機動戦艦ナデシコ
魔剣士妖精守護者伝
第9話
「はあ〜〜〜〜。なんで行かなきゃなんないんだよ・・・。」
「まあまあ兄様。今回は2ヶ月半だけですから。」
「私は・・・、ちょっと不安・・・。」
「大丈夫ですよ蛍。兄様もいます。」
「うん。瑠璃もだよ・・・・・。」
「蛍・・・・・・。」
「はあ〜〜〜〜〜。めんどくせえ。それに死ぬかもしんねえってのに・・・。」
「まあまあ兄様。拗ねないで。」
「お兄ちゃん、おじさんみたいだよ。」
2197年6月、ペガサス級戦艦7番艦アルビオン展望室。
龍一と瑠璃、蛍は月へと向かう途中だった。
事の発端は1週間前。
8ヶ月前に消息不明となったネルガル重工所属の機動戦艦ナデシコが第4次月攻略作戦中にいきなりチューリップから出現。おまけに敵味方構わずに主砲グラビティーブラストをぶっ放した事から始まった。
この件で、ナデシコの悪名が更に高まったのは言うまでもない。
さて、件のナデシコだが、現在は火星での戦闘において損傷した個所を修理する為に、月の衛星軌道上にて2番艦のドッグ艦コスモスに係留されている。
その際時間的にも余裕が出来た事もあって、ナデシコ(一応だが)会計要員のプロスペクター氏(43)が溜まっていた書類などを処分していた時に、ふと乗船二日目にして降りた(降ろされた)龍一と瑠璃を思い出したのだ。
火星に着いてからは連戦に次ぐ連戦で思い出している余裕も無かったが、改めて考えて見ると契約違反も甚だしい。彼等にはまだ思いっきり契約期間が残っているのだ。
このままでは他の者にも示しがつかないので、プロスペクターは龍一と瑠璃をナデシコに呼び戻す事にした。
その際の山下将明との交渉で、ナデシコが火星に向かい、消息不明となった期間については不問となった。
その為、龍一と瑠璃は元の契約が切れるまでの2ヶ月半の間、ナデシコに乗船する事になった。
「はあ〜〜〜〜〜。大体何で民間人の俺達が・・・。」
「仕方ないですよ。契約がありますから。」
「ネルガルのクソが!足元見やがって。こっちにゃ色々てめえ等の違法行為の証拠があんだよ。プロスさんの為を思って公表しなかったが、全部マスコミに送ってやろうか。それもクリムゾン系列の!」
瑠璃は何とか龍一を慰めようとするが、その行動とは裏腹に龍一の思考はドンドンと危険な方に向かっていく。
「蛍も蛍だ。ハッキングで書類の改ざんまでかましてついて来るとは・・・。」
「ごめんなさい・・・・・・。けど・・・、お兄ちゃんと離れたくなかったの・・・。」
とても申し訳無さそうに謝る蛍。最後は龍一の服の裾をぎゅっと掴みながら、少し頬を赤らめながら答える。
「・・・ま、まあ良いけどよ・・・。」
少々照れながら返事を返す龍一。瑠璃は少し――ほんの少しだが――ムッとしている。
蛍は昨年の12月に、クリムゾンの施設から救出された後、山下家の養子となった。そして今年の4月からは、瑠璃と一緒に公立の中学に通い始めていた。人との付き合い方を学ばせる為と、普通の生活を送らせてあげたいと言う将明の親心の為だ。
実際彼女は、友達も出来、瑠璃や友達達と楽しい学校生活を送っていた。
だからこそ龍一は、戦艦など乗らずに普通に家で生活していて欲しかった。
何でも無い平穏な日常が、かけがえの無い幸せだと龍一は考えているからだ。
「美月お姉ちゃんと纏お姉ちゃん、とても怒ってた。」
「自分達もついて行くんだって言ってましたから。」
「ガキの遊びじゃねえんだぞ。ったくあいつ等は・・・。帰ったらまた煩そうだな。」
御勤め(笑)が終わって帰った後の、美月と纏の態度を思い描いて気が重くなる龍一。
そこに瑠璃がバスケットを差し出した。
