束縛を捨て、力を求めようとした北斗

けれどその想いは、傍らから飛び出してきた人影に霧散し

茂みを割って新たに現れたのは自分と同い年ほどの少年・・中学生数人を前にして飛び出す、その・・・蛮勇とも言える勇気に、北斗が微かに微笑み

「やめろぉぉっ」

叫びながら、北斗に角材を振り上げていた男に突っ込んでいく

突然の奇襲に面食らった男は、わきに掴みかかってきた少年に吹き飛び・・

「この、ガキっ!」

傍らで傍観していた男がその少年の腹を蹴り上げた

・・見れば分かる、本気で・・手加減無く、子供の内蔵の脆さを気にもせずに蹴り上げ・・

北斗に、冷酷と呼ぶべき冷たい殺意が沸き上がる

激昂と言うべきそれは、けれど怒りではなく殺意を北斗に呼び起こし

「よくも、こいつ」

倒れ込む少年にさらに脚を上げる男を前に・・昴氣が漏れ出る

・・少年に男達の気がとられている隙、それに北斗が網に掴みかかる

殺意を秘めた獣の眼、それが・・自分を助けようとして苦悶する少年に向けられ

「かぁっ!!」

網を引きちぎった

昴氣が筋力を数倍に増幅させる・・けれど、限界まで引き延ばされた集中力は視界から色を取り去った

全てがスローモーションに流れる、ゆったりとした時間の流れを知覚し

聴覚が消えた、嗅覚が消えた、味覚などとうに無く・・視覚から色が消え

・・・ただ、身体を打つ風に似た感覚と・・白黒の世界で蠢く男達の姿が鮮明で

力が知覚できる、昴氣が解放されている・・けれど、高揚感・・殺戮衝動は表れない

集中力が自らを自制する、自分が・・知覚できる
 
 

