おっス!オラ横島!何とか囮を勤め終えたのはいいけど、明乃ちゃんの、

「横島くんほんとにすごかったですね!でもあの力ってなんなんですか?」

 って言葉に一気に血が引いた。そうだよやばいよ!少なくともブリッジにいる人達にはしっかり見られてるだろうし・・・なんて言い訳しよう?超能力?目の錯覚?正直に霊力だって言うか?あっさり受け入れてもらえるかもしんねーし。ううむ、気が重い。










GS横島 ナデシコ大作戦!!

第五話 「昔の話」














 ナデシコ格納庫

 横島と明乃が格納庫につくと、大きな拍手と喚声が待っていた。

「よおっ!あんたら一機だけで30分間も囮やってたって!?」

「あんた名のあるパイロットか?若いのに人は見かけによらんな!」

 整備員や作業員に囲まれてちょっと困惑する横島と明乃。ちなみに彼らは戦闘を見ていたわけではない。ブリッジ以外ではガイとウリバタケが見ていたのみである。

「いや、俺たちロボットに乗るの、初めてなんスけど・・・」

 横島の不用意な発言にさらに沸きあがる格納庫。

「すげえ!こりゃ将来エースだな!」

「いえ、私たち成り行きで乗っただけで、これからはコックに専念しようと思ってるんですけど・・・」

「もったいないって!おれもうエステを複座型に改造するぜ!」

「いや、そんな改造は班長の管轄だろ?勝手にやったら「俺の楽しみを取るな!」って怒るぜ?」

「ちげーねーや」

 あっはっはと笑う。横島と明乃は曖昧に笑うしかない。

 と、そこに、

「困りますな〜勝手に改造されては」

 いきなり聞こえた声のほうに全員が振り向く。

「改造、するんですかな?」

 メガネを人差し指で押し上げながらプロスが尋ねる。

「あ、いやちょっとノリで・・・もちろん改造なんかしないですよ?」

 横島と明乃のそばからそそくさと人が離れていく。

(やっぱり給料を握ってる人は強いなー)

「あ、お2人とも、帰ってこられたばかりでお疲れでしょうが、ブリッジに来ていただけませんか?」

「え、なんでですか?私たち厨房に挨拶に行きたかったんですけど・・・」

「さっきの戦闘のことです。来て頂けますね?」

 なにやら断れない雰囲気を発していた。

「あ、でも・・・」

 なぜかちょっと渋ってしまう横島。

「横島さん。あなたにとっても有益な情報が手に入ると思いますが?」

 またもプロスのメガネがきらりと光った。

 

 

――――――――――

 

 

 で、結局ブリッジまで行くことになった横島と明乃。その途中で突如ユリカが強襲してきた。

「あ、アッキノ〜♪おつかれさま〜♪」

 ユリカが手を振りつつ、パタパタと駆け寄ってくる。

 ユリカは見かけだけならハイレベルである。となると横島が放って置くわけがない。

「ユリ「艦長っ!はじめまして!ぼく横島!!」

 ドゴン!!

