どうもこんにちは。天河明乃です。一番星コンテストも終わり、ようやくナデシコも落ち着いてきました。終わった翌日なんか大変で、女横島くん&ジュン君の写真がバカ売れするわ、文珠を譲るよう横島くんに迫る人が急増するわ、ユリカが私を男にしようと画策するわとプロスさんの堪忍袋の緒が切れるぐらいの騒ぎっぷりでした。こういうのを後夜祭って言うんでしょうか?
「・・・違うと思う」
「ん? モモちゃん何か言った?」
「・・・別に」
「そう?」
で、横島くんは男と女でかなり容姿が違うから良かったけど、ジュン君なんか整備班を中心にかなりの人気が継続中で、中には「もうその顔であるなら男でもいい!」と豪語する猛者もいる様で。ま、瑣末事ですけどね。(瑣末事じゃない!! byジュン)
それはともかく、今日も横島くんと一緒に格納庫に来ています。ヘリアンサスとコンメリアの修理状況を見るのが理由です。だから今回はカオスさんですね。
「なーじーさん、まだ文珠エステ直んねーのかよ」
「文珠エステじゃなくコンメリアじゃ。何度言ったら解る」
名は体を現してると思いますけどね。
「いや、だって文珠以外の武器ってエステの流用品だろ?」
「う」
「確かに。外見こそあまり似てませんけど、遠目にはエステにしか見えないですね」
「ぐ」
「・・・動力源もエステと同じ重力波ビームだし」
「む」
「おそらく・当初は・もっと多くの機能を・搭載するはずでしたが・文珠精製の・機能の搭載を・優先した為・結果的に・エステバリスと・大差ない構造に・なったと思われます・ですから・文珠エステと言う名称も・あながち的外れとは・感じません」
「ぬう・・・マリアまで」
ついにいじけ始めるカオスさん。そのしぐさは中々堂に入ってる(おいおい)。
「それはともかく、後どれくらいで直るんだ?」
「・・・あと二ヶ月ほどといった所か」
「変化なしかよ」
実は横島くん、定期的に修理の様子を確かめに来てるみたいです。文珠エステとか言ってますけど、やっぱり気になるみたいですね。
「つーか、なんでそんなにかかるんだ?」
「何度も言うが、オカルトを取りいれた技術は、既存の技術の性能を更に高める事が出来るが、設計図どおりに作ればOKという単純な物でもなくなるんじゃ。このマリアが良い例での。魂と機械の融合に成功したのは、ワシですらマリアを含めてたったの三回。それは一番難しい部類じゃが、この文珠精製器も中々に難物でな。ついでに言うと資材も少ないんじゃが」
「・・・思ったんだけど、忠夫の文珠なら理屈抜きで何でも直せるんじゃないの?」
おお、モモちゃん、その意見は革新的な意見かも・・・?
「無理じゃな」
「・・・そうなの?」
「うむ。いくら文珠でも、オカルト技術を取り入れたものを、そのまま直すのは不可能。並の物ややり方によっては可能じゃろうが・・・」
「例えば?」
「まず、文珠精製システムの構造を完全完璧に把握する。オカルト技術を使用した機器でも小僧が構造さえ把握すれば、文珠一個で直せるじゃろうな。二つ目は、ある一部分の時間を逆戻しする効果の文珠を使うこと。それなら構造の把握なぞ不要。ま、それに何個の文珠を同時に使う事になるかは分からんが」
「・・・・・・・・・」
横島くん、固まっちゃいました。そうですねー。時間の逆戻しが出来るなら若返りすら可能になっちゃいますからね。きっとすごく難しいんでしょう。
「どちらの方法にせよ、二ヶ月以内で成功させる自信はあるか?」
「無理」
「じゃろーな」
カオスさんが、してやったりって感じでニヤリと笑います。大人気ないと思います。
「ならジャンプフィールド発生装置は?」
「それも・・・大体同じじゃな」
「なんでだよ。木連だって有人機にジャンプフィールド発生装置搭載してんのに」
「サイズが違うじゃろサイズが! 本来なら二年は先の技術じゃぞ!? むしろそれを二ヶ月でやってのけるワシの技量を褒め称えんかい。勿論オカルト技術の使用込みじゃが」
・・・本当、オカルトって便利な言葉ですね。
GS横島 ナデシコ大作戦!!
