大好きなあなたへ





第3話 すべてを知り、そして・・・


とりあえず、家に帰ってきたテンカワ一家。

身体についている血を洗い落とすために、ひとまずそれぞれシャワーを浴びる。

そして、自室へと行き、服を着替えた。

その間、だれも一言も話そうとはしない。

しゃべってはならぬ雰囲気でも漂っているのだろうか。



それぞれ用が終わり、リビングへと集まった。

だが、そこでも沈黙が支配していた。

いつもの活気をすべて取り消すように。





「そろそろ話してもらえないか?」

ハルトの一言が沈黙を破る。


アキトはハルトをまっすぐ見据えてこう言った。

「話すことは話すよ・・・・・・

だけど、話す前に一つ訊いておきたいことがある。」


「なんなんだそれは?」


「たぶん、この話は2人にとってつらい話になると思うんだ。

俺としては聞かせたくはないと思っている・・・・・・・。」


アキトは視線を下へと落とした。

当然のことだろう。

自分は復讐のために大量殺人を平気で犯していました、

なんてことを堂々と親の前で言えるわけはないのだから。



顔をあげ、アキトはまた2人を見据えた。


「でも、2人が知りたいと言うのなら止めはしない。

ただ、知る覚悟があるかどうかを訊いておきたいんだ。」


しばしの沈黙が訪れる。




「私は知りたい。知る覚悟があるのかどうか分からないけど・・・・・・。」

ナツミはアキトの瞳をまっすぐに見つめた。


「俺も知りたい。」

ただそれだけだったが、アキトを見据えるハルトの瞳には固い決意が表れていた。




アキトは2人の瞳を見つめ返し、ゆっくりとうなづいた。

そして、話し始めた。すべてを・・・・・。



戦争の始まりと終結


ナデシコでの出来事


木星の人たちの存在


火星にある遺跡とボソンジャンプ


幸せだったラーメンの屋台をひいてたころ


自分たちを誘拐しすべてをうばった火星の後継者


復讐に身を任せた自分




アキトはつつみ欠かさず、何もかも両親に話した。







「う、うう・・・・・・」

ナツミは泣いていた。

自分の息子にかかった不幸の重さに

未来がこんなにも悲しいものなのかということに



ハルトは涙をこらえていた。

それでも顔は怒りとも悲しみともいえないような複雑な表情をしていた。


「これが、俺が話すことのできるすべての事実だよ。」

アキトの表情も暗くどよんでいる。



「アキト・・・・・・」



ぎゅっ



「父さん?」

ハルトはアキトを抱きしめた。


「は、はなしてくれ。

俺にはもうこんなことをしてもらえる資格すらない・・・・・・」

そう言って、ハルトの腕の中から逃れようとするアキト。


だが、ハルトはアキトをはなそうとはしない

それどころか、抱きしめる力を強めた。


「アキト、確かにお前の犯した罪は許されざることかもしれない。

でも、お前はもう十分に苦しんだはずだ。

ここでお前が甘えても別にいいんじゃないのか?

だれだって、親に甘えるのに資格なんてものはいらないんだぞ。」

アキトに言い聞かすように、そっとささやいた。



「父さん・・・・・・う、うわぁぁぁぁ。」


アキトは泣いた。

今まで張り詰めていた何かが切れたように。


不安だったのだ。

復讐のためにたくさんの人々を殺した自分を、避けてしまうのではないかと。

だが、違った。逆に温かな胸でしっかりと受け止めてくれた。

そのことがアキトにとって何よりもうれしく感じた。





今思えば、アキトは甘えられる誰かにいてほしかったんだろう

アキトは泣きつづけた。








「ん・・・・・父さん、もう大丈夫だから・・・」

弱弱しいながらもアキトは微笑んだ。


そして父の腕から離れ、母の元へと向かった。




ナツミはまだ泣いていた。

涙が次から次へと溢れ出して、とまらないのだ。

「母さん、そんなに泣かないでくれ。もう、俺は平気だから。」


「ア・・アキト・・」

息子の言葉に反応するナツミ。



「そうだぞ。もう泣くなよ。いい年してそんなに泣いてたら、しわが増えるぞ。」

ハルトがいたずらっぽく言う。


「ハ、ハルトさん・・・。そうね、もう泣くのはやめるわ。」

手で涙をぬぐい、ナツミはそう言った。


「でも・・・・・」

「「でも?」」


ハルトとアキトが復唱する。





「いい年してはよけいよ〜〜〜!!!」

「ごふっ!?」



ナツミの右ストレートが決まった。



「あ、いたた。そんだけ、元気があればいいな。」

どうやら、ハルトのさっきの発言はナツミを元気付けるためのようであった。


「もう、ハルトさんたら。」



「ハハハハハハ。」

ハルトが笑い出した。

「フフフフ。」「アハハハハハハ。」

ナツミもアキトもつられて笑った。

リビングに再び明るい雰囲気が戻った。











「さて、これからどうするかな?」


お気楽な調子でハルトが言った。


「もう、研究所にはいけないわね。」

なにせ自分たちを殺そうとした奴らのところなんだから、そりゃ、そうである。



「となると、俺たちやることがないなぁ・・。」

「その点は大丈夫。父さんと母さんには別にやってもらいたいことがあるし。」




「父さん、母さんちょっと耳かして。」



ごにょごにょ



「ほうほう。」「ふむふむ。」


「と、こういうわけなんだけど。やってくれるかな?」

首をちょっと傾け、かわいらしくおねだりする子供みたいにするアキト。

これがまた、非常に愛らしかったりする。


「俺が息子の頼みを断るわけないだろ?」

「私だって、そうよ。かわいい息子の頼みですもの、喜んでやらせてもらうわ!」

2人とも当然のことのように答えた。


「ありがとう!父さん、母さん。」ニッコリ

アキトスマイルが炸裂した。



―アキト、あなたのためならなんでもするわ!―

―やっぱり、この笑顔はかわいすぎるぞ!―

2人はともに、こころのなかで叫んだ。





「でも、まてよ。アキト、資金や場所はどうするんだ?」

正気にもどったハルトがアキトに訊く。



「え〜っと、そのことについては、大丈夫。俺が何とかするから。

2人とも安心していいよ。」


アキトはまた微笑んだ。

ただし、今度はいたずらっ子のような顔で。


















あとがき

やっぱり、ほのぼのとしてるほうがいい!!

シリアスなんて嫌いなんだ〜〜〜!!!

って言うか、書くの苦手なだけなんですけどね。


さて、全部両親に話したアキトですが、なんかたくらんでおります。

一体なにをやらかそうとしているのかは、まぁ今後の楽しみということで。

では、また次回お会いしましょう!

 

 

 

代理人の感想

ほのぼのも好きですがシリアスも好きな代理人です(笑)。

しかし話の展開上シリアスはせざるをえないでしょう……

つーか、シリアスやらないならこのアキトの設定の意味はどこにあるのかという話に(爆)。