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「ふわぁぁ、あぢぃ。」



ベットからダルイながらも何とか上半身を起こし、盛大なアクビをする。

開けっぱなしの窓からは眩しいほどの太陽が照り付け、普通なら良い天気だと思うだろう。

だが俺にとっては睡眠を邪魔する以外の何物でも無い。

少し汗をかいたシャツが肌にまとわり付き顔をしかめる。

今だ寝ぼけている頭のままで、のそりとベットから立ち上がり背伸びをすると体中がボキボキと音を立てた。

ちょっとした快感だ。



「さぁて、今日はお仕事があるかねぇ。」



そう言って机に置いて有る端末を立ち上げメーラーを確認する。

受信通知の音が間抜けだが、貴重なお仕事を知らせてくれるのだから最近は有り難いような気もしてきた。

要は慣れだね、慣れ。

っと、それよりもお仕事の内容はっと。

気楽にそのメールを読んだ瞬間、俺は困惑した。



「・・・プロスペクターか。」



俺の仕事は良く言えば便利屋だが、裏を返せば金次第で何でもやるって事だ。

裏の稼業なのだが・・・前回の仕事でちょっと無茶をしすぎたか。

ナデシコ、ネルガルとは関わらないつもりだったが流石はプロスペクター。

極一部しか知らないはずのプライベートアドレスを知られてしまったらしい。

まぁ、いいか。

たまにはナデシコに乗るのもいいだろう。

思い立ったらすぐ行動が俺のポリシーだ。

すぐさまプロスペクターに俺の住んでる場所を書いたメールを返信する。

もちろん、それ相応の報酬は交渉でぼったくってやるつもりだが。

初めてナデシコに乗った時の事を思い出し、苦笑しながらタバコに火を付ける。



さぁ、今回はどうなるのかねぇ。



「ま、なるようになるさ。」



そう言って、また俺はベットに横になって惰眠をむさぼる事にした。

なにせ、プロスの行動は早いだろうし明日にでもここに来るだろう。



「・・・やっぱり、ちょっと面倒だったかも。」



俺は面倒に首を突っ込んだ事をちょっぴり後悔しながらも、気楽に考える事にした。







次の日、ムスッとした表情のごつい男と、独特の格好をした中年が廃墟の前に立っていた。



「むぅ、ミスターこれが次のスカウト候補が住んでる所なのか?」



まるっきり廃工場にしか見えない建物をみてごつい男が尋ねる。



「ええ、あまり知られてませんが、情報によるとかなり腕が立つ方のようで。

 第一、裏の世界で名前が知られていると言うのは2流なんですよ。

 私もつい最近知りましてね。

 先日、クリムゾンの研究施設が襲撃された件はご存知ですか?」


「いや、知らないが。」


「その情報を調べて見た所、どうもこの方が絡んでいるようで。

 しかも単独で行動してたようなんですよ。

 クリムゾンのセキュリティは馬鹿にできませんからね。

 それを成功させた実力は確かだと思いまして。」


「むぅ、信じられんが本当だとしたらネルガルの脅威になるのではないか?」


「ええ、だから先にネルガルに協力して頂こうと思いましてね。」


「うむ、確かめてみる価値は有りそうだな。」


「そういう事です。

 さて、ここに居ても無駄ですからさっさと本人と会いましょう。」



ごつい男は"うむ"とだけ頷いて、中年男の後を追うように廃工場の中に入っていた。







コンコン



ドアをノックする音が聞える。



「う〜、鍵は開いてるっ!」



俺は睡眠を妨げられ少々不機嫌ながらもプロスが来る予定だったのを思い出し、寝ぼけた声で返事をする。

ドアを開け入って来たプロスとゴートは、まさか俺が寝てるとは思いもし無かったらしく少し驚いたようだ。

寝起きでボサボサの頭を掻きながら、俺はベットに座った。



「これは失礼、まさか寝ているとは思いませんでした。」


「むぅ。」


「まぁ、気にしないでくれ。

 寝るのは俺の趣味なんだ。

 んで、俺に用事が有るようだが、ネルガルSS主任プロスペクター氏とナデシコ軍事顧問のゴート氏が俺に何か用か?」



俺の言葉を聞いてプロスもゴートも驚いた様だ。



「ほほぅ、私達の事をご存知で?」


「なぁに、企業に勤めてる時点で名前が知れ渡るのは当然だろう?

