けろ。
 それが絶対に必要で、それが出来ない者から死んでいく。
 目的のために。守るために。感情を殺して修羅と化す。
 例え仲間が死のうとも、友が死のうとも、1つでも多くを救うために、構成員全てが効率よく死ね。
 優人部隊の隊規に似ているようで、しかし決して同じではないもの。
 それが<火星の後継者>の修羅の誓い。
 ……けれどそれは、必ずしも仲間を見捨てるという事ではなかったはずだ。
 正直、熱血クーデターの敗残兵からスタートした当初は辛い戦いの連続だった。
 ネルガル・連合軍との圧倒的な自力の差に何度も部隊は壊走した。
 本隊を救うために犠牲となった部隊の数など数え切れない。
 何時しかそれを是とするような思考まで生まれていた。
 7割を救えた。それを大戦果として喜び始めたのは何時からだろう。
 3割を死なせた。その事を悲しまなくなったのは、何時からだろう。
 ―――優人部隊の純白の制服を着ることが出来なくなったのは、いったい何時からだろう。
「木連の民が苦しんでいるときに、中佐はいったい何をやっていたというのだっ!」
 戦い続けるために、勝ち進むために必要な事だと教えられたこの誓い。
 それを仲間を見捨てる事への言い訳として使い始めたのは、一体何時からの事だろう。
 自分たちは木連の民を守る剣だ。だからそれでいいはずだった。
 自分たちの勝利条件に、他人の生死は関係ない。自分の生死すら関係ない。
 ただ最後に<火星の後継者>が生き残り、今の体制を転覆させることが出来ればそれで良い。
 所詮人斬り包丁のような商売だと、自分でも割り切っていたはずだ。
 だが―――
「何とか言ったらどうだ、月臣中佐!!」
 あの日と同じ純白の優人部隊の制服に身を包んだ月臣を睨み付けながら川口は続ける。
 嫉妬と羨望が彼の心の中で渦を巻く。
 自分にはもう、あの制服を着る資格はない。
 自分が今まで何人見捨ててきたというのだ。
 救えるかもしれない命を見捨てたどころではない。
 確実に救えるだろう命も、両手で数え切れない程見捨ててきた。
 そんな者が、どうしてあの制服を着ることが出来るっ!?
 川口の視線に疑惑の色が混じる。
 ネルガルも自分たちと同じ状況に陥ったのだ。やってきた事は中佐も同じはず。いや、それ以前に噂では中佐は親友をその手にかけたのだ。
 それなら何故、中佐は今、あの制服を着ることが出来るのか。
 中佐は自分の罪を認識せぬ馬鹿なのだろうか。いや中佐は考えも責任感もある人物だ。流石にそんな事はないだろう。
 では、罪を認めてその上に立つという事か。
 見捨てた者たちの屍の上で、皆を救うと叫ぶつもりか。
 だとしたらそれは―――
「―――……本物を、見てしまったからだ」
 川口が自己の考えに没頭しようとした矢先に、月臣がぼそりという。
「……本物?」
 その呟きを川口が拾う。
「ああ。本物の馬鹿だ。少尉は何故<火星の後継者>に?」
「…………」
 一拍。川口は表情を一変させる。
 もしかしたら彼は、誰かに訴えたかっただけなのかもしれなかった。
 激高しているようにも、泣き笑いしているようにも見える顔付きで、川口は言葉を振り絞る。
「……認めるわけにはいかんでしょう? 和平をするだけしておきながら自分たちの都合で我ら木連の人間を排斥するような社会は」
 それは冷たく、鈍い、鉈のような感情だった。
 一朝一夕では出来ず、長い年月をかけて蓄積されていった怨嗟の刃。
 しかし―――
「なるほど。よく聞く話だ。……少尉も周りが見えなくなった口か」
「周りが見えない? 私も? 中佐は誰と私を比べているのだ?」
 侮辱されたと思った川口が引き金に触れる指に力をこめながら言う。
 月臣はちらりと前に座るウィーズを見やる。
 彼女は無言。アカツキも他のメンバーも月臣と川口の成り行きを見守っていた。
 月臣はほんの少しだけ苦笑いを浮かべて答えた。
「少し前の俺に、だ」
 月臣には川口の怒りがわからなくはなかった。
 おそらく彼は同情がほしかったのだろう。
 救いのない状況下でひたすら耐えてきて、その愚痴を聞いてもらいたかったのだろう。
 しかし、どれほど言われなき非難を受けようと、決して自身の信念を曲げなかった奴の相棒を気取る以上、月臣は川口たちに対してあまり同情する気にはなれなかった。
「いつのまにか手段と目的が入れ替わっていることに気付いていないのだ」
 月臣は淡々と、そしてわずかに自嘲的に言う。
 その反応が気に食わなかったのだろう。
 川口の顔に険が増し、銃口を突きつけながら親の(かたき)のように月臣を睨む。
「……私は、私がやってきたことは決して間違いではなかったと思っている」
「いいのではないか? 俺も草壁を倒すということに躊躇いはない」
「ふざけおって!!」
 からかわれたと思ったのか。川口は月臣に対して一斉射撃をしようとするが―――
『川口少尉、そこまでです』
 一瞬早く、シンジョウの制止の声がかかる。
 川口は苛立ち混じりにシンジョウに振り向くが、その答えとばかりに彼らのいる広場にえもいわれん光が満ちた。
 そしてその光の中から、総勢12体の積尸気(ししき)が現れる。
『時間稼ぎ、ご苦労様でした。あなたの無念は彼らが晴らします』
 ここが勝負どころと直感したシンジョウは、2人が話している間に黙々と部下に指示を下し、そして予備戦力の大半である12体の積尸気を一気にこの連合宇宙軍本部に送り込んできた。
『いささか卑怯とは思いますが、如何に月臣殿といえど、この数には勝てないでしょう』
 淡々と、シンジョウは言い切った。




