「決着をつけよう・・・テンカワ・アキト」

荒れ果てた荒野・・・延々と続く焼け野原

平穏だったはずのそこは数年前とは比べるべきもない、死の世界となり果てた

地獄と呼ぶに相応しい、黄褐色の世界

火星、人々が希望を謳ったはずのそこは・・長い戦争の中で、死の気配を滲ませ

・・・アキトは苦笑する

自分の故郷、ユートピアコロニーは・・死に絶え

「久しぶりに会えたのに・・いきなりそれか」

呟きながら、2人の背に立ち尽くす・・・生命無き骸に花を手向ける

共に闘い続けた戦友は・・今、その動きを止め

「俺達に・・他に何も必要ないはずだ」

・・・朱色の鬼神と白銀の巨神

戦いの果てに倒れ伏した戦友を傍らに・・拳を握る

心を掠めるは・・・かすかな畏れ、確かな決意、そして如何様にも押さえ切れぬ高揚感

想えば、2人向かい合うときはいつもこうだった

愛憎入り交じった、共に在ることが喜ばしい・・不思議な感慨

「草壁も北辰も死んだ・・・山崎も死に、後は和平へ進むだけだろう、どうだ?まさしく英雄になった気分は」

英雄・・そう、呼ばれた男だ

テンカワ・アキト・・様々な者が、様々な想いを込めてその名を呼び

「俺の力じゃない、ルリやユリカ・・・ナデシコががんばってくれたからだ」

そして、彼の仲間と共に・・惑星間の戦いを和平へと近付けていった

人は言う、戦争で英雄と呼ばれた者は・・・敗けた側からすれば大量殺人者、悪鬼羅刹だと

英雄と呼ばれるその手は、幾百の血にまみれ幾千の死を踏みしめ・・幾万の犠牲の上に築かれた

だからこそ・・英雄と呼ばれることを望みたくはない

「俺は・・英雄なんかじゃないんだ」

「どうだかな・・・貴様がその中心にいたことは間違いないだろうが、こんな所にいていいのか?」

沈黙がわだかまる・・・答えたくない問いを求められたように、アキトの顔に苦渋が満ちる

英雄と称えられた、称賛を浴びた・・・畏怖の視線を向けながら、人々は彼の栄誉を称えた

・・・英雄と呼ばれることを望まなかった青年は、英雄で在り続けることも望まれなかった

「・・・結局、俺もおまえも同じ運命にあったか」

男の眼にわずかな笑みが浮かぶ、たった一人の、仲間を見つけた喜びが

テンカワアキト、英雄と呼ばれる男

いつの間にか伸びた髪をうなじで縛り、闇色に淀む瞳を目の前の男に向ける様は・・疲れ切っているようで

「俺達は・・異端・・だろうからな」

アキトの前に立つ男・・北斗が舌打ちする

猛々しく燃え盛る炎を思わせる朱色の髪を無造作に縛っただけの男は、精悍的な顔つきに・・けれど確かな気品と美麗さを隠しながら、アキトを見上げる

男としては・・その実力を思えば明らかに小柄な体躯で・・足下に転がっていた瓦礫を踏み砕き

「力の意味など・・考えたことはなかった」

アキトが英雄と呼ばれたように、彼も・・昔から呼ばれ続けた名があった

羅刹・・死を招く、疫病神

昔から・・人並み外れたその力は畏怖と嫌悪の象徴だった・・だが、同じ力を持ちながら、それを自分のために使わない男が居た

既に英雄と呼ばれていた、その男

「今ならわかるのか?」

アキトの問いに苦笑する

ずっと・・考えていたのだ、自分の力の・・意味を

「お前を倒すためだ」

睨み合い、隙を伺う

自分達の戦いに合図など無い・・有るとすれば、出逢った瞬間

隙を見過ごすことが有れば、逆に咎められるだろう・・殺意を交わしあい

・・・けれどまだ、その顔は柔らかで

「女共に別れはすませたか?」

殺意を緩める

・・・この戦いが最後、もう・・帰る場所もないのだ

少しくらい話しても、構わないと・・思う・・・北斗のそんな想いを察したか、アキトの殺意が目に見えて緩まり