 鈍い音が響く。何が起こったかというと、明乃が横島の頭を片手で引っ掴んで壁にたたきつけたのである。

「さ・・・さいきん、対応が早くなってきてない・・・?」

「もう長いですから・・・何となくこの後どうなるか分かったような気がして・・・」

「そうっスか・・・」

「ねーアキノ〜私ともお話しよーよー」

 横島が壁にめり込んで血を流してるのはどうでもいいらしい。

「艦長。再会の挨拶は後にしていただけませんか?」

「アキノほんとに女の子なんだね。ちょっと残念だな〜初恋だったのに〜」

 聞いてなかった。

「は、はつこい・・・!?」

「そうだよー」

 といいつつ明乃の胸に視線を注ぐ。

「な、なによ!?」

 なんとなく後ずさる。

「それ・・・シリコンとかじゃないよね・・・?」

「誤解を招くようなこといわないでよ!」

「まさか・・・シリコンが入っていたなんて・・・!」

「むぅ・・・これは騙されましたな・・・」

「信じないで下さい!」

「そうだよな・・・確かにあの感触はシリコンなんかじゃなかった・・・」

「「ほほぅ!」」

「い、いきなりなに言い出すんですか!いかにも触ったようなこと言わないで下さいよー!」

「アキノが・・・もう汚れてたなんて・・・」

「これは由々しき事態ですなぁ・・・」

 プロスも結構ノッてる。

「ああもーーーーっ!!」

 数分四人で言い争っていたが、さすがに疲れたのかユリカが話を変える。

「ね〜ね〜そういえばなんで連絡くれなかったの?結局あの日別れたっきりだったね〜」

「・・・それどころじゃなかったから」

 明乃の顔がこわばる。

「どういうこと?」

「ユリカが地球に言ったあの日、空港でテロがあったの」

 プロスの眉がぴくりと動く。

「テロ?」

「はい。そのときにわたしの父と母が死んじゃいまして・・・いろいろ忙しかったんです」

「アキノ・・・そんなことが・・・」

「・・・だから・・・火星にいる時私はテロの原因を調べてた・・・事実によっては、ユリカ。あなたも・・・」

 息を吸う。

「あなたも殺す・・・・・・かもしれない・・・・・・そんなことにはならないとおもうけど・・・」

 気まずい空気が漂う。だが、

「明乃ちゃん!!」

「はっはい!?」

 突然明乃の名前を呼ぶ横島。その顔には既に怪我と血の跡はない。リジェネレートレベル8であろうか(ガイは10)。

「そんなことがあったなんて・・・気が付かなくてゴメン。でもキミに殺すなんて言葉は似合わない。さあ!俺の胸でお泣き!」

 といいつつ自分から明乃に抱きつく横島。そうなると当然、

 ズドン!!

 こうなる。ちなみに叩き込んだ技は、寸剄だった。崩れ落ちる横島。

「な・ん・で・自分から抱きつくんですか!横島くんは!ほんとにもう・・・」

 ちょっと顔が赤い。

「う〜明乃と横島さん、仲いい・・・」

「そ、そんなんじゃないから・・・」

「い・・・いたひ・・・」

 気まずい空気があっという間に明るい空気になった。

(横島さんは空気を変える天才ですな・・・)

「あの〜そろそろブリッジに行ってもよろしいですかな?」

「あ、すいません!ホラ、横島くん、いきましょう」

「さ・・・さっきのぱんち・・・つらすぎるんですけど・・・まだいたいっていうかくるしい」

「ご、ごめんなさい・・・私も無意識だから・・・」

 何かがのりうつっているのであろうか。

「やっぱり仲いい〜」

 

 

 ――――――――――

 

 

 ブリッジ。入って来た4人を全員が注目する。ウリバタケとガイもいたがムネタケはいなかった。

「改めて紹介します。この2人がネルガルがコックとして雇った」

「ミナトさん!!お久しぶりです!」

 瞬間移動したとしか思えない速さでミナトの手を握る。全員こける。

「あらあら。さっき会ったばっかりよ」

「そうでしたか!?」

 そしてやはりこっちも瞬間移動したとしか思えない速さで、

 ドゴン!!

