注意:このSSは壊れてます。ヤマ無し意味無しオチ無しです。本編との関連もちょっとだけありますが、壊れたものが嫌いな人は、即刻「戻る」で撤退したほうがいいです。
それでも構わないという方のみ、下に向かって出発進行!
GS横島外伝・「明乃の闘い!!」
〜月面の赤い衝撃編・前編〜
「ハァッ!!」
腰を落とし、腰を回し、手首を伸ばし、右の拳を前方に突き出す。そしてその一連の動作は常人には視認できないほどの速さだ。
拳を放ったのは、汗だくの天河明乃。
「・・・!」
パシィッ!!
だが、疾風の一撃は、ギリギリのところで木刀で逸らされる。
逸らしたのは、月警官の長、神無。
「しまっ・・・!」
その時明乃が見たのは、自分に向かって振り下ろされる、木刀だった。
そして、それが目に入った瞬間、明乃の意識は暗転した―――――。
「はっ!?」
「起きたか」
明乃は覚醒すると同時に周りの状況を把握。
ここは気を失う前と同じ格納庫。そばには水の入ったバケツを持っている神無が居る。どうやら水をかけられようとしているようだ。ということは、それほど時間は経過していないようだ。
「いたたた・・・。やっぱりまだ神無さんには勝てませんね・・・」
「いや。私も危ない所だった。と言うか、月警官(げっけいかん)49人を倒してここまでやるとは瞠目に値するぞ」
つまり、明乃は月警官50人抜きを行っており、50人目の神無に敗北したということである。
「あー明乃ちゃん惜しかったわねー。神無、最後の一撃の時は冷や汗モノだったでしょ?」
「・・・・・・・・・」
明るく声をかけてきたのは、離れた所で見ていた朧。月神族の長、迦具夜姫付きの女官で、性格は正反対で朧のほうが地位が上な気もするが、傍から見る限りは対等の仲の良い友人だ。
それはさておき、朧の指摘は図星だった。神無は、明乃の性格はともかく、その武術の才能には恐れにも似た気持ちを抱いている。
特に自分の得意な技、しかも決して簡単ではない技を一度食らった後にそのまま返された時には背筋が震えた。だから、今まで49人の月警官を倒して疲労する明乃を反撃に徹し、それのみで倒してきた。これなら技を見切られ、憶えられることは無い。
しかし、今では疲労しているはずの明乃の攻撃を捌くのさえ困難になってきている。恐るべき才能。
・・・・・・まあ、あまり悔しくないのは不思議だったが。あの地球の民、横島との知りあいだからか。横島の知り合いなら、とんでもなくてもある程度は納得できる。
「あ〜・・・。最近なんか行き詰まってるなぁ。なにか、何かが足りないような・・・」
「あのね。あっさりクリアされたら神無や神無の部下たちの立場が無いでしょ」
「・・・・・・・・・」
そういえば、と神無は思った。最近明乃の猛攻を裁ききるのが困難になってきているとは言え、そうなってからはあまり変化が無いような気もする。
「明乃ちゃんって白兵戦術だけじゃなくて、操縦訓練や料理の特訓もやってるんでしょ? どれか一つに絞ったほうがいいんじゃないかな・・・。何回も言うようだけど」
「・・・・・・。でも、横島くんは全部凄いです。白兵戦は並だと思うんですけど、異常に打たれ強いし、霊力はあるし・・・。それに、ナデシコに帰ってきた後は心なしか身のこなしが良くなっていたような・・・」
それは、木連で木連式柔を習っていたからである。
「それに、いくら戦闘経験があったからってエステの操縦はリョーコちゃんたちとタメ張ってるし、料理だってキャリアは私のほうが長いはずなのに・・・」
「「・・・・・・・・・・・・」」