「12対1か。やれるか、ウィーズ?」
 コックピットハッチを閉じながら月臣が問いかける。
「当然。手筈どおりに頼むわ」
 すかさずウィーズが挑戦的に応えた。
 その言葉に月臣は獰猛な笑みを浮かべる。
 状況自体は最悪。
 結果としてアカツキたち囮の役割は成功したといえるのだが、そのことを逆手に取られて敵の主力を一手に引き寄せすぎてしまった。
 正直、いくらなんでもこの数はないと思う。
 予備戦力のほとんどを突っ込んできているのであろうが、シンジョウのこの思い切りの良さはまったくアカツキの計算外だったのだ。
 都合12丁の積尸気(ししき)のハンドガンがいっせいにアルストロメリアに向けられる。
 まともに考えれば勝負にすらなっていない。
 並のパイロットなら、いくらアルストロメリアといえど12体の積尸気が相手では30秒だってもたない。
 加えてウィーズがいる以上、一瞬の隙を突いて相手パイロットを殺すことも出来ない。
 まったくの手詰まりなのに……。
 月臣はちらりとウィーズを見やる。
 ちょうど自分とコンソールの間に潜り込むように位置取っているためその背中だけが視界に映る。
 戦力は圧倒的で戦術も限られて、こんな無い無い尽くしの状況だというのに。
 なのに、何故、こんなにもこの背中が頼もしく思えるのか。
『全機攻撃開始! 押し潰せ!!』
 シンジョウの号令。
 12体の積尸気から繰り出される死角の無い一斉攻撃。
 轟音! 轟音! 轟音!
 下腹を揺さぶる射撃音と共に濃密な弾幕がアルストロメリアに迫るが―――
「ジャンプ・ゼロ!」
 一瞬、金色の光が浮かんだかと思えば、次の瞬間にはアルストロメリアは白昼夢のごとく姿を消す。
 そしてほぼ同時にアルストロメリアを囲む積尸気の1体が戦闘不能となった。
 見れば背後から積尸気のジェネレーター接続ケーブルをジャンプ・アウトしたアルストロメリアがクローで引きちぎっていた。
 アクアから既に教えられていた積尸気の泣き所の1つ。
 ここを潰せば機体の安全装置が稼動して全システムが一斉にダウンする。
 殲滅ではなく鎮圧を目的とするウィーズたちが攻撃できる数少ない点だ。
「いくぞっ!」
 純白の機体が脚部キャタピラの爆発的な推進力で敵中に踊りこむ。
 敵の機先を制して、左右のクローが同時に2体の積尸気を襲った。
 予備動作も何もない。あまりにも急なジャンプに敵は対応が遅れている。
「斬ったら跳ぶよ!」
「任せろ!」
 ざくりという音と共にジェネレーター接続ケーブルを切断した瞬間、アルストロメリアは再度ジャンプ・ゼロ。
 最後尾の積尸気の背後に悪夢のように現れた。
 振り返る暇もあればこそ。
 またもやジェネレーター接続ケーブルを切断され糸が切れたようにその場で膝をつく積尸気。
 間が悪く一列に並んでしまった積尸気を掻き分けるように次々と斬りおとすアルストロメリア。
『落ち着け! 相手は不殺を気取っている。ならば1人を囮にしてその隙に火力を集中しろ!』
 シンジョウの指示。
 ウィーズの最大の泣き所を突いてきたが、彼女は獰猛に笑うことで返す。
「次はまとめて右、左、そんで真ん中! ついて来れなかったら怒るよ!?」
「ぬかせっ、俺を誰だと思っている!?」
「ジャンプ・ゼロ『先行入力(プリシード)』ォ!!」
 言い終わるが早いか、アルストロメリアは向かって最右翼の積尸気の背後に出現。
 瞬く間にジェネレーター接続ケーブルを斬り飛ばす。
 しかしここまではシンジョウの策どおり。
 斬られた一体を囮にして残りの積尸気が一斉に発砲する。
 が、その全てが遅すぎた。
 銃弾をあざ笑うかのようにアルストロメリアの姿は掻き消え、ほぼ同時に最左翼の積尸気の背後に出現。
 その無防備な背中を斬り裂いた。
「―――っ!」
 <火星の後継者>が振り向くと、既にアルストロメリアの姿はない。
 戸惑う間もなく今度は包囲の中心にいた積尸気が崩れ落ちる。
 周囲に警戒していた他の積尸気のパイロットは何がなんだかわからない。
 かてて加えて同士討ちの危険がある以上EOS――Easy Operation System――採用の積尸気は一時的に火器のセーフティーが発動してしまう。
『ば、馬鹿な!?』
 あまりにも非常識なアルストロメリアの動きにシンジョウがうめくように言う。
 ジャンプ・ゼロ『先行入力(プリシード)』。
 あらかじめ起動・照準を済ませておいたボソンジャンプを発動直前の状態で意識下に凍結。いざそのジャンプが必要となった場合にはあらかじめ登録しておいた『ジャンプゼロ・プリシード』という言葉を引き金にして仮想意識を展開。その中でジャンプを連鎖的かつ高速で起動させるボソンジャンプの応用技の1つ。
 もちろん、これは正当な起動方法ではないため、その無茶を通せるだけの器――正確には本来のジャンプイメージと意識下に凍結させているジャンプイメージ、さらにはそれを区分する仮想意識という最低3種類のイメージを同時に保持しうるだけの意識容量が必要となる。ウィーズはその特殊な生い立ちゆえボソンジャンプに対する出鱈目な適性と意識容量を誇っているが、これが足りない人間が行うと、ランダムジャンプを起こす可能性もある危険な技法でもあるのだ。
 最後の積尸気が為す術もなく崩れ落ちたところで、ようやくアルストロメリアはその動きを止めた。
 月臣は自身の興奮を感じ取っていた。
 散々言われてきたことだ。
 ウィーズのジャンプ・ゼロは非常に『危険』だ、と。
 タイムラグゼロの彼女が大型の爆弾でも所有しようものなら、それだけで回避がほぼ不可能なテロの危険が生まれることになる。機動兵器や戦艦に乗られでもしたら目も当てられない、と。
 しかしボソンジャンプはジャンパーの跳ぼうとする意識がないと効果が半減するということ、そして当のウィーズが殺人や破壊活動に病的なまでの忌避感を持っていることから、彼女の脅威とはあくまでも可能性の話でしかなかった。
 ―――だが。
 月臣の頭にぱちりぱちりとパズルのピースを嵌める音が響く。
 ボソンジャンプに対応した最新鋭の機動兵器、全力を持って状況を変えようとするウィーズ、なによりそれらに振り回されずに敵を誰一人殺さずに鎮圧できる月臣の技量。
 それらが全て揃った時の結果が、いきなりコレだ。
 ありえない理想を掴み取るための不条理を捻じ伏せる不条理。
 嘲笑された希望を引き寄せるための理不尽を踏みにじる理不尽。
 その一因になれたことが、月臣には単純に嬉しかった。
「大勢は決した。シンジョウ殿、川口少尉、拳を下げてはもらえんか。木連の民のことは悪くはしないと約束しよう」
 月臣が外部スピーカーで呆然とする<火星の後継者>たちに話しかける。
 その様子をシンジョウは憎々しげに睨んでいた。
 彼の頭脳は今の状況を正しく理解していた。
 奇襲を仕掛けておきながら、わざわざ時間稼ぎになりかねない川口との会話に付き合う脇の甘さ。
 アルストロメリア1体という要人の塊に対しては不十分と言わざるを得ない増援戦力。
 その全てが誘いだったのだ。
 本気になったウィーズの出鱈目な爆発力を、シンジョウは読み切れなかった。
 良くも悪くも常識人であった彼には、ボソンジャンプの馬鹿げた可能性を想定しきれなかった。
 だからこそ彼は不確定要素であるウィーズを殺害しろとヤマサキに命じていたというのにっ!
 シンジョウは気分屋の同僚に心の中で舌打ちをしながら月臣に応えた。
『それは出来ない相談ですね。確かに月臣殿は……あなたたちは強い。正直、私の予想を大幅に超えていました』
 一拍。挑むように睨んで続ける。
『ですが、所詮戦術単位の脅威に過ぎない。それだけで我ら全てを抑えることなど出来ません。考えたものですね……』
「む?」
『こちらは殺す気なのに、そちらはあくまで不殺を貫く。そのうえ悪くない条件での降伏勧告。おかげでこちらの戦意は鈍る。月臣殿は未だに木連人にとって影響力が強い。そんなあなたに言われれば寝返る者もぽろぽろと現れましょう。なかなか手が込んだ思考誘導ですね』
 シンジョウの脳裏をよぎったのは3年前の熱血クーデターのことだ。
 あの時も状況は圧倒的にシンジョウたちに有利だった。
 先にクーデターの情報をつかみ、首謀者を一網打尽にするつもりが……月臣が裏切り、学兵が寝返り、そして多くの民衆が扇動されて……結果として彼らは大敗した。
『当方に引くつもりは合切ありません。あなたがどれほど真摯(しんし)に尽くしてくれるとしても、二度と地球圏主導での体制に加わるつもりはありません』
 絶対的支柱を失った未熟な民がどうなるかは、嫌というほどに見せ付けられた。
 同じ轍を踏むことは許されない。
「俺に思考誘導などと器用な真似は出来んよ」
 シンジョウがひとしきり言い切ったことを確認すると、月臣は口を開いた。
「俺がお前らを殺さないようにしているのは同胞(はらから)を失いたくないからだ」
 ただただ真摯(しんし)な言葉。ひたすらに純粋な想いだけがそこにはあった。
 彼の言葉に嘘は無い。けれど、それがずっと通用するほどこの世界も甘くない。
 シンジョウは断固として答える。
『あなたはもはや同胞などではない!』
「そうだ! そんなに同胞を殺したくないというならそちらこそ全面降伏をしろ! さすればこちらもこれ以上殺し合いはしないっ!」
 シンジョウに川口も同意する。
 話し合いは難しいか、月臣がそう思いかけたところで、彼の前にいたウィーズがふと口を挟んだ。
「川口さんはあの若い子達の傭兵部隊を馬鹿だと思う?」
「あ?」
「金に目がくらんで同胞に銃を向ける短絡思考だと思うの?」
「そ、そんな訳があるか!」
 元学兵の傭兵部隊について、川口は感心をこそすれ蔑むような思いはまったくなかった。
 彼らの死に物狂いの成長が、金銭目的の短絡的なものとはとても思えなかった。
 川口の答えにウィーズがにこっと笑う。
「だったら、月臣やネルガル、地球連合に騙されて引っ張られてきたわけじゃない。彼らに賛同して……肩を並べただけよ」
「い、いや……しかし」
『騙されないでください、川口少尉!』
「心配は要らないよ。月臣も私たちも、これ以上みんなで殺しあうことはさせない。少なくとも願っちゃいない。ま、それでも戦争となれば絶対に死なないとはいえないからね。もし死んだら……私と月臣を恨んでくれて良いわ」
 爽やかな、あまりに爽やかな一陣の風が走った。
 そしてその風にすかさずアクアものっかかる。
「あなた達の安全も木連人の立場もクリムゾン・グループが保障しましょう。それが社会的責任というものですわ」
 ちらり、とウィーズを見ながら提案する。
 以心伝心。
 アイ・コンタクトでアクアの意図を悟ったウィーズがニヤリと笑って合いの手を入れる。
「さすがクリムゾン! ネルガルと連合宇宙軍も当然協力してくれますよね!?」
「そ、そうだね」
「……こちらも異存はない」
 急に矛先を向けられたネルガルと連合宇宙軍はこう言うしかない。
「ちなみに今の会話は全て記録してありますわ。データはそちらにも渡します。クリムゾンの名に懸けて反故にはいたしませんわ」
 おいおいおいおい!
 思わず突っ込みを入れたくなる自分を必死に抑えるアカツキ。
 アクアをクリムゾンの当主に持ち上げる契約はともかくとしても、なぜ木連人のことまで全面的に面倒を見なくてはならないのか。
 全てを放り投げて逃げ出したいが現在の状況の要はアクアとウィーズによって構成されているためそうも行かない。
 アカツキは見る見るうちに悪化する利害関係に頬をひくつかせながら視線だけで必死に反対を主張する。
 が、2人は容赦しなかった。
「自らの犠牲を省みずに木連人のみならず世界のことを考えるネルガル・連合宇宙軍に心から敬意を払いますわ」
「よっ、ヒーロー! にくいね、このー!」
 やんややんやと囃し立てる2人に軽いめまいを覚える。
 殴っちゃだめかな、アレ。
 顔面神経痛にかかったようなアカツキにプロスが恐る恐る方針を伺った。
「……会長、その…どうされますか?」
「この状況で退けるわけないだろう!? ああ、良いだろう! ネルガルがまとめて面倒見てあげるよ! 覚えてろ!」
 ネルガルからヒステリックかつ快い賛同を受けたことでウィーズの言葉には奇妙な信憑性が生まれた。
 眼の前で繰り広げられる会話を、<火星の後継者>たちは唖然として聞いている。
 暗殺、テロ、人体実験、戦争……こぞって凄惨な戦いしかしてこなかった<火星の後継者>にとって、その光景は異様とも言うべきものだった。
 ネルガル、クリムゾン、連合宇宙軍。それぞれの組織の長、幹部をおさえてその宿敵に手を差し伸べようとするアクアとウィーズ。
 何でもないことのように2人は振舞うが、おそらく、本当に気づいていないのだろう。
 自分たちが今、どれほどすさまじい力を発揮しているのかを。
 それまでの戦いに比べ、彼女たちが現れてからはまるで数倍の光量のスポットライトがあるのではないかと思うほど舞台が輝きだした。
 そこには、他では見出せなかった希望があった。
 川口は、痺れたように立ち尽くし、彼女たちを見続けた。他の<火星の後継者>たちがそうしているように。
「もう一度言う。何度でも言う。俺たちは同胞を傷つけたくない。白鳥九十九のような犠牲は、もう十分だ……」
 最後に締めた月臣の言葉に、川口たちは力なく両手を下げた。
 既に士気の下がっている兵士たちを止めることは、もはやシンジョウには出来なかった。
 ……ここに対<火星の後継者>防衛戦の趨勢は決まった。






