「アキト、あなたには言っておきたいことがあるのよ」
母として真剣な顔つきとなっているナツミ。
「なに?」
アキトの返事もいつになく真剣となっている。
「それは・・・・・・・・・・・・・」
大好きなあなたへ
第5話 運命の再会?
―なんで、どうして・・・・・・・・・・―
アキトの頭の中には先ほどからずーっとこの言葉が流れていた。
今、アキトの目の前には無数の好奇の目が輝いている。
みんなアキトに興味津々のご様子。
「今日から、この学校に転校してきたテンカワアキトくんだ。みんな仲良くするように」
「テンカワアキトです。よろしくお願いします」ペコリ
「か〜わいい!!」
先生に紹介され、愛らしくお辞儀をするアキト。早くも女子高生のハートをゲットしたようだ。
そう、今アキトがいるのは学校の教室。
ではここで、時をすこしもどってみましょうか。
話は昨日の夕飯のときに戻ります。
「アキト、あなた学校に行きなさい」
「へ??」
突然のことに驚きを隠せないアキト。まさか、学校にいけなんていうとは思わなかったらしい。
「え?なんで?」
「なんでって、そりゃあ子供だからでしょ」
いかにも当然といって口調で言う。
「でも、中身はれっきとした大人だよ」
「さっきまで、ほっぺにこめつけてオムライス食べてた人がなに言ってんだか・・・・・・」
「う・・・・・・・・・・・」
痛いところをつかれる。
「でも、ほら、習うことなんてないんだから意味ないよ。ね。
だから行かなくてもいいと思うんだ・・・け・・・・ど」
語尾がだんだん自信がなくなっていく。
というのも、ナツミが言ったわね、という感じでにや〜っと笑ってるからだ。
「習うことならあるわよ。だって、あなたが行くのは高校だもの」
「「はぁ?」」
これにはハルトも一緒に驚く。どうやら小学校だと思っていたらしい。
「おい、ナツミ、アキトが通うのは小学校じゃなかったのか?」
「何言ってるのよ、アキトだったら十分高校で通用するわよ。
それなのに、小学校通わすのはかわいそうじゃない」
唖然とした表情でナツミを見つめる2人。
「アキト、あなた言ってたじゃない。せっかく過去にもどってきたんだからやり直したいって」
「言ったけど?」
「確か過去では高校中退してたわよねぇ。
やり直すんだったら、こういうところからやり直したほうがいいじゃない」
確かに自分は言った、やり直す、と。
だが、こんなところまでやり直そうだなんて考えてなかった。
というより、思いつきもしなかった。
これには言い返せないアキト。
一方ナツミはしてやったりの表情でいる。
「・・・・・・・・・・・・・・わかった。いきます」
「え?なんて?きこえな〜い」
わざととぼけてみせる。はっきりと、アキトに言わせたいのだ。
「行きます」
少し大きな声で聞こえるように言う。
「どこに?」
明らかに楽しそうなナツミ。
「だから、高校に通うって言ってんじゃんか」
最後の方は叫ぶような勢いで言った。
母の顔がいたずらに成功した子供のような笑顔を作る。
「よかったわぁ、物分かりのいい息子で」
見事に言いくるめられたアキト。
横にいる父を見るとウンウンと頷いている、それは同情なのか、楽しんでるのか。
顔が笑ってる、これは楽しんでる。アキトは確信した。
アキトは地よりも深いため息を一つついた。
そんなこんなで現在にいたる。
「ねぇ、アキトくん。好きな食べ物な〜に?」
女子高生の一人が聞いてくる。
「え、え〜っと、ラーメン」
戸惑いつつ答えるアキト。
「「「いや〜ん、かわい〜い!」」」
先ほどからアキトの一言一句にかわいいがつくのだ。
さて、今のアキトくんの状況をご説明しよう。
まず、先ほど紹介されたアキトくんは、自分の席についた。
朝のショートホームルームがおわり、今は質問攻めに遭っている。
前に女子、後ろに女子、両脇に女子、それから、直接アキトに近づけない子(女子)も遠巻きに囲んでいる。
それによりアキトは今、両手に花どころか、花だらけである、
まぁ、そのせいで、一部男子生徒からは早くも敵と認識されていたりする。
見た目小学生に嫉妬するのもどうかと思うのだが・・・・・・・・・
それはおいといて、とにかくアキトくんはあらゆる意味で注目の的なのである。
