虚空の夷
地球、連合宇宙軍総司令部。
「総司令、どうしますか? お嬢さんの上申」
「聞かないでくれ秋山君。頭が痛い、胃が痛い、目が乾いてしょうがないのだよ・・・」
届いた秘密文書には隠密裏に跳躍機動艦隊の結成する旨が記されてあり、もしその事が不可能であればナデシコbが単独行動に移ることを了承するようにという内容が穏やかに続いている。
跳躍機動艦隊は、ナデシコcを中心としてナデシコb、コスモスの三艦による急襲によって目標の完全制圧を目的に考案された、縮小の進む宇宙軍の切り札であり主力となることを期待された単位である。が、あまりに周辺が五月蝿さいため内容を変更、「頻発する海賊行為への対処」と銘打ち、やっとこさ漕ぎ着けた。
今回の行動目的は「大事に発展すると思われる地下組織の調査とその打撃力の封じ込み」ということになっているが、厳しい監視の目が注がれているナデシコcを跳躍艦隊に参加させる事が不可能という事を踏んでの上申書だった。ユリカの狙いは情報収集と囮をナデシコcに任せ、自分達は行方をくらまし敵の奇襲や破壊工作を避け、拙速を以って相手を叩く事にある。ナデシコcには抑止兵力として目立っていてもらう。
ナデシコcの情報収集能力を危険視しているのと同様に、A級ジャンパーを活用した行動も制約の対象になっている。
ボソンジャンプを利用して活動する事はコウイチロウにとって禁じ手の一つであり、連合や統合軍からのうるさい非難と詮索への対処、連合警察内部の公安的かつCIA的組織、調査部との情報戦に打って出なければならない。そしてネルガル、クリムゾンへの配慮に不平分子への対策・・・・・・。
人手の少ない宇宙軍は万全の体制が敷けないので、ある程度の情報の漏洩は覚悟しなければならない。軍においての秘匿性の欠如は致命的なのだが。
「いいんじゃないですかね? ナデシコcに頑張ってもらえば。ネルガルからも催促がきていますし。第一こっちはこっちで統合軍内のキツネを見張るのに手一杯なんですからな。お急ぎのようですしねえ」
と湯飲みを傾け視線をコウイチロウへ流す。
「ムネタケさん・・・・、それはそうなんですけどね。ウチが下手に動いて悪い方向に進む事が心配で心配で」
「閣下。私もナデシコに極秘裏に動いてもらった方がいいと思います。閣下もただ手をこまねいているのが嫌でコスモスの改装を早めたのでしょう。相手に月臣が関わっているとしたらまた旧木連軍人の不祥事です。なんとしても止めねばなりません。そしてお嬢さんたちなら心配は要りません」
問題なしっ、といった口調でうなずく源八郎。うなだれるコウイチロウ。
結局この一時間後、<ジョウキョウヲミトメル>の命令が下った。10時間後、慣熟訓練もほどほどのナデシコb、コスモスの二艦が月から姿を消す。
そしてコウイチロウへの苦情の電話は鳴り止まなかった。
斬奸状
「係長どういう事ですか、我々にテンカワアキトを逮捕しろとは!」
調査部調査支援係の面々は貸し切ったおでん屋台に集まっていた。当然、カウンターに入りきれるはずも無く、路上にもその輪は広がっている。端から見れば随分と人気屋台に映るだろう。
そこに驚きの声が広がっていた。
「何度も言わない。テンカワを逮捕しろ。抵抗するようなら銃器の使用も許す」
係長は店主が占めるだろう位置にいて、厳しい表情を隠さずにいる。今朝になってアキトの逮捕が指示され、ブラックリストも元の位置に戻った。特記事項も名目も無し。おでんにタコは有れどイカは無し。
逮捕後にアキトが連合警察に手を貸していた事を証言されては元も子もない。抵抗するようなら、とは言い変えで、つまり「でっち上げるから口をふさげ」という命令だ。直接のつながりを持っていた支援係にその処理をバックアップさせる狙いなのだ。
「一体、どうして突然」
「上層部からの命令だ。<シナプス>にも下達、本気だ」
係長は細い垂れ目を更に鋭くしてある。もとよりこの男に冗漫さは無い。アキトは支援係を神経質と評したが、もとからのこの係りの性質にこの係長の性格が混じればそれも仕方なかった。
命令、という言葉を使ったが、裏切りにも似たこの任務についての理由を話す気はないらしい。
アキトが邪魔な存在になったのだとしたら、何か腹の痛くなることを掴まれたのだろうと考えるのが筋だ。それに彼を恨んでいる外延は強大なところが多い。何処からの圧力なのか。
「そんな・・・」
思わず驚きの声をあげたのはアキト担当の、リツだ。彼の言うとおり本気だった。
というのも、特別機動隊第三小隊シナプスは連合警察内で一、二を争う精鋭の襲撃チームであり、その性格を表すバロメーターになる活動内容を見れば、非常さでは確実に彼らが一番だった。また、その隊内には独自の諜報組織があり、独立して捜査できる行動力まで備えている。