改めて聞くと凄まじいまでのポテンシャルだ。只者ではないと知っていたとはいえ。
だが、明乃だって格闘技、エステの操縦技術、そして料理の才能の凄まじさといったらもうただ事ではない。それでも伸び悩んでいるのは・・・・・・。
「天河。格闘、操縦、料理の三つを同時に極めようとするのはまあいいだろう。お前の決めたことだ。
だが、最近焦りが過ぎるのではないか? がむしゃらになるだけが能ではあるまい」
「そう・・・ですけど」
「明日あたり休息を取ったらどうだ?」
「そうね。このままだと効率悪いし」
「・・・・・・・・・・・・」
明乃は暫く迷っていたようだが、
「解りました。明日は休むことにします・・・・・・」
そう答えた。
――――――――――
その日の夜。
「ねえ明乃ちゃん。明日、映画に行く気ない?」
「映画・・・?」
ここは明乃の居候先の因家。話し掛けたのは伊佐美家の一人娘、因 久美(ちなみ ひさみ)だ。明乃を拾ったのも彼女である。
「うん。うちって食堂やってるじゃない。で、父さんが盲腸で入院しちゃったでしょ? だから、明日行くはずだった映画に行けなくなっちゃったのよ。家の手伝いしなきゃならないから」
「・・・映画に行くのはいいんですけど、なんで代わりの人が必要なんですか?」
久美はうーんと唸り、映画のチケットを取り出す。
「これ、見て」
明乃は久美の手元を覗き込む。
「えっと・・・・・・4名様専用割引券!?」
「そう。私が居ないと割引が効かなくなっちゃうんだ。その映画は特別見たいってわけじゃないし。だから明乃ちゃんはどうかなあって」
「んー・・・・・・」
明乃はしばし悩む。
「ってことはですよ。映画には私の他に三人の人が来るってことですよね?」
「ああ。だいじょぶだいじょぶ。一応、皆いい人だから。知り合いになったのはここ最近のことなんだけど」
「ここ最近?」
「最近月に来たのよ。出身が激戦区だから疎開に来たんだって」
「へぇ・・・」
「どうする? 行かないんなら断りの連絡入れるけど」
「・・・・・・・・・」
明乃はしばらく沈思し・・・・・・。
――――――――――
「初めまして。私、天河明乃です」
結局行く事にしたようだ。
「こちらこそ。私はアリサ・ファー・ハーテッド。こっちは姉の、」
「サラよ。よろしく、テンカワさん」
「明乃でいいですよ。サラさん」
明乃は内心少々面食らっていた。いい人そうなのは勿論、姉妹共々超がつきそうなほどの美人である。しかも姉が金髪、妹が銀髪と、どんな偶然やねんと横島ならずとも突っ込みを入れたくもなる。スタイルも申し分ない。サラの持っている大きめで青い縦長の布袋が気になるが・・・
「で、こっちの人は・・・」
明乃は最後の一人のほうに目を向けた。
見た感じは黒髪オールバックにグラサン。どこにでも居そうな出で立ちだが、そこはかとなく只者ではなさそうな雰囲気を纏っている。
だが、心なしか顔を引きつらせているような気がする。あ、今半歩後ずさったような。
「ナオさん?」
どうやら「なお」という名前らしい。
「き、きみはっ!?」
「はい?」
明乃は首を傾げる。向こうはこっちを知っているかのようだ。
「ナオさん、知り合い?」
「惚れた?」
「い、いや、失礼。知人に似た人が居るもので・・・」
「はぁ」
「改めて、この人はヤガミ・ナオ。怪しそうだけど、一応私たちのボディーガードみたいなものかな」
「よろしく」
「こちらこそ」
ナオの様子が若干おかしいものの、自己紹介は終わった。
「それじゃ、早速だけど映画見に行きましょうか?」