第二十四話「木連式柔奥伝(不発編)」
横島は迫り来る拳を紙一重で回避する。反撃のチャンスだ。
「しっ!」
鋭く漏れる呼気と共に、横島は爪先を払うように蹴りを放つ。
「!」
相手は軸足を払われ、倒れはしなかったものの体勢を崩す。
―――――それを見逃す横島ではない。
派手に振りかぶったりはしない。最小の動きに必殺の威力を込め、相手の鳩尾に突きを叩き込む。
(もらった! 木連式柔・むg
・・・否。叩き込もうとした。
ぱしん。
「え」
横島の放った突きは、力を入れているようには見えない右手の、ただの一振りにあえなく無力化された。
「ふっ」
「げ」
呼気を発しつつ放たれた左足刀は、横島の右顔面に叩き込まれた。
「勝負あり〜!」
ヒカルの緊張感に欠ける声が聞こえ、うつ伏せに倒れた横島は胸ポケットから小さな白旗を取り出し、ぴらぴら振った。
「・・・用意してたのかよ」
呆れたように呟くリョーコを余所に、横島をキックでKOした彼女は、笑顔で宣言する。
「横島くん、これで私の12連勝ですね!」
明乃の声に答えるかの如く、白旗がぴらりとゆれた。
「いてて・・・」
「はいはい、じっとして下さいよ。絆創膏が上手く貼れないじゃないですか」
「ちょ、バンソーコーぐれー自分で貼れるって! だいたい貼るほどの怪我じゃねーし!」
「駄目駄目駄目です。ホラ、動かないで。いくら傷が小さくてもバイキンが入るには十分です。大体、顔の傷は自分では見えないでしょう?」
明乃は、妙にニコニコ嬉しそうに横島の手当てをしていた。
ここはナデシコ内のトレーニングルーム。横島と明乃は、たまに組み手を行うときがある。横島はあまりやりたがらないが、せっかく修めた技を錆付かせるのはもったいないし、なにより明乃の強い希望で組み手を行う。
結果は全て明乃の勝ち。横島も並ではないが、月で鍛えた明乃の技にはぜんぜん及ばないようである。
そして、明乃は勝利すると必ず横島の手当てをする。どんな些細な傷であろうとも、必ず治療しようとする。むしろ、横島の治療を目的に組み手を行っている気もするが、そこを突っ込むのは野暮だろう。ちなみに、明乃は二人きりだと横島はルパンの如く迫ったりはしないことを知っている。まぁ、例の事件の後は、助平そうな雰囲気はそのままに、人目が有っても迫ることは以前と比べ少なくなったのだが。
余談だが、観戦をしていた三人娘は、見世物は終わったとここを去っている。むしろ勝負の後こそが本当に見るべき所だが、彼女らはそこまで野暮ではない。
って言うか、一人身が見るには辛すぎる光景である。横島はそういうつもりではないようだが。
更に余談だが、今回はいないが大抵一緒にいるモモも、嬉しそうに治療をする明乃を見て自らも治療を試みた事がある。しかし、柄にもなく照れて動く横島の傷を捉えきれず、怪我をしていない場所に大量に絆創膏を貼ることになってしまった。その後、医務室で動く物体に絆創膏を貼る練習を密かに行っている。そしてそれを知っているのはイネス先生とオモイカネだけである。
そのとき、ナデシコが大きく揺れた。
「おわ!?」
「っと!」
明乃は咄嗟に床に手を付き転倒を免れたが、横島は対応しきれず、明乃の方へ倒れこむ。
「むを!」
「きゃ!?」
今度は明乃も対応しきれない。謀らずも横島は明乃の胸に顔をうずめる事になった。れっきとした不可抗力である。念のため。
「!!!!!」
「むぅ・・・! この感触・・・ってやべ!」
時既に遅し。
「せぇあッ!!」
「うごあっ!?」
明乃の放った右ストレートに吹っ飛ばされた横島は、奇妙な懐かしさを感じつつ意識を(三秒だけ)失った・・・。
「あ、ああっ!? 事故だって解ってた筈なのに体が勝手に!?」
げに恐ろしきは条件反射か(そうか?)。
――――――――――
その日のナデシコは平和だった。
「なんか映画でも見てる感じだね〜」
「つってもよ、こんなくそ面白くもねぇ戦闘を見せられたんじゃぁ客の殆どが席立っちまうぞ」
「だったら本物の映画のほうがええが。ぷ、くくくくく・・・」
三人娘はブリッジで退屈そうにはるか前方の戦闘を眺めていた。
その日のナデシコは平和だった。
「はいよ火星丼に温玉カレー! こっちは天津飯とギョーザ二皿ね。モモ、気ぃつけて持てよ」
「ん・・・」
横島が出来たての料理をモモの持つトレイの上に乗せる。モモは重みに耐えつつ、慌てず急いで運ぶ。
「オムライス二つ上がりました! こっちはプレーンオムレツのLサイズ!」
「はいはい!」
明乃の差し出す皿をホウメイガールズのミカコが冷めないように急いで運ぶ。
「醤油に味噌にチャーシューに塩にも一つ味噌ラーメン、おっとシュウマイ五人前も冷めないうちにね!」
