横島は二人を背中にかばったまま、文珠を発動させる。
すると、三人の周囲に、赤い霧のような物が形成される。その0.06秒後、グラビティブラストと北斗の斬撃が、まずはその赤い霧に触れる。横島らの周囲にあるから当然だ。
そして、それまでだった。
「あれ?」
明乃はぎゅっと閉じた目を開く。何も変化は無い。
それもそのはず。霧に触れたグラビティブラストは、貫通も歪曲も拡散もせず、その場で消え去ったのだから。
「・・・な、これは・・・?」
北斗は我が目を疑う。なぜなら、対時空歪曲刀の柄の先には、なぜか刃など存在していなかったのだから。
横島はコンメリアの両手を開いた。そこには、
『雲・散』『霧』『消』
通常の文珠が二つ。そして一つの文珠に二つの文字が入る双文珠が一つ。それがコンメリアの掌にあったもの。
雲散霧消。グラビティブラスト、対時空歪曲大太刀の刃は、文字通り、霧のように消え去ったのである。
「よ、四文字だと・・・?」
北斗の血の気が一気に引いた。
そして横島はまたも文珠を発動させる。
『一・刀』『両』『断』
一刀両断。その文珠を握った手を、真横に振る。
すると、手から一筋の線が走る。その線は遙か遠方の五体の無人艦の上をなぞった。すると、
ちゅどどどどどん!!
五体の無人艦は、残らず爆散する。
「な、なによこれ!? しゃ、射程無限の、ざざ、斬艦刀?」
ムネタケが、完全に裏返った声で無意識に喋る。
横島が明乃らのところへ到達してから、僅か十秒後のことだった。
「・・・・・・・・・すごい」
明乃は、やっとそう呟いた。
今気がついたが、横島は北斗ほど顕著ではないものの、闇色のオーラを立ち昇らせていた。
横島は振りぬいた手をゆっくり戻し、
「んじゃ、望みどおりやるか?」
「なに?」
北斗ははっと我にかえった。
「え、戦わねーの? あ、そう。
んじゃそういうことで」
「ま、待て! やるに決まっているだろうが!」
「・・・マジで?」
横島は怪訝に訊き返す。さっきわざわざ四つの文珠で四字熟語を現したのは、戦意を喪失させるためのパフォーマンスだったのだが。
「こわくねーのか? 化け物呼ばわりされる覚悟でやったってのに」
「怖い。正直、怖い。だが、それ以上にその強さを超えることが出来るんだぞ!? 嬉しくないはずが無い!!」
「うげ・・・」
横島はげんなりする。勘弁して欲しい。
「貴様から言い出したことだ。まさか違えることはないだろうな?」
貴様がその気でなくてもやってやるぜ、といいたげな表情と声。
だが、さっき滅茶苦茶怒っていたから、いい加減腹をくくった。
「はいはい・・・。やるよ。やりゃいいんでししょ、お姫様・・・。
・・・あ、やべ」
時既に遅し。
「俺は・・・男だーーーーーーーーーーッ!!!」
北斗は近くを漂っていた明乃の中剣型CFランサーを拾って再び二刀流になり(もう一本しか残ってなかったのだ)、怒号と共に振り回す。
「おわっ!」
横島は北斗の攻撃をかわし、明乃たちから距離を取るように舞い上がる。宇宙空間に舞い上がると言うのは変な表現だが。
「今の俺は一味違うぞ!!」
横島は俊敏な動きで北斗に迫る。その速さは文珠も使っていないのに普段と比べて明らかに速い。
「ちぃっ! その黒い氣は身体能力さえ強化するのか!