「厨房を貸してもらって蛍と一緒に作ったんです。・・・食べませんか?」
「気を落とした時は、食べるのが一番だってお母さんも言ってたよ。食べよう、お兄ちゃん。」
蛍もせがむ。
「そうだな・・・。まだまだ時間もあるしな。気ぃ入れ換える為にも食うか。」
3時間後―――――
『坊ちゃん、お嬢様方、ナデシコにあと30分で到着しますよ。』
「・・・もう着いたのか?」
突如流れた艦内放送にゆっくりと起き上がる龍一。どうやら寝ていたらしい。
「すぅー、すぅー、すぅー。」
「くーーー、くーーー。」
「瑠璃も蛍も寝てんのか。」
彼女達も眠っていた。龍一に体を遠慮気味に寄せて、幸せそうな顔をして。その様子がとても可愛らしく微笑ましくて、ついつい優しい笑みを浮かべる龍一。
何時もならこうして彼女達の寝顔をゆっくりと見ているのだが、流石に今はそうはいかない。自分の隣に寝ていた2人の妹に心を鬼にして声を掛ける。
「瑠璃、蛍、起きろ。」
元来低血圧な彼女達は、完全に起きあがるまでに何時も20分以上は費やす。
しかし今回は、馴れない場所に行く為の緊張からか15分程で起きあがった。
「ちゃんと荷物の準備できてるか?」
「はい、出来ていますよ。」
「うん、大丈夫だよ・・・。」
なお、そう言っている龍一自身が出来ていなかったりするのだが。
「兄様は出来ていますか?」
「お兄ちゃん・・・、ちゃんと準備しなきゃ駄目だよ。」
「うぬっ!」
彼女達は解っていた様だ。
20分後、アルビオンブリッジ―――――
「見えてきましたよ、坊ちゃん。ナデシコです。」
「ああ。しかしまあ、また随分と火星で蜥蜴どもの歓迎を受けたみたいだな。」
「ええ。かなり熱烈な歓迎を受けたそうですから。それに色々とソフト面でのバージョンアップもありますし。」
「だから1週間掛ってもあのドッグ艦から出れねえ訳か。」
アルビオンの艦長(音無では無い)とナデシコが火星で受けた傷について分析している龍一。内心は勿論『連れ戻されて良かった。』である。
「怪我をした人はいるのかな?」
「なんだか・・・、アルビオンに似てる・・・。」
瑠璃は負傷者が居るのか気にし、蛍は見たままのの感想を口にする。
そうこうしている内にコスモスに接艦するアルビオン。
「じゃあいってくるわ。送ってくれてありがとな。」
「それでは行って来ます。お帰りの時は気をつけてください。」
「・・・行ってきます。おじさん・・・、ありがとう。」
「「「「うう。瑠璃お嬢様・・・、蛍お嬢様・・・。もったいない御言葉ですぅ(感涙)。」」」」(ブリッジ全員)
「い、いえ、そんなことは・・・・・・(汗)。」(瑠璃)
「うう、ちょっと怖い・・・。」(蛍)
いきなり感涙し始めたブリッジクルーを前にかなり引き気味な瑠璃に涙目な蛍。
「坊ちゃんもしっかり御勤めを果たして、綺麗な体になって戻ってきてくださいね。」
「ムショ入んじゃねえんだけどな、俺・・・。」
こっちはこっちで何やら勘違い(笑)。・・・いや、わざとやっているのだろう。
「まあとにかく行ってくる。まあなめられねえようにビシッと決めてくるわ。」
「坊ちゃん、餞別のガンダムMk-2忘れない様に。」
「忘れねえよ(笑)。じゃあ行ってくる。いくぞ2人共。」
そのまま格納庫に向かってドスドス歩いていく。
「あっ、待って下さい兄様!」
「お兄ちゃん、待って・・・。」
声を掛けるだけで行ってしまった兄を追ってトテトテと歩いていく。
「艦長、大丈夫っすかねえー、坊ちゃん達。」
「坊ちゃんは強い御方だ。お嬢様方をちゃんと守られるだろう。」
「いや、自分が言いたいのはそう言うのじゃなくて・・・。」
