逆ナデシコ?





「サイゾウさ〜ん。ねぎ一丁追加です!!」

「あいよ!」


明るい声が響く。ここは「雪谷食堂」



サイゾウはここの主人の名前。なかなかの腕でこの食堂を切り盛りしている。


「姉ちゃん、お勘定。」

「あ、は〜い。」


で、この姉ちゃんって言うのが、ミスマル・ユリカ。

サイゾウが一年前に拾ってきた元気娘だ。

今は2人で、食堂をやっている。



「相変わらず、元気だねぇ。姉ちゃん。」

「そうですかぁ?ありがとうございます。」


ニッコリ、ユリカは微笑んだ。

そう、ユリカはそれくらいしかとりえがなかった。

サイゾウが、料理でも教えようとためしにチャーハンでも作らせたところ・・・・・・・・・・・・・・・




みためこそ、おいしいチャーハンに見えたのだが。


味の方は、ヘドロもこんなもん食えるかぁ!!とちゃぶ台をひっくり返したくなるほどのまずさだった。

そのときサイゾウは思った。二度とこいつに料理はさせまいと。


そんなもんだから、ユリカは二度と調理場にさえ入れてはもらえなくなったのだ。



「クビ?・・・・・・・・・・ですか?」

「あぁ、すまんな。こっちとしても、ちゃんとした働き手のほうが役に立つからな。」


給料カードを差し出し、すまなそうに話すサイゾウ。


「いえ、気にしないでください。また就職口探しますから。」

「ほんと、すまん。」


ニッコリと微笑むユリカに、サイゾウは頭を下げた。








「また、クビになっちゃった。・・・・・・・・・う〜ん、どうしよっかなぁ・・・・・。」

ユリカは、なんでか坂を自転車で登っていた。

それこそ大量の荷物を抱えながら。



プップー!!

後ろからクラクションが鳴らされた。

ユリカは道路の真中を走っていて、邪魔になったらしい。


「あ、すみませ〜ん。・・・・・・・あ!!」

自転車の荷台に積んである荷物が一気に後ろの車へとおちていった。


ドォォン





荷物によってフロントガラスが覆い隠され、左右へフラフラとする車




キキ――――――――!!

おおっと、見事なドリフトでとまった。

あ、なんか男の人が降りてきた。



「こらぁぁ!!危ないじゃないか!!」

なんか、変な服を来た男だ。


「すみません、すみません。お怪我ありませんか?」


ユリカは必死で謝る。

「まぁ、怪我はないけど。あんた、荷物詰めすぎだよ。」

そういいながら、散らばった荷物を片付けていく男。


「ここをこうやって、ほらな。つめ方にもコツってもんがあるんだ。」


じぃーーーーーーーーーー


ユリカは男を見つめた。


「な、なんだよ。俺の顔に何か?」

「あのぉ、どこかでお会いしたことございません?」

「いや、俺に覚えはないが。」

「そうですか。」

男の答えに少し寂しげな表情を浮かべるユリカ。


と、車の中からもう1人男が出てきた。


「お〜い、何してるんだ?早く行かないと遅れるぞ!!」

「わかったよ。」

男は、振り返り車へと向かう。


「あの!ありがとう!」

ユリカの礼に男は手をひらひらさせて、車にもどっていった。


そして、車は坂の上に向かい走り去っていった。


「う〜ん、どこかであったような・・・・・・・・・

あ、もう、この写真たてしまうの忘れててた。」


裏返しになった写真立てを取る。


「あ、あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


そこには、幼き日のユリカと少年が1人写っていた。


「思い出した!!アキト、アキト、テンカワ・アキトだ〜〜〜〜!!!」


先ほどの男の名はテンカワアキトだった。


「アキト!アキトに会いたい。会いに行くわ!!」

なにやら1人でぶつぶつ言いながら、坂を猛スピードで駆け上がっていった。







ユリカは手錠をかけられ、イスに座らされている。


一人の男性が近づいてきた。

赤いチョッキにミルク色のシャツ。プロスぺクターだ。


「この人ですか・・・・・・・・・・」

「はい、入り口の方で叫んでいたのを警備員が捕まえました。」


「ほぅ、パイロットですか。」

「ちがうよ。アキトの恋人(はぁと)」

「と、まぁ、意味不明でして・・・・・・・・」

なるほど、確かに意味不明だわ。ユリカ、とりあえず名乗るぐらいはしたらどうなんだろうか。


「あっなたっのおっなま〜えなんて〜の♪」

プロスがなにやら歌を歌いながら、ユリカの舌に棒を先っちょを当てる。


「イタッ・・・・・・・・」


「と、でた。・・・・・・・・・・・・なんと、全滅したユートピアコロニーからどうやって地球へ?」


驚くプロス。そう、火星はすでに木星蜥蜴の手におち、人が逃げられるような状況ではないのだ。

「それが・・・・・よく覚えてないんです。気が付いたら、地球にいて・・・・・。」


すっと、視線を下に向けた。


「そうですかぁ。テンカワさんとはお知りあいで。」


「ハイ!!アキトは私の王子様なんです!!」

思いっきり、そんなことを言うユリカにちょっとひいているプロス。


「そうだ。あなた、今働いてるところありますか?」

「いえ。ないですけど・・・・・・・・?」


「失礼ですが、前のお仕事は?」

「食堂屋で働いてました。」


「じゃ、ここで働いてみませんか?

