『時の流れに
of ハーリー列伝』
Another Story
第零章
「始まりは絶望から…」
木星と地球、この両者で行われた不毛な戦争は一人の英雄の活躍によって終結を迎えた。
……其の名は、テンカワ・アキト。またの名を『漆黒の戦神』…。
これは彼が不特定多数の女性を妻に迎え、数年の時が経過した頃のお話……。
テンカワ・アキトとその妻達、ナデシコ関係者らのお陰で、小規模な小競り合いは有るものの、大きな争いは特に無く、世界の人々は一応とはいえ平和を謳歌していた…。
特にここ、ピースランドはテンカワ・アキトとその妻達の根回しにより、物質的・電子的にもほぼ要塞と化しており、いかなる戦力でもそう簡単に落すどころか、攻め入る事すら困難になっていた。
そうハッキリ言ってしまえば恐らく、地球上で一番安全な所と言えた。ただし、彼らに敵意を持たなければ、であるが。
もっとも今の彼には平和も安全も1ミクロンの価値も有りはしなかったが。
現在彼は全速力で走っていた。周りの物を破壊しながら。かなり甚大な被害が出ているが、そんな事は今の彼にはまったく意識にも上っていない。
まあ、仕方が無いと言えば仕方が無いのだが。彼は先程真の絶望と言うやつを味わったばかりなのだから。
おっと紹介が遅れた。彼の名前はマキビ・ハリ。元ナデシコのサブオペレータにして不幸の一番星を地で行く少年である。まあ、今の所、ではあるが……。
さて、彼が元ナデシコオペレーター、ホシノ・ルリに恋情を抱いているのは余りに有名であるが、彼のそんな純情も実らないであろう事も皆さん御存知であろう。
何せ恋敵が稀代の英雄『漆黒の戦神』テンカワ・アキトでは勝ち目が無い上、恋の相手として彼女の意識に彼の事があがって無いのが決定的だ。いやむしろ邪魔者?
兎に角、彼女の策略(謀略?)により数年の間雪山に隔離されていた彼だが、ようやく師匠(影護北斗嬢)に一撃入れる事に成功し、何とか俗世に還って来た。そしてホシノ・ルリ21歳の誕生パーティーに参加する事となったのだが……
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「ルリさん!お久しぶりです!」
「ハーリー君!久しぶりですね…って随分逞しくなりましたね。」
「はい!修行の成果です!」
「…頑張ったんですね。ハーリー君。」
「ええ!…ところで…ルリさんにお話が有るんです!」
「私にも有るんです。・・・おいで、メノウ…さ、ご挨拶。」
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既に人妻しかも子供(3,4歳?)までいる始末。それでも彼女の為に北斗に弟子入りし山篭りまでした彼だ、そう簡単に諦められる筈も無く、結局最悪な形で引導を渡されてしまったわけである。
即ち簀巻きにされ身動きを封じられた上、猿ぐつわを噛まされ、拷問器具をもって目を閉じる事を封じられた上で、彼女と旦那との情事(痴態?)の一部始終を見せつけられ続けた訳である。
愛する人が他の男に抱かれる所など誰も見たい訳が無い。しかしまばたきを封じられた彼の目にはその全てが流れ込んでくる。涙を流しながら悲痛な絶望の叫びを上げるが猿ぐつわに邪魔されそれもままならない。
普通そんな光景を目にしていれば心が痛むはずだが、彼を捕まえている者達にそんな事を期待するだけ無駄の様だ。なにせ自分達の都合で彼を殺そうとする事に何の躊躇いも無い彼女達だ。
あるとしたら彼への憐憫の情ではなく、目の前で繰り広げられている情事に対する嫉妬だけだろう。