「オメー、もし連中がそんな事したら答えは1つだろ?」
「そうだよな。坊ちゃん達にもしもなんかしやがったら・・・。」
「物騒な会話をするな。全く・・・。血の気が有り過ぎるぞ。」
「「「う〜す。」」」
「心配し無くともそんな事は無いだろう。どうやらナデシコは良い艦の様だ。」
「艦長、その心は?」
「あの敵勢力圏内の火星から生きて帰ってきたんだ。悪い艦である筈が無い。」
「「「なるほど。」」」
「さあ仕事だ。Mk-2用の装備や部品をナデシコに積み込ませねばな。」
「「「う〜す。」」」
この様に、龍一達は(中々)敬愛されている。
ナデシコ格納庫―――――
「なあルリちゃん、新しいクルーって誰が来るんだい?アカツキ達はもう来てるけど。」
「ちょっと待って下さいアキトさん。新クルーは・・・・・・・・・、あ!」
「どうしたのルリルリ?いきなり大きい声出したりして。」
「い、いえ、何でも無いんですミナトさん。すいません驚かして・・・。」
「いいのよ。私はてっきりアキト君が女の子を口説いている場面を見つけたのかと思っちゃった。」
「ミッ、ミナトさんっ!」
「俺って・・・(涙)。それで新しいクルーは?」
ミナトの偏見に気を落とした(泣いた)アキトだが、なんとか気を持ちなおしルリに尋ねる。
「アキトさん・・・。山下さんって憶えていますか?」
「ああ、もちろんだよ。2日しか居なかったけどインパクトは凄かったからな。ジュンはあれ以来魘されているみたいだし。そういや瑠璃ちゃんだったっけ。(性格はともかく)そっくりだったよね。」
とても楽しそうに龍一と瑠璃の話をするアキト。その様子に少し嫉妬を覚えながらルリは続ける。
「そのお2人と後もう1人なんです。新クルーが。」
「マジ・・・?」
「はい。マジです。」
「それって・・・、確実に歴史が変わって来てるよね。」
「はい。良い方向か悪い方向かは解りませんが。」
そんなアキトとルリの話は・・・・・・、
「アキト〜、ルリちゃんと何お話してるの?」
天真爛漫な乱入者によってオジャンとなった。
ガンダムMk-2コクピット内―――――
「何で後ろから入るのお兄ちゃん?」
「エステ用の通路じゃでか過ぎて通れねえんだよ。まあ今コイツ専用のハンガーは作ってるみたいだけど。」
「大き過ぎるのも不便なんですね。」
「そんなに大きいモンでもねえけどな。」
ナデシコの艦載機は、元々ネルガルの自社製品であるエステバリスである為、企画が全く違うMSを運用しようとするとどうしても今の様な不都合が生じてしまう。それでも将明が龍一に餞別としてガンダムMk-2を与えたのは、せめて無事で居て欲しいと言うせめてもの親心と言う奴なのだろう(ただ実戦における稼動データが欲しいだけとの説もあるが)。
「兄様、ネクタイ曲がってますよ。」
「直してくれ。」
余談だが、今の龍一の服装は、スーツの上にいつものコートである。瑠璃は白のサマーセーターにデニム地のフレアスカ−ト、蛍は何故か藍色の振袖である。本人曰く、「気に入った。」らしい。
「ガンダムMk-2と補充クルー3人ただ今ナデシコに着艦しま〜す。」
ガンダムMk-2と龍一達はナデシコに着艦した。
再びナデシコ格納庫―――――
「うおーーーーーーーーーーー!モビルスーツじゃないか!!すげーーーー。初めて見るぜ。」
格納庫に入ってきたガンダムMk-2(以下Mk-2)を迎えた最初の言葉がこのテンション上がり放題のウリバタケのこの言葉だった。
「しっかしあんなでかい機体で機動戦できんのかよ?」
結構否定的なリョーコの意見。因みにMk-2、(エステから見て)あまりにでか過ぎるため、天井にぶつからない様に猫背になっている。