 ネルガル、連合宇宙軍侵攻部隊をそれぞれ南雲、シンジョウに任せた草壁は火星極冠遺跡付近の総司令部で事態の成り行きを見守っていた。
 届いた報告は予想通りの敵戦力、そして、予想をはるかに上回る衝撃だった。
 両部隊が共に投降したと言うのだ。
 しかも―――
「……ウィーズ・ヴァレンタインが、参戦した?」
 それは連合宇宙軍侵攻部隊を指揮するシンジョウから受けた報告だった。
 ウィーズは月臣の駆るアルストロメリアに同乗して現れると、瞬く間に積尸気14体を戦闘不能にし、侵攻部隊の降伏を決断させた、と。
 報告を受けた草壁の両目は見開かれ、唇は痛いほどに噛み締められていた。
 とうとう、と言うべきか。ついに、と言うべきか。
 かつて自分が切り捨てた存在を抱えながら、自分と似た道を突き進む男が自分をその射程に捕らえた。
 我知らず呼吸が浅く、そして速くなる。
 彼が部下の前でこれほど動揺を露わにする事は、かつて無かったことだ。
「……草壁!」
 背後に控えていた北辰が、歯を食いしばるように呼びかけた。草壁はなおも自失していたが、突然両目を燃え上がらせて、腹心の手を振り払った。
「わかっている!」
 右拳をデスクにたたきつけると、血を吐くように唸った。
「まだこちらにも勝機はある。誰一人犬死になどにはさせんっ!」
 魂を燃やし尽くすような、草壁の宣言だった。北辰は頷くと、司令部の部下たちに目配せをする。部下たちはすぐさま姿勢を整えると、自らの職務に戻っていった。
 次々と報告が上げられてくる。
 今、司令部には熱血クーデターのときを上回る惨状が刻々と伝えられている。
「……完全に後手に回ったな」
 暗部の責任者である北辰が忌々しげに言う。
 アクア・クリムゾンの持つ、こちらの逃亡先の情報が明かされた後、<火星の後継者>がどのような立場に立たされるか。想像するだけで目の前が暗くなる。
 だが、ここはもう割り切るしかないのだ。
 逃亡計画の情報が流出し、地球での侵攻部隊も敗退した今、自分たちは完全に四面楚歌の状態だ。
 状況の改善は一刻を争う。
 今は未来の難局より、眼前に迫る破局をこそ食い止めなければならない。
 例え、どれほどの痛手を負おうとも。
「報告します! 亡命先のC国、I国、S国その他多数が<火星の後継者>の受け入れを拒否しました!」
「連合宇宙軍侵攻部隊より報告。主力部隊の投降と相手の説得により戦線離脱者が加速度的に増加! 現在、残った人員で抵抗していますが早急な援護を求めています」
「……統合軍の動きはどうなっている?」
「クシナダの第三艦隊の戦力補充を行っていますが、攻勢任務にはまだ時間がかかりそうです」
 <火星の後継者>の主戦力は、未だ火星周辺に多く残っている。
 制圧部隊である歩兵中心の部隊こそ大規模に送り込んでいたが、積尸気(ししき)、ステルンクーゲルら機動兵器や戦艦群は戦線維持のためサクヤ、火星極冠遺跡に配備されていた。
「サクヤにいる積尸気40体を全て連合宇宙軍本部に跳躍。各機に高性能爆薬を仕掛けさせろ」
「―――!? 閣下、それではサクヤの防衛がっ」
 積尸気は<火星の後継者>のボソンジャンプによる奇襲戦略の要だが、開発期間の短縮のためボソンジャンプユニットを外部ユニットに依存していた。しかもその結果ボソンジャンプは一回限りとなってしまい、奇襲攻撃をかけても単体での帰還方法が無い、片道切符の機体となってしまっている。
 積尸気という新兵器が無ければ統合軍の次の攻勢にはとても耐え切れないが、それでも草壁はここが分水嶺だと決断した。
「……構わん。どうせ後で放棄するものだ。連中が張子の虎に身構えている間に跳躍できる者たちで戦局をもう一度ひっくり返す」
 場所は既に特定できている。
 ボソンジャンプで肉薄し、しこたま爆薬を抱えた40機での神風特攻。
 ウィーズたちが如何に馬鹿げた存在であってもコレならさすがに多勢に無勢だろう。
 出来ることなら使いたくは無かった、本当に最後の最後の策を草壁は実行しようとする。
 しかし遅かった。
 北辰の言葉通り、<火星の後継者>は徹底的に後手に回っていたのだ。
「近衛中隊より入電! 火星極冠遺跡上空に敵戦艦がジャンプアウトしました!」
「なんだとっ!」
 草壁が怒鳴り、北辰もまた意表を突かれた顔になった。
 しかしすぐに痛恨の表情を浮かべ……
「不覚。ナデシコか……!」
 迂闊にも前大戦の難敵、ナデシコ勢の存在を失念していたのだ。
 ナデシコCと識別された戦術モニターを睨みながら草壁は吐き捨てるように言う。
 思えばこれほどの攻勢でついに復讐人テンカワ・アキトは姿を現さなかった。
 まさか奴がA級ジャンパーとしてナデシコCに乗り込んでいたのか……!?
「ちぃっ。たかが一隻、なぜ撃ち落さない。現場は何をしているのだ!?」
「わかりません。報告があいまいで……相当に混乱している模様です」
 伝えるオペレーターの声も震えている。草壁も歯軋りした。
 むざむざやられるとは信じたくないが、敵が奇襲を仕掛けたのは、勝算があってのことだろう。アクアから情報が流れているならこちらの内情も相当数、読み取られているはず。
 万全の体制で臨んでいるに違いない。
「……陽動を警戒しつつ全力で敵戦艦を撃墜しろ」
 苦しげに草壁が命令する。
 そのとき、
 ズズン―――
 微震が、総司令部を襲った。
 微かだがはっきりと感じる揺れだった。
 それに音と衝撃。もはや地震ではない。
 一瞬、喧々囂々(けんけんごうごう)たる有様だった司令部に、異様な沈黙が生まれた。
 草壁はカラカラに乾いた声で傍らの北辰に問いかける。
「……今のは?」
 北辰は応えない。
 しかし、見る間に変動している戦術モニターから導き出される予測に顔色が変わっている。
 そして、北辰の予測は正しかった。
「ハッキングです!」
 オペレーターの報告――もとい悲鳴――が司令部に響き渡った。
「火星全域の全ての戦艦、機動兵器が電子的制圧を受けています!」
「……なんだと?」
「映像出ます!」
 司令部の壁面に大型のコミュニケが多数出現し、周囲の様子を映し出した。
 画面を埋めるのは電子制圧され、次々と地上に不時着してくる戦艦と機動兵器の群れである。
 戦艦が不時着するたびに振動がここまで伝わってくる。
 音声は無く、画面はひどく乱れていたが、<火星の後継者>が追い詰められていくさまがまざまざと映されていた。
「馬鹿な」
 呻くように言うが、目の前の惨状を証明するように立て続けに司令部に不具合が起こり始める。
 まずモニターとコミュニケの画面が櫛の歯が抜けるように次々と『お休み』、『一時停止』、『封印』といった表示に強制的に切り替わる。
 けたたましく鳴っていた各部署からの支援要請もぴたりと止んで通信が掌握された。
 とどめに照明まで落ちて徹底的に抗戦能力をそがれたところで、ハッカーがこちらに連絡を取ってきた。
『みなさん、こんにちわ。私は地球連合宇宙軍所属ナデシコC艦長ホシノ・ルリです。元木連中将、草壁春樹。あなたを逮捕します』
 いきなり現れたハッカー、ルリは特に誇るでもなく淡々と言い渡した。
「黙れッ、魔女め!」
 幹部の1人が憤慨して言った。
 現実にはありえない銀色の髪、金色の瞳を持ったルリは、遺伝子操作によりIFS強化体質という大型コンピューターのオペレーションに特化した能力を生まれながらに兼ね備えている。体内のナノマシンが発光し、模様のように見えるその姿は、なるほど見るものが見れば魔女のように見えるのかもしれない。
 ナデシコCという魔具を用いて瞬く間に火星全域を掌握してしまったホシノ・ルリ。
 ジャンプ・ゼロという魔技を用いて圧倒的な軍勢から連合軍を守りきったウィーズ・ヴァレンタイン。
 桁外れの2人の魔女により草壁の戦争はまたしても負け戦となってしまった。
 どちらか片方だけならまだどうにかなった。
 地球を押さえられても特攻隊の大量投入で戦況を覆すことが出来た。
 火星を抑えられてもアカツキ・ナガレ、ミスマル・コウイチロウらを人質に取れれば、最悪にらみ合いに持っていくことは出来た。
 ……だが、両方。
 ほぼ同時に両方を抑えられてはもはやどうにもならない。
 ネルガル勢がかねてより唱えていた『綿密な連携』を、形こそ違えど畳み掛けるように受けてしまったのだ。
「我々は負けん!」「徹底抗戦だっ!」
 周りを固める幹部たちはそれでも戦意を失わず、いっそ死に場所を求めるようにいきり立った。
 熱血クーデターの時とは違い、裏切ろうとするものは一人もいない。
 それは木連人たちの3年前からの進歩なのか。
 草壁はそれらを有難く思う。
 だが、だからこそ彼は決意する。
「……部下の安全は、保障してもらいたい」
 堂々としたその言葉は、むしろ勝者のそれに近かった。
 弾かれたように草壁に部下たちの視線が集中する。
 中には露骨に敵意を迸らせている者もいたが、草壁の決意の程を知るに、やがてうつむき拳を下げた。
 <火星の後継者>の武装蜂起は、こうして終結した―――