 こうなった。今度は床にめり込んでいた。もちろん横島の頭が。

「大丈夫ですか!?」

「え、ええ。手、握られただけだから」

「ふぅ。危ない所でした・・・」

「あの・・・横島さんのほうが危ないと思うんですが。なんか赤い液体が床に広がってるし」

 ルリが突っ込む。

「そういえば、えーっと」

「ミナトよ。ハルカ・ミナト」

 そのツッコミは聞こえていなかった。

「はいミナトさん。横島くんと知り合いなんですか?」

「さっきトイレの前であったばっかりだけど・・・」

「何もされませんでしたか!?さっきもユリカに飛びかかろうとしたし・・・」

「うーん、別に何もされなかったわね・・・」

「2人きりなのに!?そんなことあるわけ・・・」

 と、そのとき突然復活する横島。

「明乃ちゃん!!また寂しい気持ちにさせてゴメン!おわびに今日もサタデーナ」

「今日は木曜日ですッ!!」

 ずどむ。

 最後まで言わせずにみぞおちに拳が叩き込まれる。見た目はロックの近距離立ち強パンチだ。

「ツッコミどころが違うと思うんだけど・・・」

 ミナトのつぶやきは全員の心の声だった。

「相変わらずいい突きだ」

 またもコメントするゴート。

「どうでもいいけど、最近宙に舞ってないような・・・ほんとどうでもいいけど・・・」

「あら、別に浮かせて空中コンボを叩き込んでもいいんですけど、吹っ飛んだ時に人にあたったら危ないじゃないですか」

「さっき攻撃は全部無意識って言ってなかったっけ・・・?」

「う・・・」

 その時プロスがやっと声を出す。

「話、進まないんですが・・・」

「「あ・・・」」

 忘れてた。

 

 

 ――――――――――

 

 

「さて、早速ですが横島さん。あの力・・・あれはなんですかな?」

(う、ズバッと来たなぁ。あんまり答えたくないけど・・・)

「私も知りたいです」

 一瞬で退路が絶たれた。

「わかりました!正直に答えるッスよ。あれは霊力っス!!」

 あっさり答える横島。

「やはりそうでしたか・・・」

 こっちもあっさり信じた。

「え、今の話信じたんですか?」

「霊力などフィクションだ。あるわけがない」

「やっぱりウリバタケさんの改造じゃないんですか?」

「だからやってねえって!まだ

「オモイカネもそんなものはないといってます」

 上からメグミ、ゴート、ユリカ、ウリバタケ、ルリである。極めて一般的な反応だといえるだろう。

「(やっぱ信じないよな・・・)ま、確かに信じられないっスよね。この世界には妖怪も悪霊もいないみたいだし」

「この世界ってどういうことですか?」

「いやあ、俺この世界の人間じゃないんだなぁ、これが」

「「「「はぁ?」」」」

(そんなみんなして馬鹿を見る目でみなくても・・・)

「でも横島くん、記憶がないって・・・」

「いや〜なんていうか・・・次元スリップよりそっちのほうが現実味あるかなぁって・・・嘘ついて、ごめん」

「それだって嘘じゃないんですか?笑えない冗談は面白くないどころかなんか嫌ですよ」

 このSSではやけに厳しいメグミ。

「だからって頭から否定しなくても・・・」

「そうそう。私は幽霊みたことあるわ・・・誰も信じてくれないけど」

 横島の味方は明乃とミナトだけだろうか。

「で、霊力とやらで妖怪とかと戦ってたとか言うんじゃないだろうな?」

(まさしくその通りなんですが)

「幽霊や妖怪などナンセンスだ。いるわけがない」

 皆からどんどん否定的な意見が飛び出す。次のプロスの言葉を聞くまでは。

「確かに幽霊や妖怪や霊力なんてものはありません。・・・今は、ね」

「今?どういうことですか?プロスさん」

「昔は確かにいました。ほんの150年前までは」

「え!?それってどういう・・・」

 その言葉はまるで・・・

「横島さん。あなたは一つ勘違いをしています。あなたの体験したものは次元スリップではありません。タイムスリップです」

「!!!!!・・・・・・いや、でもそれはおかしいっスよ!俺はここに来てから魔族や妖怪どころか悪霊の気配すら感じたことがない!廃屋や廃ビルや墓場にも!霊力を秘めてる人ならたまにみるけど、ゴーストスイーパーも一人もいない!それは当然スけど・・・なんせ祓う対象がいないんだから・・・」