「まるでエ○ァみたいだね〜。」
「・・・・・・・・ふっ。」
ヒカルさん、それを言ってはいけません。・・・イズミはギャグが思い付かなかったらしい。
「何だかとっても大きい機体ですね〜。」
「そうね。誰が乗ってるのかしら?」
こちらはメグミとミナト。
「まさかもう完成しているとは・・・。」
「しかしミスター。この機体の配色はトリコロールカラー。まだ試作機だ。」
「ええ。しかし量産型が既に前線に配備されたと言う情報も入ってきていますし・・・。」
「けど、もし入ってきた情報通りの性能だと、エステの性能だとちょっとヤバいかもね〜。」
皆より少し離れた所からMk-2を観察していたプロスとゴート。その会話にいきなり入ってきたアカツキは、口調こそいつも通りだが目は鋭い。ネルガルの会長の目だ。
「それならもっと真面目に仕事しなさいよ。」
んが、エリナにジト目で見られて撃沈した。
「俺はあんな機体見た事が無い・・・。ルリちゃん知ってる?」
「いえ・・・、私も知りません。何でしょうか一体?」
ネルガルの一団と同じ様に皆から少し離れた位置に居るアキトとルリ。因みにユリカは龍一達の出迎えの為ここには居ない。
そんな最中、着艦したMk-2のコクピットハッチが開いた。
「やっぱ感傷なんてねえか。」
コクピットからぬっと出てくる龍一。側に寄せたMK-2の掌に乗る。
「高いから気ぃつけろよ。」
そう言われてから恐る恐る出てくる瑠璃と蛍。
「「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
メカニック達が魂の雄叫びを上げる。まあ2人とも妖精と比喩できるほどの美少女なので仕方が無いが、瑠璃と蛍はビビって途端に龍一の影に隠れる。
Mk-2の掌に乗って地上に降りてきた龍一に早速プロスが声を掛ける。
「御久しぶりですね山下さん。瑠璃さんも。それとそちらの方ですか?新たな副オペレーターは?」
「そうすよ。山下蛍。妹っす。それと、ひさしぶりっすねプロスさん。正直もう会えねえと思ってましたよ。」
最初は苦笑しながら、最後は申し訳なさそうにプロスに答える将明。
「いえいえ。元々貴方方はこの船に乗ることは無かったのですからそうお気になさらずに。」
「有難う御座います。そう言ってもらえると助かります。」
そう答え、頭を下げる龍一。瑠璃と蛍もそれに倣う。
「それでは艦長、頼みますよ。」
「は〜〜〜い!みなさ〜〜〜〜〜ん!!ちゅうも〜〜〜〜〜〜く!!!」
一際大きいユリカ嬢の声で龍一達に注目するクルー達。龍一も流石に緊張する。瑠璃は龍一の側で手を握り、蛍は龍一の服の裾を掴んで後ろに隠れる。
その様子に苦笑しながらも龍一は自己紹介を始めた。
「え〜〜と。一応二日間この艦に乗ってたが、知らなかったり忘れたりしてると思うから自己紹介しておく。俺は山下龍一、21歳。一応刑事なんぞをやってる。ここでの役職は警備だ。「パイロットもですよ。」・・・まあ宜しく頼むわ。」
途中のプロスの突っ込みで顔が少し引きつったが紹介が終わる。
そして次は、
「山下瑠璃です。い、いま紹介された山下龍一の妹です。えっと・・・、役職はオペレーターです。宜しくお願いします(ペコリ)。」
緊張バリバリな瑠璃。途中詰まるものの、とりあえずは紹介完了。
そして―――、
おずおずと龍一の後ろから蛍がヒョコッと顔を出す。
「さあ、蛍。」
瑠璃に促されて2歩程前に出て―――、
「・・・山下蛍です・・・。オペレーターです。宜しく・・・。」
ペコリと頭を下げ紹介完了。
「みなさ〜〜〜〜ん、仲良くしてくださいね〜〜〜〜!」
(ここ、保育園か?)