『なんて、終わってもらっちゃ困るんだよね』
 ―――かに見えた。







 いきなりコミュニケが接続されたかと思えば、そこには1人の笑う男が映っていた。
 綺麗に撫で付けられた髪の毛、ぱっと見にも職業を連想させる白衣、人を食ったような薄ら笑い。
 火星の後継者のボソンジャンプ部門における技術主任ヤマサキ・ヨシオはやれやれというふうに言った。
『ヤマサキ・ヨシオ、あなたも逮捕します。逃げられるとは思わないでください』
 ユリカを奪いアキトを壊したヤマサキに対する憎悪を隠しながら、淡々とルリが宣告する。
 ナデシコCのオペレーターのものか、『場所特定。極冠遺跡最深部です』との言葉が聞こえた。
「ヤマサキ、もうこの戦争は終わりだ。これ以上の損害が出る前に収束させる」
 極冠遺跡最深部? 何故そんな場所にいる?
 ヤマサキの行動に疑問を覚えながら草壁も命令する。
 しかしヤマサキは芝居がかったように首を振って答えた。
『なぁにを言ってるんですか、草壁さん? 降参したところで僕らはみぃんなまとめてA級戦犯で死刑確定だ』
「全てが死ぬわけではない。我らの意思は残された者に託す」
『自分も死ぬことで他の連中に報いようと? いまさらそいつは都合が良すぎませんか?』
「……何が言いたい?」
 草壁が睨みながら問うと、ヤマサキはニィッと口角を限界まで持ち上げて笑った。
 それは人の心にさざなみを無理やり立てる、なんとも気味の悪い笑顔。
『このまま死ぬなんて真っ平ごめんなんですよ。1人逃げてろくに研究が出来なくなるのもぞっとしない。自殺なんかもってのほか。僕は僕として僕のやりたいようにやるだけです』
 言って、ずっとヤマサキをアップで映していた画面が切り替わる。
 そしてヤマサキに代わって画面に映ったのは、大量の爆薬に囲まれた遺跡ユニットだった。
『「―――ッ!!」』
 草壁もルリも一瞬、言葉を失った。
 遺跡ユニット。ボソンジャンプの大演算回路である火星極冠遺跡の中枢部品。
 これがどれほどの強度を保っているのかは分からないが、仮にこれを破壊してしまった場合、どんなことが起きるのかはまったくの予測不能。
 一説では、遺跡ユニットは一種のタイムマシンのようなもので、これが破壊された場合は現在・過去・未来のボソンジャンプは全てチャラ、なかったことになるらしい。
 もちろん机上の空論であってこれが正しいとは限らないが、仮にこの理論が正しくなかったとしても影響が大きすぎてとても遺跡を破壊することなど出来ない。
 人類全てを道連れとする無理心中。
 そんなことを、目の前の男はやろうとしているのだ。
『あ、貴方は自分が何をしているのか分かっているのか!?』
 あわててコミュニケを繋げてきたのは地球にいるシンジョウだ。
 信じられないという風な口調に思わずヤマサキは吹き出した。
『失礼失礼。そちらにも通信を繋げていたのをすっかり失念していたよ。いや、重要人物がひと固まりになってるってのは楽でいいよねぇ。ちょっと待っててね。いま全部つなげるから』
 言いながら手元の機械をいじくると、まわりにさらにいくつかのコミュニケが出現した。
 連合宇宙軍総司令ミスマル・コウイチロウ、同少将にして元木連優人部隊『かんなづき』艦長 秋山源八郎、クリムゾングループ総帥が唯一の後継者アクア・クリムゾン、ネルガル会長アカツキ・ナガレ、同SS最強のエース月臣元一郎、そして現在はネルガルに身を寄せる化け物ウィーズ・ヴァレンタイン……。
 この戦争の主だった人物がまとめて接続された。
 統合軍の代表とクリムゾンの現総帥ロバート・クリムゾンがいないのは、彼らはヤマサキにとってはもはや小物だからか。
 ヤマサキは満足そうにそれらを見回すと、まずはアカツキに声をかけた。
『やぁ、アカツキ君。あのビデオを見てくれたとしたら、数時間振りの再会かなぁ?』
『遺跡ユニットを逆手にとっての瀬戸際外交か。まるで核をちらつかせた大昔の独裁者のようだよ。……何が目的だい?』
『なに、単純なことだよ。僕はボソンジャンプの可能性を見てみたい。僕の手で真理を掴みたい。だから僕の思うがままの研究環境を用意してくれる<火星の後継者>を存続させたいだけだよ』
『君が遺跡ユニットを壊したらボソンジャンプの可能性とやらはもちろん、人類全てが滅ぶ可能性があるとしてもかい?』
『僕が解き明かさなくては意味が無いだろ? 何を言ってるんだ?』
 アカツキは総毛立った。
 脅しではない。この男はいざとなったら躊躇いもしないだろう。
 自分も、敵も、関係のないものも、一切合財を台無しにすることに何の感慨も無いのだろう。
 そう直感できた。
『……狂ってるよ、貴様は』
 ヤマサキは吐き捨てるように言ったアカツキに面白くてたまらないという笑みを浮かべると、ずっと自分を睨みつけているウィーズに矛先を向けた。
『やあ、ウィーズ君。大活躍だったみたいだね。腕の調子はどうだい?』
『おかげさまで体重計に乗るのが楽しみになったわ』
『くっくくく。いや、そいつは結構。ところで人死にが嫌いなウィーズ君に提案があるんだけど?』
『…………』
 ウィーズは沈黙をもって続きを促す。
『僕の実験体にならない? 正直、君1人いれば他の有象無象を1万人いじくるよりよほど効率的なんだよね。君が来てくれるならこれ以上、誰も僕の研究の犠牲にはならないかもしれないし、ネルガルや連合軍も出来る限り現状維持してもらうようお願いするよ?』
 ちょっとした借金の依頼のような口調でとんでもないことを言う。
『こんな大それたことをして、仮に<火星の後継者>が残ったとしてもあなたの席はもうなくなるのではなくて?』
 口を挟んできたのはアクアだ。
 彼女は挑発的な笑みを浮かべながら続ける。
『貴方の言っていることはあくまでも可能性の話。何かが起きるかもしれないというだけのこと。その立派な遺跡を作った古代火星人さんたちが遠い未来に遺跡が壊れるときのことを考えていないわけがありませんわ。貴方のやろうとしていることの末路は、ご自分で嫌だといった惨めな自爆に他なりません』
『そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。たぶん意味は無いだろうけど、爆破するときには出来る限りのデータを取るようにいろいろ機材もセットしてある。何が起こるだろうね。<火星の後継者>の存在は無かったことになるかな? それとも6年前の木連の地球侵攻も無かったことになるかな? いやいや、もしサルからヒトへの進化のミッシングリンクに古代火星人が関わっているとしたら人類自体が消えるかもしれない。どきどきするよねー。わくわくするよねー。そんな検証を自分の手で出来るなんてたまらないよねー』
『研究が大事なら死にたくは無いでしょう? 出来もしないことは言わないほうが身のためですわ』
『あははは。それを認めたらもう僕じゃないよ。科学者の性根なんてつまりはこれ(・・)さ。尻に火がついて死ぬ直前になってもこの欲は捨てられないし変えられない。どうせだめなら合切を道連れにしようじゃないか♪』
 脅迫対難癖。
 ぎりぎりぎり。
 互いに鍔迫り合いのような舌戦を貼り付けた笑顔と共にぶつけ合う。
 アクアは口元に微笑をたたえながらも注意深く周囲を見渡していた。
 いまのところ裏切るような者はいないみたいだが……みな悔しげにヤマサキを睨んでいた。
 アカツキや秋山はもちろん、プロスもエリナもムネタケも誰も彼もがヤマサキ一人に振り回されていた。
 そんな中で……
『埒が明かないわ。勝負しましょう』
 ウィーズが口走った。
 ヤマサキが眉根を寄せて見返してくる。
『なんだって?』
『私たちとアンタたちで勝負しようって言ってんの』
 そう言ってウィーズは挑発的に笑い、ヤマサキを正面から見据える。
『余力を残してんのにどっちかの無条件降伏なんて受け入れられないでしょ。なら誰が見てもわかりやすい勝敗を決める必要がある』
『また随分と脳筋な提案だね』
『時間さえあるんなら納得いくまで話し合ってもらいたいけど、そうもいかないでしょ。だからこっちとそっちで後腐れが無いように最強の機体を1機ずつ持ってきてのガチンコ勝負。これで終わりにするの。勝ったほうの総取り。もしこっちが負けたら……実験体にだってなってやるわ』
 ウィーズの後ろに座る月臣が何か言いたげに動いたが彼女はそれを視線だけで止める。
『…………』
 ヤマサキが沈黙した。
 不気味な笑みを貼り付けたまま、まじまじとウィーズを眺めている。
 ウィーズも笑みを浮かべている。懐柔の笑みではなく、不敵でふてぶてしい―――ヤマサキ好みの笑みを。
『……どう? この勝負、受ける? 意識が残ってなくちゃボソンジャンプの実験体は価値が半減するんでしょ。いい条件だと思うわよ〜』
『こちらが勝ったところで反故にされるだけじゃないの』
 喰いついた!
 ウィーズが心の中でガッツポーズをとる。
 ヤマサキの言うとおりウィーズの言葉には何の保証も無い。
 彼女にそんな権限なんて何一つ無い。
 けれど、阿吽の呼吸で連携をとってくれる仲間がいる。
 ウィーズの期待にこたえるように、すかさずアクアが口を挟んできた。
『強引ですが確かにそれ以外に方法がありませんわ。クリムゾンは賛成しましょう。シンジョウさん、<火星の後継者>もこの条件で良くて?』
『何を勝手に……』
 言いかけて、シンジョウはアクアの視線に気づいた。
 必死に訴えている目だ。
 このままだと狂人一人のせいで誰も彼もが破滅する、と目が言っていた。
 シンジョウは視線をそらした。
『……そうですね。妥協案としては悪くないと思いますが、草壁閣下、どうされますか?』
 つい数分前まで敵対していた者とのアドリブでの根回し。
 シンジョウは心の中で唖然としながら草壁に判断をゆだねる。
 草壁はわずかに黙考したが、
「是非も無い」
 と呟いた。
 アクアはアカツキとコウイチロウを見やる。
 2人とも仕方が無いという風に頷いた。
 決まりだ。
 一瞬ウィーズに目配せをしてから、アクアはヤマサキに言った。
『今から4時間後に互いの代表者を出して最終決戦といたしましょう。異存はありませんわね?』
『いいよ。それだけあればこちらも準備が整うし。場所はどうするんだい?』
『それならネルガルの火星研究所の演習場を提供しよう』
 これはアカツキの声だ。
『周りには何も無いから好きなだけ暴れてくれて構わない。そちらが指定してきた機体を一時的にルリ君の電子掌握から外すようにしよう。整備をしてから指定の区域に集合、で』
 誰もこの提案に異論は無かった。
 了承と共に次々と通信が切られていく中、草壁は妙な確信を持っていた。
 これが本当に最後の戦いになるのだという。
 そしてだからこそ出てくるのは月臣たちだろう。
 ならばそこで矢面に立つのは、やはり自分の役目だ。
 草壁はヤマサキに通信を送る。
 ヤマサキはその提案を不気味な笑顔で受け入れた。






