ときにはこんな夜
それは、サセボドックに入港してる夜だった。
『アキト、ネルガルのガ−ド部門から連絡だよ』
オモイカネがコミュニケを開く。
ざっと読んでから俺は頼んだ。
「オモイカネ、シュンさんとゴ−トさん、あとナオさんにつないでくれ」
『あと、もうルリには知られちゃった。ルリはアキトあてのメッセ−ジ全てチェックしてるんだ」
・・・・・・・・・・・・・・
しかたないな。あともうひとつやっておかなければならないことがある。
俺はラピスの方を見た。
「あれ、ど−したのルリルリ?こんな夜に甲板で」
「トレ−ニングです。ホシノ流恋愛術高等技の一、『見返り美人』10本5セットを」
ちなみに「見返り美人」とは振り向きざまに髪をかきあげて軽く微笑むというものである。
「あら、そうなの・・・ところでアキトくん知らない?
ラピラピと遊ぼうと思ったら居なくてラピラピぐっすり寝てるの」
もう少し注意深く観察すればラピスが薬で眠らされているのに気付いたかもしれない。
「あの黒いエステの事でなんかネルガルに呼び出されたようですよ」
(ここに居る事がわたしに出来る最大の援護です。アキトさん、ご無事で・・・・・・」
サセボドックを見上げる森に、数十名の黒ずくめの男達が現れた。
「よし、あれがナデシコだな。地球で唯一湾曲防壁と重力砲を装備した船。
最後に任務の確認だ。
1.遺跡の情報を持っているらしきタ−ゲットAの確保
2.「黒き魔神」タ−ゲットBの確保
3.実験体、マシンチャイルドたるタ−ゲットC、D、Eの確保
4.「黒き魔神」の乗る機動兵器の確保ないし破壊
5.あの戦艦の動力炉の爆破
なおA以外のタ−ゲットは確保かなわねば殺せ。
ネルガルの犬どもはクリムゾンの犬どもが押さえてる。
ケンダッパ、グパンダ、キンナラ、ヤシャと各々の眷属達は指令3を。
ナアラとオレと指令2。残りは指令1を遂行する。全タ−ゲットの顔は覚えているな。
この使命はなんとしても果たし、クサカベ閣下に四方天などよりわれら八部衆一族が上と知って頂くのだ」
「先程スコ−プで確認しましたがタ−ゲットCが甲板上におります。
よって指令3は比較的容易かと」
「なあシュラ、Dは殺したいんだが。
最近子供殺してねえからなあ。ましてや小娘は腹を切り裂く感触がたまらねえんだ」
「だからお前はオレに同行だ。今回殺す数は少ない方が・・・」
そこまで言った時、一本の矢が闇を切り裂きナアラの額に突き立つ。
「散!」
闇に紛れる男達。だがボウガンらしき矢と、遠距離からの狙撃は確実に同朋を減らしていく。
「クッ!状況報告!」
「敵は遠距離ニ名、おそらくナイトスコ−プとによる狙撃です。
中距離二名、ボウガンによるやはり狙撃です」
「ならばすみやかに接近して仕留めろ」
「それが…近距離の一名が恐ろしく手慣れで。
二本の小剣で遠、中の援護のもと確実に眷属達が減らされていきます」
それは戦いとすら言えなかった。
暗闇の中動きが止まれば狙撃を受け、かわす為に動けば闇そのものを切り取ったかのごとき黒き影がはため
き、あとには首を失った眷属が転がる。
幸運にも、あるいは不幸にも影を捉えたものも居たがその黒き牙は彼等の刃をすら切り裂き、かれらの意思と
未来と、そして命を確実に絶っていった。
「シュラ」
「カルラか」
「先程ケンダッパが手榴弾すら耐える自慢の甲冑ごと開きにされたぞ。
おそらくタ−ゲットCはオトリだったんだ。
どうやってか我等の襲撃を予測し、Cを甲板上に出す事で斥候を発見して追尾する事で本隊を見つけ出した
のだろう」
「くそったれめ!」
眼前でボウガンの矢をかわした我が眷属が飛び来る闇の牙に手の刃ごと両断される。
おそらくヤツの剣は単結晶体だ!