だが、文珠による強化よりは効果は落ちるようだな」
「まーなー。ノーマルが1、文珠一個分で10だとすれば、この状態は7か」
ブゥン・・・
そう言って、栄光の手による霊波刀を出現させる。
その大きさは、いままでの比ではない。
「その出力・・・7倍どころではない!?」
「そ。身体能力の強化なんて単なるおまけみたいなもんだ。この霊力の高ぶりは俺でも底が見えねー!」
「くっ!」
「あー、なんか現実感無いわねー。あの光景」
ムネタケがやる気なさげに呟く。
「・・・・・・」
明乃は無言だが、返事するまでも無く感じていた。
2人の視線の先でぶつかり合う朱色と闇色。ぶつかり合う際の余波が、体感できるほどである。
「おー、おー、余波でこっちの機体が押されてるわ。押される方向がナデシコだからちょうどいいけど」
「・・・・・・」
「あら。あの遠くに見えるのはエステ隊ね。バーニアも使えないことも無いし、加勢に行く?」
「・・・足手まといになるだけです」
「いや、ジョーダンよ。
でも・・・」
ムネタケが何かぶつぶつ言い始める。明乃は視線を逸らさずに戦う二人を見つづける。
「いつか・・・いつか絶対、追いついてみせる・・・!」
「いや、人としてそれはどうかと思うけど・・・」
そして、決着は意外なほど早く訪れた。
『加・速』
双文珠が光り輝き、コンメリアの速度を神速にまで高める。超加速とまではいかないが、ハイパーモード(仮)+文珠二個分により、北斗は対応しきれない。
一瞬で北斗の背後に回る。
「なんだとッ!!?」
北斗が振り向く。だがその前に、
『天・剣』『絶』『刀』
天剣絶刀。見た目はただの文珠の剣。しかし。
「っ!!!」
北斗は赤く輝く刀を頭上で交差させ、横島の剣を防ごうとする。二刀流による防御技、十字止めだ。
「っっせいッ!!」
構わず横島は剣を振り下ろす。
ばきんっ!!
それはあっさりと昂氣に覆われた刀を砕き、
そのまま鬼神皇の右腕を、肩口から切り落とした。
「・・・・・・馬鹿な」
呆然とうめく北斗。だが横島の攻撃は終わっていない。
『粉・砕』
双文珠を握った拳を、そのまま叩きつける。
「!?」
北斗はもう反射神経だけで残った左手をかざす。全ての力をその手に込めて。
電気が放電するような爆音と閃光が拳と掌の間から放射される。
「んぐっ!」
「う、があああああああああああああああっ!!」
全ての力を込めた左手は、双文珠の力さえ受け止める。
だが、
「か・・・はっ」
今までの抵抗が嘘のように無くなり、双文珠の力が残りの左腕を根こそぎ吹き飛ばす。
そこで、双文珠から放射される力はちょうど収まった。
「だから言ったろ。それだけ本気出し続けりゃ長持ちするわけないんだって」
「・・・・・・」
返事は無い。
「・・・気絶?」
「・・・・・・」
やっぱり返事は無かった。
「あいつが気絶する所なんてはじめて見た感じ。
しかし、疲れたぁ・・・・・・」
と言った瞬間、
ふしゅるる〜〜〜〜〜
「あら?」
横島を取り巻いていた闇色のオーラは、役目を終えたかのように消え去った。
「ん・・・。ふん!」
気合を入れてもう一度発動させようとする。出ない。
何度試しても同様。
「む。北斗のオーラに反応したから北斗のオーラが消えたらそれまでなのか?」
その可能性は大きい。胸のざわめき、あの北辰を倒した時と同じ感覚が、北斗が昂氣を纏った瞬間に胸のうちで湧き起こったから。
その力が何が原因で発動したのかはわからない。解っていることは、
「北斗がまたオーラを纏わない限りこの力は出せないって事か・・・?」
――――――――――
エステ隊VS優華部隊。こちらでも決着が付きつつあった。
ずががががっ
光神皇の神皇専用速射機関長銃がゴスペリオンのフィールドを越え、何度も着弾する。
そしてついに、機体のあちこちから小さな爆発が起こる。
「コンディション・レッド・ダメージ・94%オーバー・・・!」
もう無事な場所を探すほうが難しいほどの損傷。重力下では自壊してしまうであろう事が容易に想像できる。
つまり、無重力下でも無理に動けば自壊するほどであると言うこと。そんな状態では回避運動もままならない。しかし動かねばやはり撃墜。