 やはり地球側の代表はウィーズと月臣だった。
 アルストロメリアの簡易整備のあいだ休憩のために連合宇宙軍本部内の休憩室にやってきたウィーズは足を滑らせた。
 しまった! と受身を取ろうとしたところ、腕が伸びて彼女の体を支えた。
 アクアの護衛であるマルコが仏頂面で尋ねてきた。
「疲れているようだな」
「なに、あと少しよ」
 恥ずかしさを誤魔化すように笑って見せる。
 月臣はアキトと話があるとか言って別行動となっていたが、ここを見られないでよかった。
 またぞろ気を使われたのでは堪ったものではない。
 そう。ずいぶんと<火星の後継者>を撃退してきたが、本当にあと少しなのだ。
 こんなところでリタイヤするわけにはいかない。
 ウィーズはアルストロメリアでの機動を思い出す。
 ……凄かったな、アレは。
 自分は相手の意識を振ることだけを考えて、随分と無茶なジャンプをしたと思っていたが、月臣は完全にその動きについてきた。
 瞬きの間に自機の位置ががらりと変わったというのに、コンマ数秒で状況を把握して最適な行動を取ってくれる。
 月臣がいてくれるなら、自分はもっと役に立つことが出来る。
 頑張らなくては。そう思って口元を引き締めた瞬間、くらっときて行儀悪く備え付けのソファにダイブした。
 食べ物。甘いもの。何か無いかな。お腹にモノを入れればまだまだ戦える……とウィーズは目をつぶってあれこれと想像する。
 月の食堂の親父さんの坦々麺。あまり辛くは無いんだけど濃厚なゴマスープに花椒(さんしょう)がごりごりとあたるくらいにいれてあるからスパイシーで食べごたえがあったなぁ。
 雪谷食堂のサイゾウさんの炒飯も美味しかったなぁ。油の入り方が絶妙でなんでも若いころは某高級レストランで結構いい位置にいたとか何とか。
 ロンドンの院長先生の作るスコーンも癖になる味なのよね。木連人だけど出来る限り早く馴染むためって言って現地の料理文化を研究していたけど今どうしてるかなぁ。
 きゅるるる。
 いろいろ食べ物のことを考えているとどうしたって腹が鳴る。
 なんかもらってこようかな、と思っていた矢先に甘い香りがしてウィーズは目を開けた。
 鼻先にクッキーが差し出されていた。
 いつの間にか入ってきていたアクアとラピスが自分の顔を覗き込んでいた。その後ろには病院のお見舞いよろしくフルーツの詰め合わせを持ったエリナの姿も見える。
 ラピスとエリナはアキトのボソンジャンプに便乗してきたようだ。
「糖分補給。これ、アクアから」
「……うん、ありがとう」
 お礼を言ってラピスからクッキーを受け取るウィーズ。微妙な空気を読んだアクアが『何も入っていませんわ』と言うと身を起こしてさくさくと食べ始めた。
 うん、おいしい。
 昔、サイゾウさんのところで作ってくれた奴と同じ味だ。
 こくこくと頷きながらむさぼるウィーズ。
 そんな彼女をアクアたちはじっと見守っている。
 なんか恥ずかしいな。食べるのが一息ついたウィーズはふと口を開いた。
「暴れ通しはやっぱり疲れるわね。なんだか体がふわふわした感じがして。……もしかして疲れてるように見える?」
 ウィーズの言葉にアクアとラピスは顔を見合わせた。
 疲れて見えるなんてものじゃなかった。
 元々アクアとよく似た柔らかな顔は、頬がげっそりとこけ、目の下に濃いくまが形成されて、しかしそんな輪郭とは裏腹に眼差しだけは猛禽のような光を放っている。
 それは度の過ぎた鉛筆削りのようなものだ。
 削って削って芯を鋭くする。身体をすり減らして集中力を極限まで引き上げる。
 対峙しているだけで鋭い刃物でも突きつけられているような緊張感が走る。
 しかし、だからこそアクアたちの不安は尽きない。
 あまりに鋭敏な芯は、むしろ簡単に折れてしまうものだから。
「貴方がネルガルの社員なら会長賞をダース単位であげてるところよ」
 エリナがアクアたちの肩越しに声をかけた。にこやかだけれど、どこか痛ましげな表情が垣間見える。
「ネルガル食堂の食券100枚つづりとか代わりにくれると嬉しいわねぇ」
 欲があるのか無いのかわからないウィーズに苦笑いを浮かべながらエリナは続ける。
「考えておくわ。けどこれから貴方の存在をどう説明するつもりなの?」
「ふぇっ?」
「あの場にいた人たちの間で彼女は何者だって話になってるのよ。クリムゾンだってアクアさんの友人というだけで全社を巻き込んだ賭けに出れるわけ無いでしょう?」
「あ〜…それについては……」
 考え込むウィーズにアクアがにこやかに提案する。
「その点はウィーズさんを私の姉ということにして説得力を持たせようかと思っていますの」
 思わずクッキー吹き出した。
「ア、ア、ア、アクアッ!?」
「難しく考える必要はありませんわ。私たちはこんなにも容姿が似ているんですもの。生き別れの姉とか悲劇的なカバーストーリーをでっちあげれば押し切れますわ。一応、そんな時のための準備もしてありますの」
「……やけに手回しが良いわね。まぁ良いわ。どうせ戸籍だって無いんだし、それでみんなが納得するってんならアクアの姉にだってなってやるわ」
「わかりましたわ。ではそのように進めさせていただきます。マルコ?」
 言われてマルコは手元の端末から操作しようとするが、ふとウィーズのほうを見ながら
「良いんだな?」
 と確認をしてきた。
 彼にしては珍しく、若干のためらいを持っているようだ。
 ウィーズとしては是非も無いので肩をすくめて返すと、意を決して処理を進めた。
 アクアの言うとおり、データ自体は既に作成されていたので作業としてはそれを流すだけだった。
 最終承認、クリアー。
 途端に彼女たちの周りに大量のコミュニケが発生する。
 アクアたちが作成したというカバーストーリーのものだ。
「うわ、私? の子供のころの写真とかも作ってある! なにこの意味のわからない本気は?」
「嘘をつくと決めたからにはとことんこだわってみましたわ。これでウィーズさんは私の姉として存在していたことになります。アメリカ国籍で戸籍もありますわ、お姉さま」
「お姉さまはやめてお姉さまは」
「説明していいか?」
 満面の笑みで語ってくるアクアの横からマルコが顔を出す。
「今日からお前の名前はウィーズ・V・クリムゾンだ。クリムゾンの長女として生まれたが生後まもなく身代金狙いの誘拐を受ける。すぐに救出されたが精神に難を抱えたお前を見切った祖父ロバート・クリムゾンは両親にウィーズは死んだと伝え、クリムゾン家から追放した。お前を受け入れたのはある空手家の一家で幼少時からその薫陶を受ける」
 本来の経歴を隠すためのカバーストーリーをすらすらと説明していく。
 ウィーズは孫捨ての冤罪をかけられたロバートがなんとなく不憫だなと思ったが黙っていた。
「アクアお嬢様が観に来たサーカスのトラが暴れたときに偶然、居合わせたウィーズがそのトラを撃退したことから2人の関係は始まる。それを知った育ての親の空手家はウィーズが成人になるのを待ってからその出生の経歴を教えた」
「……またどっかで聞いたような話ね」
「やっつけだがお前の左腕についてはある死刑囚と戦ったときに鋼線で切断されたものとしてある」
「……その空手家って禿頭で眼帯していたりしない?」
「ちなみに性同一性障害でアクアお嬢様に恋をしたが性別的にも社会通念的にも認められない悲劇のヒロイン、となっている」
「ちょっと待てェ!」
 たいていのことは受け止めていたが、さすがにウィーズが声を上げる。
 彼女はこの悪ふざけの主犯であるアクアを睨みつけたが、そのクリムゾンの次期当主は期待に頬染めながら力強く頷いた。
「あるの? こんな設定が本当に必要あるの? ていうか頬染めてこっち見んな!」
「美形で男性よりも頼りになって、なのに決して結ばれることの無い恋心に苦悩する……まさに理想的な悲劇のヒロインですわ! はあああ! 楽しいですわ! 楽しいですわ! 楽しいですわ!! 私この設定思いついてから何時かやってみようかと思っていたら本当にその機会が訪れるんですもの!」
「落ち着きなさい、アクア! てか顔が近い息を吹きかけるな怖いのよ、単純にッ! なんで<○ちゃんねる>に私のスレがあったり<○ouTube>に私の子供のころ? の動画がアップされてたりするのよ! しかも日付は何年も前のもの! ログとか一体どうしてるって言うの!?」
「あ、このサーバーはクリムゾンで運営しているものですから細工は簡単ですわ。多角企業って素敵ですわね♪」
「ただの自作自演じゃないの!! マルコさんも止めてよ!?」
 話を振られたマルコはいつもの仏頂面を苦渋に染め上げてぼそぼそと弁解する。
「……すまん。俺には三徹中に薄ら笑いを浮かべながら現実逃避するお嬢様を止めることは出来なかった。俺に出来たことは……実はウィーズが男性で女装癖があるという設定を消すだけだった」
 アーッ!!
「もうアンタ敵でしょーッ! はっきり言って御覧なさいよ、怒るから!」
「落ち着け、お姉さま!」
「マルコさんまでお姉さまって呼ぶなーっ!!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐウィーズ。
「はぁ、はぁ、はぁ……もういいわ」
 彼女はひとしきり暴れると何とか気を落ち着かせられたのか、急に真顔に戻ってアクアに言った。
「で、私に何をさせようって言うの?」
「……何のことですの?」
「とぼけたって無駄よ。私をクリムゾンの縁者に仕立て上げたいなら方法はいくらでもあったはずよ。それをよりにもよって肉親にするなんてどう考えたっておかしいわね。<火星の後継者>との最終戦の功績をクリムゾンのものと強調したかったから? 違うわね。そんな目先のものにこだわるアクアじゃないしそんな場合でも無い」
 一拍。ウィーズはアクアを正面から見据える。
「言いなさい、アクア」
 有無を言わさぬ口調。
 普段は脳筋な言動ながら時としてハッとするように本質を突いてくる。
 アクアは数瞬、魅入られたように固まっていたが、やがて観念して答え始めた。
「……ウィーズさんを私のお姉さまとしたのは、せめてもの保険です」
「保険?」
「はい。この戦争はナデシコCが火星を掌握した時点で決着がつくはずでしたの、私の計画では」
「まぁ、あんな悪あがきするなんて思わないわよね、普通」
「状況の打開策として私はウィーズさんの提案に乗りましたが、アレは失策でした。私の読みが正しければ<火星の後継者>にはまだ奥の手がありますわ。それも対ウィーズさん用に調整されたものが」
「あれ、もしかして私と月臣の評価って思ったより低かったりする?」
「そんなことはありませんわ。ですが、アレはあまりに相性が悪すぎる。私としてはこんな一か八かの策などやりたくはないんですの」
「なるほど。アクアは安心したいわけね」
 うん、とウィーズは頷く。
 そして自分を痛ましげに見つめるアクアに笑いかけると、次の瞬間、その姿が掻き消えた。
「きゃっ」
 後方のエリナが声を上げる。
 弾かれたようにアクアたちが振り向くと、エリナのバスケットからリンゴを1つ取り出したウィーズがいた。
 ジャンプ・ゼロ。
 ウィーズは唖然とするアクアたちの視線が集まったことを認めると、手のリンゴを軽く掲げて見せる。
 次にその体がわずかに発光したかと思うと、文字通り瞬きの間に、リンゴの皮だけが綺麗にボソンジャンプで跳ばされていた。
 ほぼノータイムながらミリ単位で対象をジャンプさせる超精密制御。
 何百人A級ジャンパーを集めれば同じことが出来るのか。
 ウィーズの何気ないパフォーマンスの真価を理解できるものはどれだけいるだろうか。
 呆然とその様を見るアクアたち。
 そんな彼女たちにリンゴをかじりながらウィーズは挑発的に笑って見せる。
「ついさっきなんだけどね。ジャンプのコツってのがわかってきたのよ」
 なんでもないことのように言う。
 それを見たアクアたちの背中にゾクリ、と冷たい感触が走った。
 ウィーズは別に何もしていない。
 ただ笑っただけ。
 けれど、彼女から視線が一瞬たりとも逸らせない。
 今なら分かる。
 この笑みは、生存本能の根底をいやおう無く刺激する……そんな心臓をぶち抜かれるような恐ろしい笑顔であることを。
「私と月臣が組めばそれはもう凄いものよ。だから……」
 一拍。ウィーズは頬の力を抜いて、アクアを元気付けるように笑う。
「もう少し『お姉ちゃん』を頼りなさい」
 自分で言っておきながら照れくさかったのか、視線を逸らしながら頬をかくウィーズ。
 アクアもようやくふっと笑い、そしてこう切り出した。
「お姉さまの覚悟はわかりましたわ。ではお願いいたしますの」
 ウィーズは微笑みながら頷く。
 同じような表情で頷き返すと、アクアは意を決して言った。
「勝つために『人間』をやめて頂きますわ」
 アクアの笑みに、一同は固まっていた。