「はーーい!」
ホウメイの作った物は残りの4人で一斉に運ぶ。
「・・・俺らがあんだけ作る間にあそこまで・・・」
「私たちの約二倍の作業効率ですね。うーん・・・」
横島と明乃はまた別の料理に取り掛かりつつ、ホウメイの手際に感嘆の意を示した。
「ハッハッハ、年季さね。でも焦るんじゃないよ? まずは一つ一つの技術を確実にモノにする事から考えな! 速さなんてのは後から付いて来るもんだからね!」
「むぅ・・・」
「むむ・・・」
横島と明乃は自分の未熟さを痛感しながらも手を休める事はなかった。どうでもいいが、横島は料理中が一番真面目な気がしてならない。
その日のナデシコは平和だった。
「おらおら〜! 手ぇ動かせそこー! いくら戦闘に混ぜてもらえねぇからって戦闘中には変わりねぇんだからな!」
ウリバタケはメガホン片手にそこら中に指示を出している。仕事に趣味を持ち込んだりする困った癖もあるウリバタケだが、不真面目ではないし指示は的確、腕も確かで融通も利く。なによりパイロットとの仲も悪くない。なかなかどうして、戦艦には得難い人材だ。
「班長! 例の装置のテスト、終わりました!」
「ああ?」
イツキと同時期に入ってきた新入り整備士は、クリップボードをウリバタケに差し出した。
「おお、ふむふむ・・・よし、出力良好、稼働率98%、お〜しOKだ!」
「ありがとうございます」
「ふっふっふ、この装置が有れば、備え有れば憂いなし・・・。こんなこともあろうかと・・・。ク〜〜〜ッ! いっぺん言ってみてぇ台詞だよなぁ〜」
「はは・・・。僕の知り合いも班長と似たことをたまに言いますよ」
「ほお、お前さんの知り合いにも話の分かる奴が居るじゃねぇか」
うんうんと頷くウリバタケ。新入り整備員は苦笑しつつ、
「あの、とりあえず僕は弾薬等の点検をしましょうか」
「うん? そうだな。よし、お前さんはもう1回弾薬のチェックだ。こういうのはやってやりすぎってのは無ぇからな。クルーの生死は俺たちの腕にかかっている! 忘れんなよ」
「はい」
新入りは笑顔で会釈し、弾薬の方へ向かう。
「チーフ、あの新入り頑張ってますねー。最初はもたつく事もあったけど」
「ああ、そうだな。覚えもいいし仕事もきっちりするしな。…ただなぁ…」
「そうっすねー…」
ウリバタケと話しかけた整備員Aは同時にため息をつき、
「「あれで美形じゃなかったらなぁ………」」
新入りが向かった方向から、くしゃみの音が聞こえた。
ドクターカオスはウリバタケらの方にちらりと目を向け、
「……楽しそうでいいのう、あっちは」
「イエス・ドクター・カオス」
いつもは他の整備員と話す機会があるカオスらだが、最近は横島らに急かされているせいかあまり話さない。
「ま、仲良くやっとるようで何よりじゃ」
「イエス・ドクター・カオス」
何はともあれ、平和だった。
平和で暇なのはブリッジクルーも同様だった。
「暇ねぇ」
「そうですね」
「なんか私たちって仲間外れにされてるっぽいし」
「そうですね」
ミナトは頬杖をつき、メグミはファッション雑誌を読んでいた。ちなみにルリは、モモが食堂の手伝いに行っているために暇で、何か出前でも頼もうかと考えていた。
「メグミちゃん、実は私の話聴いてないでしょ」
「そうですね」
「…「水の戯れ」の作曲者は?」
「ラヴェルですね」
「聞いてるじゃないの」
「そうですね」
「…」
さすがに黙り込むミナト。そこへエリナが怒声を張り上げる。
「ちょっと皆気を抜きすぎ! 戦闘中なのよ!?」
一応黙って戦闘を眺めていたユリカだが、
「でも、私たち呼ばれた割にはお呼びでないって感じですし」
「あの規模の敵戦力なら連合でも撃退可能でしょう。それに弾薬等の消費が出ないのは何よりですし…ハイ」
プロスも電卓を弾きながら相槌を打つ。
「艦首下部にボソン反応」
「え?」
ルリの突然の報告に間の抜けた声をユリカが上げた時、
爆発音と共にナデシコは大きく揺さぶられた。
「何!? 何がどうなってるの!?」
「何と言われても、ボソン反応が現れた直後に大爆発。それにしては被害が少ないようですけど」
その時、格納庫のウリバタケが突然コミュニケで通信してきた。
『なんだなんだ、今の爆発は! ディストーションブロックが無かったら酷ぇ目にあってたとこだぞ!』
「ディストーション…ブロック?」
ユリカが戸惑いつつ呟いた瞬間、待ってましたと言わんばかりにウリバタケのメガネがキュピンと光った。
『ディストーションブロック! それは重要な機器を個別にディストーションフィールドで防御し被害を最小限に抑える新技術! こんなこともあろうかと密かに開発してたのさ〜あ!