にぃと・・口元が歪められる

少年に振り上げられている腕、それを掴むのに・・思考すら必要としなかった

まるでそうあることが自然であるように、北斗の腕はその男を放り投げ

「・・いい気分だ」

・・・男達が自分の姿を知覚するより早く、それらを一掃する

眼前にはすぐに、倒れ伏す男と・・少年が広がり

「・・・」

分からない・・何故だろう

こうしたいと思うより早く身体は男達を一掃した、それは分かる・・無意識下の思考か、或いは反射か・・全てが終わった後、自分がそれを望んでいたと識る事が出来た

ならば、そうなのだろう・・あの時の自分は思考すら遮断し、目的を果たした

なら・・何故・・・・

「こいつ等は・・死んでいないのだろう」

殺意を覚えたのだ、自分は・・この男達に

にもかかわらず、自分はこいつ等を殺すことはせず

・・それは、まだ分かる

殺意を覚えはしたが、自制した・・父の横顔が、自分を押し止めた

だが

「こいつ等は・・」

傷すら・・負っていないのだろうか

やられたらやり返す、それは自明の理だ・・だが、男達は意識を失っただけで、自分は苦痛すら与えずこいつ等の意識を奪った

それが・・ひどく不思議で・・

「・・」

視線を少年に向ける

胸は規則正しく上下しているし呼吸もある、身体にも異常は無さそうだ

それを知ると・・色と音の戻り始めた意識の中で、北斗はその脚を男の頭に乗せ・・

踏み抜・・

「や、や、めろっ」

ばっと、少年が起き上がった・・意識を取り戻したばかりなのか、ふらつく足取りで

けれど、北斗にタックルしてくる

その程度の衝撃なら軽く踏みとどまることは出来たが・・脚を下ろし、組み付いてくる少年を見る北斗

身体のサイズはそれほど変わらない、さすがに筋力では北斗に圧倒的に分があるが・・それを補うだけの意思を、その眼に秘め

「何のつもりだ?」

「殺すつもりか?やめろっ」

先程、同じ事を言いながら男達に向かっていった少年は、今度は北斗に叫んでくる

一瞬で攻守が逆転したにも関わらず、それを気にもせず・・少年は北斗に言い放ち

「先に手を出したのはこいつ等だ」

腰にしがみついてくる少年をそのままに、足下の男の顔を踏み潰す

汚い血をまき散らしながら転がる男に、少年は激昂する・・・自分を蹴っていた男に、だ・・その真正直さは、まるで父のようで

「お前も蹴られた・・やり返すのは当然のはずだが?」

「馬鹿な事言うなっ」

その眼が・・荒んだ自分には痛い

何よりその眼に、少年は存在しない・・どうでもいいのだろう、彼にとって蹴られたことは・・

その眼には、北斗と・・意識のない男達への心配だけが満ち

「・・何故、こんな奴等を庇う?」

「・・喧嘩は、殴るのも殴られる方も痛いんだ・・止めるのは当たり前だ」

そのために・・自分が痛い眼にあっても、か・・

真正直で、馬鹿みたいに実直で・・けれど、笑みを浮かべてしまう

遠い昔に、自分が無くした純粋さ・・自分に無いそれが、とても眩しく思え

「・・そうだ・・な、わかったよ・・・もうやめるから離せ」

苦笑する、少年の腕は腰にしがみついたままだ・・体格がほとんど変わらぬだけに気恥ずかしい

まして、その腕は後少しで・・

「そっか・・良かった」

・・少年が腕を離した、けれど・・

気が抜けたのか、或いは疲労が身体に残っていたのか、バランスを崩した少年はそのまま倒れ込み・・・

ふにゅ・・・

「・・・」

細いなりに、柔らかい感触へ・・顔から突っ込んだ

「っき・・ゃぁぁっっ」

小さな・・それこそ、鳥の鳴くように小さな悲鳴

けれど

ごすっげしっがぎっごぶぁっ

・・・その後に響いた打突音は、洒落にならない鈍い響きを、周囲に散らした・・・

 
 
 

「い・・生きてるか?」

男達を動けないよう、網に絡めた後・・寝かせておいた少年を覗き込む北斗

反射的に、その体勢から繰り出せうる最強の攻撃を与えた覚えがある

振り上げて肘、そのまま膝・・後回し蹴りに寸打

・・脈と呼吸があるのは見れば分かるが、大人でも意識を保てないほどの攻撃を4度・・手加減があったとは言え、骨の数本は損なわれているだろう

さすがに申し訳なさそうに、肋骨に触れ

「・・・」

最後の寸打、零距離から踏み込みのみの衝撃を直接体内に叩き込んだのだが・・・なるほど、裏当て同様、衝撃は背中まで突き抜け背に大きな傷を残している

けれど、衝撃を通したはずの骨に・・異常は見受けられず

頭頂部、肘を叩き落とした部位も問題無さそうだ、脳は些少の衝撃でも問題になるので・・無意識下とは言えさすがに加減されている

膝の入った鳩尾、回し蹴りの入った腕も・・問題無さそうで

「丈夫な奴だな・・」 

安堵する

考えてみれば、自分に組み付いてきたときも・・男達を吹き飛ばしたときも子供とは思えない衝撃だった

この歳で、ひょっとしたら本格的な格闘技を修めているのかも知れない

・・・或いは、日常が想像も出来ないほど苛酷な物なのか

何はともあれ、怪我がないことに安心すると・・北斗はその少年を担ぎ上げ、そこを後にする

あの男達の側で少年を介抱することが憚られたからだ

近くに、草原があったはずだ

延々と続く、大平原・・土地の余っている火星にいくらでも存在する、広い・・世界

そこへ、少年を運ぼう

あそこなら・・きっと、気持ちよく眠れるから
 
 
 
 
 
 

