◆「DT入国管理システムより通達」−−−−−−−−−−−−−−−
:天川 香織様が入国されました。
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:DT内『ハーリーの家』記 常 貢に入状していただきます。
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■「香織の言解議状態 『ハーリーの家にて』−−−−−−−−−−−■
オーバーリロード
≪香織の 言 像 更 新 ≫
ゆっくりと目を開けると白い天井が見えた。
ここは五ヤード四方の狭い部屋だ。必要最低限の家具しかない部屋。
香織はベットに寝かされている事に気がついた。
<いったい誰が?>
ウィンドウ
そう思った香織の頭上に、白枠の 詞 窓 が浮いていた。
「気がついたか」
横から声がかかる。
驚き慌てて声のした方に顔を向けた。
そしてそこにあった光景を見て、硬直した。
そこにハーリーがいたからだ。
彼は右手に持ったコーヒーカップを啜りつつ、
「よ、オハヨ」
挨拶を返すまでもなく、無言で香織はハーリーを殴り跳ばしていた。
運 命 と 世 界 に 愛 さ れ し 者
第八章 運命集合
■「香織の言解議状態 『ハーリーの家にて』−−−−−−−−−−−■
オーバーリロード
≪香織の 言 像 更 新 ≫
部屋の中。香織の眼前に倒れ伏したハーリーがいる。
傍らにカップが落ちて、転がっていた。
「おまえなぁ」
赤くはれた頬を抑えながらハーリーは立ち上がる。
「いつから再会の挨拶が、相手を殴ることになったんだ」
それに応えず、腰に両手を当てて香織は彼を睨み付けている。
その顔は怒りに燃えて、赤く紅潮していた。
「てめぇ」
香織の拳が固く握られ、俯いて、震えている。
「ん、どうした。頭でも打って大変なことになったか」
俯いた香織の顔を覗き込もうとハーリーはしゃがんで近づく。
「はぁりぃ」
香織の手がそっとハーリーの顔を挟み込んだ。
「・・・・・・・かおり・・・・・・・・」
その手にハーリーは手を重ねる。
静かに見つめ合う二人。
僅かに香織の身体が後ろに引かれ、
このアホが!!
勢いよく前に振られた。
打撃音。
香織の頭突きがハーリーの額に命中する。
ハーリーの身体がのけぞった。
「ぐぁ。・・・・・・このばか、いきなり・・・・・・・」
額を赤くはらして、涙を浮かべた香織の顔を見、彼は言葉を止めた。
「いたいよぅ」
怒った顔でありながら、泣くのを我慢している子供の顔で、ハーリーを見つめている。
「あいたかったよぅ」
香織は彼の首に手を廻し、きつく抱きしめた。
「悪かったな、一人にして。この電子都市を起動させるのに色々手間を
食って、迎えに来るのが遅れた」
「ばかぁ、おにぃちゃんのばかぁ。心配したんだからぁ」
その存在を確かめるかのように、全身でハーリーに抱きついた。
ハーリーもまた、それに応えるように柔らかな香織の頬に自分の頬をすりつけ、髪を撫でる。
「すまない、俺がもっと強ければ。始めからルリさん達に合いに来なければこんなことには・・・・・」
「今からでも遅くないよぅ、ね。香織と一緒に逃げよう」
「それができないんだよ。香織」
「どうして、どうしてなのおにぃちゃん」
「すまない。今はまだ、言えない」
「なんで、どうして!」
ハーリーから身体を離し、香織は叫んだ。
「ただ、言えることは・・・・・」
「言えることは・・・・・なに」
言いにくそうに顔を反らして、呟く。
「お前には俺の力の一部を受け継いで強くなって貰わなければならない。
そして、他の人たちもまたそうだ」
「他の人ってなんだよ。ハーリーには俺だけがいればいいんだ! 俺がハーリーの全てを受け継ぐ!! 他の人間には近づかせない」
「まったく、お前一人に教えてたら一人前になるころにはもう寿命が来て死んでるぞ。それにお前には使えないのもあるから無理だ」
でもな、と言って笑みを浮かべる。
「その気持ちは嬉しいぞ」
「・・・・・・・・・ばか・・・・・・・・・」
言いたいことは山ほど合ったがハーリーの満面の笑顔になにも言えなくなってしまった。
赤い顔して照れる香織の頭をくしゃくしゃと撫でて彼は立ち上がる。