「ゴーストスイーパーってなんですか?」

 メグミが口を挟む。

「悪霊や悪い妖怪を祓う人のことですよ」

 こともなげに答えるプロス。

「何でプロスさんがそれを・・・!?」

「だから、ほんの150年程前にはいましたから」

「でもそんなの聞いたことありませんよ!」

「わたしもありません。オモイカネもそんな事実は無いと・・・」

「おれもねーよ!」

 みんな口々に言う。

「聞いたことがないのは当然です。その事実を知っているのはこの世で50人もいませんから」

「たったそれだけ・・・?」

「そんなこと話して大丈夫なんですか?」

「それは全然大丈夫です」

「でも!それをオモイカネが知らないのはおかしいです。私とオモイカネなら・・・」

「それはムリですな。なぜなら、それはコンピュータには記録されてませんから」

「・・・・・・」

 大きくなってきた話に、みんな騒然とする。そこに横島が口を開く。

「・・・150年前に、一体何があったんスか・・・?」

「わかりました。お答えしましょう」

 全員一気に静まる。

「それは・・・横島さん、世界は人間界のほかに、神界、魔界があるのをご存知ですね?文字どうり神族と魔族がいる世界です」

「もちろん知ってるっスよ。一応、神族にも魔族にも知り合いはいたっスから」

「それはすばらしい」

「で、神界と魔界がどうかしたんスか」

「はい。その二つの世界は遥か古代からずっと争ってきました。ですが・・・まあ、だいぶはしょりますが、冷戦対立状態だった二つの世界に、デタント(緊張緩和政策)の動きが出てきました。なぜなら争いが激化して全面戦争になれば、ハルマゲドンさえ起こる恐れがありましたから。だから、争いを止め歩み寄ろうとする動きが出てきたのです。まぁ、両陣営の指導者の尽力もあったようですが」

「神族と魔族は調和ある対立をしなければならない。完全な融合や、一方の勝利では宇宙のエントロピーを早めてしまうから。光があれば必ず影ができ、影があるということは、光もまた、存在するということ・・・受け売りっスけど」

 横島が補足する。ちなみに横島は気付いてないが、今の横島はシリアスな所為かやけに男前だ。明乃などは普段とのあまりのギャップに呆けたような顔で横島を見つめていた。もちろん顔は赤い。

(ふーん・・・もしかしてこっちが本当の顔かな?別におちゃらけてるほうが偽者ってワケじゃないでしょうけど)

 ミナトは興味深げだ。

「・・・やはり良くご存知で。ですが、魔族の中にはデタントを良しとしない一派がありました。神族と強く対立し、人間を下等として見下していました。その一派のリーダー、アシュタロスはそうでもなかったらしいですが・・・おや、どうしました?」

 話している途中で横島の顔が急に険しくなってきた。

「・・・別に。続きを」

「はい。そのアシュタロスという強大な魔族が神界と魔界に反旗を翻したのです。理由は定かではありませんが・・・。で、アシュタロスの一派は、人間界から冥界(神界と魔界の両方を指す)のチャンネルを絶ち、人間界に常駐していた神族の拠点を情報を収集する暇も与えずに次々と滅ぼしていきました。こうして人間界の神族と一部の魔族は滅ぼされるか無力化され、人間界は滅亡の危機に立たされたのです」

 いったん話をきる。

「・・・なんか話が大きくなってきましたね」

「でもなんか面白くなってきました!プロスさん、続き続き!」

「・・・横島くん、ほんとにこんな事が・・・?」

「あったよ」

「横島くん・・・?」

 その答えは簡潔だった。明乃は、横島の表情から何の感情も読み取れなかった。

「詳しい記録は残されていませんが、その混乱を収めたのは、人間のゴーストスイーパーたちだったといいます。もちろん、人間と魔族、とりわけその中でも最強クラスだったアシュタロスと比べると、その力の差はシーモンキーと巨人以上だったといいます。人間が出し得る最強のパワーもほとんど通じなかったとの事ですし・・・。でも最後に勝ったのは人間側でした。その時活躍したのが、美神令子と・・・」

(美神って・・・私に似てるって言う美神さん!?)