 ウィーズがアクアたちと休憩しているころ、月臣に呼ばれたアキトは連合宇宙軍本部内の医務室に向かっていた。
 先ほどの月臣たちが乗ったアルストロメリアの機動を思い出す。
 化け物だ、と思った。
 連戦に次ぐ連戦。
 相手は12機の積尸気(ししき)
 味方の援護はまったく無い。
 如何に月臣といえどどうにもならないのではと思った。
 しかし彼らは12機全てを手玉にとって見せた。
 誰一人殺すことなく。
 皆が唖然とする中、あの2人はそれを当然のように受け止めていた。
 彼らの顔は、自信と余裕に満ちているように見え、その時アキトはこいつらは別次元の存在なのだと、同列に考えることをやめた。
 そんなことを考えていると医務室の前まで来たので扉を開けた。
 その目に飛び込んできたのは、ゲッソリとやつれた月臣の姿だった。
 ベットにうつ伏せになり、身じろぎ一つしない。
 尋常ではないのが一目で見て取れた。
 呆然としているアキトの前で、月臣の目だけが、ギロリと動く。
 それさえもおっくうだと言うように、目を一度伏せた後、ぼそぼそと口元を動かした。
「……水を…取ってくれ」
 虫の鳴くような声だった。
 アキトは慌てて月臣に水を運ぶ。
 月臣はのそのそと腕を伸ばして受け取ると、病人のように寝転がったままで水を飲んだ。
 アキトは思い出す。
 月臣は今回、ずっと戦いっぱなしだ。
 特にネルガルで南雲と戦ったときにはアルストロメリアの打撃をもろに受けたと聞く。
 いや、それ以前にも月臣は熱血クーデター前後からここ3年間は、この過酷な任務を続けているはずだった。
(別次元……そんなんじゃないんだ……)
 アキトは頭を振って自らの軽率な考えを戒める。
 月臣だって、同じ人間なのだ。
 そう思うと同時に、本当にこいつは人間なのか? という問いが改めて浮かんでくる。
 これだけのダメージを溜め込んでいながら、なぜ戦場ではいつもどおりに出来るのか。
 ちらりと月臣の周りを見やる。
 患部固定用のサポーターと医療用ナノマシン――鎮痛剤と骨折治療用――の空き容器が確認できた。
 ……おそらく、アバラか背骨、もしくはその両方に障害を持ったのだろう。
 アキトは先ほどのいつもと少しも変わらない月臣を思い出し、やはり化け物だと背筋を震わせた。
「月臣、後は俺に任せてもう休め」
 こんな場面を見せ付けられて黙っていられるアキトではなかった。
 北辰との決着は彼の悲願であったが、仲間であり師である月臣のために地球側の代表者の代わりになろうと考えていた。
 しかし返ってきた言葉は―――
「ふざ…けるな。俺の代わりが…出来るものなど…おらん」
 一切の反論を許さない断固たる決意だった。
 悔しいがその通りだった。
 ネルガルはおろか、連合軍統合軍を見渡してみても月臣の代わりが出来る者などいやしなかった。
「……すまない」
 アキトは忸怩たる気持ちで言った。
 月臣は苦痛に顔をゆがめながら上体を持ち上げると、そんなアキトをフォローする。
「怒ってなどいない。お前には…ウィーズたちと共に…先ほど助けられたばかりだ。感謝している」
 月臣はむしろアキトを褒め称えたが、それではアキトの気がすまなかった。
「しかし月臣とウィーズさんにばかり負担が……」
「それはテンカワが思い煩うものではない。俺とお前では……立場が違う」
 月臣はアキトの言葉をさえぎって言う。
 淡々と、自身の立場と役割を語り始める。
「会長のお心はともかく、今のネルガルにとっては、テンカワアキトがやられても……ゴートホーリーがやられても……仕切りなおしは可能だ。どうということはない。だが月臣元一朗がやられることは許されない」
 アキトが目を見開く。
 それは聞きようによっては彼らを見下しているようにも聞こえたからだ。
 だがそれは違う。
 月臣は淡々と自身の境遇を語り続ける。
「木連でも同じ役目を担っていた。秋山源八郎が欠けても……南雲義政が欠けても……そこまでたいした話じゃない。だが月臣元一朗が死ぬことはあってはならない」
 アキトに異論は無い。言えない。
 それは圧倒的に正しい言葉だから。
「俺はなし崩し的とはいえ地球側の代表に選ばれた。それだけの力を見せ付けた。だから俺は月臣元一朗でなくてはならんのだ。皆が望む月臣元一朗を演じ続ける必要があるのだ」
 月臣の言葉には自嘲も苦悩も、自負の念すらなかった。
 自身の数倍を超える敵に、真っ向勝負を挑む男。
 一人きりの防波堤。
 それがどれだけ頼もしく映ったろうか。
 木連ではプロパガンダとされるだけの価値を見出され、またその期待に応えてみせた。
 これは月臣が背負い続けてきた、その重みを語っただけなのだ。
「それが俺に課せられた責任であり、与えられた立場なのだ。そして―――」
 一拍。ここにだけは強い意志を込めて月臣は言う。
「今のウィーズを支えられるのも俺だけだ。この役割だけは誰にも譲らん」
 ひとしきり話し終えた月臣は、少し照れたように咳払いをした。
「テンカワ、お前を呼んだのは他に頼みたい仕事があるからだ」
「俺にか?」
「ああ。北辰を引き付けてほしい」
「―――ッ!」
「俺たちが<火星の後継者>の代表を倒したといってヤマサキが遺跡ユニットを爆破しないという保証は無い。だから裏からヤマサキを捕らえる作戦を同時並行で進めることになっている。そこで気がかりとなってくるのが―――」
「神出鬼没の北辰か」
 アキトの言葉に月臣は頷く。
「そうだ。ネルガルとしてはテンカワを安全な場所に置いておきたいのだろうが、当初の予定通り北辰との決着をつけてほしい。クリムゾン側から提案があるから、それに同調して会長殿を説き伏せてほしいのだ」
「わかった」
 アキトは即答した。
 アカツキたちには悪いが、彼としても北辰との決着は是が非でもつけたかったので願ったり叶ったりだ。
 と、そこでコミュニケが入る。
『月臣、ブリーフィングを始めるわ。アキト君を連れてすぐに来て』
 声はウィーズのものだった。
 彼女はラピスからアキトが月臣に会いに来ていることを知らされているため、あわせて連絡をしてきたのだろう。
「わかった。すぐ行く」
 それだけ言うと、月臣はベッドから起き上がった。
 一歩。身体は痛みを忘れたかのように動き始める。
 一歩。筋肉の張りが戻り身体の厚みが増したかのような錯覚を受ける。
 一歩。優人部隊の真っ白な制服を羽織ることで『月臣元一朗』は完成する。
 戦い疲れた重病人から、百戦錬磨のヒーローへと姿を変える。
「任せたぞ、テンカワ」
「ああ。任せろ、月臣」
 手短に言うと、月臣はもうアキトを振り返りはしなかった。
 戦意あふれる切れ長の瞳が見据えるは勝利のみ。
 その背中を見ながら、アキトも不思議な高揚感に包まれていた。
 月臣から頼られることの意味をおぼろげながら理解する。
 気合に満ちた2人の戦士が、最後の戦場に向かおうとしていた。