彼らはその秘匿性と実力を買われ、これまでも非合法研究の捜査に参加している。よって、シナプスのメンバーも支援係と同様にアキトと面識を持っている。A級ジャンパー相手に付け狙っている事がばれれば星のように遠い存在となるから、それで、アキトとの密接な関係を利用しようと命令を下したのだろうが、当然に調査管理委員会は支援係とシナプスに監視の目を放っているだろう。
「係長、何とかなりませんか。彼は、仲間です」
ベテランの捜査員の「こりゃ、まいったな」というセリフの後に続けて、若い捜査員が尋ねた。
犯人でも味方でもなく、仲間だった。この、調査部支援係の捜査員が、口にすべきではない言葉だった。
他の捜査員達は係長の返答に注目する。
すると彼は面倒臭そうに口を開いた。
「・・・・ウチが先に捕らえれば、死なずには済む」
先に身柄を抑えればこちらで何とかしようということだ。
どうするかというと、アキトが上層部と取引できるように仕向けるのだろう。
「ナツノ、テンカワの所在は掴めたか」
「いえ、掴めていません。普段使っている通信が途絶えています」
「ウチの通信は、上の監視下にあると見ていい。全員、下手な事はしゃべるな。しかしあの野郎、感づいていれば連絡くらいよこす筈だ」
続けて先程のベテラン捜査員から質問が飛ぶ。
「協力してくれているネルガルは、どうします」
「もう関わりなど無いことに成っているだろ。ネルガルは考えなくていい」
ネルガルは非合法研究の捜査の一端を、対クリムゾンとしての活動として、すすんで担っている。アキトとネルガルは重大な関係があり、アキトはネルガルの行った、警察には決して見逃せないような活動内容を知っている。それがもしも表に出たならば、ネルガルにとって死活問題になるだろう。アキトとはもともとそれを踏まえての契約したのだが、警察がアキトを逮捕すると言う事はあまりに公的で、そのような<契約>があったことなど意味をなさなくなる。アキトへの積極的逮捕行動によって、連合警察とネルガルの有効な協力関係をわざわざ壊す手は無い。とは言っても、ネルガルにとって問題なのはアキトが逮捕される事であり、アキトがいづこかで死んでも得はしても損をする事はまず無い。
「月臣元一郎の動向、研究所襲撃の背後関係の捜査は本日をもって2課に引き渡された。我々はテンカワアキトを<逮捕>する。以上、解散」
同施設内。シナプスの諜報員達が服装を整えている。そのなかには思案に耽る隊長の姿もあった。
テンカワアキトの抹殺。
頭の痛い問題が降って湧いた。念願かなって果たすべき任務に制限が無くなり、犯人を逮捕可能(その内容は抹殺)になったとはいえ、この一年以上を共にし、一緒に死線を潜り抜けてきた相手を易々とこの牙にかけるような真似には、躊躇いがあった。
(何やったんだ、あいつ)
上層部にとって都合の悪いことを握ったのか、それともそれに近づいたか、或いは何かの謀り事なのか。それとも、テンカワには何か裏があるのか。
考えつく事は山ほどあったが、こうしてはいられない。動かなければならない。
取って付けたような理由として、機密の持ち出しなど契約に反した事が伝えられたが、全面的に肯定できるとはいえない。契約違反はアキトにとって不利益だ。
命令によって、隊内にも少なからぬ動揺が走ったようだが、皆はそれを表には出さない。いくらアキトに対して仲間の意識が存在しても、命令に対して絶対に服従するのが我々のやり方であり、この隊には求められていることはどんな命令にも従うことだ。そういう血統だ。
すでに殺る気だろう、この猟犬達は。
大学上がりの自分と、叩き上げの連中との違いかもしれなかった。
そう考えると、彼らが一瞬見せたぎこちなさは、頭である自分の動揺が伝わったからかもしれなかった。
とにかく方針としては、あいつは生かして法廷へ連れて行く。しかし、真相が管理委員会の言うとおりなら躊躇せず殺る。それ以外なら、殺らない。
おそらく第三小隊に命令を下したのは、奴と接触させるためだろう。こちらの行動に疑いがあれば、必ず伏兵がいる。
我々を監視できる集団と言えば、管理委員会直属の"DIG"くらいのものだろう。
任務は「テンカワアキトの抹殺」、殺すにはまずその居所を探さねばならない。そして、チャンスは一度。一回でしおおせなければならない。
(待ってやがれ)
そう、強く念じる。
ナデシコc艦長室。
連合警察の調査部から極秘と銘打たれた通信を受け、ルリ特製の回線を開いている。
昨晩は自ら不寝番について情報を集めていたので、今はパジャマ姿の上に艦長服を肩から引っ掛けている。