ナデシコ到着早々の龍一の感想だった。
自己紹介が終わって一段落した格納庫。殆どのクルーは自分たちの持ち場に戻っている。
瑠璃と蛍もブリッジに行った。
しかしMk-2の周りにはまだ何人か残っていた。
「班長さん、これ。コイツの仕様書っす。」
「おう。しかしMSとは・・・。後で弄ってもいいか?」
「それやると後で色々まずいっすから。仕様書で勘弁してください。」
苦笑しながらウリバタケを止める龍一。
「この機体、ぱっと見中々いい機体じゃねえか。」
「凄えっすね。見るだけで良く解るな。」
「そりゃオメエ、俺はこの艦の整備班長だぞ。んな事ぐれえ簡単よ。」
「整備の方は大丈夫すか?エステとMSじゃ大分勝手が違うんじゃないんすか?」
「でーじょーぶだって。仕様書チラッと見たんだが、構造的にはエステとあんまし変わんねえんだよ。」
ウリバタケの話を聞きながら、龍一は後ろに視線を感じていた。
ウリバタケの話が終わったのでそちらに振り向き、声を掛けた。
「なんか話か?アキト・・・だったっけ?」
「ええ。憶えていたんですか龍一さん。」
「そりゃこっちのセリフ。俺達2日しか居なかったのにプロスさんとゴートのオヤジは別として、お前もルリもハルカさんもよく憶えてるよなあ。」
「インパクトが凄かったですから。」
苦笑しながら答えるアキト。・・・確かにインパクトは強かった。
「もうこんな時間か・・・。俺食堂で仕込みありますから。またゆっくりと話しましょう。」
「おう、頑張れよ。」
食堂に向かっていくアキトを見送る龍一。だがその背後に忍び寄る謎の影が!
「・・・なんか用っすか班長?」
「いや、ウリバタケでいい。それより山下、コレをやる。あの可愛い妹さん達を悪の手から守ろう!!」
「何だこりゃ?」
龍一が貰った物―――、それはテンカワアキト抹殺組合入組証と書かれていた。
ビィィィィーーーー、ビィィィィーーーー
「何だあ?」
「こりゃ迎撃戦だな。今仕様書チラッと見たんだが、こりゃ本当にすげーわ。お前も出るんだろ?」
「たぶん。まあ撃墜されねえよう頑張りますわ。」
「あのなあ・・・。それじゃ宝の持ち腐れだっつーの。コイツの性能なら駆逐艦が相手でも大丈夫だぞ。」
そう言いMK-2を見る。
「でも俺、素人っすよ。」
龍一はそれに苦笑しながら謙虚に答えた。
「リョーコ、隊列はどうするの?」
「鳳仙花だ!!」
「りょーかい!!」
無人兵器を各個撃破する為四方に散っていくエステバリス達。その後ろにMK-2が居た。
「めんどくせーー。大体おりゃー臨時だろうが臨時。何ででなきゃなんないんだよ。」
その独り言を聞いたのかリョーコが通信を開いた。
「おい、新入り!」
「俺のことか、ねーちゃん?」
「ああ、お前だよ。そんな特別機があるとはな・・・。お前、何処かの坊ちゃんか?」
「否定はしねーよ。で何?いびりか?」
不敵に笑い返す龍一に少し腹が立ったが押さえるリョーコ。
「いや、ナデシコの戦闘記録見たんだけどよ。お前、本当に素人か?」
「それ私も気になる〜。」
「・・・私も。」
いきなり音も無く開くウインドウ。それにすこしビビる龍一。
「!・・・、そうだぞ。ゲーセンで少しやっただけだぜ。」
「それであんなに出来るなんて、本職の人の立場が無いんだよね〜。」
アカツキ現る。こちらも音がしなかった。
「んなこと言われても・・・!そこか!」
何を感じたのか急にビームライフルを撃つ。そして――――、
ドゴオオオオン!!