「ルリちゃんとラピスは無理矢理寝させてきた・・・あの娘たちはここまで追ってくるからな・・・お前も、零夜ちゃんにちゃんと言ってきたろうな」

・・・女癖の悪さで定評のある男の、その言葉に失笑する

自分もこいつも、随分と女を泣かせている

「あれだけ泣かれたのは久しぶりだったがな・・・無理矢理置いてきた」

言って・・ふと、北斗から殺意が消える

怪訝そうにしたアキトは・・けれどやがて悟る

殺意も怒気も、喜怒哀楽の感情から怒と哀を捨て去った感情

「枝織ちゃんか」

「もう・・・心残りはない?アーちゃん」

そこにもう、アキトと睨み合っていた男は存在しない

存在感と希薄、表情だけでこうも変わるものか・・優しげな微笑みで、少女はアキトを見上げ

「そうだね・・自分にやれることは全部やった気がする」

「そっか・・」

無垢に微笑む少女に、自然・・アキトも微笑みを浮かべ

「・・ねぇ・・アキト」

媚びるような、拗ねるようなその呟きは・・アキトの背筋を冷やした

冷や汗がゆっくり浮かぶ

自分をアキトと呼ぶのは北斗だ・・けれど、目の前にいるのはまるで枝織のようで

・・分からなくなる、彼女を・・何と呼んでいいのか

「・・北斗、か?」

「・・・そう・・北斗が我の名、北斗が我が心」

殺意が消えたままだ、けれど・・北斗の存在感がする

北斗の声音で、枝織のように弱い瞳で、北斗の気迫で、枝織の人懐こさを表しながら

殺意がゆっくりと、アキトを包み込む・・一見して、北斗の気迫が減っていくのが見える・・・

ただしそれは達人レベルの見方、それすら凌駕するアキトにすればそれは引き絞られる強弓だった

「けど、私たちは一つの心、父様という存在を核として作られた二つの心・・」

その北辰は死んだ・・・その瞬間・・・北辰の狂おしげな断末魔を聞いた瞬間北斗は復讐から解放された

『私達は、存在の意味を失った』

二つの声が重なる・・・

枝織と北斗・・今ならその遷ろう2人を理解できる

互いを補い合っていた2人は、共通して知覚していた愛憎の対象を失い、困惑している

「だから決めないといけないの、我等のどちらが北斗なのかを、私達はアーちゃんが大好きだから、北辰の代わりは貴様で補う」

不安定に彷徨い続ける北斗の心・・・それが一つに再び戻る

険しい瞳、猛々しい雰囲気、野生の獣を彷彿とさせる・・身体から吹き出る熱い闘気

・・・真紅の羅刹・・・北斗

「決めようぞアキト・・・俺は枝識と約定を交わした、貴様との戦いの後に生きるべき道を決めると」

殺意が奔流となって2人の周りに蟠る

もう、遷ろう心は存在しない・・目の前には自らが好敵手、最良の親友が・・立ち上がり

「北斗」

「枝織は一時退いた・・奴と俺の精神力、比べれば俺の方が僅かに強かった・・けれど、枝織を飲み込めるほどには強くない」

自嘲気に呟く北斗、枝織を受け入れた彼・・彼女には、彼女はもう嫌悪の対象ではなく

・・・その身体から黄昏をさらに朱色に染める輝きが漏れる

闘気と殺意が混然と1つの渦となって全てを巻き込み始める・・昴氣

木連式柔の極

「アキト・・お前を倒し、俺は全てを凌駕する」

戦いこそが信条の北斗にとって、自分と同じ強さを持つ存在はけして許せる存在ではなく

・・・同時に、その存在は歓喜を奮い立たせる

それはアキトも同じ事、人から異端と呼ばれ・・存在を拒まれた彼等は、2人睨み合うこの一瞬こそが

認められると、感じられ

「北斗・・俺の命で、お前の望みに応えよう」

幾度も対峙した二人

けして終焉の訪れなかった聖戦

この世で唯一、力を競い合える同胞

すべてが終わった今・・・自分たちが在るべき場所、戦うべき敵は

「「今ここで全てを決す!!」」

・・英雄と呼ばれた男が蒼穹の光を零し、構えを取る

その名も、もうここでは意味がない