異論は出なかった。
「え!? お二人のおじいさんってそんなに偉い人だったんですか!?」
映画を見終わった後のランチタイム。4人は近くのファミレスに入り、話に花を咲かせていた。
「それだけじゃないぜ。アリサちゃんはなんと、あの有名な「白銀の戦乙女」と呼ばれているエステバリス乗りなのだ!」
「おお〜ぱちぱちぱち〜」
ナオの口上にサラが手を叩く。叩く音さえ口に出している。
だが、
「・・・・・・。えっとごめんなさい。知りませんでした」
「もう! 姉さんもナオさんもやめてよね・・・。ただでさえ恥ずかしい呼び名なのに、知らない人に言ったら恥ずかしさ4倍じゃないの!」
「ごめんなさい。そういうのには疎くて」
「あ、別にいいのよ。って言うか、多少腕が立ったところで、西欧は結局守れなかったわけだし・・・。あの「白銀の剣狼(はくぎんのけんろう)」の足元にも及ばない・・・」
白銀の剣狼。明乃の知らない単語だ。
「はくぎんのけんろうって・・・なんですか?」
「「「・・・・・・・・・え!?」」」
その時、三人の動きが止まった。
「白銀の剣狼を知らない!? アリサちゃんを知らないならともかく、それさえも知らないなんて疎いどころの話じゃないぜ?」
「そ、そうですか?」
「そうよ! 説明すれば、白のエステバリスを颯爽と駆り、特注のイミディエットサーベルを携え、神技ともいえる操縦技術で木製蜥蜴をばっさばっさと切り捨てる! その名も、「白銀の剣狼 犬塚シロ」!!」
「そ、そうですか・・・・・・」
アリサの興奮具合のほうが凄いと思うのだが。なにせ、すごいすごいといっても、ナデシコにも凄い人はたくさん居たのでいまいちピンと来ない。
「本当か嘘かは知らないけど、その実力は地球圏最強って聞くわね」
「何言ってるの姉さん! ホントに決まってるでしょ!!」
(よっぽど尊敬してるんだなぁ・・・)
そこの所に感心した時、ナオが明乃のIFSに気が付く。
「お、アキノちゃんもパイロットか?」
「あ、ホントだ」
「ええ・・・。臨時ですけど。本当はコックなんですけどね」
そういえば、この説明を今まで何度してきただろうか。
「臨時かぁ・・・。どこの軍なの?」
「軍って言うか・・・・・・ナデシコって戦艦に乗ってたんですけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(三人)」
今度こそ絶句する三人。
「「「な、なでしこぉ〜!?」」」
「な、なんですか?」
「あの火星帰りの!?」
「敵と味方に破壊をふりまく遊撃愚連隊と名高い!?」
「ってゆーかやっぱり見間違いじゃなかったのかーっ!?」
サラとアリサの目が語る。
曰く、「この子、只者じゃない」
ナオは緊張に身構えてさえいた。
「遊撃愚連隊って・・・」
色々あったことは確かだが、皆良い人ばかりであると説明しようとした。が、三人の反応が面白いので放っておくことにした。
「あ、その白銀の剣狼って、どんな人なんですか?」
「うん。私も月の軍に来て初めて生を見たんだけど、もうすっごい美人なのよ! 背は高くて体は引き締まってて、それでいて出る所は出てて・・・。しかも佐官どころか少将になってもおかしくない戦果を上げてるのに、前線に立つ為に大尉のままなのよ!」
「それは・・・確かに凄すぎますね」
「それで相棒の人がまた凄いの! 狐白タマモって人なんだけど、この人は「金色の魔術師(こんじきのまじゅつし)」って呼ばれてて、軍のシミュレーションでは607勝0敗1分けっていう空前絶後の記録を残してるの。