こんなこともあろうかと…こんなこともあろぉうかとぉ! …っく〜! 一度言ってみたかったんだよ、この台詞…』
微かに涙さえ浮かべて感激するウリバタケ。
「はぁ」
さすがのユリカも呆れ顔だ。
「しかしウリバタケさん」
プロスが眼鏡の位置を指で直しつつ、前に出た。
「先日、無断改造・無断開発についてきっちりとペナルティを課した筈ですが・・・。全然懲りてませんなぁ」
その言葉を聞いたウリバタケは、ぴしりと動きが止まったかと思うと、数秒後にはカタカタ震えだした。
「懲りてないというより、少々ペナルティが優しすぎましたか。いやはや、ワタクシも丸くなった物です」
カタカタ。
『あああああああああいやいやいやいやいやいやだだだだだんな、ここれ以上ははは、あたあたあたまががこわこわれちまうってばよよ』
カタカタカタカタ。
「おびえる事はありません。ただ今後の事について話し合うだけじゃありませんか」
プロスの眼鏡が静かに光った。
「念入りにね・・・」
呟き、ブリッジを出るプロス。ブリッジの人間は無言で見送るしかなかった。
「メ、メグちゃん、今回はちょっとやばいんじゃないの?」
「大丈夫ですよ。ウリバタケさんの改造のおかげで被害が最小に抑えられたのは事実です。死ぬよりはマシな程度に手加減されるはずですよ。たぶん」
「多分って・・・。って言うか、死ぬよりマシな程度って一番辛いんじゃないの!?」
ミナトの言葉に、メグミはちちちと指を振る。
「もし改造が有益じゃなかったら、死んだほうがマシな目に合わされてたでしょうね」
「・・・」
なにそのリアルバウト高校。
「そんなことはどうでもいいのよ! 早く何とかしないとまた攻撃がk
「またボソン反応」
エリナが焦った様子でまくし立てると、それに被せる様にルリの報告が入る。
「! 上昇してください!」
「りょ〜かい」
ユリカもさる者。今度は瞬時に命令を下し、急上昇した為に爆発はフィールド外で起こった。ナデシコは無傷だ。
「さっきより狙いが正確になってます」
「むむむ…こうなったら逃げましょう!」
「逃げる? どこに逃げるって言うの?」
「地球の外までです!」
――――――――――
「ふん、地球の艦にしては骨があるとは聞いていましたが、逃げることしか出来ないとは。噂とは当てになりませんな」
「いや。跳躍砲の狙いの甘さにいち早く気がつき、射程外に離脱した。事実、未だに仕留められずにいる。あの艦の艦長はなかなかの食わせ者だぞ」
ここは地球に程近い宇宙空間。木連の戦艦「かんなづき」は地球から離脱したナデシコを目下追跡中だった。
かんなづきの艦長、秋山源八郎の言葉に、副官、高杉三郎太は眉をひそめた。
「考えすぎではありませんか? やつらは逃げているだけです」
「確かにそうだ。だが今のままではどうやっても仕留められんのもまた事実。対抗手段を思いつかれる前に勝負を掛けたいところだが」
「…追いつけない追いかけっこなら、ホームグラウンドである奴等の方が有利、か」
三郎太は、不機嫌であることを隠そうともせず呟く。
「そう。それにだ。舞歌殿によると、あの艦には横島がいるそうだぞ」
「横島、ですか」
その時の三郎太の表情は、なんとも複雑なものだった。嫌悪や侮蔑などの負の感情の中に、ほんの少しだけ惜しむような色が見えた。
「…別に奴が居たからといってどうなるものではないでしょう」
「そうだといいがな」
源八郎は軽く頷く。
「それはともかく撫子のことだが、やっこさんも何時までも逃げているだけではいられんだろう。やつらの勢力圏も無限ではあるまい」
「限界が来る、ということですね」
「そういうことだ」
源八郎はにやりと笑みを作る。
「その時が勝負だな。
さて、お手並み拝見」
源八郎が呟いた瞬間だった。
「な、撫子の反応、消失しました!」
「何!?」
オペレーターの報告に三郎太は驚いた顔でレーダーを見る。
「どういうことだ・・・?」
「ふむ。そう来たか」
かんなづきの一室。
「・・・フン。そう来たか」
ナデシコがレーダーから消失したのは、ユリカの作戦のせいである。現在、ナデシコは最低限の生命維持以外のシステムをダウンさせている。電波も発していないので、木連からしてみれば、急にレーダーから消えたかのように見えた。
そして、ユリカはさらに策を仕掛けていた。先程までの進路上に、ミサイルをばら撒いておき、ナデシコはそのルートから外れたのだ。勿論、ミサイルは点火していない。ナデシコがミサイルから充分離れてから初めて点火させ、木連に発射位置を誤認させようとしたのだ。機動兵器によるドッグファイトにさえ持ち込めば、味方を巻き込みかねないため跳躍砲(ユリカは便宜上ボソン砲と名付けた)は使えない。
なのでその距離まで木連が接近してきた時にエステ隊とナデシコで総攻撃をかけようとしたのだ。なにしろ、レーダー上では隣接しているように見えても、肉眼では判別できないほどの距離。型破りながら有効な策と言えるだろう。