「こんにちは。ナデシコc艦長のホシノ・ルリです」
ウインドウに現われたのは年若い女性だった。パリッとスーツの肩が怒っている、表情は固い。
「はじめまして、連合警察調査部調査支援係所属、ナツノ・リツ捜査官です。突然の連絡、申し訳ありません。大変重要な事が起こりまして。実は、その事でお願いがあります。この回線は盗聴などの心配は無いでしょうか」
丁寧に謝辞を述べているが、「お願い」などという不明瞭な言葉に引っかかる。すんなり耳に入ってくる声に惑わされるところだった。
それにしても大人の女性というのは綺麗だと感じた。自分よりは十は上の年齢だろう。
「はい、問題ありません。それでご用件はなんでしょうか」
「はい、実は第一級指名手配犯であるテンカワアキトの手掛かりがつかめまして・・・・」
表情を変えず唐突に話す。
「本当ですか?」
きっと、驚いた顔が映っただろう。それに気付くと、感情の昂ぶりを抑えながらゆっくりと表情をもとへ戻していく。
実際はそれ程驚いた顔になったわけではなく、リツからすれば目の端が少し釣りあがったように見えただけのことだった。
「はい、通話記録です。お恥ずかしい事ですが、逆探知に失敗しました。もしよろしければ捜査にご協力いただきたいのですが」
「・・・・そう言われましても、任務以外のことを行う事はできません」
簡単に「お願い」を受けるわけにはいかない。何かこちらに得が無ければそうそう動いてはいけない。 しかし、AKITOの文字は十分に効果的ではあった。ほとんど気持ちを持っていかれてしまっていて、何の条件が無くても飛びつきたかった。
ここは断って後でこっそりいただいてしまおう、とか悪いことを考えてしまっていたが、手の届かない場所に置かれてしまっては意味が無い。
とにかく、ここは突っぱねる。
おそらく目の前の相手は自分の思考を捕らえているのだろう。正式に要請できない理由があり、仕事でもあるのだろうが、「汚い相手」そう考えた。
「・・・・現在、テンカワアキトを狙っている機関が活動を急にしています。彼の動きを捕らえる事ができましたらすぐ私に連絡をください。彼の身の安全を保障します」
狙っているとは命か、もしくはA級ジャンパーとしてかの事だろう。どちらにせよ放ってはおけない。しかもこの一年余りで一番確実な情報のようだ。そして、不正をして得る情報ではなく、相手に「お願い」されているのが渡りに船で、ユリカから送られてきた情報の操査を一旦置いといてでもやる価値がありそうだ。
「一体どこの機関なのですか?」
「申し上げられません」
具合が悪いらしい。「わからない」と答えないのだから切迫した状況なのだろう事は分かった。
「・・・そうですか。あなた方は何故彼を助けようとしているのですか? 捕らえられては都合の悪い人達がいるはずです」
不思議とネルガルの影は感じなかった。
「連合は彼と司法取引を行う事になっています。害は及びません」
「こちらのメリットは」
「彼の居所と、身の安全。そして確保。十分な筈ですが」
やはり、だった。見透かされている。
「・・・分かりました。やらせていただきます」
ウインドウが消え暗くなった室内で一人、小さくガッツポーズをした。
アキトの根城の近く、300mほど離れた倉庫。
今日は風が強く、冷える。アキトは倉庫の入り口に来ると小さなのぞき窓をノックし、ちょっと待つ。 襟の立ったコートに顔をうずめ、ポケットに両手を突っ込みつつ、待つ。入り口前は吹きさらしだった。
もう一度叩こうかと思い手をポケットから出しかけた時、この小窓が開き、暗やみの中から鋭い目がこちらを確認してくる。
と、ドアが開いた。アキトはあたりを確認した後、滑り込むように中へ入る。
「社長なら上です、テンカワさん」
「ああ」
アキトは自分の倉庫と同じ構造の内部を、外で待っていたときと同じ格好をして進む。
違う場所と言えば、一階の空間は手動が主な作業機械が配置され鉄と油の匂いがする事か。それと静寂が無い。
それと、柴犬がいる。にシロといった。騒音にもめげず、アキトへ情感溢れる声で話し掛ける、・・・・オスだが。
窓際には棚に大きなシンビジュウムの鉢が幾つか並んでいる。既に花のシーズンは終わり鋭角で大きな葉を伸ばしている。
ここで生産されているのは追尾ミサイル、対装甲ライフルやその弾。変わりどころでは、流行らなくなった対空砲の焼夷鉄鋼弾なども作られる。
いろいろな名称の書かれたボール紙がボックスに張られ、くすんだ火気注意の文字が横から睨みを利かせている。
作業している者達は、アキトを見ると敬礼や軽く手を挙げたりしてくるので、それにいちいち応えつつ階段を上がっていく。