全てが終わった時、彼を支配していたのは虚無と絶望。周りのものは何も見えず、感情は爆発し、自殺を図るも無駄に丈夫な身体、不死身なまでの回復力、そして生命の危機に自動的に反応し発動する超小型の相転移エンジンによりあらゆる障害はフィールドに遮られる始末。
そして彼は走っていた。心を絶望で満たされ、回りの風景が灰色に見える。
そんな時ふと眼に留まった物が有った。黒く巨大な硬質な物体。俗にチューリップと呼ばれるジャンプに用いられる跳躍門がそこにあった。
(そうだ。これを使えば……)
彼が選択したのは跳躍門によるランダムジャンプ。元々が生き残る確率の方が圧倒的に少ない方法である。都合よく生き残る方が可笑しいのだ。
そして彼は
何の躊躇いも無く
その身を跳躍門に投じた……
「はて?」
彼女は丁度家へ帰る途中、奇妙な気配を感じ、帰り道の途中にある草原に足を踏み入れていた。
「気のせいでしょうか?この辺りから妙な気配を感じたのですが……。それにこの辺りの者達が妙に騒がしい。一体……」
その時、彼女の目の前の空間が急に輝きだしたかと思うと、光の中に人影が現われ光が消え去った。
そして光の後には意識を失った一人の少年が倒れていた。奇妙な服の16・7歳程の少年。何より服はボロボロでかなり憔悴している様子である。
「いけませんね、かなり憔悴している。このままでは……。先程の光も気になりますし……。仕方ありませんね」
そう言うと彼女は少年を背負い、もと来た街道へと歩き始めた。
夢を見ていた。とても怖くて、どうしようもなく哀しい夢。
愛しくて、切なくて、儚い思い。何故苦しんでまでその思いにこだわったのか……。
それでも良かった。どんなに苦しくてもあの人が笑ってくれるなら、その笑顔を見る事が出来るなら、喜ぶ姿を見せてくれるなら、それだけで良かった。それだけで満たされた。
出来ればその姿がほんの少し自分の方に向いてくれればと願った。でもそれは叶わなかった。
無情に過ぎ行く時が、残酷な現実を垣間見せる
そして意識は暗転。
………
耳にパチパチと薪の爆ぜる音が聞こえてくる。修行時代に聞き慣れた懐かしい音だ。
(…? 修行時代?僕は何の修行をしてたんだっけ?思い出せない……)
急速に意識が覚醒していき、うっすらと目を開く。
「木の屋根、知らない天井だ…。ここは……」
「kigatukimasitaka」
「え?」
突然聞き慣れない言葉で話し掛けられ、戸惑いながら話し掛けてきた相手を見る。
そこに居たのは絶世のと言っても可笑しくない美女が一人。静かな物腰でこちらを見ている。 と言っても彼女は眼を瞑っている様なので本当の所は定かではないが…。
「えっと貴女は…?」
「mouokitemodaijoubunanodesuka?kanarisyousuisiteitayoudesuga.」
「え?え?え??もしかして言葉が通じてない?どうしよう、こんな言葉知らないし……」
「mosikasitekotobagatuujitemasennka? fumu....」
そう言うと彼女はこちらに近づいて来る。そして顔と顔が吐息を感じられるほど近づく。
「あの、あの、あのですね」
どぎまぎしながら彼女に話し掛けるが彼女の「sizukani」の一言で、何やら静かにしてくれといった雰囲気が出ていたので沈黙する。
すると突然、彼女が唇と唇を合わせてくる。
いきなりのキスに混乱し、頭の中がグルグル廻り真っ白になって行く。
30秒程して唇を開放されたので、混乱しながら
「い、い、一体何をなさるんでございますか!?」
「どうです?私の言葉が解りますか?」
「え?!」
先程まで何を言っているのか解らなかったのに、今はハッキリと理解できる。
「え?もしかして、僕の言葉、最初から解ってたんですか?」
もしかして、からかわれたのだろうか?