テンカワさんもネルガルの社員でして、あなたも社員となれば、会う事は可能になります。

そうですねぇ、コックが足りないんです。あなたやってみませんか?」

「えぇ、アキトに会えるんですか!!やります!ぜひ、やらせてください!!」

おい、ユリカ。ついさっき、料理ができないことでクビになったんじゃなかったっけ・・・・・・・・


プロスさんも、それでいいのか?ユリカに料理なんかさせたら・・・・・・・・・・


「よろしい。では契約の方を。」


いいんかい!!知らないぞ。どうなっても



「これで、今日からあなたはナデシコのコックさんです!!」

「ナデシコ?」

「そう、ナデシコです。」

プロスの背後にウィンドウが一気に開いた。

ナイス演出だよ。プロスさん。てか、用意してたの?




「ま、とにかく、厨房は先だから、中を見学していくといいですよ」

「はぁ・・・・・・・・」

そういって、プロスは別の場所へと向かった。




「レッツゴ―――!!ゲキガンガ――――!!」



ここは格納庫。妙な動きをしているロボット、パイロットがなんか叫んでいた。

「ゲキガンガーじゃなくて、エステバリスだよ。もぉ〜。」


そのパイロットにつっこむこの人は、整備班長ウリバタケ・セイヤだ。

「なにやってんだろ?」


ユリカがちょうど格納庫に着いた。

「あのぉ、なにやってるんですか?」

ウリバタケに質問をする。

「あ?あんた誰?」

が、逆に質問をされた。


「ミスマル・ユリカ。コックです!」


よくもぬけぬけとコックだなんていえるなぁ。


「そうか、俺はウリバタケ・セイヤ。見りゃ分かるだろうが、整備やってる。」


「よろしくお願いします.ウリバタケさん。」

「あぁ。よろしくな。うまい飯期待してるぜ。」

それは無理だな、ウリバタケよ。期待は裏切られるものなんだ。


「で、何してるんですか?」

当初の質問に戻るユリカ。

「よくわかんねぇんだが、アイツが勝手にエステ動かしてるんだよ。


っておいおい、何する気だよ!」


エステバリスが構えの姿勢をとった。


「諸君らに、見せてやろう。

ガイ、スーパーアッパ――!!」



エステバリスが、左手を突き上げ片足で立った!!



「あ!?」


ずどぉぉぉん


こけたぁぁ!!


「おーい、そのバカどうにかしろぉ!」


ウリバタケはエステの近くの整備員に声をかけた。


「大変そうですね。」

「バカ、1人だけだがな。」

なかば呆れたように、頷くウリバタケ。


「あ、なんか足折れたみたいですよ。」


「まだ整備も完全に終わってないのに、あんな無茶な体勢やりゃ、そりゃ、足も折れるわな。」



もう、なんかどうでもよさげに言うウリバタケ。


「お〜い、そこの女性!」

「へ?あたし?」

担架で運ばれているバカがユリカに声をかけてきた。


「あのロボットのコックピットに俺の宝物が置いてあるんだ。すま〜ん。とってきてくれぇ!」

手をあわせ懇願している。どうやらそんなに大切なものらしい。


「あ、は〜い!まかせといてくださ〜い。」

ユリカは快く受け、コックピットへと入っていった。


「もしかして宝物ってこの人形のことかなぁ?」

ユリカが人形を手に持った、


ドォォォォン


突然、大きな音がし艦内がゆれた。ユリカはコックピットの中で盛大にこけた。


「いった〜い、もう、何が起こったって言うの?」


打った頭を抑えながら、ユリカは言った。


その瞬間、艦内にエマ―ジェーシーコールが鳴り響いた。




ブー!!ブー!!ブー!!