彼らは作業機械をいじっていた。もしかしたら、何か新しい製品に対応させるために改造しているのかもしれなかった。
アキトの倉庫の場合は生活空間である事務室に入る。なかは仕様書や青写真、設計図で溢れかえっていて、そのわずかな隙間に男達が収まり設計を行っている。
予想していた通り、部屋の一番奥から嬉しそうな声をかけられた。
「どうした、もう弾切れか」
「いや・・・・」
アキトは「このあいだ弾倉込みで買ったばかりばかりだろ」とか「どうやったらあの量を消費できるのだろう?」とか考えつつ、用紙を踏まないように奥へ進む。
「じゃあ、ランニングか?」
頭を振った。
アキトはここに登録されている傭兵や従業員達の訓練に参加する事が多かった。訓練は厳しく充実していた。
「諜報屋が<紅蓮の穂先>に何の用だよ」
若社長が満面の笑みを湛えている。
彼が社長を務める<紅蓮の穂先>は、武器商人の一種だが売る相手を選ぶ。その一点で数ある武器商人と一線を画している。
人員の手配から弁当の確保まで行う総合商社だ。
先に述べた彼らが選ぶ商売相手とは、テロ組織や民族独立ゲリラ等を主としているわけではない。
純粋な戦士である顧客を、この上なく大切に扱う。
つまり、現在の商売相手のほとんどが傭兵とその関連である。
この世界では、前回の戦争を経たことで、軍の構成要素である歩兵や装甲歩兵(アーマード・トルーパー)は激減した。それゆえ偵察隊あがりの傭兵などは重宝がられている。
彼らの世界では有名なメーカーで、火のともったマッチ棒の刻印は人気がある。
始めは普通の工場(コウバ)が拳銃を作り輸出していたのだが、従業員達は職人であって、それであるがゆえに自然なこだわりを持っていた。
こだわりは、機能性を重視した。
その頃の生産品の多くは人間工学に適した形状と、苦心した機構による安価だがズバ抜けた信頼性で有名になり好評を博した。しかし、紛争を抱える国々にとっては忌まわしいものでしかなく、疎んじられた結果、多くの国から指名手配を受ける事になってしまった。それがかえって支持者達と彼等自身を煽る事になり、サービスを拡大させ世界中に支店を9つも持つ裏企業に発展している。最近、系列のモデルガン会社(合法です)は既に生産を終了した銃火器の復刻版に力を入れていたりもした。
初代は既に引退し、"南の島"で刀鍛冶をやっている。「ぶっさき斎」という銘に、まだ人気は無い(アキトは貰ったが使ってない)。
その二代目を襲った若社長は木連側の技術を手に入れるため、かなり強引に技術者達を招きいれていた。先程、律儀にも敬礼してきた男たちのことだ。
若社長は手広くなった仕事をせばめ始めており、同時に技術者を世に放つことで表舞台へ戻る足がかりを作ろうと必死だ。
ちなみに彼は、アキトのことをかなり気に入っている。ゆえに、もともとの笑い顔を更に崩してこの奇客を喜んだ。
「実は月臣元一郎とその仲間を探してる。心当たりは無いか」
「・・・・顧客の情報を流すと思うか」
「おもわない」
「なんだ・・・・、喧嘩でもしたのか」
「これから、するかもしれない」
「物騒だな」
驚いた、と言う感じに呟いた。
同時に室内の従業員全員がため息を漏らす。「どっちが?」と言いたいらしい。
「・・・・隠しても無駄だろうから話すが、装甲服から何やらかき集めてるって話だ。あとは知らん」
「・・・・そうか。そういえば、<蹲踞>から交渉は無かったか?」
「俺はあいつらが好かん。ウチの従業員達にも刷り込ませてある」
アキトは背後にひろがる沈黙を受け取った。
「敵にならなくて良かった。用はそれだけだ。帰る」
「死ぬなよな」
「ああ」
ヒュルッ・・・・、グワッ!!
爆音が響いた。突然の事に若社長は自分の工場か倉庫が爆発したのかと思った。
アキトはすぐ黒のカーテンの隙間から外を窺う。信じられない事にアキトの家がゴウゴウと焔をあげ、一部がひしゃげるように崩れていた。
微かな音に目を向けると1キロほど離れた海上に静止する、一機の武装ヘリが視界に入ってきた。
「オー、Mm−3のJ型だ。てことはALAQミサイルだな。もう喧嘩の始まりかあ?」
隣にはいつの間にかスコープで眺める若社長の顔があり、こちらを振り返った。
が、すぐ視線を戻し「あのシルエットがまた、こう、たぎるだろう?」と呟く。その表情のどこをどう見ても、すぐ隣が空襲に遭っているという危機感は存在しなかった。
とにかく、アキトは私物がもう戻ってはこない事を感じていた。そして居場所がばれた事が分かった
。まさか偶然撃ったミサイルが直撃する事はあり得ないだろう。月臣・・・・なのだろうか。
「・・・・俺の装甲服はまだあったか?」
アキトもヘリの方向を見続けている。
「ああ、ストックがあるんじゃないか」
ドン!!
