私……ずっと夢を見ていた……アキト……アキトはどこ?

戻ってこなかったら、追いかけるまでです。だって……あの人は、大切な人だから!

 

〜すれちがいの反抗者〜

あるいは、欲望に素直な者達の物語

by.katana

 

プロローグ 


 

 

 その声を耳にしながらも俺は背を向け、消えた。

「みんな、老けたね」

「アキト……アキトはどこ!?」

 求められながらも、背を向けた。これがそのツケなのか。だとすれば運命というのはたとえようも無い程むごく、そして残酷だ。 

 こちらには何も与えず、ただむさぼるように、奪うのみ……俺の人生から、夢も、体も、家族も、そして命も奪い去って……俺が何をした? ただ、あの時期に火星に産まれ、生きていたというだけの理由で俺は……

 

 ――あの火星の後継者との争いから約2ヶ月。

 

 テンカワアキトは、たたきつけられる罵声に魂を切り刻まれながらも必死にそれを表には出さず、ただ無言で堪えていた。こんな時には、かつての自分と今の自分を区別するこのいまいましいバイザーが、ありがたくさえもあった。

 だが、叩きつけられる罵声の理由がその変わり果てた自分の姿にあるのだから、これは実に皮肉な事だとアキトは自分をあざけった。

 無表情な中に始めて生まれた笑みを、かつての自分が見たらどんな顔をして絶望するのだろう。己の身を隠し護る黒衣の戦闘服とマント……そして顔を覆い隠すバイザーを改めて思い返しながら、彼はそんな事を考えた。

 きっとこんな顔をするのだろう、と真っ白なベッドで家族とも思っていた皆に押さえられて、それでも頭を抱え暴れているかつての妻の顔を見つめながら。

「違う、この人はアキトじゃない! アキトのわけないじゃない! アキトはコックさんだもん、アキトはユリカの王子様だもん! こんな黒ずくめじゃない、こんな顔してない! 優しい顔して、白いエプロンしてるのがアキトよ!」

「ユリカさん、黙ってください!」 

 ホシノルリは自分達の背後に立つアキトの顔を見ることが出来なかった。自分にとっては兄であり、父であり、そして何よりも唯一の男性である人物。彼を今この場に立たせたのはこんなむごたらしい現実を突きつけるためではなかった。

 ルリは、あの時皆でアキトに投げかけた数々の言葉を思い返した。

 


 

 真っ白な戦艦が二隻、赤い星を背景に星々の海の中で争っている。

 双方共に白を基調とした塗装を施された最新鋭戦艦……かつての戦争で、そして先の反乱で和平と鎮圧の立役者となった、常にトップクラスの技能とクセのある人格を併せ持ったスタッフによって動かされている、ネルガル重工開発、ナデシコシリーズの最新艦――電子戦に特化された、現在もっとも有名な連合軍士官、『電子の妖精』ホシノルリ少佐の駆る『ナデシコC』、そして現在は最悪のテロリストの船と軍では名高い『ユーチャリス』の二艦だ。

 現在世界で最もレベルの高い逃走劇……技能、装備、人員……何より追跡者のしつこさと逃亡者の頑固さのレベルが非常に高い。 

 両艦のブリッジでは二人の妖精が一人の男の身柄を争い、電脳の世界で両雄一歩もひかずの熾烈な勝負を繰り広げ、彼女らの傍らでは妖精たちと同じ能力を秘めた少年と、この世で最高傑作たるAI、オモイカネシリーズがそれぞれの戦艦で涙を流しながら、あるいは戦意満々で砲撃戦を行い大量にミサイルを消費している。

 ちなみに、戦意満々なのは機動戦艦ユーチャリス搭載AI、オモイカネ・ダッシュ。現在熾烈なハッキングにてんてこ舞いになっている桃色の妖精、ラピス・ラズリの相棒である。

 涙を流しているのは、ネルガル社が『作り上げた』マシン・チャイルドの中で唯一の男性であるマキビ・ハリ。通称ハーリーだ。

 涙を流しているのは、ナデシコCのAIであるオモイカネは現在、ハーリーの目の前でユーチャリスにハッキングを仕掛けているホシノルリのサポートを行っており、操艦と戦闘を一手に押し付けられているからである。