それが喜ばしい、北斗の前でだけ・・アキトは英雄ではなく1人の戦士として存在することが許される

英雄を捨てた今、アキトが存在していいのは北斗との対峙、枝織の傍らにだけ

「こおぉぉぉぉぉ・・」

黄昏を蒼く染める輝きが・・・ゆっくりと螺旋を描く

友を亡くし復讐を決めた師から授けられた柔、そして狂った父から叩き込まれた柔、同じ流派の光と闇、表と裏、

木連に連綿と続く・・一対一の戦いを機軸としたアキト、闇のなかで、ただ人を殺すことを目的とした北斗

けして交わるはずの無かった拳が、今・・交わされた

「行くぞ・・・北斗」

大地を蹴り、鳥のごとく舞い上がるアキト、人の力とは考えられぬ高さを一蹴りで舞い、

重力を越える勢いで落下する

「ふんっ・・」

逆光を背に舞い上がったアキトに対し、間合いの遥か外から腕を振るう北斗、

けれど腕から放たれた幾筋もの光は狙いはずさずアキトへ迫る・・・硬質化した昴氣の糸・・

「風蹴りっ」

それを見て取ると、アキトは自由落下の状態からさらに高く飛ぶことでそれを避ける、空を強く踏みしめて

存在しない空間に圧縮した昴氣を存在させることで足場を作り出し

「まだだっ」

北斗はさらにり、両手をそのアキトに向けた

光の網如くアキトに迫る昴氣の糸、アキトを捕らえ地面に引きずり落とそうと・・光の網はアキトに迫り

「もう・・1つっ」

天高く飛翔していた身体をくるりと反転させる、拳を握り・・ぎらつく視線を地面の北斗に向け

風蹴り・・・ただし、高くではなく

地面に叩きつけられるように、大地に向けて飛び込んだ

「咆えろ! 我が内なる竜よ!」

北斗の放つ糸の隙間を抜けるように、身体が滑り込む・・数度風蹴りを繰り返し糸の間隙を抜け

・・嗤う北斗が糸を離し、腰溜めに拳を構えた

「秘剣! 咆竜斬!」

拳に・・蒼穹の木洩れ日が集まる

それは、握った親指の側からゆっくり流れるように零れだし・・・剣となる

「喰らえ! 我が心の飢えし狼!」

叫ぶ北斗・・自らの心を鼓舞し、内に秘める獣を揺り覚ます

餓狼が・・身体の奥底でゆっくりと目覚めるイメージ

「餓狼牙!」

剣が投じられ、開かれた竜の顎が北斗に迫る

蒼穹の鱗をくねらせた、巨大な顎の前に・・昴氣を硬質化させ、拳の周りにまとわりつかせると・・・北斗の腕に、狼の牙が並び立ち

・・龍と狼が、互いの姿を喰らい尽くし

「・・・」

二人の間に沈黙がわだかまり・・・そして再び激しい輝きがぶつかり合った・・・

 
 
 

 

昴氣

黄昏の輝きが大地を砕き、蒼穹の木洩れ日が空を裂く超常の力

この世で、北斗とアキトだけに許された異端の証

彼等がその力を得たのは、武を極めた彼等が初めて敵を識ったその瞬間だった

互いに、今の自分では勝てぬ存在が在ることを知り、互いに技を、力を、意思を学びあった彼等

仲間の命を傍らに置いたままの死闘だった・・けれど、その心情は・・言うなれば歓喜だった

この世で唯一、全力をぶつけても壊れない敵の発見・・・

それは一人の武人である彼らにとって最高の悦楽だった

その戦いは結局いくら拳を交わしても収まらず、二人の力を錬磨し続けた、

自らに足りない部分を相手の技量から選び抜き、自分の得意とする技を相手の身体にたたき込む

二人は瞬間的に師となり弟子となった、そして二人は同時に至った・・・

柔の境地、昴氣へと自らを昇華させた瞬間が同じ、そしてくぐった激戦もまた同様に苛烈、過酷な物、

武に対する天賦の才も差異こそあれど同じ、

その二人の戦いは・・・結局は過去の幾度かと同じ方向へ流れていった

アキトの拳が打てば北斗の脚が応える、北斗の一撃にアキトも一撃を返す、応酬される力と力、

同じ疲労を、負傷を負いながら戦い続ける二人、そして・・・戦い始めた頃に二人の位置は戻った

 
 
 

 