「もらった!」
ならばもう撃墜されるのはもっと前に確定していたと言うことか。
零夜の速射機関長銃の集中射撃により、ついにゴスペリオンは爆発四散する。
「マリア!?」
マリア機が撃墜されるのを見たイツキは、思わず悲鳴をあげ動きを止めてしまう。
「馬鹿っ! 新入りぃ!!」
リョーコの叫びは、間に合わない。
「!?」
我に帰ったときには時既に遅し。
氷神皇の振るう刃が、もう目の前に迫って―――――
来たと思ったら氷神皇の刀を持つ手は、肘辺りから吹き飛んでいた。
「な」
一瞬呆ける京子へ、今度はイツキがCFランサーを振るう。
だが、京子の全力の回避運動の前に空を切る。
「くっ、一体何事・・・」
イツキから大きく距離を取った京子は、周囲を探る。
すると、この戦域からそれほど離れていない位置に、二体の機動兵器が。
「フン、いくらマニュアル操作でろくに動けないとはいえ、これくらいの嫌がらせは出来るのよ」
「提督・・・狙ってたんですか」
「モチのロンよ! それにしても、このレールガンやっぱり凄い威力よね〜」
横島VS北斗の戦いの余波に流されてきた明乃&ムネタケだった。
「あんな所から!?」
一瞬ムネタケらを撃墜しに行きたくなるが、イツキの存在を思い出して何とか踏みとどまり、残った片腕に専用脇差を握る。
「くぅ・・・撃墜できなかった!」
イツキはイツキで悔しげだ。敵機を一体減らすチャンスを逃してしまったからだ。反対にこちらは一体戦力が減ってしまった。このままではジリ貧だ。
見ると、まさに光神皇がこちらを牽制しようと狙いをつけようとしていた。
「あら!?」
だが、光神皇の動きが急に鈍る。よく見えないが、ワイヤーのような物が機体に絡まっているようだ。
「もしかして、マリア?」
「イエス・ミス・イツキ」
見ると、マリアがロケットアームのワイヤー(マリアに搭載されている、ワイヤードフィストのような武器。手を飛ばした後も指は自由に動く)を絡ませているようだ。完全に動きを止めているわけではないが、その動きは大幅に制限される。
「な、なんで!? 生身でも平気だって言うの!?」
零夜が悲鳴じみた声を上げる。気持ちは解る。
「マリアってそんなに頑丈だったんだ・・・」
「こりゃ驚いた・・・」
「ふははははははは!! マリアを破壊したくば大気圏突入時の衝撃を超える威力の兵器を持ってくることじゃな!!」
「って、大気圏突入の衝撃にも耐えるのかよ!?」
「無論!」
「は・・・だからマリアの勝敗はともかく安全については心配して無かったって訳かよ」
牽制役の零夜の動きがほぼ封じられた今、双方の均衡は崩れたと言っていい。連携を取ろうにも、優華部隊の各機体にはマンツーマンでエステ隊が張り付いていて、さらに氷神皇は片腕と対時空歪曲刀を失っている。
エステ隊はここで確実にと。優華部隊は背水の陣な気持ちでそれぞれ気合を入れる。
その時、
『ハイハイスト〜〜〜〜〜ップ!!』
その宙域全てに舞歌が回線をつなぐ。
「舞歌様・・・」
千沙が気の抜けた声で呟く。
『どうも初めまして。私の名前は東 舞歌。優華部隊のリーダーっぽいことやってるの。
で、いきなりで恐縮なんだけど、ナデシコの皆さんにお願いがあるのよ』
『お願い?』
通信が繋がっていたブリッジのユリカが訝しげな声を上げる。
『ええ。今回は負けを認めるから、お互いここで戦いを止めない?』
舞歌は軽〜く微笑みつつ言う。
「んだそりゃ! そっちから仕掛けてきたんだろが!」
ガイが舞歌に向かって食って掛かる。
『いいですよ』
「って艦長!?」
ガイだけでなくほかの数名も不服そうな目をユリカに向ける。しかしユリカはそれに気付いているのかいないのか、いつもの笑顔で、
『ここで最後までやりあったら、例え勝ったとしても凄い損害が出ます。第一、最初は適当な所で切り上げてくれるのを待つはずでしたよね? いまがそのときじゃないですか』
そういった。アカツキは肩をすくめ、
「ま、確かにね・・・。それが上策かな」
『あらら。艦長さん、話が解るわね』
『はいどうも。