 それに俺のやってる事を知って来たんだろうが。

 それぐらいを調べられ無いようじゃ、俺はとっくに死んでるって。」


「まぁ、確かにそうですな。」


「立ち話もなんだからそこら辺の椅子にでも座ってくれ。

 客には茶ぐらい出すのが礼儀だろうが、あいにく飲み物は切らしててな諦めてくれ。」



お世辞にも整った部屋とは言えず、コンクリートが剥き出しの部屋なのだ。

客に出す茶など気の効いた物なんて有る訳もない。



「いえいえ、お構いなく。」



2人とも座ったのを確認して、俺は本題に入る事にした。



「んで、用件は?

 ネルガルSS主任、ナデシコ軍事顧問、一介の何でも屋を尋ねて来るには大物が出てきたもんだ。

 まぁ、大抵は察しているつもりだが、確認させてくれ。」


「それでは、本題と行きましょうか。

 先日のクリムゾン研究所の襲撃はテンカワさんが?」


「ああ、俺だよ。

 報酬は安かったんだがクリムゾンは個人的に嫌いでね。

 格安で引き受けてやった訳さ。」


「単独で研究所を壊滅させたと聞きましたが、それは本当ですが?

 ライバル企業ながら、クリムゾンのセキュリティーは個人で突破出来るほど甘くない思いますが。」


「ああ、普通の方法なら無理だろうな。

 でもな、逆に単独行動だから出来る事も有るって事だ。

 相手もまさか単独で攻められるなんて思って無かったんだろう、結構簡単だったぞ。

 眠らせた兵士から無線を奪って、相手の動きさえ分かればどうって事はない。

 プロス、アンタでもやろうとすれば出来るんじゃないか?」



俺はニヤリと笑いながらプロスを見る。



「これは参りましたね。

 私はしがないサラリーマンなんですけど。」


「まぁ、そういう事にしておくか。

 それで?他にも用件は有るんだろう?

 そういやぁ、プロスペクターが人材確保の為に奔走してると言う噂も聞いたが。

 ここまで来たと言う事は俺にナデシコに乗れと言う事かな?」


「ははは、そこまでお見通しですか。

 ええ、実はナデシコの人員が不足してまして、"何でも屋"である貴方を乗組員としてスカウトしに来た次第です。」



個人的には面倒だ。

だが、この世の中は何をするにも金が必要だ。

背に腹は変えられないってやつかな。

そこで俺は"ふむ"と考える素振りを見せる。



「テンカワさんはIFSもお持ちの様ですし。

 いざとなったらパイロットとして働いて頂ければ、報酬の方は弾みますよ?」



もちろんプロスは俺の手の甲に浮かび上がってるIFSに気付いている。



「ふむ、だがなぁ。

 知らない戦艦に命を賭けるにはそれ相応の報酬が必要だと思うが?」


「これは手厳しい。

 それではこれでどうです?」



そう言うと、プロスは何処からとも無く出した電卓を神技とも言える手つきで打ち込む。



「う〜む、普通なら妥当な線なんだろうが・・・。

 俺が言うのは何だが結構腕は立つぞ?

 それこそプロスペクターがスカウトした人材よりは使えるつもりだが。」



くっくっく、プロスが困ってる。

対費用効果とやらを計算しているのだろう。



「うーむ、当方としてもこれ以上はちょっと厳しいのが事実でして。

 何とかなりませんかねぇ。」


「・・・分かった。」


「いやぁ、テンカワさんが話の分かる人で良かった。

 では、早速契約です。契約!」



契約が成立しかけたのを見逃さず強引に話しを進めるプロス。

だが、俺はそれでは満足してない。



「おいおい、ちょっと待て。

 金額の方は納得したが、まだ条件がある。

 一応はそちらの指揮権に従うつもりだが、不測の事態に陥ったら俺は自由行動させてもらうからな?