「・・・さすがにつらいな・・・」

死闘の中で、笑みを浮かべるアキト

眼前では北斗がこちらの隙を伺っているが・・今では偶然の作用でしか隙など生まれない

アキトが、凝り固まった腕の筋肉を緩める様を・・北斗は確かに眼にしている、けれど・・その中にも隙はない

一瞬在れば、リラックスした状態から裂帛の気合いを放つ鬼神へと変わることができる

それほどに・・彼等の神経は研ぎ澄まされている

・・・闘うほどに強くなる、その確信の中で

錬磨し合った2人の戦いは、それこそ・・終焉の感じられないもので

黄昏はすでに去り二人を煌々とナノマシンの輝きが照らす・・・

それらは空でひとかたまりとなり、月と同じ輝きを火星へ与える、地球の周期と同じように欠ける月

それは今満月となって二人を照らしている・・・

今宵は雲もなく、星々の輝きは対峙する二人をひどく美しい物に見せる

「確かに・・・ここまで戦ったのは初めてだからな」

北斗が構えをといた

握り続けていた拳を解き、身体を伸ばす

筋肉をほぐすだけのアキトより、まだしも隙を見つけやすい様だが

・・・2人は、一時戦いから離れたようだ・・研ぎ澄まされていた神経が休められ、昴氣が消え失せ

「誰もが俺を楽しませる前に死んでいった・・・」

また、独白する

戦いの最中は言葉など必要なかった、ただ・・交わし合う拳が言葉より雄弁に互いの意思を伝え

「物騒だな・・・」

既に、理由など消え失せた

ただ・・殺し合う瞬間を、錬磨した技を全力で振るう瞬間を・・2人は歓喜で迎え入れ

「人殺しを畏怖するか?」

「いまさら・・・俺は、何千人も殺したんだ」

沈黙・・そして、交わされる笑み

馬鹿なことを言ったと、気にする必要すらないと・・互いに、わかり

・・・自分達はどれほどの屍の上に立っているのだろう、目的のため、幾千・・幾万の者を殺し、英雄と・・羅刹と呼ばれるのだろうか

「お前といるのは楽しいよ、アキト・・・できるなら、このままずっと・・」

再び北斗が笑みを浮かべる・・・それは、今までの物とどこか違うようだったが

少なくともアキトにはその差はわからなかった

「俺もだ、力の限りを尽くせる」

嘆息する

明らかな・・明白な隙、或いは今打ち込めば・・抵抗すら許されず倒せるほどの

けれど、北斗のその・・拗ねたような眼差しに、アキトの拳は鈍り

「なるほど、真性の鈍感か・・・」

「ん?」

不思議そうな顔になるアキト、それに若干怒りを覚えながら・・・

闘気が膨れあがった・・言葉を交わす微かな間隙は終わったようだ

また・・人知の及ばぬ死闘が始まる

「枝織との約定を果たす・・アキト、この戦い、敗者は勝者に従属しろ、それが・・・・枝織が・・お前と俺が闘うことを黙認した条件だ」

「・・・いいだろう」

怪訝そうにする

先程言ったではないか、枝織はアキトとの戦いの中で自らの在り方を求めると

・・・死闘を交わしあうことで北斗の意思の強くなるこの戦いは、枝織の存在を消してしまう

彼女は如何にして生き延びようとしているのか、それとも・・死のうというのか

それを訝しく思いながら、アキトは拳を握り

(いずれにせよ、死の運命からは逃れられるのだろうがな・・・)

それをアキトの答と捉え、拳を握る北斗

死闘の決着はどちらかの死でしか終わらない、勝者は生者、敗者は死者・・それは、言葉にする必要すらない不文律だ

ただ・・・

北斗の顔が翳る・・もう1人いるのだ、この戦いに参加しているのは

北斗の内なる人格、枝織・・彼女も死闘の最中にある

身体の支配を北斗から奪い取り、枝織がアキトを倒せたのなら・・・勝者は枝織になる、だからこそ枝織は北斗の戦いを認めているのだ

実際、有り得ないことではあるだろうが

死闘という条件下にある限り、枝織の意識が浮上することは無い

特殊な手段か、或いは精神的に落ちついた環境下にない限り枝織の意思が北斗に勝ることはない

北斗の強固な意思の間隙を突いたとしても、枝織が身体の支配を得るのは数瞬

その僅かな時間でアキトに勝つことは出来ないだろうし、アキトが枝織を攻撃できるとは思えない

後は、再び枝織から身体の支配を奪い返せばいいのだ

・・・やはり、どう考えても枝織の勝利は存在しない

「・・・行くぞ、アキト」

「ああ・・来いっ」

枯れ果てた大地を野生の獣のように疾駆する2人

そして、北斗の視界を共有し・・その様を眺める枝織は自分と北斗の力を冷静に比べ

・・・最後の策を練っていた

 
 
 

 