後方に居た敵の駆逐艦を落とした。
「これはこれは・・・、恐れ入ったね〜。」
「誉めても何もでねえよ、アカツキさんよ。」
等と言う会話は―――
「来るな。そろそろ通信切った方が良いんじゃないか?」
と言うアキトの通信で幕を閉じた。
ナデシコブリッジ―――――
「信じがたい威力ね、あのビーム。」
戦闘を見ていたエリナが口を開いた。
「ふえ?ビームってたしかディスト―ションフィールドに阻まれてしまうんだよね・・・。だったら山下さんの機体は何で?」
ユリカは疑問に思うがそれはブリッジクルー全員の疑問でもある。そこに、
「ご説明しましょう。」
(・・・やはり現れましたか。)
絶対狙っていた説明お・・・・・・姉さんの登場に少しウンザリするルリ。
「大丈夫ですか、ルリちゃん?少し休んだら?」
「無理はしなくていいよ。蛍達でも出来るから・・・。」
それを疲れと勘違いしたのか瑠璃と蛍に心配される。
「大丈夫ですよ。私、こう見えても結構丈夫なんです。」
その事が嬉しくてルリは微笑んで答えた。
そんな最中―――、
「山下機、ロストしました・・・。」
メグミから龍一遭難(笑)の知らせが入ってきた。
ちなみにその間も説明おばさんの説明は続いていた。
「自力での帰艦は無理なんですか?」
「可能だよ。あの機体はエステと違ってジェネレーターを積んでるからな。それも高出力の。月面に降下でもしない限り帰り着くよ。だから瑠璃ちゃんも蛍ちゃんもそんなに心配しなくても良いぜ。」
ユリカの質問に、ウリバタケが頭を掻きながら返事をする。
「けど少し気になるな。・・・俺が迎えに行って来るよ。」
「ええっ、アキトが!!」
「そうですよ。行く必要はありませんよ。」
メグミも反対する。が、
「けど、やっぱり何か気になるんだ。だから・・・。」
アキトの決意は変わらない。
「すいませんテンカワさん。兄がご迷惑お掛けして・・・。」
瑠璃がペコリと頭を下げ、蛍もそれに続く。・・・よく出来た妹である。
「構わないよ。仲間だしね。」
微笑むアキト。・・・テンカワスマイルだ!
