虚空の夷
---last cut---
連合警察本部ビル内にある調査部、統合本部長室を一つの警備用監視カメラが映し出している。
室内には大きく明るい色の木製机が置かれ、大きくも小さくもない棚が一角を占めている。
日差しの入ってこない大きな窓ガラス。
観葉植物の鉢がその棚の脇にあり、水やり用の小柄なじょうろも見受けられた。
コッ、コッ。
室内に響いたノック音によって集音マイクがオンになった。
返事を待たずに扉を開き、黒髪の女性が室内に足を踏み入れた。
両手で抱えるほどの、紙の書類を抱きかかえている。部屋を見渡した。
すると、部屋の中に目当ての人物がいない事に気付いた様で、気まずそうに扉の前で室内と廊下を見くらべている。
やはり、用があった人はいないようだ。
ナツノ・リツはだるそうに室内を進む。
カメラを一瞥すると、主無き机の上に、抱えていた書類をいかにもぞんざいそうに置いた。
そうして入り口へ戻り、カメラを気にしたのか中へ向かってお辞儀をすると、ノブに手を掛けた。
退室しようとしたその振り向きざま、彼女の唇に動きがあった。
カメラがその全てを捉える事は適わなかったが、マイクは空気の震えを聞いていた。
「ふぅ・・・」
---完---
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代理人の感想
むう。
あえてここで切ったのは余韻を残し、その後を想像させて楽しむため・・・ですか?
そうだったらいいんですが、
一瞬「プリズナーNo.6」のエンディング(流石にあそこまでは行きませんが)
を思い出してしまいました(苦笑)。
注:「プリズナーNo.6」・・・・・英BBCで放映された連続ドラマ。
ブラックユーモアと不条理をこれでもかというくらいに詰め込んだある意味伝説の一作。
ベクトルこそ全く逆ながらそのレベルはかの「モンティ・パイソン」にも匹敵する。