微睡みに似た、安らかで・・何時までも浸っていたい時

この世の全てが風になって、その中心に自分が居る・・そんな、錯覚

「・・・」

風が吹く

草原を吹き抜けた風は草花を吹き散らしながら優しく、2人を包み込み

・・・それを、他の人が見ればどう思うだろうか、少なくとも・・北斗は家族にだけは見られたくないと思っていたが

紅い髪がたなびく

先程から吹き抜ける風は、気持ちいいのだが・・・髪にはらんで襟元に押し込めていた長い後ろ髪を引っ張り出してしまう

切ることも気が引ける、長い・・唯一、女であることを主張するような後ろ髪

あいにくと1つにまとめるゴムは今日は持ち合わせていなかった、仕方ないし・・人目もないので風に任せている

普段押し込めている髪が風に泳ぐ様は、確かに気持ちいいのだが

・・・傍らの少年が眼を覚ましたときはどうしようかと心配にもなる

まぁ・・この様子からしてしばらくは起きまい

柔らかな枕の上で、健やかな寝息を立てている・・・それは、気紛れに過ぎなかったのだが・・横たわらせておくのに草原を枕にさせるのは気が引けたのだ

・・・そして、北斗の母はこういった場所へ北斗達を連れ出すと、決まってこの枕で昼寝を求めた

・・・一番最初に眠るのが母であることも、決まっているのだが

「もうしばらくは・・起きるなよ」

髪を一本引っ張る、微かな鋭痛と共に・・見慣れた、血のような赤毛が引き抜かれる

それで、無理矢理髪をまとめ

「・・・」

うまくいかない

理由は分かる、自分で結んだことなどないからだ

髪を弄ることなど滅多になく、母達がたまに北斗の髪を縛るだけ

ゴムでとめるならまだしも、風をはらむ髪を縛るのは・・なかなかに難しく

「っく・・」

こうなったら髪で固結びでも作ってしまおうかと思うが・・・そうなれば解くのは家族の誰かに頼むしかなく・・

・・・却下だ、斬新的な髪型などにされたくはない

仕方ないのでまた風に流す・・少年が起きれば襟に押し込めればいいだろう、だいいち・・髪が長かろうがその野性的な風貌と刺々しさが相成って女に見られることなど滅多にないのだ

・・・単に髪を切るのが面倒なだけだと、思われるだけだろう・・・

そう、考える

・・・今の北斗から刺々しさを感じることなど、誰にも出来ないだろうに

「やれやれ・・しかし、のんきな奴だ」

嘆息し、少し体勢を変える北斗・・その太腿の上で、少年は微かに呻きを上げる

それをどう見るか

少なくとも、火星圏全域監視衛星ひまわりの局所集中探索による拡大映像には、幼くも可愛らしいカップルしか映ってないのだが

・・・見渡す限り障害物のない草原で北斗に気付かれずの監視は出来ないため、少々拝借しているのだ、無断で・・

その映像の中で、北斗は・・珍しくも無垢な笑みをし

「・・・」

監視者は映像を切った、これ以上は野暮という物だろう

「ぎりぎり・・でした」

ぎしっと、柔らかな・・自分には明らかに大きな椅子にもたれかかる

指など組んで、考え込んでいる仕草だ

「運が良かったんですね・・日頃の行いがいいから♪」

幸運・・だったろうか

けれど、機会を作ったのはこの監視者だ・・少年の行動を補正し、中学生達の行動を制限し

本当は・・本当に運命という物があるのなら、全てを偶然に任せたかった

けれど、時間が無い・・もう、ぎりぎりだった

だから最後の1つ・・・少年が、襲われる北斗を見てどう行動するか、その後・・どう状況が動くかは、一切手を触れなかった

黄金の眼は、新たに・・・急激な移動を開始した宇宙軍に眼を向け

「・・・そろそろ、死体も用意しておきましょうか、今ならクーデターに紛れるでしょうし・・・ちょうど女の方もいるようですし」

冷淡に言い放つ

それは、監視者にとってどうでもいいことであり・・それを聞いた数人への死刑宣告

幾つかの気配が急激に監視者から遠ざかり

「残念でしたね・・私、クリムゾンの関係者は嫌いなんです」

気配が急に消え去った

今頃は、廊下に眠るように倒れ込んでいるだろう・・・

「父様の身代わりは簡単なんですが・・母様は特徴的ですからね、死化粧が大変です」

・・・殺したのだ、一瞬で・・視界にすら収まっていなかった敵を

そして、それに何の痛痒も感じていない

北斗は迷っていた、恐れていた・・殺すことを

けれど・・この監視者に、そんな些細なことは気にもならず

ただ、火星のナノマシンコントロール施設で、監視衛星をハッキングし

監視者を発見し、近付いてきたクリムゾンの諜報部を殺し、それをマネキンとして使うことを決め

・・・それらに、やはり何の感慨もなく

殺すべき対象を探す必要なくなったことを幸運と捉え

「でも・・けっこう格好いいですね、やっぱり・・うん?かわいいかな?」

ただ、初恋の時に似た・・微かな高揚感で、少年の顔を覗き込んでいた

死体から零れてきた血を、踏みしめながら
 
 
 
 

 