『現在、敵機動兵器と地球軍が交戦中。ブリッジ要員は直ちに・・・・・・・・・・。』


「やつらが、きたのね・・・・・・・」


ユリカの表情が、一気に厳しいものへと変わった。
















時は少しさかのぼり、ブリッジ――――――――――


ここで、ブリッジ下段の3人娘を紹介しましょう。

「ねぇ、ねぇ、艦長ってどんな人かしら?」

色っぽいねぇちゃんこと、操舵士のハルカ・ミナトが言った。


「え〜、かっこいい人だったらいいなぁ。」

答えたのは、長い三つ編みにをさげたそばかす娘こと、通信士のメグミ・レイナード。

「かっこいい人かは分かりませんが。

艦長は連合大学在学中、総合的戦略シミュレーションにおいて無敗を誇った逸材です。」


と、目の前にウィンドウを出し答えたのが、電子の妖精になる予定のホシノ・ルリだ。


「へぇー、じゃ、頭いいんだぁ。」


メグミが感心したようにつぶやいた。



と、艦内がゆれ、エマ―ジェーシー・コールが鳴り響いた。


ドォォォン

ブー!ブー!ブー!



「なにこれ、火災訓練とか?」

のんきにつぶやくミナト。


「違います。敵が地球軍と交戦中によるものです。目的は本艦かと・・・・・」


冷静に答えるルリ。なかなか肝が据わっている。


「きぃーーー、こうなったら、反撃よ!」

ブリッジの上の方でなにやらキノコが叫んでいた。一応、副提督なんていうけど、もうキノコでいいの!

「でも、どうやって?」

「ナデシコの主砲を真上に向けて、敵をしたから焼き払うのよ!」


「でもぉ。上にいる軍人さんはどうするの?」

ミナトがもっともなことを言う。


「ど、どうせ、もう死んでるわよ。」

「それって、非人道的って言いません?」


メグミがつっこみ、キノコはまたうなった。


「じゃあ、どうすればいいって言うのよ!」

キノコがヒステリー気味に叫んだ。軍人らしいけど、絶対厄介もんだっただろうなぁ、キノコって。


「そうよ、こんなときに艦長はどうしたのよ。」

そう、まだ艦長は来てなかった。


「はて、もうすぐ到着すると思いますが・・・・・・・・・・・」


電卓を叩きながら答えるプロス。


プシュッ



「お、ここだ、ここだ。すみません、遅れました。え〜っと、皆さん、俺がこの艦の艦長、テンカワアキトです。よろしく!」


まったく緊張感のない登場。あ、なんか後ろにも人がいるけど。


「テンカワさん。あなたいったい何やってたんですか?」

プロスが詰め寄る。顔が妙にこわばって見えるのは気のせいか。


「いやぁ〜〜、ちょっと道に迷ってしまって・・・・・・・・・・」


頭をぽりぽり、そんなことを平気でぬかすアキト。


ドォォォォン


艦内がまたゆれに襲われる。


「で、現在の状況は?」


顔を引き締め、ルリに訊くアキト。


「敵機動兵器200、我々の頭上に集中して攻撃してます。地球軍の被害拡大中。」


「ん〜、どうしようか。」

顎に手を当て考えるアキト。


「そうだ!」

ポンッと手を叩き、何かひらめいたようだ。

「艦長。何かひらめきましたか?」


「ハイ、海中ゲートを抜けていったん海底へ、その後浮上して敵を背後より、殲滅します!」


プロスの質問にきっぱりと言い切った。


「そこで、俺様の出番だ!!俺様がロボットに乗って敵をひきつける。その間にナデシコが浮上して、敵をやっつける。くぅ〜、燃えるシチュエーションだぜ!」

「あなたは?」

「俺はダイゴウジ・ガイ。パイロットさ。」

「ヤマダ・ジロウってなってますけど?」

ルリがつっこむ。

「それは世をしのぶ仮の名前。ダイゴウジ・ガイは魂の名前。」

「はぁ〜〜〜、で、あなた足に怪我してるみたいですけど?」

アキトがガイの足を指差しながら言った。


「しまった〜!!」

本当に気付いてなかったのだろうか?