この人は大佐で、犬塚大尉の所属する戦艦の艦長なのよ! それでいてエステにも乗って戦えるの!」
「うう・・・す、すごいんですけど、いくら疎いといって訊いたことないってのはなんか変ですね」
「うん・・・。あ、もしかしたら、その狐白大佐の艦って・・・あ、艦の名前はミョゾティスって言うんだけど、結構辺鄙な所で戦わされることが多いのよ。しかも1艦で。上層部は何考えてるんだって意見も多いのよ。今は月に駐留してるけど」
「へぇ・・・」
確かに変だ。ナデシコより強そうな艦が、ナデシコ紛いの、しかも辺鄙な所で戦っている。
「もしあの時西欧にミョゾティスを寄越してくれたら・・・」
サラがボソリと呟いた時、
「よー、ねーちゃんらえらい別嬪やないか?」
「ちぃとばかし、ワイらと茶ぁしばかんか?」
僕たち不良ですぅとでも言わんばかりのツッパリのコンビだ。片方は剃りこみ、もう片方はリーゼントだ。いまどき珍しい。
明乃は、
(うわー、横島くんよりこてこてだ・・・)
アリサは、
「あー、ほら、私たち現在進行形でお茶してるんですけど。というわけでごめんなさい」
サラは、
「・・・・・・・・・(にこにこ)」
無言でニコニコ笑っている。
それを見た明乃は、この場にそぐわないその雰囲気に疑問を抱き、アリサははっとした顔になる。
「ね、姉さんちょっと」
アリサが声を出しかけたが、
「お〜? パツキンのねーちゃんは乗り気らしいで〜」
「んじゃアンタだけでええわ。茶ぁがあかんのやったら別のおもろい場所しっとんねん。一緒に行こや」
何を馬鹿な。明乃は思った。通常の判断力を持ち合わせているのならそんな誘いに乗る人はそうはいるまい。
見たところ、この二人は普通の人より喧嘩慣れしているかもしれないが、自分と軍人のアリサ、そして只者でなさそうなナオ。ならこの二人を追い払うのはそう難しくない。
しかし、
「ええいいですよ。行きましょうか」
さらりと言った。
「んなっ・・・!?」
「姉さんっ!」
二人の叫びを聞いても笑顔を崩さない。ヤンキーたちもちょっと面食らっているようだ。
「お、おう、話が解るやないか」
「ではこっちへ」
サラは二人の手を引っ張り、近くの路地裏に入っていく。
「え、えらい大胆やのォ」
あまりと言えばあまりなサラの行動にあっけに取られていた明乃は、はっと我に返り、
「アリサちゃん、早く助けないと・・・」
「え、ええ! 早く助けないと・・・。
あのツッパリ君たちを!」
明乃はがくっとつんのめる。
「ふざけてる場合じゃないですよ!」
「いや、アリサちゃんは大真面目だ」
「ナオさん!?」
「明乃ちゃんは見たことがないだろう。俺は一回だけある。一回で十分だ」
「ええ・・・私は何回か。姉さんの「あれ」は、血を求めてる・・・。早く助けないと、あの二人死ぬわ!」
明乃が絶句した時、その「音」は聞こえた・・・・・・。
ゴシャッ!! ドグシャアッ!!
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・!」
間も無く路地裏から、腰が抜けているのか四つんばいで這い出てくるヤンキーの片割れ(剃りこみ)。
だが、路地裏から延びてきた白魚のような手(おそらくサラだろう)が、哀れなヤンキーの襟を後ろからむんずと掴む。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
そしてその手はいとも簡単にヤンキーを路地裏に引きずり込む。
「ぎゃあああああ!!助けボギャアッ!! グシャアッ!!