倉庫が吹き飛んだ。
二人の顔を照らし尽くす。窓ガラスを熱風が襲い、びりびりと唸る。置いてあったエステバリスの火器に引火したらしかった。
おいっ、テンカワの装甲服を出してやれ、と怒鳴り声が響く。
アキトは、上着のポケットから輪ゴムで止めたカードの束を取り出す。
「弾と弾倉をいくらか買う。小太刀も売ってくれ」
「まいど〜」
「それと、このカードを清浄できるか?」
「ああ、その道の研究家がいる」
早速、現場の周囲にはぽつりぽつりと人だかりが出来始めた。
そこへ海中からフロッグマン部隊が現われ、その人だかりに対して警戒しつつ上陸する。
対してこの人だかりは、一連の行動を黙って見物していたが、フロッグマン達がアキトの倉庫に踏み入るなり、誰かの一声によってすばやく散開し、遭遇戦が始まった。あちこちでコンクリートが破ぜていく。
無言のつながりによってこの地域の秩序は保持されていた。
「あーあー、何処だと思ってんだ? ここに手を出したら骨も残らねぇぞ」
アキトの家の炎をバックに戦闘は早くも闖入者側の敗勢になっている。
地上支援に近づいたのが失敗だった。ここの従業員の放った対空ライフルと追尾ミサイルによってMm−3攻撃ヘリが空に散る。
実効性の証明には願っても無い相手だったようで、社長はご機嫌のようだ。
アキトは勝手に淹れ置きのコーヒーへ手を伸ばす。硝煙の匂いが次第に伝わってきていた。
何処から情報が漏れたのか考える。リツかここの連中か。当分の間は、姿を消しておいたほうがいいだろう。支援係は信頼できるだろうが、筒抜けなら会わないに越した事は無い。
(出費だ。 ・・・・弱ったな電話が)
「サンマ定食、火星丼おまちー」
コスモス、食堂。
大型艦であるコスモスの食堂は、現場制圧のための陸戦隊を乗せる事も考慮されているのでとにかく広い。
しかし、その広さを生かすべき陸戦隊が大いに不足しており、ここ2年ほどは乗せる事も適わない。
その厨房の近くで、幼なじみの二人が食事を取っている。
「ユリカ、上手く月を抜けたのはいいけど、これからどうするんだい」
心配げな表情のジュン。向かいにはユリカが座っている。
「とりあえず乗組員の練成かな。それと見つからないように」
がぶっ、とサンマに喰らいつくユリカ。それを見て、ジュンは「行儀が悪いな」と注意しようと思った。
その瞬間、ジュンはユリカの変化に気付いた。
何かをふっきった雰囲気。
(もしや、遂にテンカワのことを・・・?)
「春にサンマってあんまり合わないかな」
「全然! 十分似合ってるよ」
「? そうかな?」
(適齢期、適齢期・・・!) ←?
「ジュン君は機動兵器部隊の錬成に力を入れてね。ナデシコbは3機しか艦載してないけどその指導もお願いね。わたしも対抗部隊の指揮をやるから。大事なチャンスをモノにするために、気合入れていこう!」
(大事なチャンス!)
ガタッ、と席を立ち、箸を握った拳を振り上げる。
「ああ! ビシビシいくよ! 誰が相手だろうが手は抜かない!」
普段からは想像もできない熱血ぶりに、乗組員達の驚嘆の視線が集まる。優しく、紳士的な艦長のイメージが再構築され始めるきざはしになるだろう。あちこちで女性クルー達がひそひそと話をしはじめる。
「うんうん。その意気、ジュン君!」
ユリカは拍手で煽っている。
ナデシコb艦橋。息巻く二人の映像が映っている。
「意気投合していますね。艦長とアオイ大佐」
ナデシコb副長、タチバナの敵性信号がピンピン鳴っていた。
「くっ・・・・・!」
手を固く握り締める男が一人。
「・・・・副長、報告は」
索敵・状況解析担当の女性クルーの冷ややかな指摘を受ける。もう既に副長のユリカに対する暑苦しさに嫌気がさしている模様だ。
だいたい通信のためにウインドウを開いたと言うのに、ブリッジクルー全員で5分も黙って見つめていては監視・盗撮の手伝いをしたと言われても仕方が無い。
「はっ、そうだった」
われに帰る副長。コホン、と喉を整える。不動の姿勢をとる。
「ミスマル艦長、・・・ミスマル艦長! タチバナ大尉であります」
「はい、なんでしょうか?」
「ナデシコc艦長、ホシノ少佐より艦長あての電文を受信しました」
うって変わってクールな表情と声を使うタチバナ。ブリッジではため息が漏れる。
「はい、すぐ戻りまーす。迎えよろしく」
サンマ片手に敬礼をするユリカ。ウインクつき。
「ハッ。お任せください」
答礼を返す。
ジュンは一瞬不満な顔を作ってから敬礼した。
(ミスマル大佐は私が命を懸けてお守りする。幼なじみだからって甘くは見たりはせん)
タチバナはウインクのせいで眩み始めた瞳を隠そうともせずに、艦前方を睨み続ける。
「大ばか・・・・」
先ほど注意した女性クルーが、回していたボールペンを落としたはずみに呟いた。
ラピスさん、と呼び止める声に振り向く。
そこにはホシノ艦長がいた。敬礼するとルリも答礼を返す。
いつもの思慮深い表情とはうって変わって、喜色が現われているのが怪しい。
(路線変更だろうか)
「休み時間ですか?」
「はい」
