死して尚続く
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「初めまして」
真っ暗闇の此の世界で、私の目の前に、私と同じ色の瞳を持つ女性が立ってい
る。
否。女性と言うよりも少女と言うのだろう。私は自らの常識の欠陥を自覚して
いるから、私の認識する形と世界の認識する形がずれている事を知っている。
女性か少女かとは、人が容姿や雰囲気で区別するものだと思う。日々変化する
生活を時間という概念を用いて、単位として数え、記録して、年齢によって区別
出来る。だから。
彼女は少女なのだろう。私より二つか三つ、年齢が高く見える。
「あなたに、頼みがあるんです」
少女の蒼みがかった銀色の髪が揺れている。私と同じ色の瞳は濡れているよう
に見えたが、それよりも、瞳の奥に秘められている光が強い。決意した瞳だ。
「私を、受け取って下さい」
私は眉を顰めた。そんなことをしては良いのか。だって彼女は。そんなことを
しては彼女は。
「あの人のために」
真摯な視線に胸を穿かれた。そんな瞳で。そんな言葉を言われたら――。
その言葉で私の思いは決まった。
私の存在は彼のためにあるから。
この命は、彼のためにあるから。
すべては、彼のためにあるから。
だから。
彼女があの人に尽くすと言うのなら、私には拒否する権利はない。否。拒否する思いもない。あの人のためならば、私がすることはそれを手助けするだけであ
る。あの人のために何か出来るのなら、私は何でもする。
故に、首肯いた。
蒼銀色の髪を揺らす少女は、表情を和らげると柔らかな微笑みで、ありがとう
、と私に言った。
0/ 終幕
あとがき
三人称しか書かなかったので、一人称の練習をしてみました。題材はナデシコ
の蜥蜴戦争後です。
合計サイズ50KBを超えない軽いものになると思います。
『管理拒絶』が結構難しいので、このようなものを投稿させていただきました。どうでしょうか?
それでは