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(滝汗)」」」
そして訪れる、絶望という名の平穏。
ヤンキーたちにとっては、だが。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
三人は、周りの親子連れやカップルの声が、ものすごく遠いものに感じる。
そう。悪夢とは日常のすぐ傍に潜む。
・・・・・・・・・ホラーだった。
「あー、いい汗かいた!」
サラが、セリフ通りにいい汗をかいて出てくる。
・・・消火器を持って。
「「「・・・・・・・・・」」」
「あら? 三人とも、どうしたの?」
どうしたのって、あーた。
「さ、サラさん? さっきのお二人は・・・?」
「もう逝かれましたよ」
どこへ!? ・・・と訊ける勇者はこの場には居なかった。
明乃は、消火器から滴り落ちる赤い水滴に気付いた。
「そ、その消火器・・・」
「あ、触らないほうがいいですよ? ペンキ塗り立てですから」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「その匂いってもしかして、けつえ「ペンキです。鉄分の香りのするペンキです。どうしようもなくペンキです」
「そ、そうですか・・・・・・」
まだ勇者に至らない明乃は、それ以上訊くことが出来なかった。
しかし、騒ぎはまだ終わろうとはしてくれなかったようだ。
「おう。マテやねーちゃん」
サラはゆっくりと。他三人は「何て馬鹿なことをっ!」と言わんばかりに声の方を向いた。
(横島くん!?)
と思ったのは一瞬。ぜんぜん似ていない。赤いバンダナをしているので一瞬見間違えたのか。
そして改めて、こちらを睨みつける青年・・・否、少年を見る。
服はガクランをめちゃくちゃ改造したような妙な服。背はそんなに高くない。おそらく165cmそこそこだろう。頭髪は、まあ普通。
(そして・・・強い・・・!)
さっきの二人とは比べ物にならない凄みを感じる。それは他の三人も感じたようだ。
「・・・何の御用でしょう?」
「ここらやったら話し辛いで。もっと人のおらん広いとこに行こか」
「いいでしょう」
そして歩き出すサラと少年。
三人は、慌てて後を追った。
――――――――――
そして足を止めたのは、街から離れた少し離れた荒野。火星に居住区があるといっても、まだこういった荒野はたくさんある。
「さっきの二人な、ワイの連れや」
「・・・ええ」
「あいつらは、見た目と態度は完璧にアレやけどな・・・ホンマはええ奴らなんや」
「なぬ?」
ナオの顔から血の気が引いた。
「断られるんを承知で声かけて、その失敗談を笑いながら仲間にだべる・・・。タバコもやらへん、ホンマええ奴等やった・・・」
「「うそ・・・」」
明乃とアリサの顔からも血の気が引く。
「誤解されるような態度を取るのが悪いんです」
少年の言葉には何の感銘も受けなかったようで、すぱっと切り捨てる。
だが少年も頷き、
「かもしれん。あいつらもタフさだけやったら一流や。一応生きとるやろ」
「だったら・・・?」
「お前のエモノに興味湧いてな。戦いとうなったんや」
つまり、消火器(ペンキ塗りたて)。
「いいわ。戦いましょう」
「ちょっと、姉さん!?」
「私も興味あるのよ。あいつの武器に!」
「武器?」
「・・・・・・」
少年は無言で得物を(どこからか)取り出す。
「それは!?」
「炊飯器!!?」
「・・・しかも赤い・・・」
明乃はげんなりと呟く。
「せや!! これこそワイのリーサルウェポン!
その名も、炊飯器・逆襲のジャーや!!」
「「「・・・・・・・・・・・・(絶句)」」」
「単なる炊飯器如き・・・!」
「これは単なる炊飯器とちゃうで!
デカさも三倍!! 重さも三倍!! そして勿論、
炊ける速さも三倍や!!」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「ホンマはワイの武器はIZUMO・虎爪っちゅう槍やねんけどな、最近こいつに目覚めたんや。普段は使わんけど。
あ、もちろん小隊長マークはデフォルトやで!」
(もうどこから突っ込んでいいのか・・・)
「成る程。格好だけではないということね・・・!」
(感心してるーーー!!)
ここまでやられると、この二人がおかしいのか自分たちがおかしいのかわからなくなってくる。
「んじゃ・・・やろか」
「・・・・・・ええ」
緩んでいた空気が、ピイン・・・と張り詰める。
「「「!」」」
戦いに関しては素人ではない三人。張り詰める空気に真顔に戻る。
・・・二人の武器からは出来るだけ意識を逸らす。
「まだ名乗ってなかったのう。ワイの名前は辻巻元治(つじまき げんじ)や」
「・・・サラ・ファー・ハーテッド」
名乗り終わると同時、サラは高速で踏み込む。
「!」
とっさに横に身をかわす。振り下ろされた消火器は月面に叩きつけられる。
どっごおん!!