「いま好きな子とかいる?」
前にいた女子高生が顔を近づける。
あたりが急に静かになった。どうやらこの女子高生どもは答えがかなり気になるらしい。
「あ・・・・・・え・・・・その・・・・」
下にふむく。だんだんと頬も朱にそまり、今は熟れたトマトのように真っ赤になっている。
よほど恥かしいのだろう。
「あ、照れてる〜。か〜わい〜!」
ますます、アキトの頬が赤くなる。今度は今にも噴火しそうなぐらいに真っ赤だ。
「ちょっとあんた達、いいかげんにしなさいよ」
テンカワサークルに入ってなかった女子が外から声をかける。
「テンカワくんこまってるじゃないの」
見れば腰に手を当て、いかにも私怒ってますといった子がいた。
クラス委員の南野ナギサである。
長い薄茶色の毛をポニーテールにまとめてあり、顔は日に焼け小麦色の肌をしている。
「何よ、ナギサ。あんたも輪に入りたかったんじゃないの?」
アキトの前の席にいる女子高生、有本ミユがにやっと笑い言った。
2人は幼馴染であり、仲はかなり良かったりする。
「ち、ちがうわよ」
顔を少し赤く染めるナギサ。
「ふ〜〜〜ん」
ニヤニヤと笑うミユ。
「そんなことはどうでもいいのよ。
そろそろ1時間目始まるわよ。確か、移動教室じゃなかったかしら・・・・」
いっせいに顔が青くなる皆さん。
バッ
クラスの男子がひとりもいない。
皆一時間目の化学教室に言ったのだ。
「男子のやつらめぇ〜〜〜、後で覚えてなさいよ」
そういいつつ、すぐさま化学教室へと向かう女子一同。
一方残されたのは、アキトとナギサの2人だけ。
アキトの場合はみんなの行動の早さについていけず、少しボーっとしていた。
「さ、テンカワ君。あたしたちも行こう」
「へ?あ、うん」
ナギサに差し出された手を照れつつも取りながら、アキトは答えた。
「あ、あのぉ。さっきはありがと」
「ん?なんのこと?」
小走りしながら化学教室に行く途中である。
「あの、女の子に囲まれてたところ・・・・・・・助けてくれたじゃん」
「ああ、そんなこと。な〜に、クラス委員として当然のことをしたまでよ」
胸を張りながら、豪快に笑った。
「あたし、南野ナギサ。よろしく」
「あ、よろしく。みなみ「ナギサでいいわよ」・・・・・・・・・・」
ナギサの声がかぶった。
「じゃあ、俺のこともアキトでいいよ。ナギサちゃん」
「な・・・・・・・・」
顔を真っ赤にしているナギサ。ちゃん付けにされたのが恥かしかったのだろう。
目の前のアキトはそんなこととは露知らず、あいも変わらず笑顔を振り撒いている。
「ここよ。化学教室は・・・・・・・・・」
ついに化学教室についた。
「あ、うん。・・・ん?どうしたの?」
横にいるナギサがなにやら、大きく深呼吸していた。
顔はなんとも言えず、困ったものになっている。
「いやぁ・・・・・・・。驚かないでね・・・」
それだけを言い。化学教室のドアを開けた。
さっぱり何のことか分からなかった。
ガラガラ
「すみません。おくれました・・・・・・・・・・!?」
顔を上げた瞬間、アキトの目が大きく見開かれた。
その目線の先には、いったいなにが・・・・・・・・・・・。
「あら、いらっしゃい。今ちょうどいいとこだったのよ」
白衣をきた金髪の女性がいた。
イネスだ!!
だが、驚くべきところはそこではなかった。
机に固定された男子生徒、それを遠巻きに見る生徒。
うっすら笑いながらフラスコを持っているイネス。
そのいかにも実験中と思われる、フラスコからは紫色の物体がはみ出している。
しかも、それが妙にうごめいているのだ。
ずごぉ、じゅるるる
「そ、それは?」
恐る恐るナギサが聞いた。
「え、これ?ただの栄養剤よ。今日はそのつくり方と効き目に付いて学んでたところなの」
ちがうだろ!、だれもが心の中でつっこみをはめた。
決して口には出さない。言えば、きっとこの男子生徒のように実験台になってしまうからだ。
「さぁ、いくわよ。サトウくん」
「うわぁ、やめ、やめて・・・・・・・・」
必死で逃げようとするサトウ。だが、しっかりと固定されいるため、逃げることはかなわない。
笑顔でイネスは近づいていく。
「大丈夫、心配ないから。ほれっと」
ニッコリ微笑み、フラスコをサトウの口へとつっこんだ!