「・・んっ・・」

風が冷たく通りすぎる

先程まで心地よかった風も、空が黄昏を過ぎる頃にはただ冷たいだけで

身体が冷えたのか、軽く身震いしながら薄目を開く少年・・・その頭が、急激に地面に近付き

ゴンッ

鈍い音がした

北斗が勢いよく立ち上がったのだ、太腿の上から跳ね飛ばされた少年の頭は地面に激突し・・

あたふたと北斗が髪を襟に押し込める、しばらく眼をしばたかせた後で・・少年は身を起こし

「やっと眼を覚ましたか」

憮然と言い放つ北斗に・・少年は黄昏に染まる世界を見渡しながら

・・・紅い髪の北斗を見上げ

「あいつ等は?」

「捨ててきた・・心配しなくても五体満足な状態でだ」

安心したように、少年が微笑み・・それが北斗の心をかき乱す

何故・・自分を傷つけた者達の安寧を願うのか、それは・・・・自分には一生理解できそうになく

「・・・助けられたな、礼は言っておく」

おそらく、その助けが無くても何とかはなったろうが・・・その結果は、今とは比べるまでもない燦々たる物だっただろう

それを考えれば・・確かに、感謝はすべきで

「いいよ・・勝手に飛び出しただけだから」

・・・同い年の少年達を集め、何人が彼と同じ事が出来ると思うのか

まして彼はそれを誇ろうとすらしていない、英雄願望に満ちているだろう子供が

この歳にして、随分と大人びた少年・・・それに、微かに眉を蹙め

「それに・・あの時、お前1人でも何とかなりそうだった」

「なら・・何故助けようとした?」

座り込んだままで、立つ北斗を見上げる少年

名も知らぬ少年は、困ったように頬を掻き

「お前の顔が恐かったからかな」

・・・殺意を見抜かれたことに、苦笑する

「お前・・名前は?」

問われた言葉に、一瞬の沈黙を返す北斗

自分には二つの名がある、義理の両親から与えられた零という女としての名・・実の親から与えられた北斗という名

どちらを答えるべきか、一瞬迷い

「朱髪の北斗・・か?」

・・・この歳にして、悪名にまみれた自分の名に嫌悪を示す

孤高を選び、邪魔する者全てを排除してきたのだ・・・猛獣さながらの呼称を付けられることは、仕方なく・・・

「零だ・・・」

そちらを選ぶ

女としての名だ、男として振る舞う自分が名乗るのは些か不釣り合いだろうが

「俺はアキト・・テンカワアキト」

・・アキトは気にもしていない

それに、微かな疑念を覚えるが・・

(あいつと・・同じ名か)

義理の父親と同じ名を持つ少年に、加えて・・漢字表記なら天川昭人とでも書くだろうその名は・・・アマカワと仮名をふることも出来・・・

(偶然か・・それとも・・・・・・・・・・何処かの馬鹿の悪戯か)

・・・こう言ったことは良くある、と言うか・・身近にそう言ったことをしでかす者がいるし

・・実際、この出会いは操作されたものである

隠してはいるがファザコンの傾向が強いのだ、似ている少年と引き合わせるくらいのことは、やるだろうし・・

「・・お前、鏡華とか言う名前の奴は知ってるか?」

怪訝そうに首を傾げるアキトに、偶然かと安堵し

「しかし・・何でこんな所で寝てるんだ?俺」

「俺が運んできたからだ」

さも当然なように言い放つ北斗・・実際北斗には軽い物だったのだが

やはり、ほとんど体格の変わらぬ、或いはむしろアキトより体格の小さい北斗がここまで運んだという言葉は、アキトから奇異の目が向けられ

「・・・お前、喧嘩強かったな・・」

「親からわけの分からない武術を叩き込まれてるからな」

実際、ルールなど無く、ただ相手を破壊することを主目的としたその武術は、むしろ暗殺術や殺人術に近い傾向がある

北斗が幼い頃に修めた木連式武術という物に似ているところはあるが、それよりさらに実戦的で我流な面が多い

人体を破壊すること、そして・・超人じみた体力、筋力を持つことが必要と、明らかに使い手を選ぶこの武術は・・・あの両親が昔死闘のただ中にあったと邪推することが出来る

・・・あの、万年新婚夫婦が血塗れで笑いながら人を解体する想像は、どう考えても似合ってないが

(鏡華なら・・・・・・)