「退く。これ以上やられては我が一族が滅びかねん・・・カルラ?おいカルラ!」
「お前が最後だ」
それこそ闇そのものが言葉となったかのごとく背後からオレにかけられる。
その声は死と滅び、そして憎しみによって形を為していた。
ちくしょうめ、帰ったらお館様を、あのブラフマ−のクソ野郎をブッ飛ばしてやる。
オレは振り向き、そこにある闇にむかって刃を振るって・・・・・・・・・・・
「終わったか」
「やれやれだね」
ボウガンを持ったゴ−トさんとナオさんが近づいてきた。
遠くにいるシュンさんとカズシさんにも手を上げて挨拶する。
「しかしナデシコの皆には知られたくないなあ。こんな俺達」
「うむ。」
同感だ。
しかしルリちゃんやナデシコを守る為なら・・・・手段を選ばん。
おそらくもうすぐ眼前に現れるであろう東西南北の四方天ども・・・・・
しかし木蓮側からのタレコミか。多分彼だろうな。
血に塗れた単結晶体の小剣を振って鞘にしまいながら、俺は思いを巡らせていた。
どうやら終わったようですね。
いかにナデシコのみんなを、そして「わたしを守る為」とはいえ。
人を殺さねばならなかったアキトさんの心の慟哭が聞こえてくるようです。
「ところでさあルリルリ」
ミナトさんが話しかけてきます。
「いわゆる英雄なんて呼ばれる人で幸せな余生送った人ってあんまりいないじゃない。
まるで用がすんだら世界が排除するかのようにいなくなっちゃうよね。
事故とか病気とかで。
そういう意味ではおそらく地球最高の英雄になるだろうアキト君はどうなるんだろ?
こんな有名になっちゃもう屋台引くってワケいかないだろうし」
それは・・・・・・悲しいですが、考えるのも嫌ですが・・・ありえます。
でも・・・
「大丈夫ですよきっと」
「そうだね。たとえどんな悲惨な状況であってもルリルリがそばにいるだろ−し」
「はい。それに、世界がアキトさんを排除しようとするならその前に世界を滅ぼしますから」
・
・
・
「・・・・ナデシコのメンバ−がそろったらそれ冗談にならないから止めなさい」
冗談?わたしが何時、どんな冗談を言ったのでしょう?
まあ、今夜はアキトさんはナデシコには戻ってはこないでしょうね。
血の匂いをさせてユリカさんやラピスに会いたくないでしょうし。
今は・・・・・・・今は駄目です。今のわたしではアキトさんを守れません。
でもいつかかならずアキトさんを守る鎧になってみせます。
アキトさんの心を守る鎧に。
終わり
管理人逃亡・・・(おいおい(汗))
影竜さん五回目の投稿でっす!!
影竜さん、短い期間での投稿有難うございます!!
Benは清水の大舞台から・・・!!(飛んでどうする?)
まあ、怪我はしたく無いので・・・それでは作者の感想を。
何だか作品の掲載スピードで負けているBenです(苦笑)
管理人も頑張らないと駄目ですね。
しかし、とうとうホシノ流恋愛術の開祖だけでなく。
オリキャラまで登場させてしまうとは。
影竜さん・・・恐るべし、っすね!!
でも、このオリキャラの名前って(苦笑)
魔○拳を思い出してしまった(By シュ○ト)
・・・彼も本編より先に存在を明かしてるし(爆)
それとミナトとルリの台詞・・・
本当に冗談になっていない所が恐いッス(汗)
実際に可能なんだよな〜、バックもいろいろと付いてるし(爆)
最後は綺麗に纏めてられますね。
この台詞を使って貰えるとは思わなかったです。
では、影竜さん五回目の投稿、有難うございました!!
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後、影竜さんはどちらかと言うと掲示板に感想を欲しいそうなので。
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