「……来たか」
 ジャンプアウトしたアルストロメリアを確認すると、草壁は瞳を糸のように細めた。
 ネルガルの火星研究所の演習場。
 それは火星極冠遺跡から1,000kmほどの距離にある、オリンポス火山の北側のふもとに位置していた。
 裾野の直径が550km以上あるため、直線距離では遺跡から500kmと離れていない。
 テラフォーミング用ナノマシンにより調整された気候が心地よさそうだ。
 見渡す限り整地され鉄板のようなものを敷き詰められた大地の上に仁王立ちに構えるダイマジンのコックピットで、場違いにもそんなことを考える。
 ダイマジン。地球側ではゲキガンタイプと呼ばれるジンシリーズの上位機種であり、小型艦にも匹敵するスケールの36m級有人人型戦闘機だ。見上げるようなその威容ゆえに軍のシンボルとして、また戦艦並みの火力と時空歪曲場(ディストーションフィールド)を持ち、史上初の単独有人次元跳躍(ボソンジャンプ)が可能な兵器として、投入当初は散々に地球連合軍を苦しめた。ことにこのダイマジンは木連の英雄こと月臣元一朗の愛機として抜群の撃破数を誇ることから、この最終戦の選定機種としては無難なものに思えた。
『―――草壁』
 コミュニケが開いた。
 機動兵器用のパイロットスーツに身を包んだ北辰が映される。
 通信機器の類は全てホシノ・ルリの監視下に置かれているだろうが、今更だ。
 草壁は特に気にすることなく北辰の呼びかけに応える。
「どうした。ヤマサキの護衛にいくのではないのか?」
『我もそのつもりだったのだがな。復讐人に呼ばれたのよ。くかかか、わざわざ夜天光の電子制圧まで解除してな』
「……行くか」
『うむ。もとより我は貴様の敵を屠る人斬り包丁よ』
「北辰……すまん」
 こころなしか明るい北辰の顔を見ていたら、自然とそんな言葉が口をついた。
 北辰が驚いたように目を見開く。
『何故、泣く?』
 言われて気づく。
 そうか。自分は今、泣いているのか。
「お前の刀は暗殺をするためのものではなかった。それを俺のために無理をさせて手を汚させ続けた。今までずっと、だ」
『…………』
「俺は妻をこの手で殺したときから全ての覚悟を決めていた。お前が俺に罪悪感を抱いていると知りつつ、その心を利用して汚れ仕事を押し付けた」
 一拍。草壁は北辰を眩しいもののように見ながら続ける。
「北辰、テンカワ・アキトと真っ向勝負が出来て嬉しいのだろう? そんな顔を見たらな、不思議と泣けてきた」
『……ふん、我の木連式抜刀術はつまるところ人殺しの(わざ)よ。人殺しに良いも悪いもあるか。それよりも貴様のほうが心配だ』
 がりがりと頭をかきながら北辰。
『相手はあの(・・)ウィーズで、負けたらヤマサキの実験体になると言っているのだぞ』
「自分から言い出したからには、本当に身を捧げるつもりだろうな、あの娘は」
『……それが分かっているなら良い。最後の大一番だ。全て貴様に任せる』
「あまり、俺を信用しすぎるなよ」
 北辰の信頼が苦しい。
 気がつけば草壁はそう口走っていた。
 言われて北辰は草壁の顔を見やる。が、その心根は読めない。
 しかし……
『任せるさ、貴様に』
 かすかな笑みすら浮かべて北辰は言う。
 つられた、というわけでもないが草壁も微かに口元をほころばせる。
「じゃあな、北辰」
 草壁が真剣に、真摯(しんし)に言う。
『ああ。さらばだ、草壁』
 北辰が短く応える。
 それで通信は終わった。
 今生の別れとなりかねない会話も、それで終わりだ。
 言葉の終りと同時に改めてアルストロメリアを見据えると、後はもうそれしか見えなくなった。
 見据えるのは木連の敵のみ。
 言い訳も弁解も許されない世界で、草壁はこれまでと同じようにただ勝利を目指してその瞳に力を込めた。