しかし瑠璃と蛍には全く効かなかった(笑)。
しかも、
「有難う御座います、テンカワさん。」
「ありがとう、・・・テンカワさん・・・。」
微笑む瑠璃と蛍。
「(うっ!可愛過ぎる・・・。)いやいや・・・ハハハ。」
山下シスターズの微笑みに返り討ちにされてしまった(爆)。
なおその光景を見たルリ、ユリカ、メグミ、リョ―コ、イネスが鬼女に変身してしまったことをアキトは知らない・・・・・・。
一方その頃――、
「だあああああああ!しつこいぞこいつ等!!」
龍一は――、
「ちいっ、これでも食らえボケどもが!!」
案の定――、
「ここに身ぃ隠すか。」
月面に降下してしまっていた。
「クソがっ!!ここまで執拗に追い回さなくてもいいだろうが。」
戦闘中誤って月面へと降下してしまった龍一が見てしまった物は、木連の試作機動兵器の実戦試験だった。
「けど仕方ねえか・・・。こっちは秘密握ったスパイみたいなモンだからな・・・。こんな所(連合の勢力圏内まで160Km)で試験やってる木連の連中もわりーと思うけどよ。」
とりあえず、今龍一が居る地点は木連の勢力圏内である。
・・・龍一、ナデシコ乗艦僅か1時間も経たずに命の危険である。
「俺ってツイてねえな・・・。・・・やっぱ先週も万馬券当てちまったのが原因か?・・けど今月はまだ4回しか当ててねえんだけどな。」
・・・十分ついていると思う。
「どう、見つかった京子?」
「いいえ、まだよ千沙。」
「そう。しかしまさか神皇のテスト中に敵と出くわすとはね。」
龍一とガンダムMk-2を偵察機と勘違いして追っていたのは、優華部隊の各務千沙と天津京子の2人だった。
千沙は、日々東舞歌嬢に押し付けられる激務から逃れる為に、神皇のテストパイロットに自ら志願した(笑)。なお京子嬢はその御目付け役として、実際には舞歌への直接の連絡要員として千沙についていった。
「けど千沙。敵はあまり腕は良くないみたいね。」
「確かに。機体に遊ばれている感じがするわね。」
流石は優華部隊、完全に見破っている。しかし流石の彼女達も、乗っているパイロットが素人そのものとは思いもつかなかった。
「さっき追われてた時の感じは、機動性も防御力もこちらが圧倒的に上。小回りは向こうの方に軍配が上がる。まっ、サイズが違うから当たり前なんだけどな。・・・だとしたら・・・。」
先程から脱出の手段について考えていた龍一。その方法を今思いついた様だ。
「こっから連合の勢力圏内までは160Km。けどここら辺は数が多いからなあ。迎えはこねえしな。やっぱ出力全開で引き離すしかないよな。」
備え付けのスポーツドリンクを一気飲みし、一呼吸置いてから、
「おっし!行きますか!!」
ガンダムMk-2はバーニア全開で飛び出した。
「「えっ!?」」
いきなり飛び出したMk-2に少し反応が遅れる2人。
それが致命的だった。
「早過ぎるわ。神皇じゃ追いつけない!」
「地球の機動兵器の性能が之ほどとは・・・。諦めましょう京子。」
「けど!」
「今貴方が言ったでしょう。追いつけない、と。もしかしたらあれは囮で伏兵が居るかも知れないのよ。」
「・・・解ったわ。」
問答無用の加速を見せ、無事に千沙と京子を撒いた龍一。
「いきかけの駄賃だ。くらいな!!」
逃げるついでにビームライフルを3発発射する。当然命中しなかったが。
その後は敵にも会わず、龍一は1時間もしない内に連合の勢力圏内に無事辿り着いた。
さらに幸運な事に、その日の内にナデシコにも帰り着けた。
ちなみに、龍一を探しに行ったアキトも遭難してしまった・・・・・・・・・・・(爆)。
こちらは何故か2日後に回収されたと言う・・・(笑)。
第10話へ
後書き
ども、核乃介です。
ようやく9話。TV版の話にに戻れました。
ああ、書けば書くほどグリプスの連中がヤクザ化してくる・・・。軍事組織だろ、おい!!
龍一、某組織からの勧誘を受けていますがコヤツはむしろ狙われる側の人間です。瑠璃や蛍をアキトの手から守る必要もありませんし(逆にアキトがクラッときてます(笑))。
しかしアキト、再登場していきなり悲惨な状態に・・・・・・。
まあこれから更に・・・(ニヤッ)。
あと、最後になりましたが、前回も含めガンダムを知らない人とガンダムの熱烈なファンの人、ごめんなさい。
代理人の感想
そうなんですよね〜。
例えガンダムのような割とメジャーな物であっても
元ネタを知らない人と言うのは結構いらっしゃるわけでして。
知らなくても楽しめるようなある程度の配慮はやはり必要です。
・・・まぁ、私が言うのもなんですが(爆)