 そんなにすごい人だったのかとちょっと驚く。次に来る驚きの比ではなかったが。

「その人と、なんですか?」

「美神令子と、そこにいる、横島さんだったんです」

「「「「「「「・・・・・・なにーーーーーーっ!!!」」」」」」」

「マジですか!?」

「人類の勝利に貢献したって!?」

「はい。それどころか、彼がいなければ善戦もできなかったという話もありますし」

「ちょ、ちょっとプロスさん!そりゃ言い過ぎっスよ!買いかぶりっスよ!尾ひれがついてるんスよ!」

 必死に否定する横島。もう男前モードではなかった。

「あの・・・プロスさん、その話がどう繋がるんですか?」

「はい。横島さんのアシュタロス事件での戦果は神界と魔界の両方で大いに評価され、横島さんはデタントでの神界、魔界、そして人間界をつなぐ架け橋になり、デタントの成功の大きな要因になりました。2020年ぐらいのことだったでしょうか・・・そういえば横島さんはいつから?」

「1999年っスけど・・・ってそれこそ嘘っスよ!!何でそんな大それたことに・・・!」

「心当たりはありませんか?大きな戦果以外の理由で」

「戦果以外・・・?」

「はい。人間のみならず妖怪にも知り合いを多く持ち、神族とも関わりが深く、月の精霊とも言われる月神族の信用も厚く、さらには魔族の魂を内包す「プロスさん!!」

 大声で遮る。

「・・・・・・その話はそんぐらいにしてくれますか?なんか横道にそれてるみたいだし」

「・・・・・・・・・・・・まぁ、いいでしょう。何か苦しい気もしますが」

(なんかもはや2人だけで話してるみたいな感じ・・・)

 とミナトは思った。

「では核心に行きましょう。デタントがうまくいき、大きな問題もしばらくは起こらなかったのですが、今から150年くらい前に突如神界と魔界がチャンネルを閉じたのです。もう日本にも霊的施設はありません」

「え!?またなんか問題が?」

「実はその原因に関してだけはさっぱり分からないのです。しかもただ閉じただけではありません。妖怪や亜人間といったもの全てを神界、魔界と同じ様に「異界」と言う世界を創って移住させたのです。その世界は自然あふれる豊かな世界で、妖怪たちのほとんどは喜んでそっちに移りました。ですが極少数、人間と仲が良く異界に行きたがらない妖怪もいました。そのものたちは二つの道を選ばされました。すなわち、妖怪としての能力を全て失い寿命を人間並みに削られるか、それともおとなしく異界に行くか」

「じゃあ、ピートは?シロ、タマモは?愛子は?タイガーは?ほかのみんなは?」

 タイガーはれっきとした人間だ。

「その方たちがどなたかは存じませんが、どっちの道を選んだにしろ、この時代では会うことはかなわないでしょうな」

「・・・・・・・・・」

「そして神族の指導者が全世界を浄化し、清め、その時世界にいた悪霊、怨霊は全部消えました。霊能者でも見え難いような雑多な霊はそのままですが、悪霊は非常に生まれにくくなりました」

「・・・生まれないわけじゃないんスか?」

「はい。でもそのときだけは神・魔族混合の特殊部隊が来て10秒足らずで除霊して、そこにいた人の記憶を消してすぐ消える・・・って言う寸法です」

「徹底してる・・・」

「はい。それはもう。で、そんなこんなでゴーストスイーパーは全員廃業。国から援助金が出て食うに困ることはなかったようですが。そして、世界からオカルトじみたものは見事にほとんどなくなりました。初めからなかったと勘違いするほどに。まがい物は相変わらずですが・・・そして今に至るという事です」

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

 みんな押し黙る。恐らく横島以外はまだ良く飲み込めてないだろう。

「でも、そしたらなんで、プロスさんはそんなことを知ってるんですか?」

 明乃が当然ともいえる疑問を挟む。他の人もそういえばという顔をする。

「はい。確かに冥界と人間界のチャンネルは絶たれました。ですが、年に一回、神・魔族と一人の人間が対面する機会があるのです。場所は向こうからの指定、やる事と言っても人間界の1年間の出来事を話す、ってだけですが。そして現在の神・魔族に会える唯一の人間が、私です」