「どうやら成功のようですね。貴方の言葉ですが最初からは解ってはいませんでしたよ。先程解る様にしたのです。それと先程の行為が失礼に当たるのでしたら御詫びします」
「は、いえいえ結構なものを頂いちゃって……ってちがぁう!」
思わず一人突っ込みを入れてしまう。
「あの、それよりここは一体……。それに貴方は?」
「そう言えばまだ名乗っておりませんでしたね。それを言えば貴方もですが……」
「あっ!す、すみません!僕の名前はハリ、マキビ・ハリって言います。ハーリーって呼んで下さい!!」
「真備 玻璃ですか。良い名ですね。名乗りが遅れましたね。私の名前は閂 美津理です。カンヌキでもミツリでも好きな方で呼んでもらって構いませんよ」
「はい!それじゃミツリさんって呼ばせてもらいます。ところで、あの……ここは一体何所なんでしょうか?」
「ここが何所かと問われれば、私の今の住処と答えて置きましょうか。土地の事を聞いているのであれば、中央大陸フロスティーの片田舎とでも言って置きましょうか」
「フロスティー?」
「中央大陸北西に位置する小さな国です。ここはその南西地方に位置するヘラルド平原の隅の方です。」
「??? あのつかぬ事をお伺いしますが、ここって地球ですよね」
「チキュウですか?それは何所の名ですか?」
「どこって、この星の事ですよ。今僕達が居るこの星の!」
「私達の住んでいるこの星はテラと呼ばれていますが?」
「へ?え?えぇ〜?!」
「ふむ……。どうやら認識に違いが有るようですね」
二人で話し合った結果判った事が2つ、1つはここがハーリーの元居た世界とは違う異世界で、科学よりも神秘学やら精霊信仰なんかが発達している事。
1つは話していて解ったのだが、どうやら彼、ハーリー君は自分に関する事を名前以外忘れてしまっている様だ。症状だけはやたらと有名な記憶喪失というやつである。
余程思い出したくない嫌な事・精神的ショックが有ったらしい。
そりゃそうだあんな事思い出したくも無いと思うのが普通だろう、人として……。
まあ、嫉妬に狂った夜叉達には関係無いか(爆)その通りだと思った人、一歩前へ出て!(笑)
「これからどうしよう……。記憶喪失な上、異世界で天涯孤独。僕って呪われてるのかな。やたらと不幸が重なってる様な気が………」
どんより重い空気を背負って落ち込むハーリーに、ミツリは苦笑しながら、
「呪われてるかどうかは別として、しばらくはここに居ても構いませんよ。ハーリー君が嫌でなければですが……。どうします?」
「すみません。お言葉に甘えさせて頂きます。……あの、でも良いんですか?僕も一応男ですし、ここってミツリさん以外住んでなさそうですし、その……」
「おやハーリー君、私を襲いたいんですか?」
「な?!と、と、とんでもない!!!誓ってそんな事しませんよ!」
「わたしはそんなに魅力が有りませんか?襲いたくなくなるほど……」
「そんな事全然無いです!ミツリさんは魅力的ですよ!その、とっても綺麗ですし……」
そんなハーリーの様子に微笑みを浮かべるミツリ。遊ばれてるよハーリー。
「さて、ハーリー君。お腹空きませんか?そろそろ鍋の方が良い頃合の様です」
「そう言われると、急にお腹が減ってきちゃいました」
ミツリは二人分の椀を用意すると、手際よく盛って行く。その様子を見てハーリーはふと疑問に思った事を口にする。
「あの、ミツリさん。もしかして眼の方が………」
ハーリーが思った疑問とは、椀に盛っているにもかかわらず、そちらの方を見る所か、先程から眼を瞑ったままという事なのである。
「その通り。私は目で物を見ていません。別に見えない訳ではないのですが、これは封印ですから……。それに別段困る事はありませんし」
「じゃあ一体どうやって周りを?」
「辺りの気配を読んで、存在自体を視ています。それ程難しい事ではありませんよ。要は慣れです」
微笑みながら凄い事をさらっと言うミツリに呆然とするハーリー。慣れでそんな事が出来れば、この世に視覚障害で苦しむ人はいなくなるってもんだ。
「ミツリさんって実は凄い人だったんですね。もしかして武術の達人とかですか?」
「私はそこまで強くありません。たしなむ程度です」
そう言った人で、本当にたしなむ程度だった人が何人いたか……。
