運 命 と 世 界 に 愛 さ れ し 者


                序章





   どことも知れぬ、闇に包まれたその空間。

   矛盾の間と呼ばれるその場は、過去と現在、そして未来が交差する特殊
  な空間。

   そこに響くは小さな嗚咽。

   嗚咽の主は小さな影だった。

   仄かな光が足下からその影を照らした。

   光に追い立てられた影のしたから現れたのは、まだ小さな少年。

   涙に濡れる金色の瞳、まだまだ幼さが表に出ている顔、荒れた短髪。

   それがその少年から見受けられる全てだ。

   少年の目の前には映画のスクリーンのような物があり、それがある光景を映し出している。
   白いドレスを着た瑠璃色の髪をした女性が幸せそうな顔で黒髪の男性に微笑みかけている。

   けっして自分には見せてくれなかった、特別なその表情。

   少年は涙を流しつつ思った。

   ・・・・・なんで、いつもいつもあの人に、先を越されなくちゃいけないんだ。

   ・・・・・たったひとつ、たったひとつすら僕はあの人に勝てない。

   少年の手が何かを固く握りしめる。

   だがその程度の力では何かに変化を起こすことは出来ない。

   映像が変化した。

   目が見開かれ、大きく口を開け、身体を反らせ、喉が激しく震える。

   しかしこの空間を震わせることはできず、無音。

   そんな少年を黒衣の青年が腕を組み見下ろしていた。

   サングラスの下の金色の目が、冷ややかに、侮蔑を含んだ目で。

   映像の中では、頬を軽く上気させた女性が微笑む男性に抱きしめられて
  いた。

   女性が何事かささやき、男性がそれに応え、ゆっくりと二人の顔が近づき・・・・・・・・・。

   少年が左腕を振り上げた。

   そして、振り下ろす。

   大きく振り下ろされた腕には十分な力が込められ、何かが少年の右腕に突き立てられた。

   何かは腕の皮を破り、血管をずたずたに引き裂き、肉をえぐって沈み込む。

   何かを突き立てられた右腕はビクンと跳ねた。

   指が空を掻きむしり、異常なほど浮かび上がった血管が腕全体を覆う。

   少年の目から涙がこぼれる。

   だが、その口元には笑みが浮かんでいた。

   腕に全体重をかけ、さらに何かを腕に食い込ませていく。

   途中固い物にぶつかるが、腕にさらに力を加えれば、枯れ木を砕くような音を立ててそれは消える。

   やがて少年の腕から力が抜けた。

   濡れた手を顔にやれば、という新たな色がそこに追加される。

   再び腕に力が込められた。

   筋肉が収縮し、何かを腕の中に取り込みつつ、再生を開始。

   溢れ出る血潮は瞬時に止まり、傷その物もわずかな時間で消え去る。

   黒衣の青年が動いた。

   懐に手を入れ、棒状の何かを取りだした。

   ゆっくりとした歩みで少年に近づいていく。

   青年の口が開かれる。

   初めてこの空間に声が響いた。
 
   「これで運命はお前と共に歩むだろう」

   酷く静かで、感情を感じされない声が。

   棒状の物を手に青年が腕を振り上げた。

   澄んだ透明な、ただ斬る意志のみを固めたような、美しささえ廃したような闇の刃が、棒状の物から突き出した。

   ≪運命とは−−−−−−≫

   青年の物ではない声が響く。

   闇の刃は一瞬の躊躇もなく、一気に振り下ろされる。

   ≪運命とは留まらぬもの!≫

   声と共に少年の身体が斬りつけられた。

   だが、少年の身体に異常はない。

   ただ全身から力が抜け、その場に崩れ落ちただけだ。

   青年はそれを見届け無言で歩み去る。

   いつの間にか映像も消え、床の光も消えた。

   倒れている少年の姿を、闇は静かに包み込んでいった。





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 後書き

  初めまして自分は大塚りゅういちさんの所に投稿させていただいているkageto2と言う者です。

  今回からBA‐2さんのハーリー列伝の設定を使わせていただいて、話を書いていこうと思います。

  え〜とこの話ではハーリーが主役なので、まあ、そのなんですか。

  ハーリーがかなり、理不尽なまでに強くなっています。

  なので、寛大な気持ちで読んでいただきたいです。

  では、管理人様、代理人様、読者の皆さんこれからよろしくお願いします


    

代理人の感想

「愛されし」って・・・・・まさかハーリー君の事じゃありませんよね?

彼がいかなる意味でも運命に愛されてるとは思い難い(爆)。