あ、それに、そっちの戦艦には、まだいくらか戦力が残ってるかも知れませんしね』
『・・・・・・。話が解るだけじゃなく頭も回るのね。見かけによらず』
『あはは。持ち上げすぎですよ』
『『・・・・・・・・・・・・』』
二人の間に、微妙な空気が流れる。
「しかし舞歌様! ここでひいては私たちの気が・・・」
『あ、ちなみに、北斗殿、負けちゃったから。横島君に。しかもボロ負け』
「な・・・・・・ッ!!?(×7)」
その言葉に優華部隊は雷の直撃を受けたような衝撃を受けた。それ以外の人は「?」という感じだったが。
「・・・了解しました。優華部隊、帰還します」
千沙のその言葉に、優華部隊はふみひろづきへ戻った。
「・・・・・・・・・っは〜〜〜〜〜! 疲れたぜ、今回は・・・」
去り行く敵部隊を眺めつつ、リョーコは盛大な溜息をついた。
――――――――――
「はぁ・・・やっとナデシコに帰り着いたよ・・・」
横島がナデシコにまで戻ってきたのは、敵部隊がもう撤収した後だった。
格納庫に降り立った横島は、ちょっとくらっと来る。頑張りすぎたか。
「あっ、大丈夫ですか? 横島くん」
そして少しふらつく横島を支えたのは明乃だ。
「あ、明乃ちゃん。お疲れ」
「横島くんこそ。お疲れ様です」
明乃はにこりと笑う。それにつられ、横島も頬を緩める。
なんか和やかな空気が流れる。横島的に、あの力のことを訊ねずに労ってくれたことが密かに嬉しかったり。
そんな二人にとてとてと走りよってくる桃色の影。言うまでも無く、モモである。
「忠夫っ・・・」
横島の体に、ボフンと抱きつく。モモの頭は、横島の腹辺りだ。
「おっおい、モモ」
「ごめんなさいっ・・・!」
「え?」
急に謝るモモに、横島は面食らう。
「わたし、怖かったの! 戦闘中の忠夫、忠夫でないような、そんな感じがして・・・」
横島は、神妙な顔になった。
「前だってわたしを助けてくれた力なのに・・・それなのに・・・」
横島の服がぎゅっと握られる。それを見た横島は、震える小さな頭にぽむと手を乗せ、
「ばっかだなー。そんくらいで怒るわけ無いだろ? それに、あの力は出そうと思って出せる力じゃないし、ってか俺にも良く解らんし・・・」
横島は片手で頭を掻き、もう片方の手でモモの頭を撫でた。
モモは、ほぇ、と目を細めた。とてつもなく心地よさげだ。
(って言うか・・・)
明乃は思う。
(もしかしてモモちゃん、邪魔しに来たんじゃないでしょうね・・・)
いくらなんでも唐突な気がする。しかも良い雰囲気なところで。
(ああ駄目駄目! なに馬鹿な邪推してるんだろ・・・)
明乃はぶんぶん頭を振った。
と、そこでリョーコらも横島のほうへやってくる。お互いの労を労うのだろう。
しかして、そんな和やかな雰囲気にさせまいと世界の悪意が働いた(ぇ。
『やっほー横島君、元気?』
「んげ・・・舞歌さん!?」
いきなり通信とは。
明乃はちょっと驚いた顔で、モモは目をぱちくりさせている。
そしてその他はちょっと険悪な雰囲気を醸し出してきた。
「ま、舞歌さん! いったいなんで・・・」
『ああ、それはね』
舞歌が言いかけたところに、舞歌を押しのけるように万葉が映像の真中に入り込んできた。
『おい横島っ! 生きているんなら連絡の一つくらい入れたらどうなんだっ! 私が・・・じゃなく私たちがどれだけ心配したと思ってる!?』
『万葉・・・それかなり無茶なこと言ってる・・・。
あ、横島さんお久しぶりです。ご無事で何よりでした』
「あ、さんきゅー千沙ちゃん・・・」
『横島! 私はてっきりもう死んだもんとばっかり思うとったとよ! ようも生きとったっとね?』
『何言ってるの三姫。生きてるって疑いもしなかったくせに。あ、私は天津 京子ですよ。憶えてますか?』
「あ、ああ・・・」
何か周囲の視線が自分に集中して、しかもそれが突き刺さるくらい鋭いような・・・。
(明乃ちゃんが意外と普通な顔なのが意外だ・・・)
結構失礼なことを考えている。
『あ〜駄目じゃないのキンケドゥ〜! 死んでなきゃ〜! あはは、なんちゃって』
『解剖していい?』
「百華ちゃんと飛厘さん・・・相変わらずだな・・・いやマジで」