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一時間目、化学。本日の犠牲者サトウの響きが化学教室から響いていった。
「あら、また失敗しちゃったみたいね。
保険委員。サトウくんを保健室に連れて行ってもらえるかしら」
「「ハ、ハイ」」
保険委員はすばやく返事をし、サトウを保健室へと運んでいった。
「大丈夫?アキト」
ナギサはアキトに優しく声をかけた。
いまだ、驚きから帰ってこないアキトを心配したのだ。
「へ?あぁ、うん。大丈夫だけど・・・・・・・・」
アキトは目の前のイネスにくぎ付けとなっていた。
イネスがこちらを向いた。
「ミナミさん、その子は?」
「え、え〜っと、今日転校してきた子です。名前はテンカワアキト君」
「ずいぶんと若く見えるけど?」
「飛び級で、高校に来たらしいんです、ね、アキト?」
「へ?」
いきなり、話をふられビックリするアキト。
「へぇ〜〜、じゃあ、よっぽど頭がいいのね」
イネスの目が妖しく光った。
「そ、そんなことはないですって。イネスさん」
必死に、否定をするアキト。
「あら、私、あなたに名のったかしら」
「え?あ・・・・・・その・・・・・・・それは、知り合いで似た人を知ってて。
たまたま、名前が一緒だったんだと思います」
「ほんとかしらねぇ?」
疑いのまなざしを向けるイネス。
「ま、いいわ。テンカワくんだったわよね。これからヨロシクね。
わたしは、イネス・フレサンジュ。一応、化学の先生だから」
手を差し出し、互いに握手をした。
「こちらこそよろしくお願いします」
アキトも挨拶をした。
キーンコーンカーンコーン
「授業もう終わっちゃったのね。残念だわ。
今からテンカワ君歓迎の実験でもしようと思ったのに」
さも、残念そうに試験管と薬品をいじるイネス。
「起立!」
ナギサの声が響く。授業を早く終わらせようとしているのだ。
「礼!」「ありがとうございました」
そう言うと、一斉にクラスの皆は化学教室から出て行った。
一刻も早くこの危険な化学教室を出たかったのだ。
で、やっぱり残されたのが、ナギサとアキト。
「じゃ、わたしたちも教室に戻ろっか」
「うん」
ナギサに促され、アキトも足早に化学教室を去った。
「テンカワアキト。・・・・・・・・・・興味深いわ」
一人残された化学教室で、イネスは不気味につぶやいた。
「ただいま〜〜〜〜」
「おかえり、アキト」
へろへろとなっているアキトをナツミが出迎えた。
「あら、どうしたの?」
「どうしたの?・・・・・・じゃないよ。
もう、いろいろありすぎて疲れたんだ」
ふぅっと深いため息をつくと、よろよろと自室へと戻っていくアキト。
「いろいろってなに?」
ナツミはうれしそうに訊いてくる。
アキトは疲れすぎて、答える気にもならない。
事の元凶はこの母だったりもするし。
「もう、とにかくいろいろだよ。
疲れたから、ちょっと休ましてよ」
ぶっきらぼうに母にそう言うと、アキトは自室にこもった。
「アキトったら、今日学校でいったい何があったのかしら?
絶対、なんか面白いことがあったに違いないわね。
あの子には、あの笑顔があるもの。なんか起こらないほうがおかしいわ」
にやぁ〜っと、楽しそうな表情を浮かべ、ナツミは夕飯の準備にとりかかった。
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜、つかれた・・・・・・・・・・・・」
カバンを投げ出し、ベットに倒れこんだ。
「まだ、エステのってる方が楽だよ」
アキトは頭を使うのはどうも、ダメというか、どちらかというと肉体労働派らしい。
―それにしても、イネスさんがなぜ学校にいたんだろうか。
イネスさんについて詳しく知ってるわけじゃないが、学校の先生をしていたなんて聞いたことないぞ。
というか、イネスさんに学校の先生なんてやらしたら・・・・・・・・・・・―
昼間学校であったことを思い出す。
―犠牲者が続出するじゃないか!・・・・・・・・俺もまた実験に・・・・・・・・・いや、考えるのはよそう。
だいたいなんで、イネスさんのような人に教師の資格をやるんだ。
というか、雇う学校も学校だぞ!
まったく、近頃の教育は・・・・・・・・・・・・・―
アキトの思考は、だんだん本題からそれていった。
そして、疲れのせいかいつのまにか眠りの中に落ちていった。
あとがき
ど〜も、いもあんで〜す!
久々に書いてみました。
イネスさんの登場!!化学のせんせいだぁ!!
妖しい実験やりまくりだぞぉ!!
ぐふふふふふ。
代理人の感想
あずま○が大王かい(爆)。