 ネルガル火星演習場。
 それは蜥蜴戦争前のネルガルが広大な土地に潤沢な予算を掛けて作ったフィールドだった。
 広さは直径15kmの円に最新式の時空歪曲場(ディストーションフィールド)発生装置128機による半球状の舞台。
 見渡す限り平坦な鉄板状のもので舗装された地面に、仁王立ちにして向かい合う6mの巨人と36mの大巨人。
 距離およそ500mで睨み合うアルストロメリアとダイマジンは、まるで古代のコロッセオで戦う剣闘士を彷彿とさせた。
 あと数分で殺し合いが始まるというところで、ウィーズが草壁に通信を送った。
「お久しぶりですね、草壁さん」
『うむ。お前が地球へ交渉に行くとき以来だから、もう6年も前になるか』
 これから死力を尽くして戦うというのに拍子抜けするように気楽な挨拶。
 2人に面識があったことに月臣は少々驚いたが、口を挟まずに流していた。
『10万からの軍勢でぶつかりながら、まさか一騎打ちで勝敗を決めるとはな』
「悪くないと思いますけどね。いっちばん被害が出ない方法ですから」
『……そう考えれば見世物になるのも悪くは無いのか』
「そういうことです。ところで、もうすぐ始まっちゃいますけど機体はそれでいいんですか?」
 何気なく聞いてくるウィーズに苦笑いを浮かべる草壁。
 ネルガル側にアクア・クリムゾンがいる以上、<火星の後継者>側の手の大半は読まれているのか。
 草壁はむしろ笑って答える。
『案ずるな。もったいぶりはせん』
 草壁の言葉と同時にダイマジンの背後からさらに2機の機体が近づいてくる。
 ダイテツジンとダイデンジン。
 共にダイマジンと同じく36m級の機体であるが、2機はなんとそれぞれが上半身と下半身とに分離した。
 さらにダイマジンも加えて空中で隊列を組みはじめる。
「わ、わ、わ!」
「ぬぅ……これはっ」
 アルストロメリアの中でウィーズと月臣が興奮して叫ぶ。
 そう。これは現代戦において無意味と断ぜられた浪漫。
 『合体』である。
 3機はダイマジンをメインに両足と両肩にかけてパズルのように組み合わさっていく。
 何となくいま攻撃すればそれで終わりそうな気もしたが開始前であるし何より2人とも木連人である。
 それだけは己の血にかけて出来ない。
 最後に頭部コックピットが組み合わさると三面六臂、全長50m、重量1,600tの大巨人が誕生した。
『待たせたな。これが<火星の後継者>の決戦兵器「ダイアシュラ」だ!』
「ふぉぉおおおおっ! すごいすごいすごい! なんで今まで出さなかったの!?」
『うむ。それはだな……』
 答えようとした草壁の周りにアラートが表示される。
 ついで骨格が、駆動系がミリミリと悲鳴を上げた。
『いかん! 合体を重視した結果やはり結合部と機体強度に問題がっ』
「「あ、アホかぁぁぁぁぁあああああっ!!」」
 ウィーズと月臣の心からの叫びがシンクロした。
 機体の大きさというのは、何も伊達や酔狂だけで決まっているわけではない。
 骨格素材の耐久力、動力源のサイズと出力、整備しやすさ、与えられる作戦目的、そのために必要な機器のサイズとまたその生産効率……。
 それらの要素を考え合わせ、厳密な計算を行い、最も効果的に使えるよう設計した結果、サイズが決定されるのである。
 目の前のダイアシュラはそれらの理屈を全てうっちゃった、子供が気まぐれに書き綴ったような出鱈目なフォルムをしていた。
 この自壊は当然の結果だ。
 しかし、その崩壊はすぐに収まってしまった。
「……なん……だと?」
 信じられないように呻く月臣。
 それに応えるようにアルストロメリアの前に大型のコミュニケが発生した。
『その疑問にお答えしましょう♪』
 待ってましたとばかりに映し出されたのはヤマサキだ。
『宇宙空間ならともかく、地上ではこのダイアシュラは陸に揚げられた鯨よろしくその自重で潰れてしまう。そこでこの僕ヤマサキが一計を案じたというわけさ』
「……一計?」
『そう! 内容はいたってシンプル。3機の大型相転移エンジンをまとめて暴走させて、その有り余る出力を重力制御と次元歪曲場にまわしたって訳』
「暴走って!」
 ヤマサキはウィーズの言葉に肩をすくめる。
『お察しのとおり時間制限がある。というかそれが一番の泣き所だった。戦艦を遥かに凌駕する無敵の火力と防御力を持ち機動兵器並みの機動が出来ても、いいとこ数時間で自壊が始まっちゃう。高価な割に使いどころを間違えたら自滅するだけなんだから宝の持ち腐れだった』
 一拍。そこでヤマサキはニヤリと笑う。
『そんな時に君たちから提案された一騎打ちだ。堪らないね。自分たちから檻に飛び込んでくれるなんてさ。ぜひとも肉片になる前に降参してくれることを祈るよ』
 悪意の塊のような笑顔を最後に通信は切られた。
 そのあとを次ぐように草壁が言う。
『悪く思うな。私はこの最強の機体で戦いに応じる。是が非にも負けるわけにはいかんのだ』
「気に病むな、草壁。相応の準備ならこちらもしてある!」
 黙っていた月臣が口を開いた。
 その瞬間、アルストロメリアの周辺の地面が一気にせり上がり、見る間にビルの林が出来上がった。
 ついでそのビルの外壁がシャッターのように開かれると、中から多種多様な武器が現れた。
 ラピッドライフル、フィールドランサー、レールカノン、イミディエットナイフ、ミサイルランチャー……。
 ビルの林は瞬く間に武器の林にその姿を変える。
『これは……そうか! そういうことか、月臣ィ!!』
「そういうことだ、草壁ェ!!」
 草壁の理解が早いか、けたたましい警告音が鳴り響いて一騎打ちが開始される。
 アルストロメリアは両手にフィールドランサーを掴むと爆発的な加速で一気にダイアシュラとの距離を縮める。
 対するダイアシュラは3門の大口径重力波砲と左右14対の小型重力波砲、計31門の一斉発射で応戦する。
 点ではなく面の飽和攻撃。
 回避不可の攻撃をアルストロメリアは―――
「ジャンプ・ゼロ!」
 ウィーズのジャンプ・ゼロでかわして一気に懐に飛び込んだ。
「せいぃぃぃやぁぁああああっ!!」
 瞬きの間に月臣は左右のフィールドランサーで斬りまくる。
 その数が10を超えたところでランサーはその中ほどからへし折れた。
 草壁の反撃。
 肘と手首の位置につけられた多連装レーザーをアルストロメリアは寸での所で回避する。
 脚部キャタピラで全力バックをしながら新たに地面から突き出したラピッドライフルを取って撃ちまくった。
『考えたな、月臣!! このダイアシュラ相手にまともに攻撃しては武器がもたない! そこで―――!!』
 草壁の言葉を遮って月臣が言う。
「そうだ!! お前が無敵の機体で来るというなら! 俺たちは無限の武器でお前に挑む!!」
 撃ち尽くしたラピッドライフルを捨て吸着地雷の塊にスイッチする。
「たとえ一撃一撃が通じなくとも!」
 再び加速し接近しながら振りかぶるアルストロメリア。
「何千、何万という攻撃を受ければ相転移エンジンの負荷は倍増する!!」
 投げ放たれた吸着地雷は放物線を描かないレーザービームとなってダイアシュラの膝の部分で大爆発を起こす。
 だが爆風の向こうから全くの無傷のダイアシュラが反撃をしてきた。
『図に乗るな、月臣! そんな綱渡りが何時までも続くと思うなっ!!』
「黙れ、草壁! 俺たちは今! ここでお前を倒す!!」
 互いに一歩も退かぬ中、月臣に肩を抱かれるような体勢でコックピットに潜り込んでいるウィーズは小さなコミュニケが浮かび上がったことを横目で確認した。
 対ヤマサキ部隊であるマルコたちと対北辰部隊であるアキトたちがその行動を開始したのだ。
 ヤマサキが遺跡を掌握している以上、たとえ正攻法であったとしても草壁を撃破することは出来ない。してはいけない。
 だからウィーズたちはこの無敵の機体と対峙しつつ、マルコたちがヤマサキを倒すまで耐え切らなくてはならないのだ。
(命を懸けて馴れ合えってか。アクアもきっつい注文するわよね)
 なんとはなしに笑みが浮かび上がる。
(……これが終わったら、一杯おごってあげるわ!!)
 ダイアシュラの一斉射撃をまたもジャンプ・ゼロで回避する。
 たらりと零れた鼻血に自身の限界が近いことを自覚するが、知ったことかと拭いとる。
 アルストロメリアとダイアシュラ。
 両陣営最強の機体同士の対決は、まだ始まったばかりだ。














楽屋裏
 やっちまったぜ、合体ロボ!(ご挨拶)
 お久しぶりです、鴇でございます。
 今回は(も?)浪漫あふれる展開に傾倒してみました。
 浪漫あふれる一騎打ち。
 浪漫あふれる小人対巨人。
 浪漫あふれる三位一体。
 そして浪漫あふれる死亡フラグとパワーインフレ(マテ
 つい一話前まで生身とナナコさんだけで積尸気にインファイト挑んでたっていうのに……w
 一騎当千な主人公勢に代理人さんが「ねーよw」と何回突っ込んだか非常に気になるところだったりします(だからマテ

 閑話休題。
 前回のあとがきでも書きましたが私生活の関係上つづきをアップするのが非常に遅くなってしまいました。
 いちおう次回で最終回の予定ですよ?
 とりあえずラスト30kbをいじるだけでハッピーエンド、トゥルーエンド、バッドエンドのどれにも持っていけるんでオチをどうしようかなぁと悩んでいるところです。
 ダラダラと延びてしまってますが完結だけは絶対にします。
 これはもう書き手の意地というか義務ですんで、はい。
 ……とか何とか言いつつ再開した時ナデを小躍りしながら読んでは続き書くのをサボっていたり(オイ

 で、できるだけ早く書き上げようとしますのでよろしければまた見てください。
 それでは次の最終回で。ありがとうございました。


>代理人さん
 イメージとしてはアルストロメリアがGガンダムでダイアシュラがデビルガンダムin東方不敗って感じです。
 ですんで次回は「見えたぞ、水のひとしずく!」とかウィーズが叫んだり石破ラブラブ天驚拳を撃ったりするかもしれませんぜ?(オイ
 ……あれ、そうなると月臣がレイン?w








感想代理人プロフィール

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代理人の感想
・・・そーだよなーw
タイムラグゼロで瞬間転移できて、かつ技量自体は敵より圧倒的に高ければこーなるよなーw
本当、鬼神かなにかお前らw

そして、一騎打ちに月臣が出る辺りでまだ何かあるなとは思いましたが、やっぱりヤマサキ外道だよヤマサキ。
あらゆる意味で良い悪役だわこいつ(爆)。

>何となくいま攻撃すればそれで終わりそうな気もしたが開始前であるし何より2人とも木連人である。
>それだけは己の血にかけて出来ない。
なんという・・・何と言う浪漫!www
今ここに木連魂の粋を見た! 
ダイアシュラと言い・・本当に木連人は浪漫に生きているなぁw

> 一騎当千な主人公勢に代理人さんが「ねーよw」と何回突っ込んだか非常に気になるところだったりします(だからマテ
聞きたいかね? この感想を書くまでの時点では9万9882回だ(ぉ

>……あれ、そうなると月臣がレイン?w
燃えれば問題ない!(爆)


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