「さて、他のお客さん達も来たことだし、そろそろ行くぞ」
「どこへ行くの?」
「他のページさ」
ハーリーは香織と手をつないで出口に向かう。
二人は扉を開けて出ていった。
≪香織様の言解議状態を終了します≫
■「メノウの言解議状態 『ハーリーの家、1Fメノウの部屋にて』−■
≪メノウの言像更新≫
気がつくと何もない真っ白な部屋に立っていた。
「ここは、いったいどこなのでしょう?」
周りを見渡してみても、知らない部屋だった。
「私は自分の部屋で寝ていたはずですが」
軽く腕を組んで、小首を傾げて呟く。
すると、突然肩を叩かれた。
「えっ、誰」
「やっ、久しぶり。元気してる?」
そこには黒い人が立っていた。
満面に笑顔を浮かべたハーリーが。
「はい? えっと・・・・・・・・・・・ああ!! ハリ様」
ハーリーの突然の出現に叫び声を上げて、
「ハリ様、ご無事だったんですね」
抱きついた・・・・・が。
「あれっ、手が・・・・・・」
彼の身体に回したメノウの腕には僅かな隙間があった。
PCボディ
「悪いね、まだ君の遺伝詞解析が終わっていないから、通常外殻 を動
サブプログラム
かす 代行己動詞 が最適化できないんだ」
「は? 遺伝子解析、通常外殻、代行己動詞、最適化」
あの、といきなり知らない単語を聞かされて戸惑うメノウ。
「うーん、まぁもうすぐそれも終わるだろうから、あと2、3時間くらい我慢してね」
「あの、あの。私にはなんのことか・・・・わからないのですが」
「いいから、いいから。まぁ、そのうち解るから」
さあ行こう、すぐ行こう、瞬く間に行こう、とメノウの手を取って出口に向かって歩いていく。
「あの、ちょっと待ってください」
ハーリーの手に抵抗してはいるのだが、子供の力では抵抗出来ない。
「ちゃんと説明していただけないのなら、私はここを動きません!」
メノウは四肢に力を込め、昂氣を発現させようとした。
だが、その直後、
「?!」
ウィンドウ
目の前に 詞 窓 が開いた。
≪警告:遺伝子解析がなされていません≫
≪警告:字呼召喚の設定がなされていません≫
ダウンロード
≪警告:設定をしてから 字呼召喚 してください≫
「な、なんですかこれは」
目の前の詞窓と自分の身体にも関わらず、自由にならないこの状態に驚いた。
その間も、抵抗虚しくずるずると引きずられていく。
「大丈夫、大丈夫。痛いのは始めだけだから」
「なんですかそれはーーーーーーーーーーー!!」
その叫びも虚しく、メノウは部屋から連れ出されていった。
≪メノウ様の言解議状態を終了します≫
■「香織の言解議状態 『ハーリーの家、大広間にて』−−−−−−−■
≪香織の言像更新≫
ここもまた、大きなテーブルと椅子。
その程度しかない寂しげな部屋だった。
「なぁ、ハーリー。この部屋も随分と物がないけどどうしてだ」
「ん、ああ。まだ色々と物を置く時間がなくてね」
肩を竦めて、
「まぁ、そのうち色々と買い入れるから。その時は助言を頼むぞ。香織」
「おう。任せろ。と、それより他の奴がいるところでその名は出すなよ」
なんでさ、と香織の頭を撫でる。
気持ちよさそうに目を細めてそれを受け入れつつ、
「天川香織は死んだんだよ。ハーリーの前以外では俺はマキビ辰斗だ」
「香織。俺が弱かっただけで、お前のせいじゃない」
「ハーリーは関係ない。俺が俺を許せないだけだ」
頭を撫でていたハーリーの手を取り、そっと頬を寄せる。
「この手を奪われることに命を掛けて抵抗しなかった俺を・・・・・・」
「すまないな。あのときお前の力を封印していなければお前も戦えたんだけどな」
「大丈夫。落ち着いて考えられる今ならハーリーのしたことの意味は分かってるから」
下からハーリーを見上げながら、香織は言葉を続ける。
「あのとき、俺もハーリーと一緒に戦っていたら、俺までハーリーと同じ事をされていたかもしれなかった。それに・・・・・」
一度言葉を止め、
「ハーリーは親子で殺し合うのを見たくなかった。今の俺の力じゃ、殺すことは出来ても倒すことは出来ないから。まだまだ未熟なんだよな」
「ああ、でもここでみっちり鍛えてやるよ。たっぷりとな、特盛で。泣いても許してやらんから覚悟しろよ」
「任せろ! きっと強くなって本当のハーリーを助け出してやる」
「すまないな。この手も俺も囚われたままだ」