「実は・・・・。貴方にお詫びしなければならない事があります」
「え」
あまりにすまなそうな表情をしているため、あっけに取られ反応できない。ルリは構わずに続ける。
「乗艦されてからは、疑うような真似ばかりしてしまってすいませんでした。あなたには無用なプレッシャーを懸けてしまっていたでしょう。私もアキトさんを探すために必死だったのです。許していただけますか」
ラピスは随分とオーバーだなと感じた。突如として自分への対応が変わればどうしてもいぶかしんでしまう。ただでさえ目の前の相手は知略家なのだから。
「いえ、私の方もお力になれず申し訳ありません」
「いいんです。これからは隔てなくお付き合いできると思います。いってみれば私はあなたの・・・姉、の様なものでもあるので、気に掛かる事が有れば何でもいってください。私も勝手ながら姉のようにありたい、と考えていますから」
大げさだ。
と、どうしても感じてしまうが、そう感じる事がいやらしい事のように感じてならないので自分の思考を解きほぐしていく。それでも疑いの可能性は捨てないのは戦理として当然だった。気に掛かる事が一つ増えた。
「はい、艦長」
距離をひくため意識して艦長と呼んでみた。先の見えない展開に手の出しようが無い。
「そのうちハーリー君も紹介します。それとオモイカネも。あ、オモイカネと話したことはありましたか?」
「はい、ナデシコbからcへ移植する際に運用データの受け渡しをしました。記録には残っていないと思いますが」
「そうでしたか。どうですか? 今夜あたり艦橋へ来てオハナシ、しませんか?」
刹那、胃のあたりが苦しく感じた。
接触は忌避の対象だった。
「申し訳ありませんが、私は強化タイプのIFSは・・・、好きではありません」
「そう・・・、ですか」
ルリの顔を見る。
「申し訳ありません」
「いえ、あなたの謝ることではありませんから。私も気にはしていません。そういう選択もあるでしょうから」
ラピスはルリが自分の意を汲んでくれたと感じた。
「それでは、失礼します」
そして、きっとこのまま別れることをルリは悩むだろうから、自分から辞去を述べ敬礼する。
こういうときは便利なものだった。ほぼ必ず答礼が返ってくる。
自分が卑怯者のような気がしてならない。
アキト達の手伝いもできず関わる事をも拒絶され、ただ守られ隠し続ける自分。こんな自分が将来、軍や警察や・・・、何かに就いたとして皆とやっていけるだろうか。ついて行けるだろうか。そして、ついて来てはくれるのだろうか。
強化体質者であることは変えられない。では、素質を解放する?
しかし・・・・、と思うのだ。強化体質者である自分は自分で作り上げた自分ではないように思えるのだ。あの、あこがれる人達の腕や、背中や、首や脚とは違うもののように感じるのだ。積み上げた筈の知識さえ違いを感じていたのだ。そして、彼の瞳とは絶対的に違うように想えるのだ。
そして、解いたが最後。自分は現代の脅威の産物の一つとなるだろう。
だから、開放した上で自分が想うように自分を高める事は難しい。事後の自由は、どこまで自分の意思を許容するのだろうか。
つねに違和感が死角をうろつき、馴染むことのできないこの力には、どうしたら適う事ができるのだろうか?
言葉が欲しい。
廊下を進む背中に後ろめたさが追ってきた。
なんとなく、アキトの写真を思い描いていた。
注意を続けながら明るい灰色とさび色の街を進む。
ひとりの工作員が、未だ侵入した事の無い地域に入っていた。
ほとんどゴーストタウンと化しているのに、人の気配へ絶えず在る。
冷たく忍び寄ってくる視線。
支援係(ルリ提供)から届いた情報をもとに、指し示す区画を目指す。
途中、空薬莢が少し散らばっていたのが目に付いた。
そして、目標とされる場所に在ったのは、くすぶり続ける建物と、焼けただれたエステバリスらしき物体だった。
「何ですって!? もう襲撃された後? ええ・・・・、」
車中、リツのパートナーが隣を窺っている。
昨日、リツに怒鳴られてからというもの自身に芽生え始めていた職務への慣れや自信は微塵となって消えていた。
そしてリツは、今日は今日で・・・・猛然と怒っていた。この世界の現実を渡ってきた先輩達の焦燥感は、自分と比較して角度に違いがあると感じていたが、それにしても彼女は、異常に苛立ちをあらわにしている。テンカワアキトの担当である事がその起因として考えられるのだが、この先輩の複雑な状況の上にある心境を、此の程はじめて明確に感じられた気がした。恋心、と言って間違いないのだろう。 彼女は電話を切るとすぐ別のところへ繋げた。
「係長、ナツノです。・・・・はい。ではまだ命令は生きているのですね。わかりました。・・・・了解」
リツがマイクを切ると静けさが積もってきた。
ふと、リツの口元が妖しくゆがんだ。
たまに、意識的なのかそうでないのかは分からないがこんな表情をするのを彼は知っている。
地が美人のため、もう目もあてられないほどに綺麗なのだが、今日は怖かった。