「何でプロスさんなんですか?」

「それは・・・」

「「「それは?」」」

「前任者の指名です」

「「「「「「「「ふ、普通〜!」」」」」」」」

 かなり普通だ。こんなに簡単でいいのだろうか。

「でもなんでそんなこと話すんですか?秘密なんじゃないんですか」

 今度はメグミの疑問。

「昔は秘密だったらしいんですが・・・今はそうでもないんです」

「何でですか?秘密じゃないのならもっと知れ渡ってるんじゃないんですか?」

「いや〜チャンネルを閉じた当時ならいざ知らず、今では誰も信じませんからな〜。なぜならそんな痕跡カケラもありませんから。だから別に秘密じゃなくてもいいやってことになったんですよ。必死に隠すよりは不自然じゃないからって。実際、皆さんは信じませんでしたから」

「随分アバウトなんですね・・・」

 他の面々もちょっと脱力気味だ。重い話の後にこれでは、脱力もする。

「あの、プロスさん、プロスさんが会った神・魔族の中に小竜姫さまとか、ヒャクメとか、ワルキューレとか、ジークとか、斉天大聖老子とか、天竜童子とかはいなかったっスか!?」

「いえ・・・姿は見えなくて声だけでしたから。しかし横島さん、とっさに思い出せるだけで6人も知り合いがいるんですか?」

「ええ、まぁ・・・」

「でもプロスさん、秘密じゃないのは分かりましたけど、何でわざわざブリッジで、戦闘を見てた人だけを集めて説明したんですか?」

 今度はジュン。戦闘を見ていた人という言い方をしたのは、ブリッジ要員ではないガイとウリバタケがいたからである。

「それは・・・戦闘を見ていた人が、横島さんのなんだかよくわからない能力を見て何か良からぬ事を考えないように・・・という配慮からです。ハイ」

「発進前に全滅しなかったのは横島のお陰ですよ!いくらなんでもそんな恩知らずじゃありませんよ!」

「そうですよ〜プンプン〜!」

「まじめな顔は結構カッコいいし」

 ミナトさん。それは関係ありません。

「おれはそんなにケツの穴のちいせぇ男じゃねぇぞ!」

「そうだ!俺を差し置いて活躍したことのほうがよっぽど問題だ!!」

「それは100%自業自得です」

「いまだに霊力とやらには納得いかないが、その所為で危機を脱したのは紛れもない事実だ」

 みんな口々に言う。

「みんな・・・」

「もちろん私も気にしませんよ、横島くん。今まで黙ってたことや記憶喪失って嘘ついたことはいただけませんが」

「明乃ちゃん・・・・・・やっぱりおれのことをーーーーー!!!」

 がばぁっ!と胸に顔をうずめるように抱きつく。

「どこがどうなったらそうなるんでしょうね」

 メグミのセリフも終わらないうちに、

「・・・・・・いっぺん・・・・・・・死んでください!!」

 ずどむ

 腹にまたも寸剄が打ち込まれる。たまらず崩れ落ちる横島。そしてさらに、

 ドゴアッ!!

 間髪いれずにバックステップ、そして中段回し蹴り。崩れ落ちている最中だから、蹴りがヒットする場所は当然顔だ。横島は重力を無視して真横に飛び、頭から壁に激突した。さしもの横島も今度は気絶したようだ。いつもより余計に壊しております。

 シーーーーーーーーーーーーーーーーーーン・・・・・・・・・・・・・・・

 突然の惨劇に一気に静寂に包まれる。

 そして明乃ははっと我に帰り、

「ご、ごめんなさい!横島くん!よこしまくーん!」

 気付けのつもりか肩を揺らす。それにあわせて血まみれの顔ががくがく揺れる。

「アキノちゃん!そんなに揺らしちゃ・・・!」

 ミナトがあわてて止めに入る。

「ばかばっか・・・」

 伝家の宝刀がやっと炸裂した。

「テンカワは艦内の警備も兼任できるのではないか?」

 この状態でもいまだに素なゴートの声が、やけに空々しく響いた・・・

 

 

 

「あ、横島さんにどうやってもとの世界に帰るつもりなのか聞くの忘れてましたな」

 このSSのプロスはちょっといいかげんなのかもしれない。

 

 

 

 

 続く

 

 

 

 イネス先生のなぜなにナデシコ出張版

 良い子の皆さんこんにちは。今日もなぜなにナデシコの時間がやってきました。ここではいつものように「GS横島 ナデシコ大作戦!!」のギモン・専門用語等を、解りやすく、かつコンパクトに説明するわ。

Q1・寸剄ってなに?