「大丈夫だ。力をつけて俺がどんなことをしても必ず救い出して見せる」
「・・・・・・・・ありがとう、期待して待ってるよ」
しかし、そう言って笑うハーリーの顔はどこかぎこちない。
それにきづいた香織は問う。
「どうかしたのか、ハーリー」
「いや、なんか。お前ならほんとにどんなことをしてでも、助け出してくれそうだな、と思ったんだ」
「もちろんだ。俺にとってハーリー以外は全て無価値だ。だからどんな事をしてでも助け出してみせる」
ちいさな胸を張って言い切る香織。
「おまえなぁ」
子供特有の一方行な考え方に、大きく溜息を吐き出すハーリー。
しゃがんで香織と視線を合わせた。
「いいか、よく聞けよ香織」
「な、なんだよ」
真剣なハーリーの視線にややたじろぐ香織。
「お前が俺を大事に、全てにおいて最上に考えてくれるのは正直言って嬉しい。けどなそれじゃあだめなんだ」
「なんでさ」
「1つの事のみを考え、他を全て切り捨てるのは危険な事だからだ」
「どうして、どうして俺がハーリーの事だけを考えたらいけないんだよ」
「なら例を出そう」
一度言葉を区切り、続けた。
「お前はテンカワの妻達のやりかたを言いやり方と思うか?」
「思うわけないだろ!! あんなめちゃくちゃな、力で全て解決しようとする連中のやり方なんて」
「どうしてだ? どうしてそう思うんだ」
肯定し共感して貰えると思っていたが、予想外のハーリーの疑問に、一瞬言葉を詰まらせる。
が、すぐに強い調子で言葉を続ける。
「自分たちの事だけを最優先して、他のことは全部無視するようなやり方間違ってるに決まってるだろ!!」
「そうだな、俺もそう思う」
「だろ、ハーリーもそう思うだろ」
ああ、と肯定しハーリーは言った。
「でもな、さっきお前が言ったことと同じだぞ。今のは」
「えっ、そんな」
嫌悪する、憎しみさえ抱く人間達と同じと言われ絶句する香織。
「さっきお前は、俺以外は全て無価値と言い、どんなことをしても、と言った。そうだな」
「・・・・・言ったよ」
「彼女たちもまたお前と同じだ。自分達とアキトさん以外は全て無価値。
そういう考えをしているだからあんな無茶ができる」
「でも、俺は」
香織の言葉を断ち切り、
「もし、俺が彼女たちと同じ考えを持っているのなら、他の者に力を与えてわざわざ助けて貰うなんて遠回しなことはしない。もっと簡単で確実な方法でやってみせる」
「どうやってさ、ハーリー。教えてよ」
「この国に言詞爆弾を落とす。いや、格爆弾でも構わないな」
「そんなことしたら・・・・・・」
その結果を思い浮かべた香織の顔が青くなる。
「言詞爆弾ならこの国は消し飛び、それどころかこの地球そのものが変化する。地球の周りに大天蓋が生まれ、宇宙に行くことも帰ることもできなくなる。格爆弾でも、このあたり一帯は砂漠と化すだろう」
「そんな・・・・・。それじゃあ、この国は」
「もちろん滅ぶ。生半可な攻撃じゃあ、この国の防衛網は突破できない」
「だからって」
「さっきもいっただろ。自分の事だけを考えれば、ここまでの事ができるだが、俺はそうしない。なぜだかわかるな」
「うん。ハーリーは被害を最小にしたいと思ってる」
「結果的に言えばそうだが、もう少し言葉を選ぶなら。関係ない人に迷惑をかけない、というわけだ」
「・・・・・・わかった。気をつける」
それでいい、と香織に言うと立ち上がった。
「さてさて、ゲストが来たようだ」
「ゲスト?」
わからないと言った顔でハーリーを見上げる。
「そ、ゲスト。今日からお前と一緒に俺の元で学んで欲しいと思っている人たちだ」
≪新しいお客様が一名、この頁に入状しました≫
:ヤガミ メティス様が入状されました。
入り口の扉が開き、一人の少女が入ってきた。
長い金髪をお団子にして、動きやすそうなズボンと上着を着ている。
「おっ、ハーリー。いつのまにそんなところに行ったんだ」
いきなりの毒舌に香織の眉が跳ね上がった。
「おい」
一歩進み出た香織をハーリーが抑える。
「ようこそ、ヤガミ メイ。電詞都市へ」
「それはもう聞いた。で、なんのようなんだ。こんなおかしな所に連れ込んで。まさかお前。・・・・・・幼女趣味なんてないよな」
「なんでそうなる。でも・・・・・」