自分の彼女にその表情を一度話したが理解はしてもらえず、嫌がらせ程度の罪滅ぼしをさせられた。この感触は男性特有のものかもしれなかった。
よく透る声が聞こえてきた。
「上手く行方をくらましていればいいんだけど。連絡が無いのは、私達さえ疑っている為かもしれないけれど、まだ私に接触してくる可能性もある。あなたはこれから一人で帰って。いい?」
自分一人となることで相手の警戒心を解こうという作戦なのだろう。自分も行方不明になってしまうということか。
しかし、「いい?」とはまるで子ども扱いだ。昨日のことはそれほど印象に響いているのだろうか。
「はい」
返事をし、リツが降りると自分は車を走らせた。
ルリ、呆然。
午後になってから入った例の彼女からのメッセージは<アシドリトダエル>の一言と、現場のものらしい写真とその報告書の写しだった。
信憑性を疑い何度か通信を入れたのだが、まったくもってあの美人とは連絡が取れなかった。ウインドウの端に小さく彼女のIDを示すがそれに偽りはない。その確証のために乗ったはずの話が、頓挫した。
実は、アキトに居場所がわかってすぐに、あくまで危険を知らせようと考えてアキトに連絡を試みたのだったがつながるはずもない。
で、呆然。
写真にあったエステバリスシリーズは旧式のものである事が確認されたが、存在しない機体番号だという。
先に何とかという機関に、先を越されたという事だろうか。
いや、もしかしたら警察自身アキトを取り逃がし、しかも証拠隠滅までを図られたということかもしれなかった。そうなると彼らがアキトの味方なのかどうかも疑わしい。いや、本当にアキトは逃れたのだろうか? 本当に無事なのだろうか。
連合警察とその調査部のシステムは分が厚い。侵入したいのはやまやまだし、仮に本気を出せば破って破れない事は無いのだが、その場合、大ごとになってしまう可能性が大きい。あくまでも気付かれないように盗入らなければならないし、経路がばれるのは避けなければならない。しかし、要所要所にある関所が邪魔だった。
今回の密約はユリカに伝えてはいないのだが、結果としてその方がよかったかもしれない。その成果が期待に反していたとしても。
こんな事もあろうかと、とりあえずの<保険>は組んであった。
それにしても・・・・、と考える。
(見も知らない人と組むのはよそう)
そう固く誓った。「艦長どうしたんですかね」
「さあ、ここんとこ浮き沈みが激しいな」
ハーリーとサブロウタは艦長席の一段下で収集したクーデターの残党に関する情報を検分していた。
どうもピリピリしている様で声を掛けづらい。そのため念の入った小声で話す。
「そうなんですか? ・・・・僕、気付かなかった」
「・・・・。」
「サブロウタさん・・・・、僕がいなくなったら艦長の事よろしくお願いしますね」
涙目で懇願するハーリー。
「それと、どうか映像を送ってくださいっ」
(おまえなあ・・・。)
このどっと疲れさせられる感情は、一体なんなのだろうか。心配やら、呆れやら、場を把握しきれていない子供らしい甘さへの感覚やら、とにかくいろいろな事が入り混じっている。
肩にきた疲れから逃れるように腰をあげる。立ち上がると、もうどうでもいいことのように、スッと、消えていった。
(まあいいか、いいところでもあるんだからな)
「じゃ、俺はシュミレーターに行ってくるから後よろしく」
サブロウタは席を立つと足早に出口の方へ向かう。
「あー、またちょっかい出しに行くんですか? いいかげん、リョウコさんに云い付けますよ」
ハーリーは後ろを振り返って要らない事をいった。
「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇ。講義だ講義! このヒマジ〜ン(レロレロ〜ン)」
「何っ・・・て顔を・・・!」
サブロウタが出て行き、ひとしきり悪態をついた後、ハーリーは艦長席のほうを横目に見た。
何があったのかは知らないがウインドウボールを展開し必死に処理をしている妖精がいる。「テンカワさん関係」である事は予想がついたが、ボソンジャンパーのいどころを知ったとしても、捕まえる事は可能なのだろうか。そして容易に戻って来てくれるものなのだろうか。
だいいち、指名手配犯でもあるのだから警察に引き渡さねばならない。もしかしたら、時効まで匿うつもりなのだろうか? ウチの艦長達ならやりかねない、が重大な犯罪である。自分としてはそれだけは避けたい。
彼女達の行動力を前にしたおかげで無力感に襲われつつも、何か手助けができないかと考えた。が、さして妙案は浮かばない。
とりあえず、相手勢力の情報収集が第一だろう。それに専念しよう。
よし、と気合を入れなおしIFSを駆った。
「というわけで見失いました。現在全力で捜索中・・・・、と。弱りましたな〜」
チョビひげにメガネの会計士、プロスペクターが会長の前で説明をしている。会長であるアカツキは楽観しているようで、きざな笑いを浮かべている。
「ま、仕方ないさ。月臣君達もがんばるね、かつての同志に発砲するとは」