だが、相転移エンジンさえ停止している、つまりディストーションフィールドさえ張ることが出来ない今、可能性が低いとはいえ敵に察知されればひとたまりもない。まだまだナデシコ有利とはいえ、予断を許さない状況だ。
しかし、その状況をいきなりぶち壊す事の出来る人物が、双方の艦にはいた。一方は勿論横島忠夫。もう一方は・・・。
「艦長。撫子が居ると思われる付近には手応えがありません」
「ミサイルは時限式の物だったか。さて、どうしたものやら」
源八郎がアゴを撫でさすりながら呟いた時、格納庫から通信が入った。
「ん?」
回線を開くと、
『よう、なかなか難儀しているようだな』
「んなっ!? あなたは・・・!」
「・・・搬入物が予定より多いことに疑問は抱いておりましたが」
三郎太は驚き、源八郎は苦笑をもらした。
『どれ、俺が出撃(で)てやろう。元よりそのつもりだったがな』
「止めても、無駄なのでしょうなぁ。
・・・格納庫で作業する人員に告ぐ! 今から機動兵器が出るが、邪魔はするなよ!」
『前から思ってたが、お前は話が早いな。助かるぞ』
隣で三郎太が、「柔軟すぎますよ・・・」と呟くが源八郎は聞こえない振り。
「ところで、何か策でもあるのですか。レーダーなしで戦艦を探すのは砂漠に落ちている針を探すより難しい」
『なに、そこはそれ』
もういい加減バレバレだろうが、通信先の赤毛の人物・・・北斗は、獰猛な笑みを浮かべて言った。
『勘だ』
きっぱりと告げた北斗は、オープンされたハッチから、勢い良く宇宙に飛び出した。
その方向は、確かにナデシコのある方角だった。
――――――――――
一方その頃。エステバリスプラスアサルトピット内。
「しっかし、艦長も思い切ったこと考え付くな」
『ホントですね』
横島の呟きに明乃が合槌を打った。最低限のシステムをダウンさせても使用できる超短距離通信だ。
『僕はもう慣れたよ』
『それに、理に適ってるといえば適ってるし』
アカツキとイツキにも動揺は見えない。初期の六人については言うまでもない。
『ギリギリまで近付いたら、ミサイルを点火させて注意を別方向に向ける。んで、その隙に後ろから突撃かぁ』
『向こうに感付かれなきゃな』
『・・・釣りに焦りは禁物・・・。餌を撒いてじっくり観察・・・。アオリイカ、釣れますか? 煽り厨は、釣れますか? ふ、ふふふふふふ・・・』
『俺は早くこのゲキガンソードを振るいてーっ!!』
ガイは片手に持ったCFランサーをぶんぶん振り回す。
『ちょっとヤマダ君、静かにしてよ〜。無音だけど何か向こうに勘付かれそうな気がする〜』
『だから、俺はダイゴウジ・ガイだと何度(以下略)』
いつも通り緊張感に欠ける仲間の声をBGMに、横島は文珠を一個取り出す。
(しかし暇や・・・。無駄遣いはしたないけど敵さんの様子でも見るか)
この横島の気まぐれは、結果的に大正解だった。
『覗』
文珠を発動させる。横島が敵艦の様子を何気なく見たところ、
「ぶっ!!」
ちょうど鬼神皇が発進したところだった。
『なんだー?』
『どしたー?』
その問いにも答えられなかった。鬼神皇は、ナデシコに向かって直進しているように感じる。
「・・・来た」
『何がですか?』
「北斗が来た!」
横島が叫んだ瞬間、
「!!」
モモは、はっと顔を上げた。
「艦長、今すぐ相転移エンジンを再起動させて・・・!」
「え?」
ユリカは面食らった様子でモモを見た。そして、
「艦長、艦後方にボソン反応です」
「な!?」
その瞬間、大きな衝撃にナデシコは激震した。まだ相転移エンジンを再起動させていないのでモロに被弾した。
「・・・っ、被害状況の報告を!」
「サブエンジンに被弾。航行に支障はないですけど、速度が17%ダウン」
「支障あるじゃん!」
北斗は、人間離れした視力と勘でナデシコの位置をなんとなく割り出し、源八郎に跳躍砲の着弾点を指示したのだ。いくら目視が不可能だといっても宇宙では近距離。今現在、ナデシコの位置は跳躍砲の射程にバッチリ入っている。
「エステバリス隊、今すぐ敵艦を総攻撃してください! ナデシコも敵艦に向けて全速前進!」
「ちょっと、艦長! そんな無謀な事は止めさせなさい! あなたの無茶な作戦は失敗したのよ!? ここは一旦体勢を・・・」
「無理ね」
ムネタケがのんびりお茶を啜りつつ言った。
「提督・・・」
「今からじゃとても逃げ切れないわよ。こっちの速度はダウンしているわけだし、ボソン砲の射程外に逃れられるとは思えない。だったら敵を撃破するほうが生き延びる確率は遥かに上よ」
「・・・」
エリナとてトーシロではない。ムネタケの言う事が正しい事ぐらい冷静になれば分かる。
「もう・・・分かったわよ。ていうか、最近の私ってこんな役ばっかりね」
エリナはこの状況でも笑顔のユリカを軽く睨み、副操舵士の席に腰を下ろした。
「・・・ところでモモ」
ルリは隣のモモに小声で話しかける。
「何」
「なんで敵が来るって判ったの?」
「勘」
「え?」
「女の勘」
「・・・・・・」
「冗談」
「・・・・・・・・・・・・」
じゃあ結局なんなんだろうと思ったが、口には出せないルリだった。
「じゃ、ナデシコ全速前進! 目標、敵戦艦!