ちなみにハーリー君、この後ミツリに武術剣術等の手解きを受けるのだが、死ぬ目にあったらしい……。それはもう嫌と言うほど……
しかし北斗に弟子入りして、数年間雪山で修行していたハーリーにしてこれである。一般の方々だとどうなる事やら……
兎も角、二人は食事をしながら色々な話をした。世界、人、文化。と言ってもハーリーは記憶喪失なので、もっぱらミツリが答えてばかりだが。
「精霊ですか?本当にそんなのが?」
「えぇ。ここではそんなに珍しくないですよ。それなりに力があれば呼び出せますし。それに守護精霊は必ず一人一人についてます。何なら呼び出してみましょうか?」
ハーリーは目をキラキラ輝かせながら
「本当ですか!是非お願いします!!」
「それでは……」
そう言うとミツリはハーリーの額に手を当てる。
「え?あのミツリさん?」
「どうせなら自分の精霊を見たいでしょう?」
「えぇ〜!!」
「其の身に宿る精霊よ。私が力を貸しましょう。今ここに顕現なさい。其の身の主の前に、精霊召喚!」
ミツリの言葉と共に、ハーリーの身体が炎に包まれたかと思うと、ハーリーの身体から火の鳥が飛び出した。
荘厳華麗、この世の光景とも思えぬそれにハーリーは呆然と見惚れる。
火の鳥は二人の前に降り立つと、その炎が一箇所に渦巻き、集まり人の形になって行く。
そして炎が消えた後に居たのは、ハーリーよりも少し歳が上に見える赤髪の美しい少女であった。
「これは驚きました。まさか神霊クラスの守護精霊にこんな所で出逢えるとは……」
目の前で起きた事に唖然と呟くミツリ。どうやらかなり稀有な存在らしい。ハーリーも呆然としている所に、突然目の前の赤髪の少女が目を潤ませながら抱きついてくる。
「やっと、やっと逢えました!ずっとこうして抱きしめてあげたかったのに、私にはそれがずっとずっと出来なかった。絶望に叫ぶ貴方を、悲しみに泣く貴方を、不幸に壊れそうな貴方を。やっと出逢えましたね、ハーリー……いえ、私のマスター♪」
少女の胸に抱きすくめられ、その胸の柔らかさに顔を真っ赤にしながら、あたふたとした口調でその少女に問い掛ける。
「き、き、き、君は一体誰なんで御座いますか?!」
かなり混乱している様だ
「私の名は鳳燐。貴方の守護精霊。貴方が産まれた時からずっと共に在る存在。貴方の半身(半神)。貴方の指標。貴方を、貴方をずっと見守ってきました。あの世界では見守る事以外できなかった。でも貴方は私を見てくれました、知ってくれました、感じてくれました!これからはずっと一緒です。貴方が望んだ時にいつでも話せますね。たとえ力の薄いあちらの世界であっても……」
下手な告白より、余程こっ恥ずかしいセリフに、ハーリーは耳の先まで真っ赤である。
「中々興味深いですね。どうやらハーリー君のいた世界では普通に精霊が顕現できるほど、力の密度が高くなかったようです。それに彼女に聞けば色々とあちらの事が解りそうですね」
「え?あ、そうですね……」
いまだ抱き付かれたままで、思考能力が低下したままの様だ。
「とりあえず離して上げたらどうですか、鳳燐さん?そのままではまともに話も出来ませんし、それにこの世界にいる間はいつでも現われる事も出来るのですから」
そう言われハーリーを見てみると、茹だった様に真っ赤で確かに話が出来そうに無いので、抱き付くのをやめて隣に座る事にした。話したい事はいっぱいあるし、それにそういう事は慣らして行けば問題無しである。
………何をどう慣らして行くんだろうか?
それは兎も角、ハーリーの事を色々知っていそうな鳳燐にハーリーが元居た世界の事などを聞いてみる事にした。
それで判ったのは、ここと違い精霊なんかはまったく居らず、科学万能の世界である事や、独自に発達しているのが遺跡を使ってのボソンジャンプと呼ばれる時空間移動の技術である事、それを巡っての争い、過去への跳躍、歴史の修正、そして戦争の終結と和平、英雄の失踪と帰還、そしてハーリーの雪山での修行や帰還後の出来事(何があったかは微妙にぼかされている)、この世界に来たのがランダムジャンプによるものである事などである。
「それじゃあ、僕がここに居るのはたまたま、偶然、逆ロシアンルーレットなみに運が良かった結果って事?」
「そういう事になります、マスター」
「もしかして、不幸が続いているのはそれで幸運を使い切っちゃったからなのかな?」