『まぁ私は別にあなたがどうなろうとどうでも良いんですが、それでも知った顔が死ぬのは寝覚めが悪いですから。一応良かったと思っておきます』
かなり遠まわしな台詞である。
『って言うか、いい度胸してるわねあんたたち・・・! 全然知らなかったわ・・・』
押しのけられた舞歌がかなり怖い。
そして周囲の視線が殺気すら帯びてきているような気がする。特に男から。
『横島さん』
そんなやり取りの中、突然のプロスの割り込み。
そしておもむろに、
『減俸』
「なんでだーーーーーっ!!?」
思わず関西なまりさえ忘れる叫び。
(もうカットされる余地が無い(エステ弁償代&セクハラなど)横島の給料をさらにカットするなんて・・・)
プロスの背後のジュンは戦慄に身を震わせた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
しかもこういうときだけ弁護してくれないモモ。心なしか頬を膨らませているような。
「ま、まぁまぁ横島くん・・・。モモちゃんもお給料貰ってるんだし、モモちゃんに食べさせてもらえば・・・」
「めちゃくちゃ人間のクズじゃないスかっ!!?」
「冗談ですよ」
ホンマかいな。
『忠夫っ!!』
そこに新たに現るは、北斗。
『俺が負けるときは死ぬ時だ!! そして俺は死んでない! つまり俺はまだ負けてないぞ! 解ってるか!?』
『ほ、北ちゃん・・・』
「おまえね・・・」
『解ったのか!?』
「はいはい、解りましたよちくしょー」
これでコリといてくれるかもしれないと言うのは、あまりに淡い希望だったのか。
『それともう一つ! 貴様なんで最後は出力が落ちていた!? まさか手を抜いたんじゃないだろうな!?』
『天剣絶刀』や『一刀両断』など四文字同時使用を立て続けに使われたら、『粉砕』二文字では手を抜いたと思われてもしょうがない。
「いいや。もう文珠が品切れだっただけ」
『本当だろうな』
「本当。つーかお前は何様だ」
『フン・・・ならばいい』
そう言って、映像の真中から姿を消す。
『って言うか、あんたら本当にいい度胸ねー!?』
端っこに追いやられていた舞歌が、怒り心頭の面持ちで隊員に詰め寄る。
『あっ! 舞歌様いたんですか!?』
『まずいな・・・。さっぱり気付かなかった・・・』
何気に酷い。
『あんたたち給料下げる! もう決めた!』
『えええええーーーーーっ!?(×7)』
そんなこんなしているうちに、映像は途絶えた。
「・・・なんかナデシコに似た雰囲気ですね」
「敵の俺を普通に受け入れてくれた人たちやからなー」
「・・・ですね」
明乃はくすりと笑う。
「で、後ろの人たちはどうするんですか?」
「訊かないでくれ・・・頼むから」
横島の背後には、なぜか嫉妬の涙を流すウリバタケを中心とした野郎ども。
数日間は横島に安息の日々は訪れそうに無かった・・・。
おまけ。
「ドクター・カオス」
「ん? なんじゃ」
「満場一致で・以後・ゴスペリオンは・『Mフレーム』と・呼称されます」
「い、いつの間に!?」
おまけ2。
「ねえリョーコちゃん。聞いた?」
「何をだ?」
「メグちゃんね、ナデシコ内の撃墜数、リョーコちゃんを大きく引き離して二位になったんだって」
「マジかよ!?」
ちなみに一位は横島。
おまけ3。
「あれ。提督、なーんか張り詰めた雰囲気が無くなってません? 肩の力が抜けたような。
「ああ、あんな物真近で見せられたんだから。何かもー今までの自分はちっぽけに感じたって言うか。
ね、テンカワ」
「ええ。本当そうですね」
2人は苦笑を交わした。
「??」
ユリカはそんな二人をみて、首を捻るばかりであった。
続く。
イネス先生の、なぜなにナデシコ出張版
良い子の皆さんこんにちは。今日もなぜなにナデシコの時間がやってきました。ここではいつものように「GS横島 ナデシコ大作戦!!」のギモン・専門用語・モトネタ等を、解りやすく、かつコンパクトに説明するわ。
Q1:エステバリスコマンダーフレーム
武装:ミサイルランチャー
ピアッシングスナイパービームライフル(P.S.B.R.)