あ、スピードはエステ隊をギリギリ置いていかないくらいで!」
――――――――――
状況は、ナデシコの圧倒的不利に見えた。
ナデシコは相転移エンジンを再起動させたことによって、レーダーにも捉えられるようになり、跳躍砲の連続攻撃を受け続けている。ディストーションブロックによって決定的ダメージは受けていない物の、敵艦が射程内に入るまでどれだけの損害を受けるかは予断を許さない。
しかし、源八郎の表情は、勝利を確信している様子には程遠い物だった。
「・・・・・・」
「どうしました艦長。この状況では我が方の勝利は、もはや揺ぎ無いのでは?」
「確かに、な」
源八郎は、腕を組み、唸るように同意した。同意したが、表情は厳しいままだ。
モニター上では、北斗の鬼神皇と横島の機体(エステプラス)が激突したところだった。ナデシコ側の他の面子は、直接母艦を叩こうとしている。程なく、迎撃部隊と戦闘に突入するだろう。
「・・・だが、偶然か知らんが、奴ら跳躍砲を避け過ぎているような気がするが・・・」
「やつらも必死ということでしょう。こちらにもっと接近すれば、距離による誤差も少なくなって命中率も上がるはずです」
「確かにその通りだな」
(・・・しかし気のせいか、僅かだが逆に命中率が下がってないか・・・?)
――――――――――
『久々だな忠夫。さて、以前の借り、ここで返させてもらう』
「・・・いや、遠慮したい。つっても無理やろーけど」
エステ隊と北斗が接触した際、一番最初に交わされた会話がこれである。多くの言葉など必要ない仲なのかも知れない。
『これから貴様に決闘を申し込む。まさか否とは言わんだろうな』
北斗のこの言葉に対し、
(言いたい。否って言いたいぞ)
見も蓋もないことを考える横島だったが、さすがにここまで来たらどうにもならないことをいい加減学んでいた。
「わーったよ。やるしかなさそうやな」
『横島くん、私も手伝います!』
明乃が助太刀を申し出るが、
「え、でも決闘だし・・・」
戸惑うような声で横島は言った。以前の横島なら、強敵に対し正面から戦うなど決してしなかっただろう。無様な姿を晒そうとも、一番大切なのは自分の命で、自分が弱い事を理解していたからだ。イカサマ、奇策、戦略的撤退、何でも有りだ。もっとも、戦う力を手に入れても余り変わらなかったが。
しかし。未来に来てから今まで数々の修羅場を潜り抜けてきた横島である。以前と比べ頼られることが多くなったことも手伝ってか、タイマンくらいならあっさり承諾してしまうようになっても無理はないだろう。意識無意識に関わらず頼ってしまう美神もいないことだし。
『フン、俺は二対一でも構わんが、あの戦力だけで秋山が率いるやつらを倒せるのか?』
「秋山さんか・・・!」
白鳥、月臣、秋山の三人は、実力、人望共に高いレベルで拮抗している。だが、横島は秋山に対しては、どこか苦手意識を持っていた。確かに、豪放磊落で柔軟の思考を持つ人物は横島の戦闘スタイルでは相性が悪そうだ。
余談だが、横島は三羽烏の中で、唯一秋山だけは二人称に“さん”をつける。横島にとって(珍しく)好感の持てる人物であることもそうだが、他の二人には無い雰囲気がそうさせるらしい。
閑話休題。明乃に心配されるのは悪い気分ではないし、リョーコらの実力を疑うわけでもないが、敵は大量の無人機+ジンタイプ。敵艦はナデシコが請負うとしてもグラビティブラストの危険は常に付きまとう。割ける戦力は出来るだけ多いほうが良い。
「明乃ちゃん、ここは俺に任せといてよ。大丈夫大丈夫!」
『でも・・・』
明乃はまだ納得できていないようだ。
「?」
横島は首をかしげる。何をそんなに心配しているのか。
それは勿論、明乃は恋する乙女であるからなのだが横島は其処に思い至らない。鈍感万歳。
「明乃ちゃん、俺には夢があるから。それを叶えるまでは死なないって。多分」
甚だ頼りないその言葉に、渋っていた明乃はついに頷いた。
『・・・わかりました。確かにここは皆に加勢したほうが正しいんでしょうね』
そう言って明乃は横島に背を向けたが、最後に一言。