いや、むしろ不幸の元凶の事を忘れている分、幸運は増えていたりする。実際忘れてから、ハーリーなのにそれほど不幸な目に合ってないし……。
「そんな事無いですよ。今まで散々苦労して来たんですから、これからは幸せになって貰わなくっちゃ!もちろん私もお手伝いしますよマスター!!」
鳳燐の励ましに、何とも複雑な顔をしながらハーリーが問い掛ける。
「ねえ、ここに来る前の僕って、そんなに不幸だったの鳳燐さん」
ハーリーのそのセリフに鳳燐はズズイッとハーリーに近づきながら、
「マスター、貴方は私のマスターなんですから私の事は呼び捨てで、鳳燐とお呼び下さい」
「え、でも……」
「鳳燐です!」
「……」
「鳳燐」
「…………」
「鳳燐」
「…鳳燐」
「はい、マスター♪」
ようやく諦めがついた様だ。
「それでどうだったの?」
「えっと、不幸だったかってお話ですよね。かなり、いえもの凄く不幸だったと思います。それはもう狙われたか如く、神の悪戯か大魔王の企みかってぐらいに……。でもマスターはそのたびに諦めず頑張って来たんですから、ね♪(流石に言うのもはばかられる様な人体実験を一年近く受け続けたとか、思い人の情事の一部始終を見せられ続けて絶望して自殺を計っただとか、そお言う事は言えないですよね、普通……)」
微妙に誤魔化す鳳燐。しかしハーリーはまったく気付かない。当然か♪
「もしかして、忘れて幸いだったのかな?」
「それに関してはどちらとも言えませんね。それはマスター次第ですし。それに不幸ばかりでも無かったんですよ。不幸中の幸いというか、マスターには頑強な身体と強靭な生命力が備わりましたし、それに伴って精霊があと2体マスターには付いてますし」
「それは何とも特異な例ですね。普通精霊は一人に一体。一人に複数と言うのは無い筈なのですが…」
神妙な顔をするミツリに鳳燐は微笑みながら
「それじゃ、呼び出して見ますか?貴方の力を借りれば簡単ですよ」
「良いでしょう。私も興味が有りますからね。呼び出すとしましょう」
そう言ってミツリが先程と同じ様にハーリーの額に手を当て力を注ぐ、すると今度はハーリーの身体の周りに黒い粉雪の様な物が舞ったかと思うと、黒い粉雪は集まり黒衣のローブを纏った頑強な印象の老人となった。その直後ハーリーの頭上の空間が歪んだかと思うと、ガラスの様に粉々に砕け、そこから色付丸眼鏡を掛けた髪がボサボサの黒マントを纏ったファンキーな爺さんが現われた。
「よう!やっと御対面できたな。儂の名前はラプラスよろしくな坊!」
出て来たと思ったらいきなり喋くり出しすファンキーな爺さんことラプラス老。そんなラプラスの態度を無礼と感じたのか、黒衣の老人がラプラスの口調と態度に一喝する。
「マスターに対し無礼であろうがラプラス!!申し訳無いマスター。此奴の無礼な振る舞い、変わってお詫びする。そして初めまして、ですなマスター。儂の名前はマクスウェル。分子を司る精霊でこちらの無礼な老いぼれは空間を司る精霊です。此奴がこれから色々ご迷惑をお掛けすると思うがこれからもよろしく頼み申すマスター」
「え、あ、はい。こちらこそよろしく」
どうにも濃い爺さん達に圧倒された様に返答するハーリー。そんなハーリーをひとまず置いといて、ミツリが精霊達に質問する。
「これは中々、特殊な精霊ばかりですね。具体的に何が出来るのか説明して上げたらどうです?貴方達のマスターが茫然としてますよ」
「あや?!これは失礼。それでは儂から説明させて頂こうか。よろしいですかなマスター?」
ハーリーに確認をとってくるのは律義(あや?!がちょっとお茶目♪)な分子の精霊マクスウェルである。
「うん。それじゃ、お願いします」
「それでは。まず自分が分子の精霊と言うのは先程申した通りです。主にマスターの体内を駆け巡っておる分子機械ナノマシンなどの制御や回復、衝撃等に対する肉体制御をやっております。もっとも鳳燐殿がおらなんだら儂だけでは制御しきれておりませんがな」
ふぉふぉふぉと笑いながら鳳燐に器用にウインクしてみせる。中々お茶目な爺さんである。
「はいはぁ〜い!次は私ね♪私の場合はちょっと特殊で、私は炎の精霊なんだけど命も司ってるの。だから再生や回復、治癒なんかも出来ちゃうんです。ですから炎への耐性と無限の生命力が私の力なんです」
元気いっぱい笑顔で鳳燐が答える。