一度言葉を区切り、メイの身体を上から下へじっくりと見つめ、
「愛に年齢は関係ないと思わないかい? メイ」
「ひっ!」
両手を広げ、歩み寄るハーリーに、思わず退くメイ。
「なーにが、ひっ!、だ。残念ながら俺はロリコンじゃないから、今のメイに手を出す気は全くないよ。もちっと胸とか尻が出てくれば話は別だけどね」
「嘘じゃないだろうな」
身体を固くして警戒を続けるメイはハーリーを睨み付ける。
「メイみたいに胸もなければ尻もない。そんな無味の身体は肉屋で売れない肉と同じで、買う価値もない。そんな物には興味はないよ」
「悪かったな無味な身体で」
「でもな、安心して良いぞ」
「何が」
「世の中には特殊な趣味の人も・・・・」
「!!」
最後まで言わせず、メイの鋭い蹴りが飛んだ。
ハーリーはその足を受け止めると、地に着いている軸足を払う。
「のわぁ!!」
瞬間的に宙に浮いたメイ。
掴んだ足をそのまま持ち上げた。
「お前をここに連れてきたのは頼みがあるからだ」
「あのなぁ」
逆さにつり上げられたままのメイは静かに言う。
「頼み事があるんなら、それ相応の態度というのがあるだろ」
「そうだったな」
ハーリーは身体を倒し、頭を下げる。
「わっ、ばか、やめろ」
メイの身体はハーリーが身体を倒した分だけ下に降ろされ、床とキスさせ
られそうになる。
「ばかとはなんだ、ばかとは。メイが頼み事をするならそれ相応の態度を見せろと言うから頭をさげたのに。まったくわがままなやつだ」
「このやろぅ」
「ん、どうしたメイ。言いたいことがあるなら言ってみ」
二人の視線がぶつかり合い、火花が産まれたように思えた。
突然ハーリーの後頭部に軽く打撃が入る。
「ハーリー、いい加減にしておいたいいぞ」
「そうだな」
ハーリーはメイの身体に手を回すと、足から床に降ろす。
「そいつの言うことは随分と素直に聞くんだな。で、誰だ、そいつ」
「この子はテンカワ 香・・・・・・・くぅ」
唐突にハーリーの言葉が止まる。
香織の足が彼の足を思い切り踏んづけていた。
「もとい、マキビ 辰斗だ」
「よろしくな、テンカワ 香織」
手を差しだし、にやりと口元に笑みを浮かべてメイが言う。
「ああ、よろしくなヤガミ メティス」
その手を取り、固く握手を交わす。
「くく」
「ふふ」
お互いに力を込め合い、不敵な笑みを浮かべてにらみ合う。
「いやあ、やっぱり子供同士。仲良くなるのが早いなぁ」
そう呟きつつ、指を鳴らした。
≪新しいお客様が一名、この頁に入状されました≫
NPC
:一人の贋作外殻の方です。
:匿名設定により名無し様とします。
「失礼します」
そう言って紺色のメイド服を着た少女は、給仕用のワゴンを押して入り口から入ってきた。
ワゴンには大きめのティーポットと十一組のティーカップとミルク、お菓子の乗った大皿が四つ、ミルクポット、シュガーポットが乗っていた。
にらみ合う二人に気づいていないのか、気にしたふうもなくテーブルにそれらを配置していく。
「ご苦労様」
「いえ、これが私の仕事ですから」
ハーリーの言葉に対し感情の感じられない声で返事を返す。
メイドの少女はそのまま静かにワゴンを押して出ていった。
≪名無し様がこの頁から退状されました≫
さっそくハーリーは小さく花が描かれたティーポットから、前もって暖めておいてあるカップに紅茶をそそぎ込む。
カップは紅茶で満たされ、ふわりと柔らかな香りが広がった。
「ふむ」
ハーリーは紅茶の香りを十分楽しんでから、カップに口を着ける。
喉を紅茶が通り過ぎる感触に満足げに頷いて、お菓子に手を出した。
「「おい」」
その手が二つの手に捕まれる。
「「何一人でくつろいでるんだよ」」
「お前達も食べるか」
香織、メイの二人に顔を向けて言う。
「「もらおうか」」
声を揃えていうと椅子に座った。
ハーリーは二組のカップを自分の目の前に置くと、紅茶をそそぎ込む。
緩やかに螺旋を描き昇る湯気が紅茶から産まれた。
「砂糖とミルクは?」
「三つ、ミルクはいらない」
と香織が言い、
「1つ、たっぷり入れてくれ」
とメイが言った。
わかった、というとハーリーはカップにシュガーポットから角砂糖を三つ取り出し、そっと紅茶に沈ませる。
そして銀色のスプーンで軽くかき混ぜると、香織の前に置いた。