「かっっ!」

北斗の一撃がアキトの額を打ち、北斗の手刀がアキトの腹を打つ、そして再び距離をとる2人・・・

既に二人から昴氣は消え失せた、何時間もの激闘が二人から次第に体力を奪っていく

全身に傷が生まれ、アキトは肋骨の何本かと鎖骨を、北斗は腿と左拳の骨を折られている

二人がぶつかり合う度に互いの血しぶきが上がり消える、

通常なら完全に戦闘不能のはずの損傷を受けながらも、2人にはまだ戦うことができた、けれど、その力を絞り出すために昴氣はもう使えない

そして・・・2人が再びぶつかり合う

「かぁっ」

「おおっ」

二人の両手が組み合わさる・・・完全な力比べの状態だ、アキトの右手と北斗の左手が、

左腕と右腕がロックされ・・・

凄まじい力の押し合いとなる

両者の軸足が軋みすら上げて大地を踏みしめる、足の裏で砂が粒子となって砕け

両者の間の空間が軋むようにひしゃげていく

「くおおっ」

「かああっ」

その力は拮抗

上背では僅かにアキトが勝るが、それを補うだけの鋼の筋力が北斗には有る

昴氣の全てが力の放出に傾けられ、全身の傷口から血が流れ出す

機動兵器とすら相対できそうな力を込めながら、二人が笑みを交わす・・その間にもフェイントや力の強弱は繰り返されている

・・・眼前の貌に、笑みを向け

「また、引き分けか?」

「今回は、決着をつけるさ・・・」

もっとも、これ以上力を比べても決着は付かないだろう、いったん距離を置こうとアキトと北斗が同時に、後に跳びすさり

「・・!?」

北斗の身体が動かない・・・

同時に背後に跳んだはずだ、そして肉弾戦へ移る・・はずだった

けれど、背後へ跳んだはずの北斗の身体はアキトに引きずられて前へ飛び込む

(枝織!?)

身体の支配が自分から引き剥がされる、感覚だけをそのままに・・身体がアキトとの間合いを詰める

間合いを離そうとしたアキトの片手を掴んだまま、枝織が一歩を踏み込む

「くっ」

アキトの肘・・けれど、朗らかに微笑む枝織の顔に叩き落とすことはアキトには出来ず

・・・間合いが詰まった

必殺の肘は枝織の眼前で止められ、寸打の間合いまで枝織が足を踏み出した

戸惑うアキトと北斗、この間合いからまともに技など繰り出せるはずがない・・絞め技になれば支配を奪い返した北斗に枝織は追いやられる

((何だ?))

一瞬二人の思考が交錯し

無垢な・・・けれどどこか悪戯めいた笑みを浮かべる枝織

北斗が身体の支配を取り戻す、その・・瞬間

「・・・」

「?・・!!!・#&$’%#%#$%)」

 
 
 

「・・・!!!!!!!!!」

「っっっっ・・・!!t!!!」
 
 
 
 

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 
 
 

 

沈黙が数十秒、そこに満ちた

絞め技・・確かに、アキトの呼吸は止められた、そして北斗は・・枝織から支配権を奪い返すことも出来ず右往左往する

アキトの体力はどんどんと削られていく

既に脳に酸素は行き渡らず、枝織の顔を前にしてアキトは死を目前にし・・

「・・・っぷはぁ〜〜〜私の勝ちだよね」

その枝識の無垢な笑みに、アキトと北斗は同時に白旗を上げた

そしてアキトが酸欠状態で枝識に抱かれる

・・・肺の酸素すべてを直接口から吸われた結果が・・・これだ・・・

あの瞬間、枝織はアキトの口に吸い付くとそのまま鼻を塞いで吸い上げた・・それは、容易にアキトから抵抗を奪い

「じゃっ、アーちゃんは私のもの〜」

・・・北斗は枝織の中で未だ右往左往し、くらくらと酸欠状態のままアキトが溜息を付く

そうして・・最後の戦いは終わった

結局・・鬼神と羅刹の決着は付けられず

・・・火星の荒野で、2人はささやかな言葉を交わした
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・勢いで突っ走ったら収拾不可能になったんで書き直しです(待てぃ)

死なない程度に頑張ります・・が・・北斗の名前どうするかな
 

 

 

代理人の感想

つー訳で最初から書きなおしだそうです(笑)。

 

ところで、枝織はどうやって体の支配を奪ったんでしょう?

どう考えても前に書いてあることと思いっきり矛盾してますが(笑)