「同志というよりは同僚のようでしたが」
「ははっ、そうだったね。その同僚に手加減はしてくれないか」
ネルガルのシークレットサービスは偶然にも相手勢力の一端と接触したのだが、逃げられた。
その原因は顔バレ、という超初歩的なものだった。ミスを犯した理由は、ネルガルの諜報員が午後から休みを取り、久々に空港で家族と再会した状況でかつての同僚とトイレで遭遇、ついでに幼い息子も一緒だったため慌てふためいてしまったからだ。
「それともう一つ、悪い報告がありまして」
うつむいてページをめくると、照明がめがねに反射して視線が見えなくなる。
「いやいや、ルリさんに頼まれていたことなんですが、接触できないので現地へ行くと、先を越された後でして」
「・・・・?」
「急襲されたようで、もぬけのカラでして。どこへ行かれたのかは、こちらも掴めておりません。全力を挙げて捜査と行きたい所ですが手が足りず、あまり期待に答えられそうにありませんな」
「・・・・いつからシークレットサービスは役立たずになったんだい? ・・・・まあ、彼のことだ、上手くはやってるだろうけど」
(会った時に連絡先、聞いておけば良かった)
「襲ったのはどうやらクリムゾンが雇った私兵のようですな。その後、彼らの足どりは不明・・・・と」
「フーン、クリムゾンねえ」
と呟くとアカツキは椅子をくるっと回して、立ち上がる。アキトは、去り際に「クリムゾンと話してみる」とか言っていた。
それでこの展開。
(まさか、お嬢さまに逆襲喰らったのかな)
あり得るな、と考えつつ視線を横へ向けたまま続ける。
「まあいいや。戦争は大いに結構、軍の警戒態勢も結構。せっかくの商機に簡単にケリをつけてもらっちゃ困るからね。ナデシコc、釘さしておいて」
「いやいや、怖いですな」
「連合へ嫌がらせ程度にね。ウチは、直接は介入しない。ただ商売をする。結構な事だろ?」
「まあ、そうでしょうがね」
「ただ、いただけないのは月臣君とテンカワ君が逮捕されちゃう事だ。もし・・・・」
もし、連合警察内のクリムゾンサイドにどちらかが渡れば、ちょっと大変な事になる。
月臣元一郎に引き続き、テンカワアキトに関する方針の見直しを始めた事が伝えられた。警察の捜査に協力しているアキトと関係を持つネルガルにとっては、その見直しが随分と急だったので対応を決めかねている。その方針はネルガルの事情に配慮した内容ではあるが、アキトの抹殺に頷けるほど得な取引ではなかった。「配慮した内容」であっても覆されるのが目に見えている。連合警察に知り合いは少ない。
プロスペクターが不機嫌なのはこのせいだ。好いように使われてこの仕打ち、腹も立つだろう。
クリムゾンの先手を打って協力したのに、逆に裏をかかれたのだ。暗示的警告。
「こちらの秘密を明らかにすれば、そちらの不正も明らかにする。契約の証としてアキトを差し出せ」
・・・・良いことはできないようだ。下手に相手の弱みを掴むのは自身を狭量にする。ブランドイメージ合戦は引き分けに終わるかもしれない。
そもそも「相手は警察」と甘く見たのが失敗だった。警察のくせにクリムゾンとつながっている大きな勢力があるのだろう。理事国の政治家へ献金すればそれもたやすい。まあ、それは常道だろう。
わが国の利益のためにもご協力ください、か? まあ、それも実際そうなんだろうが。
大体、とばっちりが何故自分に来るのだろう。
(今年は、増収に転じただろう? そりゃあ、前年もその前々年も低迷したけどさ。君だって、しょうがないって言ったじゃないか)
善からぬ想像をした。もしプロスペクターが敵にまわったら・・・・、手の付けようが無いだろう。いや、付けるべき手を失うだろう。
「やってくれるよね、連警も」
「これ以上、会長のスキャンダルは困りものですからな」
「ええっ! 僕のスキャンダルになるのかい?」
アカツキの「まいったな笑い」。それを見ても、気心の知り合っているプロスは容赦しない。
「シークレットサービス絡みと、テンカワさん絡みはいたしかたないでしょう?」
「・・・・バックアップは、してくれよ」
「全力を挙げまして完遂いたします」
アカツキは窓際へ進む。
手を触れると冷たい感触が伝わってきた。目を開けば、瞳が空に透けていた。
「・・・・なら、仕掛けよう」
--------------あとがきません---------------
☆書くことになりました。01年の九月のケツに修正。
話の内容に変更は無し。文章の書き直しは結構あり。
You're so far away and so long ago
管理人の感想
hyu−nさんからの投稿です!!
おお、今回は更新が早いですね〜
しかし、アキトは窮地に立たされていますね。
ルリもユリカも手助けが出来ない状況・・・
さて、アキトはどうやってこの危機を脱するのでしょうか?
では、hyu-nさん!! 投稿有難うございました!!
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