『向こうが片付いたら応援に来ます。その時、横島くんの夢がなんなのか・・・教えてくださいね』
そう言い残し、明乃はバーニア全開で飛び去った。
「うおっ」
流石はヘリアンサス。ここ暫くはあの機動力に勝つ機体はできそうにない。
『・・・ふん、欠伸が出そうなやり取りだな。俺も気が長くなった物だ』
待たされていた北斗が、憮然とした表情で言った。
『だが、ニ対一で無くて本当によかったのか? 後悔しても遅いぞ』
「お前こそ、応援呼ばなくて良いのか? 零ちゃ〜ん、ボスケテーとか言って」
『ぬかせ』
字面だけでは軽口の応酬に見えるが、両者の間に高まる緊張感は、弦を引き絞るように張り詰めていく。
『・・・ところで忠夫』
「なんだよ」
『さっき言ったお前の夢とはなんだ?』
「ああ、武道館で大勢の美女にもみくちゃにされながら『ジョニー・B・グッド』を歌うことだが」
『・・・・・・・・・』
北斗の頬に、一筋の汗が流れた。
『・・・・・・・・・・・・・・・。その夢は明乃には言わないほうが良いと思うぞ。
・・・なんとなくだが』
――――――――――
一方その頃、エステ隊とナデシコは敵の第一波と交戦状態に入ったところであった。
『このっ!』
新型バッタに向け、イツキのラピッドライフルの弾丸が正確に叩き込まれる。爆発。
『イツキちゃんやっる〜ぅ』
『ゲキガンソーーーーーーーード!』
ぼかーん。
『はい。でもこいつらやっぱり固いですね。恐らく、無人兵器の一機一機がフィールドを張ると考えていいでしょうね』
『ゲキガンソーーーーーーーーーーーーード!!』
ぼかーん。
『疲れる話だねぇ』
アカツキが相槌を打つ。
『・・・呪いのビデオ』
イズミが突如ぼそりと呟く。
『は?(ガイ以外全員)』
『憑かれる話。疲れる話・・・。ぷっ、くっくっくっくっく・・・』
『・・・』
『ゲッキガンソーーーーーーーーーーーーーーーーーーーード!!!』
ぼかーん。
『・・・(ガイ以外全員)』
『ゲ・キ・ガ・ン・ソ『うるっせーんだよっさっきから!!』
リョーコがガイ機を背後からドツキ倒す。
『なにすんだよ!』
『叫ぶなたぁ言わねーが、煩すぎンだよお前は! せめてコミュニケ切れ!』
『ウォークライだろ、ウォークライ! 戦意高揚だろ? 高揚するだろ!?』
『うるさいです』
『黙りたまえ』
『集中できない』
ガイの主張も仲間たちによってあっさり切り捨てられる。
ちなみに、このやり取りの間も皆さんしっかり敵を片付けてます。
『でも確かに、ガイさんみたいにCFランサーで戦うのが一番かもしれませんね。今の状況では』
『・・・ふぅむ。よし、各機へ! 多少の被弾はやむなし! とにかく敵を切り捨てて、敵艦への血路を開くんだ!』
「エステバリス部隊は頑張っている様ですなぁ」
「じゃなけりゃ困るわよ!」
副操舵士であるエリナが必死こいてミナトのサポートをしている。当のミナトに至っては、一言も発しないほどに集中している。
「右舷のやや下」
「艦中央」
「!」
ルリとモモがなにやら指示を出し、その言葉にミナトが鋭く反応している。
「まずいね、ユリカ」
ジュンが他のクルーに聞こえないように話しかける。
「うん・・・無人兵器が邪魔するせいでスピードが落ちてる。せっかく皆がナデシコが突破しやすいように頑張ってるのに」
「ボソン砲もそのせいでまた命中し始めてる」
ジュンは深刻な顔で呟く。ナデシコが大きく揺れた。
「皆さんの活躍は目覚しいです、ハイ。しかし数が多すぎますなぁ。横島さんとテンカワさんが戦線を離れたのは痛い」
「無いものねだりしても仕方ありません。ここはみんなの力を合わせて―――」
その時、エステ隊が討ち漏らしたバッタ二機が、ブリッジ正面に回りこんできた。
「―――――!!」
逃げ場のない場所で向けられる銃口。フィールドがあると分かっていても、全員の背筋が凍りついた。
「衝撃に備えてくださいっ!」
賞賛に値する反応でユリカは指示を出した。
直後に閃光と爆発音が炸裂する。
「・・・・・・?」
しかし、衝撃は全く来ない。クルーが恐る恐る目を開けると、
「アキノ!」
二刀で一機ずつを切り裂いた、ヘリアンサスの勇姿があった。