「囮なら出てます。」

「えぇ?」


ルリがオペレーター席から冷静に言った。


「今エレベーターに乗ってます。」

「通信開いてくれる?」


「はい。」





ピッ



ウィンドウが大きく開いた。そこには若い女性の姿があった。

「誰だね、君は?」

フクベのじっちゃんが女性に尋ねる。


「ミスマル・ユリカ。コックで〜す!ぶいっ!!」

「ぶいっ?」

「ばか?」

満面の笑みで自己紹介してるユリカに全員が呆れ気味だった。


「なんで、コックがそこにいるんだ?」

「いや、彼女は火星出身でして、先ほどコックとして雇ったんですよ。」

「だから、なんでコックがパイロットに・・・・・・・・」


ガイとプロスの奇妙なやり取りが続く中。


「アキト、あの人。」

「そういえば・・・・・・・・・」


影の薄い男ジュンが、アキトに声をかけた。



「アキトだーーー!!やった、アキト発見!!」


「な!?」

うれしそうに手を合わせ、アキトの名を叫びつづける。


「ユリカ・・・・・・・ミスマル・ユリカ・・・・・・・・ユリカか!!」


アキトがようやく思い出したようだ。


「お前、なんでそんなとこにいるんだ?」


「だって〜、アキトに会いたかったから!」

「そうじゃなくて、お前、これから囮になるんだぞ!分かってるのか?」

「うん、分かってる。アキト。あなたを死なせはしないわ。ユリカに任せて!」



プツッ


通信が切れた。


「あの、バカが・・・・・」

頭に手を当てがっくり来るアキト。


『エレベーター停止、地上に出ます。』

『作戦行動時間は十分。とにかく敵をひきつけてくれ。』

「は〜い!」

ゴートの言葉に、まったく緊張感のない返事をするユリカ。


バッタの群れの中に、ぽつんとエステバリスが浮上した。


「うっわ〜、ほんとバッタばっか。よ〜し、とにかく逃げまくるぞぉ!」

右手のIFSが光を放ち、動揺にエステバリスにも光がともったようだった。


バーニアをふかし、海に向かって逃げていく。


「むりよ、コックに戦闘なんて・・・・・・・」

黙れ、キノコ。


「彼女は立派に囮の役をしてます。」

「うむ。囮としては十分だ。」

プロスとゴートがそれぞれ感想を述べる。


「アキト、あの子とは知り合いなのか?」

ジュンが訊いてきた。

「まぁな。火星のときの幼馴染だよ。」


画面のエステバリスを見ながら答えた。




こちら、エステバリス。

「もぉ〜、いつまでもついてこないで!!」

ユリカの中の何かが切れた。


急速にとまり、バッタと向かい合うように立った。


「いっけ〜!」

エステバリスからワイヤーパンチが飛び出した!


一匹、二匹とバッタがやられていく。


「やった!よぉ〜し、このままがんばるぞ!」

といった瞬間、ユリカノ目の前にウィンドウが開いた



『ユリカ、海に飛べ!!』

「アキト?え?なんで?」

『言いから飛べって!』

「わかった、」

ユリカヲ載せたエステバリスが海へととんだ。


落ちる


こともなく、海の上に立った!!


いや、正確には浮上してきたナデシコにエステバリスが立っていたのだ。


「え?なんで?まだ十分経ってないよ。」


不思議そうにユリカがアキトに訊いた。


『いや、その、何だ、』

アキトがいいごもる。


「あ〜、わかった。ユリカのために急いで来てくれたんでしょ?」

ユリカが、1人でキャーキャー言いながら盛り上がる。






ブリッジ―――――――――

ユリカのひとり言?が続く中。


「艦長、敵残存兵器ほとんど有効射程距離内に入ってます。」

ルリが言う。


「よし、グラビティ・ブラスト発射!!」

アキトの掛け声とともに、ナデシコから黒い重力波が発射された!!



「すご〜い!」

ユリカがつぶやいた。


「戦況を報告せよ。」

「敵機動兵器残存0。地球軍の被害は甚大ですが、戦死者数は5。」


ルリが冷静に報告した。

「偶然よ。こんなのって・・・・・・・・」

「認めざるをえまい。艦長、よくやった。」

「さすがは逸材。」

キノコ以外は艦長をほめまくった。




ピッ


『アキトすごい、すごい!!さすがは私の王子様!!』


ウィンドウが開くと同時に、ユリカのマシンガントークが炸裂した。


「だ〜れが、王子様だ!」

アキトが言い返す。


『いやん、もう照れちゃって、アキトの気持ちはわかってる!』


「どこが!」

2人のなんともいえないいい合いが続く中、ブリッジ3人娘達は


「大丈夫かなぁ、こんな艦で。」

「え〜、いんじゃない。なんか楽しいじゃない。」

「それもそうですね。ルリちゃんはどう思う?」

「バカばっか・・・・・・・・」


「「へ?」」


ルリの一言に、ミナトとメグミが固まった。



そんなこんなで、ナデシコは発進!!














あとがき

いもあんで〜す!

なんか、突然思いついてしまいまして、もし、ユリカとアキトが逆だったら、と。

勢いにまかせて書いてしまった。

続くのか、続かないのかは微妙です。

あんま、なんも考えずにずば〜っと書いちゃったもんだから。てへっ。

そんなもんで、気楽によんでいただけるとうれしいです。

では、また次回(あるのか分からないけど)

 

 

 

代理人の大喜利

山田君、座布団二枚やっとくれ(笑)。

 

 

いや、これは意表を突かれましたね。

内容に関しては今更言うこともありませんが・・・一点だけ。

ジュンって、やっぱりユリカと関わらない方が幸せになれそうな気がします(爆笑)。