 もちろんナデシコを沈めるようなマネはしない。

 だが、納得のいかない指揮には俺は従わないぞ?」


「まぁまぁ、ナデシコは一流のスタッフをスカウトしてますからそんな機会は無いと思いますが?」


「完璧な人間なんて居ない。

 どんなに一流だと言われてもミスはする。

 その場合は俺の独断で生き残る事を考えるからな?」


「むぅ、確かにそうですね。

 その場合に限り独断を許しましょう。

 ですがナデシコを沈めるような結果だけは勘弁して下さい。」


「それぐらいは心得ている。

 なにせナデシコが落ちるって事は俺が死ぬ可能性が高いからな。

 あ、あと大きい荷物が有るから格納庫を貸して欲しい。」


「ふむ、それぐらいは構いませんよ。

 それじゃぁ、契約成立ですな。

 ナデシコの出航は2週間後の予定です。

 出航前に色々準備があるでしょうから、それまでに準備を済ませておいて下さい。

 それとこれは私からの紹介状です、何か有ったらこれを見せればナデシコ関係者の証明になりますから。」


「了解。

 ま、死なない程度に努力はしてみるよ。」



俺の最後の言葉に訝しげな顔をしたプロスだったが、とりあえずは納得してくれたようだ。



「それじゃ、ドックでお待ちしております。」



俺達の会話に口を挟まなかったゴートであったが最後に俺に対して厳しい目付きをした後、2人の訪来者は去っていった。

向こうは命がけ、俺はそこまで真剣じゃない。

軍人だもんなぁ、俺みたいに気楽に生きてるのは癪にさわったのかもしれん。



「はぁ、ナデシコに乗るのは久々だし、新しい発見でもあれば面白いんだけどなぁ。

 まぁ、無理か。

 なにせ今まで殆どが同じ流れだったんだから。」



"ま、気楽にいこうや"



心の中でそう呟いて俺はまたしてもベットで惰眠をむさぼる事にした。






後書きと言う言い訳

文才の欠片も有りませんが、もしも私の小説と言うのにもおこがましい物を呼んで頂いた方、有難う御座います。
しかも短いです・・・プロローグだと思っていただければ助かります。
これからの展開は考えてません(^^;

アキトがだらだらとしている様な気がしますが(笑)
あまりネタバラシはしたく無いのでこの辺でご容赦を。
一応、投稿作家雑談会は読んだのですが、そこまでのレベルに追い付いてません。
ですが、どうしても投稿したいと言う衝動に駆られて投稿してしまいました。
管理人さんや、代理人さんにはご迷惑をおかけしますが、ゴメンナサイ。

厳しい感想も叱咤も受けつけます。
管理者さん・代理人さんの叱咤が楽しみだったりして(笑)

 

代理人の叱咤

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、なんか期待して頂いてるみたいなのでそれを裏切るのも悪いかなと(笑)。

それにしても叱咤されるのが楽しみだなんて。

ひょっとして閑古鳥さんってMな人デスカ〜!?

 

 

それは置いておいて今回の叱咤(ひょっとして恒例にするつもりかオイ)と参りましょうか。

まぁ、話の展開にはまだ突っ込むほどの粗があるわけもないので、主に文章で違和感を感じた部分ですね。

 

 

>だが俺にとっては睡眠を邪魔する以外の何物でも無い。

 

「〜〜以外の何物でもない」という表現の場合、「〜〜」の部分に入るのは「名詞」でなくてはいけません。

「睡眠の邪魔」か「睡眠を邪魔する第一級自然災害」とでもした方がよかったかと。

 

>なにせ、プロスの行動は早いだろうし明日にでもここに来るだろう。

 

「早いだろうし」という接続が微妙におかしいですね。

「〜〜し」と言う助詞は丁寧に言い替えると「それに加えて」と言う意味になります。

だから、文章をそのままにするなら「なにせ、プロスの行動は早いだろうから明日にでもここに来るだろう」と、

するのがベターでしょう。

 

>俺が言うのは何だが結構腕は立つぞ?

 

これは間違っている、と言うほどではないのですが

「腕が立つ」のが誰かと言う主語が抜けてるようにも見えてしまいます。

類推こそできますが全体の主語である「俺」が「腕がたつ」に直接かかっていないのでそう見えるんですね。

セリフだけならアキトの身内なり友人なりの腕が立つ、と言っているようにも取れるので

「自分で言うのもなんだが」と言うのがこの場合はベターかと。

 

>ですがナデシコを沈めるような結果だけは勘弁して下さい。

 

これは裏を返せば「アキトさんがナデシコを沈めるのだけは勘弁して下さい」と言っている事になります。

何故「アキトが」ナデシコを沈めると限定しなければならないのか?

プロスさんが知っているなにか裏の理由があってその本音がポロリと出たか

アキトを牽制しているのでもない限り、「アキトが」と限定する必要はありませんよね?

だからここは、「ナデシコが沈むような結果だけは」と書くべきでした。

 

 

後、少々気になったのですがアキトの独断許可について。

こう言う伏線を張るからにはアキトを独断専行させるおつもりなんでしょうが、

アキトを活躍させるために他のキャラに割を食わせるのは余りお勧めできません。

例えば他人の失敗(おそらくユリカの)をフォローさせるにしても、

無理矢理にわざとらしい失敗をさせてそれをダシにして活躍させるのはやめた方がいい、と言うことです。

そう言うことをすると間違いなく話に無理が出ますからね(苦笑)。

誰かに失敗をさせるなら不可抗力なりなんなり理由をつけて、「納得力のある失敗」をさせましょう。

 

 

取合えず第零回の叱咤は以上です(笑)。