 相手の体に拳を触れさせて(主に腹)、震脚を踏むと同時に相手にとてつもない衝撃を叩き込む技よ。攻撃すると同時に拳を引くことで衝撃がすべて相手の体内に残り、その苦しみは想像を絶するわ。使える人が使えば内臓破壊は当たり前。ワンインチブローやらなんやら、別名や似た技も多いみたい。

Q2・ロックって誰?

 SNKの2D格闘ゲームの、「餓狼〜MARK OF THF WOLVES〜」や、「カプコン VS SNK2」に登場したキャラクターよ、ギースの実の息子で、テリーに育てられたという複雑な過去を持っているわ。2人の技を併せ持つサラブレット的キャラよ。

Q3・アシュタロス事件って?

 詳しくは「GS美神極楽大作戦!!」の29巻〜35巻を参照ね(ヲイ)。

Q4・横島の行っていたピート他って?

 ひとりづつね。

1、ピート

 本名、ピエトロ・ド・ブラドー。唐巣神父の下でGSの修行を積んで吸血鬼の能力と神聖な力を同時に扱えるようになったヴァンパイアハーフよ。横島君と同時にGS資格を取得した、いわば同期の桜ね。700歳だけど。後に横島君のクラスメートになったわ。ちなみに美形で人当たりもいい好青年だけど、音楽センスは皆無という欠点も持ってるわ。彼は横島君のことを親友だと思っていて、とても信頼してるのよ。特技は体を霧に変えること。

2、シロ

 フルネームは犬塚シロ。人狼で、父親の仇を追って人狼の里を抜け出して横島君と出会ったわ。年は7歳ぐらいだけど、美髪令子と横島君の霊力を受けたことにより、中学生くらいの容姿に急成長したの。横島くんはロリコンじゃないから、ギリギリ守備範囲に入ってなかったみたいだけど。横島君に弟子入りして霊波刀の出力の上げ方を習い、そのことから彼に敬愛の念を抱いているわ。ちなみに横島君のことは先生と呼んでるみたい。趣味は横島先生との散歩。特技は霊波刀。そういえば彼女の横島君への思いって、師弟愛なのか異性愛なのか・・・?私は師弟愛だと思うけど。まだそういう年じゃないし。

3、タマモ

 時の皇帝や権力者を篭絡しまくって翻弄しまくった傾国の美女、金毛白面九尾の妖弧、玉藻前が転生した少女よ。でも目覚めて間もない所為か、力の大半は失われているわ。金髪と九本のポニーテールが特徴的で、見た目の容姿は11,12才ぐらい。殺生石に封印されていたけど封印が解かれ、いろいろあって美神除霊事務所に居着いたの。特技は幻術と狐火。好物は油揚げ。それと白面といっても、「う○おととら」の白面とは似ても似つかないわね。横島君に惚れてるとかいう設定はないはずだけど、いろんなGS美神SSではヒロイン率が何故か高めで、彼に惚れまくりだったり、両想いラブラブだったり・・・。実は人気キャラ?世界は今○リを求めてるの?私(の年)じゃやっぱりダメなの!?

4、愛子

 学校の備品だった机が何十年と使われるうちに魂が宿り妖怪になったものよ。付喪神とも言うわ。妖怪になってからも何人もの学生と青春を見てきて、自分も青春を味わってみたいという想いが高じて、たくさんの学生を自分の机の中に引きずり込んで偽りの学園生活を机の中で送ってたわ。横島君も引きずり込まれたんだけど、美神令子の活躍で無事脱出。彼女はただ自分も青春や学生生活を味わってみたかったのだと語り、真面目な性格を買われて横島君のクラスメイトになったわ。見た目は可愛い女子高生そのものなんだけど、机に宿っている所為か、机からは一歩も離れられないの。でも、彼女は自分の机を持ち上げたり背負ったりして、学校の外にも出てたわ。根性ね。口癖は、「青春だわー」「モロ青春って感じねー」など。とにかく青春。