「次は儂じゃな!よぉ〜く覚えとけよ坊。儂の力は空間支配じゃ!儂が支配した空間の中なら、如何様にも空間を操る事が出来るのじゃ!!どうじゃ、ワンダフルでエクセレントな能力じゃろう!はっはっはっはっ!具体的にはフィールドの制御なんかをやっとったが、坊次第でどんな応用も利くし、支配する空間も広がる。つまり精進しろって事じゃ。頑張れよ坊♪なぁ〜はっはっはっはっはっはっ!!!」
まさにエクセレントな爺さんである。
「ふ〜ん。凄いんですね皆さん。マスターってのはいまいち実感湧かないけど、改めてよろしくお願いしますねマクスウェルさん、ラプラスさん、鳳燐」
いまいち状況が理解できてないようだ。そんなハーリーの様子に微笑みを浮かべる精霊一同。
(そんな貴方だから付いて行きたいんですよ)
「しかし凄いですね。彼らの恩恵をその身に受けているのであれば、鍛えれば相当強く成れます。どうしますハーリー君。貴方さえ良ければ武術なんかの鍛錬に付き合いますよ。鍛えずに放って置くには勿体無いですからね。それに別段強くて困る事は有りませんしね」
何か思う所があるのか、考えるハーリー。
「そうですね。それじゃお願いできますかミツリさん?記憶を失う前の僕も雪山で修業してたみたいですし、同じ様に修行してれば何か思い出すかも知れないですし。あ、でもお仕事の方はどうされるんです?僕で良ければお手伝いしますけど」
ハーリーのセリフにミツリがう〜んと悩みだす。
「別段仕事と言うのは無いんですよ。食べ物はその辺の山河に行けば取れますし、どうしても必要な物があれば山菜やら何やらを街に行って売って買えば済みますし……。そうですね、食料の調達と、時々来るお客の対応をしてくれるだけで構いませんよ。他にやる事と言っても特に無いですし」
「わかりました。それでは改めて宜しくお願い致します閂 美津理殿」
「お受けしましょう真備 玻璃殿」
真剣面持ちで相対するミツリとハーリー。しかしそれも長くは続かなかった。どちらとも無く『ぷっ!ふ、ふははははは』と笑い出す。
この後、今後の道行きを簡単に決めてしまった事をチョッピリ後悔するハーリー君がいたが、それはまた別のお話。
あとがき
こんにちはどうも初めまして神薙真紅郎と申します。初めての方だらけだと思いますんでこれからよろしくです。
鳳燐「初お目見えの鳳燐で〜す!これからよろしくです」
いやぁ〜、それにしてもやっと投稿できたやね。本当なら1月始めの方に投稿する予定だったのに、何でこんなに時間食ったんだろう……
鳳燐「計画性無かったですからね。何処まで書くかちゃんと決めてりゃ多分10日か半月は早く上がってたんじゃないですか?」
う?!それを言うな。心にひびく……。とりあえず次回はもっとピッチを上げようかと……
鳳燐「うんうん。みんな言うよねそのセリフ。守れた人は数える位しかいないけど。逆は星の数だけど。そんなんじゃ彼奴等に負けちゃうよ。某火の人程じゃないけど喧嘩売っちゃってるし」
ふ!それは愚問だな鳳燐!!仕事に負ける事はあっても、私は腐女子如きには負けはせん!!!ああ、負けんとも!!!!はぁ〜ははははははは♪
鳳燐「その意味の無い自信は一体何処からくるの?んなこと言ってると、月の無い夜に後ろから刺されちゃうよ?」
いや、恐らくそんな手ではこんな。正面から罠に掛けるか、社会的に抹殺するかだろう。しかぁ〜し、今の私に怖いものなどあんまりないので大丈夫だ!いや大丈夫だろう。大丈夫だと思う…。大丈夫だといいな……。
鳳燐「はい!それじゃそろそろ収拾がつかなくなって来たのでこの辺で今回は終わろうね」
次回からはもっと展開が加速する予定ですのでこうご期待!最後になりましたがBA-2さん使用許可を頂き感謝感謝です。
鳳燐「そいじゃまた次回お会い致しましょう♪」
それでは再見!
代理人の感想
むう・・・・これからいい目を見るっぽいし、同情すべきかどうか微妙なところだな(爆)。
に、してもなんか最近妙にハーリーものが増えてるような。
ムネタケ、ユリカ、千沙に続く次のトレンドはハーリーなのか?
>本当なら1月始めの方に投稿する予定だったのに
はう!? (爆)
>とりあえず次回はもっとピッチを上げようかと……
ううっ!! (更爆)
>みんな言うよねそのセリフ。守れた人は数える位しかいないけど。
はうううううっ!!!(核爆)