叩きつけられた場所にはクレーターが出来る。
「・・・おっそろしい威力やな」
「これがあなたと私の武器の差よ。いくら大きさと重量が三倍とはいえ、消火器のほうが質量は断然上のようね・・・!」
だが、辻巻は不敵な笑みさえ浮かべる。
「・・・はたしてそうやろか?」
「!?」
辻巻はかわしたその場でサラに逆襲のジャーを叩きつける。超反応でそれを受け止める。
がっきいん!!
「ぅく!?」
お互いの武器は大きく弾かれあった。
「そんな・・・! この質量は!?」
「不思議やろ? 教えたるわ」
辻巻は炊飯器の蓋を開く。
そこには―――――
「それは!?」
「せや。あらかじめこの逆襲のジャーで・・・・・・
30合分の赤飯を炊いたんや!!」
「――――――――――!!」
大きく目を見開いて驚愕するサラ。
「エモノの不利ぐらい百も承知や。その差を埋めたからこそ喧嘩を売ったんやで?
しかも米は古代米・・・いわゆる赤米や」
古代米での赤飯。はたして美味いのかホウメイさんに訊ねてみたい所だ。
「・・・ごめん。あなたを侮ってたわ」
「これで面白ぅなりそうやろ」
「・・・・・・」
サラは、無言で消火器を構えた。
辻巻も炊飯器(赤飯入り・シャア専用)を構えなおした。
ペンキ塗りたて消火器 VS いろいろ三倍炊飯器の戦いは、まだ始まったばかりだった・・・・・・!
「・・・・・・なんかさー。なんで赤飯?」
「何も言うな・・・アリサちゃん・・・」
「・・・・・・・・・誰か横島くん呼んで来て・・・」
――――――――――
15分後。
「おんどれァアッ!!」
辻巻が炊飯器を振り下ろせば、
「くっ!」
サラがギリギリ回避。
「もらった!」
サラがその隙に攻撃を仕掛ければ、
「させるかい!」
スピードが乗る前に蹴りで消火器の軌道を逸らす。
お互い、一歩も引かない。
「ハアッハアッ、女だと思って・・・! 甘く見てくれたっていいでしょうに・・・!」
「ぜはっ、あいにくなぁ、地元にゃあごっつ強い女はわんさか居るんや。油断なんか間違っても出来るかい・・・!」
「―――――!」
明乃は何か気配を感じた。もうすぐ近くに、絶対的な力を感じる。目の前で戦っている二人とはまた違う気配。ナオとアリサは気が付いていないようだ。
「あの辻巻って人良いこと言うわね。女だって強いのよ」
「そんなもんずっと前から知ってたぞ」
「・・・・・・・・・」
気配は徐々に近づいてきている。知らず知らずに汗が一筋滑り落ちた。
「? アキノちゃん・・・?」
「・・・来る」
「フン。最初から尋ね人が見つかるとは思っていなかったが、なかなかどうして。面白そうな奴がいるじゃないか」
「気配も感じさせないとは・・・。あいつ、できるぞ」
「・・・・・・・・・・・」
ナオの言葉に返事は返さず、ただ固唾を飲みこんだ。
「俺の名前は北斗。お前ら、俺と戦え」
「いきなり出てきて勝手なこと言う赤毛やのォ。
せやけど、嫌やゆうても逃がしてくれることはなさそうやな」
「今は一対一の途中よ。それを邪魔する無作法、ちょっとだけ後悔してもらうわ」
二人は二人掛かりで戦おうとしているようだ。北斗の実力の一端を感じ取ったのか。
「ははっ。いい。いいぞおまえら! 地球はこんな楽しそうなやつらばかりか!? それとも俺の運が良いだけか!?」
「簡単に倒れてくれるなよ!」
「―――――!!」
「迦具夜様。どうかしましたか?」
「・・・今、凄まじい力がぶつかり合いました。
―――――いけない!!」
「え!?」
朧には何のことかまだ解らなかったが、迦具夜姫の様子からただ事でないことを感じる。
「一人々々の力が強すぎます! このままでは・・・・・・!」
再び荒野。
「こいつ・・・! ハンパとちゃうで!」
「いくら私たちが疲れてるとはいえ・・・」
「フン、落胆することは無いぞお前ら! 今の俺と一対一で戦える奴は一人しか知らん!」
北斗は、超一流の技量を持つ二人を相手にしながらも軽口を叩いている。手加減はしていないようだが。
「はッ! 全然嬉しないっちゅうねん!