メイには1つを沈ませた後、真っ白なポットからミルクをカップに注ぎ、これもまた銀色のスプーンで軽くかき混ぜ、メイの前に置いた。
「あ、ありがと」
長年やっていたような綺麗なハーリーの動きに見入っていたメイは慌てて礼を言う。
「礼はいいから、飲んでみな」
ハーリーはティーポットをテーブルに戻しながら笑う。
それから扉の方へ向くと、言った。
「ようこそ、電詞都市へ」
≪新しいお客様が六名、この頁に入状しました≫
:テンカワ アイ様が入状されました。
:テンカワ 佳乃様が入状されました。
:テンカワ ロゼ様が入状されました。
:テンカワ エルゼ様が入状されました。
:テンカワ レナ様が入状されました。
:テンカワ サーラ様が入状されました。
:テンカワ リサ様が入状されました。
:テンカワ メノウ様が入状されました。
開いた扉から次々に少女達が入ってきた。
「なんだなんだ、この人数は」
驚く香織を無視してハーリーは彼女たちに声をかける。
「とりあえずこのテーブルの好きな所に座ってくれ。それから改めて全員の自己紹介と行こう」
「そうね。立ったまま話をするのは嫌だし」
そう言ってアイはテーブルに着く。
「あの、失礼します」
佳乃もテーブルに着き、
「・・・・・・ここがいい」
ロゼも彼女にとっては少し大きめの椅子に座る。
「それじゃ、私も」
エルゼ達も席に着いた。
香織は入ってきた少女達の中で見知った顔があるのに気がついた。
「・・・・・・メノウ・・・・・・」
「辰斗・・・・・・・・・ちゃん」
二人の視線が合い、香織は椅子から立ち上がった。
「よく俺の前に顔を出せたな、メノウ」
「待ってください。私はハリ様を助け出すお手伝いをするためにここに来ているんです。だから・・・・・・」
「そんなこと関係あるかぁ!!」
香織がメノウに向かって走りだす。
「ストッーーーーーーープ!」
横を通り過ぎようとした香織をハーリーが後ろから抱きしめた。
「放せよハーリー! あいつが全ての原因なんだぞ」
身体に回された腕を引き剥がそうと暴れるが、びくともしない。
「こらこら、勝手に原因を他人に移すな」
「うるさい!! あいつさえ居なければ、ハーリーは」
「やっぱり、私が・・・・・・」
メノウの顔が悲しみに歪む。
ハーリーは片手で捕まえて、もう片方の手で香織の頭を撫でてやる。
髪を梳くように、優しく動く手のなんとも言えない心地よさに香織の意志が揺さぶられた。
「ううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
怒りに燃えていた心が、急速に沈められていく。
殺気に満ちていた香織の目もまた、甘えるネコの如くに変わっていく。
「ハリ様って、ずいぶん手慣れているんですね」
メノウがそう呟き、椅子に座ってこの光景を見ていた者達も頷いた。
「まあね。おしめをしていたときからのつき合いだから。な、香織」
香織、その一言が出た瞬間、香織の心の中で警報が鳴った。
・・・・・香織。それはいてはいけない、無力な、弱い自分。
香織の身体に力が再燃した。それも爆発的に。
放せぇっ!!!!!!
窓が部屋が、そこに居た人間の肌すら振るわせる声と意志。
その意志に反応して、この世界が香織に力を与えた。
剣をシンボルにした紋章が香織の身体に浮かぷ。
しかし紋章はすぐに消え、代わりに、香織の身体から硝子を割ったような音が1つ。
しっかりと掴んでいたはずの腕が外された。
代行己動詞では字呼召喚に勝てない。
「俺は・・・・・・・辰斗だ!!」
ハーリーの手から離れた香織は、彼を睨み付けた。
真っ赤な顔で、歯を食いしばり泣くのを無理に堪えている子供の顔で。
「・・・・・・悪い。そうだったな」
ゆっくりとハーリーは言葉を作って言った。
「今の事は謝る。だから今は、大人しく俺の話を聞いてく、いや、聞いて欲しい」
彼はきつく拳を握り、頭を下げた。
・・・・・香織に・・・・・こんな顔をさせて・・・・俺はバカか!!
香織にもハーリーの心情が多少なりに、解ったのか。
「・・・・・・わかった」
そう、一言呟くように言い、元の席に着いた。
座る時にメノウが目に入ったが、香織の目は彼女を認識しない。
そこに何もないかのように、視線をずらした。
≪香織様の言解議状態を終了します≫