・・・やめた、似合いすぎる

「・・武術・・」

その言葉に興味を持ったのか、考え込むアキト

・・・あのタックル、確かに力はあったが洗練された動きとは言い難かった、おそらくアキトは体力的にはこの歳では考えられない逸材なのだろう

後はそれを役立てる技術を学べばいい・・確かに、武術を学のはいい方法だろうが

・・・北斗に教える気はない

自分の技術とは殺人術だ、安易に人に教える物ではなく・・アキトに相応しいとは思わない、むしろアキトのような性格とは対極にある物だ

例え教えを請うたとしても、北斗は突き放すつもりで・・・

「なぁ・・その中に、逃げる技術とかってあるのか?・・気配を消すとか、漫画ではよくあるけど」

・・・気が変わる

逃げる技術・・とは言い難いが、相手に気付かれることなく背まで忍び寄る技術は存在する

それを応用すれば逃亡はむしろ容易いだろう

無鉄砲なアキトには、確かにそれが必要な気がする・・実際、タックルしたはいいが殴られるに任せていたアキトは見ていて危うい物があった

あの状態なら飛び込んで、捕まっていた者と一緒に逃げることが必要だろう

自分の特性をよく考え、必要な技術を求める心構えは・・闇に染まっているとは言え、武を修める者には心地よく

「ある・・俺の母は視界におさめながら存在を認識できないほどの隠形術が使える」

(鏡華に至っては・・注視しながら見過ごすこともあるしな)

ちなみに父親はそう言った技術は不得手だ、もう1人の母親も同じ・・枝織母と、鏡華がそう言った技術は得意だ

「走り方にしても、短距離走と逃走では走術を変えた方がいい・・後は、追っ手の注意を別な場所に引く罠だな」

・・・暗い部分を見せることなく、武術の一派として技術を伝えることなら・・構わないと思う

少なくとも、無駄にはならないだろう

この少年の心根が壊れる前に、理不尽な暴力から逃れる術を学ぶことは・・必要で

「・・・・・匂いで追跡してくる敵にはどうすればいい?・・・・・・」

犬・・か?

そう言えば、微かなものだがアキトから異臭がする・・オーデコロンのようだが、汗と草に匂いに紛れて気付かなかった

犬をまくための物だろうが・・

「匂いを変えることや・・水場を移動したり、逆に強い匂い・・柑橘系や防虫スプレーでいいが、そう言った物で鼻を潰したりすれば・・」

「・・・・相手の罠設置能力がこちらより巧妙だった場合は?」

犬を利用した追っ手?

まぁ、子供相手に大人がからかってるか何かかも知れないが

「無視すればいい、捕まえようとしてる以上罠の種類は限られる、それらの解除法と、罠を踏み潰しても逃げられる余裕を作れば」

「致死性の罠があるとすれば?」

・・・匂いで追跡、罠設置、殺す気で捕獲・・・

「何処の暴力団に狙われてるんだ?」

「幼馴染みだ」

・・・つまりは、手加減を知らない子供が罠の危険度も知らず犬と一緒に追いかけてるのだろうか

「犬の種類は?」

「?・・・ああ、違う・・そいつは自分の鼻で俺の匂いを嗅ぎつけるんだ」

(俺でもできんぞ・・そんな真似)

常識外の存在に、さすがに北斗も眉を蹙め・・・また、あの顔が浮かび上がる

しかも、先の想像の続き・・・血塗れで人体を解体する少女

あれなら・・匂いくらいは嗅ぎつけるかもしれない

「あ、まぁ・・危険な罠と言っても・・」

「親が軍人でそこから盗み出したゲリラ戦用装備を使ってくる・・」

「・・もう一度聞く、鏡華と言う名に聞き覚えはないんだな?」

「?・・・知らないけど」

まぁ、確かに・・鏡華なら取り逃がすなんて事は有り得ないだろうが・・・

ふと、アキトに親近感を抱く・・行きすぎた好意で苦労しているのは自分も、アキトも変わらないようだ

・・・・どちらがより厄介かはさておいて

と言うか・・まぁ、完全に掌の上で踊らされていることを思えば・・自分の方が苦労しているのかも知れないが・・

「それ・・誰なんだ?」

アキトの呟き、それに嘆息し
 
 

「・・・妹だ」

悲痛な呻きを・・漏らし

北斗は、アキトへの協力を決めた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

改訂前より多少早く鏡華登場

・・・まぁ、こんな感じで増量していくんでしょうが

一番増えるのはアズライト達の処だろうな・・・と言うか、もう1人増やして欲しいという声が・・・

ソード・・どうするかな
 
 

・・ちなみに、火元は現在死んでます(涙)

朝6時に起きて23時に家に帰る日々を週4日、他も常にバイトと言っておけば・・・少しは伝わるでしょう

更新が滞ったら・・来る時が来たと思ってください
 

 

 

代理人の感想

六時起きの帰りが二十三時? そのくらいで泣き言言っちゃあいけませんよ。(苦笑)

社会人だったら珍しくも無いこと、それどころか

それが当たり前という職種だって世の中にはあるんですから。

ま、いい経験だと思って頑張ってください。

 

 

・・・・・実際ね、それくらいで死んでたら更新作業なんか出来ないの(自爆)。