「くっ・・・こんなところで、ハンデまでついて、負けるわけにはいかない!
我が師匠、メグミ・レイナードの名に掛けて!!」
(メグミちゃぁぁぁん・・・・・・!!! あんたいったい以前に何やってたんですかぁ!?)
「アキノちゃんどうしたの? いきなり頭抱えて」
(ちぃっ! こいつらを甘く見すぎたか? 速さが、上がってきている!?)
「ワイは大阪府総長、辻巻元治やで!!!」
辻巻はかなりの質量の炊飯器を横に薙ぐ途中でブレーキをかけ、右手でのパンチが北斗の腹部に入る。鳩尾は外れたようだが、北斗の顔が苦痛に歪む。
「てりゃあああっ!!」
その隙を逃すサラではなかった。消火器のスイングが北斗の頭部に命中する、と思ったが北斗はギリギリで両腕でブロックする。
「がはっ!」
だが、その一撃は北斗の体を吹っ飛ばす。
「ちっ!」
北斗の体は地面に叩きつけられたが、すぐに起き上がり身構える。
一番最初にダウンしたのは北斗だった。
「・・・気付いてる総長さん? あの人の威圧感、更に増してるわよ・・・!」
「ああ。気付いとるで。大方、戦いつつ成長しとるってやつやろ。サイヤ人かっちゅうねんなホンマに。ベタなやっちゃで」
成長しているのはお互い様だとは気付いてないようだ。
北斗は顔をにやりと歪ませた。楽しくて楽しくて仕方ないのだろう。
・・・欲求不満だったのか?
それはともかく、戦いながらも急速に成長する三人。戦いはまだまだ終わりそうにない。
「何これ? 体にびりびり来る・・・」
明乃は呟く。それは三人の発する気に他ならない。もしこの場に霊能力者が居たなら、強大な力に危機感を覚え、裸足で逃げ出していただろうことは想像に難くない。
この場に積み重なり充満する気は、ただ強大なだけではなかった。
気が充満するというのは変だが、本来なら宇宙に拡散するはずの気は、月神族の結界によって留まっていた。
「とてつもなく」強大だった。
それは空間さえ歪めるほどに・・・・・・
「・・・・・・・・・手遅れです。時空の扉が、開きます」
「月の結界が仇になったということですか・・・・・」
迦具夜姫にできることは、空間の歪みによって出来た「穴」の位置を、何とかずらすことくらいだった・・・・・・。
後編に続く。
イネス先生の、なぜなにナデシコ出張版
良い子の皆さんこんにちは。今日もなぜなにナデシコの時間がやってきました。ここではいつものように「GS横島 ナデシコ大作戦!!」のギモン・専門用語・モトネタ等を、解りやすく、かつコンパクトに説明するわ。
Q1:ミョゾティスって?
シロとタマモの乗っている戦艦。艦長はタマモ。艦の性能としてはコスモスと同等よ。それから、人外なのはシロとタマモだけ。他のクルーは人間で、二人の正体も知らないわ。
ちなみに、ミョゾティスとは日本語で「忘れな草(勿忘草)」。花言葉は「私を忘れないで」。シロの心の叫び?