5、タイガー

 フルネームはタイガー寅吉。彼はれっきとした人間よ。二メートル以上ある巨漢で、精神感応能力というかなりすごい能力を持ってるわ。能力を使っているとき、彼は顔が虎そのものになるの。幻覚だけど。やっぱり横島君とクラスメートよ。彼の能力は美神令子を敗北寸前まで追い詰めるほどだけど、後に彼の能力が通じた敵はいなかったわ・・・便利すぎるから?

Q5・横島の神・魔族の知り合いの小竜姫その他って?

1、小竜姫

 神と人間の接点といわれる妙神山の修行場の管理人。管理人とはいえ、竜神だから人間とは桁違いの力を持ってるわ。見た目は16歳ぐらいの女の子だけど、神剣の達人で何千(万?)年も生きてるようね。責任感が強く、良くも悪くも優しい性格。横島君に秘められた力を一番初めに見抜いたのも彼女よ。横島君に惚れてるとかいう設定はないはずだけど、いろんなGS美神SSでは〜(以下略)

2、ヒャクメ

 戦闘力はあんまりないけど、色んなものを見通す全身の百の感覚器官を使って神族の調査官をやってるわ。ちなみに女性。人の記憶や前世までも見通す力を持ってるけど、なぜだか後半はほとんど役に立ってなかったわね。

3、ワルキューレ

 美神令子を守るように命令されて派遣された、魔界第2軍所属特殊部隊大尉よ。バリバリの軍人で、横島君を無能な足手まといと戦力外通告をだしたけど、修行で大きな力(文珠)を身につけて、さらに誰もかなわなかった魔族のデミアンを倒すのに大きく貢献したことから、ちゃんと彼を戦士として認めたわ。

4、ジーク

 本名ジークフリート。魔界軍情報士官少尉でワルキューレの弟。デタントのテストケースとして、妙神山に派遣されていたのよ。本来優しい性格だけど、軍の厳しい訓練を受けた影響で、ベレー帽をかぶると条件反射で戦闘的な性格になってしまうの。どっかの某ソーサラーハンターみたいね。

5、斉天大聖老師

 妙神山での小竜姫の上司よ。猿神(ハヌマン)というヒンズーの神さまでもあって、人間より桁違いに強い小竜姫よりさらに強いわ。横島くんはこの神様との修行で文珠を手に入れたのよ。ところで、斉天大聖ってことはやっぱり孫悟空なのかしら・・・?

6、天竜童子

 竜神王の実子で、次期竜神王なんだけど、まだまだ性格は生意気な子どもそのもの。自覚のカケラも持ち合わせていないわ。でも将来は小竜姫より強くなるんでしょうね。

 あとがき

 うわー。今回説明ばっかり・・・全然話し進んでねー・・・でもこのSSではどうしても外せない重要な部分なんですよー!ムリがある説明なのは百も承知ですが、見てみぬフリをしてくれたらうれしいかも。

 ちなみに、今回横島が口に出した人たちは、もしかしたら、可能性は果てしなく低いけど登場するかもしれない人たちです。でも期待は厳禁よ。

 

 

 

 次回予告

 日に日に激しくなってゆく明乃の暴力に満身創痍の我らが横島。果たして横島は明乃を振り切りミナトとユリカのところにたどり着くことができるのか!?堂々大嘘!!

 ほんとはムネタケの反乱です。

 

 

 

管理人の感想

K−999さんからの投稿です。

・・・私はプロスさんという人が、分からなくなりましたよ(苦笑)

神族と一年に一回会合があるとはいえ。

それはネルガル代表としてなのか、それとも人類代表なのでしょうか?

というより、口軽すぎだろう、あんた(笑)

今回の説明で、とりあえず横島の力は認められたみたいですね。

今後、どんな活躍をしていくのかが楽しみです。

 

 

 

横島と一緒に働くと、女性は全てグラップラー(闘士)になるんでしょうか?(爆)