他の機能:強化センサー
広範囲通信システム
重力波ビーム発生装置
ディストーションフィールド
作中でも言っていた通り、月面フレームを流用した重力波ビームを照射することができるフレーム。そのおかげでエステの運用にかなりの幅が出来るけど、その大きさと火力不足が欠点。
この機体自体の運用法は、ナデシコと前線の中間で、味方機の行動範囲を広げつつ援護射撃するという感じ。
作中の使い方は普通は無理。これからは指揮官用として活躍するのかしら。
Q2:ゴスペリオン(Mフレーム)
武装:イミディエットナイフ
ラピッドライフル
ロケットアーム
エルボーバズーカ
クレイモアキック
ビットミサイル
クロスマッシャー“マリア・ブレス”
???(まだ未登場)
他の機能:隠し腕二本
ディストーションフィールド
ドクターカオスの技術と遊び心を詰め込んだ、完全に趣味のフレーム。後に名前をMフレームと改められたわ。アサルトピット挿入スペースのことをぜんぜん考えていなかった、なんとも間抜けな機体。でも、マリアがアサルトピット代わりになることで性能の全てを発揮できるようになったわ。怪我の功名ね。
ちなみに、動力はオカルト技術を盛り込んだ最新複合動力。・・・霊力やオカルトって何て便利な言葉なのかしら。
バレル(砲身)+リオン=バレリオン、アルタイル+リオン=アルテリオンのように、他のリオンシリーズを参考にして名前をつけたみたいね。でもゴスペルには特に意味は無いみたい。
フレームと言うより、マリア専用火器内蔵追加装甲って感じかしら。マリア本人のほうが頑丈だけど。
Q3:鬼神皇
武装・神皇専用脇差(エステのイミディエットナイフみたいなもの)
神皇専用速射機関長銃(エステのラピッドライフルみたいなもの)
ミサイルポッド(エステのとほぼ同じ)
ロケットパンチ(ジンタイプとは異なりワイヤー付き。エステのワイヤードフィストみたいなもの)
対時空歪曲刀(鬼神皇のみ四振り。他は一振り。エステのフィールドランサーみたいなもの)
他の機能:時空歪曲場
北斗用に用意された神皇で、性能は他と変わらないみたい。違いは対時空歪曲刀の本数。鬼神皇だけ四振り装備されてるわ。とは言っても、閃刃鶴と言う名前の対時空歪曲刀の他は失われちゃったけど。
神皇の性能はエステよりちょっとだけ上ってくらいね。
Q4:ふみひろづき(文披月)
優華部隊の旗艦。ふみひろづきとは、陰暦七月のこと。
Q5:横島の変な力。
発動条件は、強大なオーラ、昴氣、霊力、またはそれに類するものを発する人(または物)に敵意を向けられた時。つまり、いくら強力なオーラを発しようと敵意を向けられないと発動しないし、いくら強い力を持っていても、メグミちゃんのような変な力とは関係ない超人や、ブローディア、ダリアといった超兵器にも反応しないわ。
発動すると、身体能力がアップし、霊力が大幅に上昇するみたい。それにより文珠の同時使用の制御個数が増え、双文珠が使用可能に。
他の詳細は不明。正式名称もいまの所なし。
あとがき
遅れました。遅れてしまいました。すいませんすいません! ほとんどの人が忘れてるんだろうなと思いつつ・・・。
って言うか長すぎです。イズミVS飛厘の渋い戦いを詳しく書こうとしましたがやめました。これ以上長くしてどうするんだ、と思い。
そして、横島君がパワーアップしたように見えるかも知れません。でも実はそうでもありません。北斗以外(しかも昴氣使用時限定)にはつかえませんからね。
どうしてもパワーアップできない主人公。哀れ。
んで、明乃VS北斗ですが、ヘリアンサスがあればかなりいい勝負になってます。運が悪かったですね。
そして余談ですが、横島のナデシコで貰っている給料は、減俸されても美神がくれる給料より高いです。五万くらい。
次回は何時になるかなぁ・・・
あ、最近ネット接続の調子が悪いので、メールのお返事は少し遅れるかも知れません。ご了承ください。
代理人の感想
や、じゅーぶんパワーアップだっちゅうねん。
しかしアキノ(あるいは機体)が凄いのか、それとも北斗が弱くなったのか。
なんか北斗の格が大暴落って感じなんですが(爆)。
ヘリアンサスを使っているとは言え「スープ」ごとき(のはず)のアキノにあれだけ粘られて、
しかも圧倒できてないというのはさすがにどうかなぁとw
>ゴスペリオン
黒人霊歌の事か、さもなければゴスロリオン(バンプレストスタッフ間におけるフェアリオンのコードネーム)の
同系統機種かと思ってひとひねりを期待してたのに・・・(笑)。