Q2:辻巻元治
登場作品:プレステ版、奏(騒)楽都市大阪
つじまき げんじ。メインキャラの一人。コテコテの大阪人で、大阪圏総長をやりたくないがためにネット戦争に参加。新聞をスポーツ欄で埋め尽くすことを目標としているわ。
かなりずば抜けた戦闘センスを持ち、大阪で彼より強い人は限られてるの。学校内、市街においての顔役で、そのカリスマ性はかなり高いわね。成績はあまり良くないらしいけど。
得意技は槍術系。使用神器は裂神。近接武術師(ストライクフォーサー)。納豆が嫌い。
文中では「大阪府総長」と言ってるけど、本当は大阪圏総長(ただし総長になったのはゲームのエンディングの後)。
時期的には、ゲームエンディングの二ヵ月後ぐらいよ。
Q3:炊飯器・逆襲のジャー
登場作品:プレステ版、奏(騒)楽都市大阪
グループアイテム・調理器1。武器じゃないからね? DEX+5、環境-MAX+15。序盤で環境値を上げたい時にお勧め。
HIGAKI産業の企画販売による真紅の炊飯ジャー。もともとは緑色の家庭用炊飯器だったけど、性能が時代に追いつけなくなったために急遽改造、従来より30%も速度を上げて炊飯できるようになったものよ。文中では三倍なんて言ってるけど。
ちなみに、大阪圏内の体育会系の部室には、ほぼ100%の確率でこの炊飯器が配備されてたって話しよ。
Q4:IZUMO・虎爪
登場作品:プレステ版、奏(騒)楽都市大阪
いずも・とらづめ。辻巻元治専用武器3。STR+15。
IZUMO総合本社が自社の総力を結集して作り上げた槍で、基本理念は「使いこなせれば最強」。でもいまだ完全に使いこなせた人は居ないんだけどね(笑)。辻巻君は使いこなしてるのかしら?
形状は、中国包丁のような刃にソードブレイカーと突き刺し用の鋭いスパイクを付属し、ポールは人体工学に基づいてスキーストック風の緩いカーブを持ってるのよ。
Q5:30合ってどれくらい?
言い換えれば、3升。お茶碗二杯が約一合だから・・・、お茶碗60杯分!?
あとがき
2004年の一発目がこれ!? ぐはっ!
サラファンの人にごめんなさい。石は投げないでください。ちなみに、ナオ、サラ、アリサは、この世界は漆黒の戦神が居ないので月に疎開にきてるんです。
以前メグミに鍛えられたけど芽が出ず、才能が無いと思ってたけど木製蜥蜴の襲撃で親を亡くし、その時初めて才能と修行の成果が開花したという裏設定が・・・(笑)。
今回のお話を読んで、「別に壊れてないような・・・」と思った方。後半を楽しみにしてください。凄い壊れてますから。
・・・でも、SSの質も(悪い方向に)壊れているから見ないほうが良いカモネー?
代理人の感想
とり合えず一つ。
お前どこから出てきた北斗ーっ!?
あれですか、板が荒れて来るとどこからともなく嗅ぎつけて来て煽る奴(意味不明)みたいなもんですか。
カードバトルが始まるとどこからともなく現れてバトルして去って行く某シャンゼリオンのなれの果て(おい)みたいな。
正義の味方が悪事センサーを装備して悪あるところに現れるように、
こう言う連中はバトルセンサーとかなんとか備え付けているんでしょうか。
・・・・・・・・・北斗や王○ならありそうだなぁ(爆)。
>伊佐美家の一人娘、因 久美
伊佐美家の一人娘なのに、苗字が因とはこれいかにっ!?
まぁどうでもいいツッコミですね(爆)。
・・・・何か今回、某Σさんの作品に対するコメントみたいになったなぁ(爆)