キラキラ輝くユリカの瞳は完全に王子様を見る目だ。
「さっすがアキノ! さっすがユリカの王子様!!」
『いや、女だから・・・』
律儀に突っ込む明乃。その手の台詞は聞き飽きたと言わんばかりの表情だ。
『おせーんだよテンカワ!』
『さては美味しいところを頂こうとタイミングを計ってやがったな!?』
『ヤマダさんじゃないんだから・・・』
『だぁから! ダ(以下略)』
ぎゃいぎゃい騒ぎつつも手を止めてないあたり流石だ。
「テンカワさん、横島さんは?」
『北斗を足止めしてます』
「そうですか。ふぅむ・・・」
「なんにせよ、アキノが来たからには千人力! 一気に突破しちゃいましょう!」
ユリカの言葉に、明乃が同調する。
『そうね。接近してゲキガンタイプさえ誘い出せば、味方を巻き込みかねないボソン砲は使えないはず。そうなればもう勝ったも同然・・・! 行くわよ、ユリカ!!』
いつに無く好戦的な明乃に、味方はしばし呆気に取られる。
(アキノ(テンカワ・テンカワさん・テンカワ君・アキノちゃん・アキノさん)が燃えている・・・!)
『てえええええい!!』
その様はまさに獅子奮迅。再度戦局は一変した。
――――――――――
「なんだあれは・・・! あの赤いやつ、何という強さだ・・・」
「敵艦、跳躍砲回避!」
「スピード落ちません!」
次々と報告が入る中、三郎太はいらだたしげに怒声を挙げた。
「この距離でこれほど外すとは! 照準器は正常なのか!?」
「いえ、ミサイルは狙った位置にほぼ正確に送り込めています!
コレは・・・敵艦はこちらの攻撃を先読みしているとしか思えません!!」
「なんだと・・・!?」
源八郎はその報告に瞠目した。
「艦中央」
「ブリッジの中」
ナデシコのブリッジにて、ルリとモモが無表情に言葉を紡ぐ。
「りょ〜かい!」
それを受け、ミナトがナデシコを操作する。
ナデシコは前進しつつもやや進路を変えた。その数瞬後、フィールド外に跳躍砲がボソンアウト&爆発した。先程までの進路で進めば、そこはブリッジがあった場所だった。
「またまた的中! さっすがルリちゃん達!」
「稀代のマシンチャイルドがボソン砲の攻撃位置を予測、か。オモイカネを使えばその的中率は8割を超える。
しかもそれが二人分ともなると、その的中率はほぼ10割。作戦もいいけど、これは人材の勝利ね」
イネスが感心したように呟く。平たく言えば、二人で跳躍砲の最も確率の高い出現位置と二番目に高い出現位置を言っているだけなのだが、マシンチャイルドともなると、その正確さは段違いだ。
「狙いが正確になったおかげでイレギュラーも少なくなったから。もう当たらない」
モモが淡々と言った。別段誇る様子は無い。
「テンカワさん達が頑張ってくれてるので。敵が邪魔で避け切れないこともありませんね」
ルリも同じく淡々としている。
「最年少の二人が一番頼もしく感じるなんて・・・。やっぱこの艦間違ってる・・・」
エリナがぶつぶつと呟く。誰も聞いていないが、聞いていたとしても異論を唱える者はあまりいないだろう。
「相転移エンジン上部」
「右舷のど真ん中」
「恐ろしい奴等だ・・・・・・!」
拳を握り締め、源八郎は呻いた。その体に震えが走る。恐れではなく武者震い。その顔には笑みさえ浮かべている。
「敵艦、さらに回避!」
「ええい、くそッ!」
狙いが正確でない方が命中しやすいとは、なんとも皮肉な話である。
「奴等がここまでやるとはッ! 艦長、私もデンジンで出ます!!」
「おい、待て!」
源八郎が止めるも、三郎太は既にブリッジを出た後だった。
「・・・困った副長殿だな。仕方ない、他の優人部隊も出撃! 援護してやれ!」
『ゲキガンタイプの大安売りかよ! ・・・つっても四体だが』
この段階ではかなりの大量投入である。
「みんな! ジャンプに巻き込まれないように気をつけて!」
『今更言われるまでも無いですよ!』
イツキが明乃の声に応え、ライフルで牽制しつつロンギコルニス(イツキのCFランサー)で突きかかる。基本通りながら、よどみない動作に技量の高さが伺われる。
『ッしゃあ! やってやるぜ!!』
『やれやれ。ヤマダ君のフォローに回るか』