「ううう……何が悲しくて、僕が恋敵の帰還に手を貸さなけりゃならないんだあ……」

 他にも理由があるらしい。そんな彼の涙目で歪んだ視界の向こうのモニターには、縦横無尽に虚空を飛びまわる全五体の機動兵器が大きく映し出されている。

「帰ってこい、テンカワ! 艦長だってもうすぐ目を覚ますんだ、もうお前が戦う必要なんか無いんだよ!」

 血を吐くような叫び声をあげながら、黒い巨人に突進する赤い巨人……太陽系で三本の指に入る巨大企業、ネルガルが作り上げた機動兵器、エステバリス。

 赤い機体はエステバリスカスタム――バランスのよくまとめられた、エースパイロットに与えられる高性能機であり、パイロットは歴戦の勇士、ライオンズ・シックルのスバル・リョーコ中尉。

 対するは漆黒の悪鬼――エステバリス追加装甲型先行試作機……ブラックサレナ

 元コックにして、実験台――そして今は史上最悪のテロリストと成り果てたテンカワアキト専用エステバリスに追加装甲を装着した黒い鬼。大きく張り出した肩の装甲がとかく印象的だった。両の手に持った白い銃口、それを持つ本体に比べて見れば小さいピンクの腕、それらの色が漆黒の装甲の中ではとにかく異彩だった。

 ……太陽系において名実ともに最強の機体。

 その凄まじい性能は、機体の力のみを突出させたためにパイロットを殺しかねないほど……安全性などなきに等しいこの機体を操れる者は、パイロットにかかる暴力的なGを身にまとう執念という名の鎧で跳ね返す事の出来るテンカワアキト……復讐という妄執に取り付かれた男だけだった。

 復讐を果たしてもなお悪夢に囚われた男は、呪いの黒百合を自在に操り、赤い巨人を見事にさばく。拳にディストーション・フィールドを纏わせて一直線に襲い掛かってくるエステバリスを、その武骨で巨大な四肢にかすらせもせず、紙一重でかわす。しかし、反撃はしない。

「俺じゃあ、反撃の必要も無いって事か!?」

「俺達が争ったところで意味が無い。それだけだ……」

 ブラックサレナは自分を囲む全四体のエステバリスをぐるりと見回す。赤、青、黄、水色……あの青が占めている位置は、かつての自分の居場所だった。

 だが……もう……

「……俺はもう戻れない」

「何でだよ! お前は……お前は皆に求められてる! 艦長も、ルリも、皆、皆……俺だって、お前がいなけりゃ嫌なんだよ!」

 青い機体が動揺したように揺らいだ。

「……それでも、戻れない」

「――テンカワァッ!」

「戻れるわけがないだろう! 今の俺は五つのコロニーを滅ぼしたテロリストだ! 戻った所で待っているのは処刑台のロープだけ、だが俺は! ……俺は、あんな奴らにさばかれる気は無い。あんな、俺達がどういう目に遭っていたのかわからないままヒサゴプランなんてモノを成立させた軍も……現政府も……」

 許せなかった。

 自分達が何を犠牲にして、そのシステムの恩恵を授かっているのか――それを知らない者達が、どうしようもなく疎ましく、憎かった。

「たとえ、見当違い、筋違いと言われようとも……手を出す事はしなくとも……俺はボソンジャンプに囚われた政府が、俺達ジャンパーを道具としか考えなかった企業が、軍が許せない!」

 その言葉はリョーコの、ルリの胸をえぐった。ちなみに、えぐったものの量は無論、リョーコの方が多かった。そのリョーコは顔の半分を覆い隠すバイザーの向こう側にあるアキトの目に……込められる感情の強さに耐えられず、目をそらす。

 彼女達は軍の人間だった……特にリョーコは――かつて、アキトの妻ユリカが幽閉されていたコロニー、アマテラス。その警護にあたってアキトの前に立ち塞がったのはリョーコ率いるライオンズ・シックルなのだから。

 何も知らなかった。アキトも何も言わなかった。悩みを、苦痛を打ち明ける機会など幾らもあったのに姿も見せず存命を知らせもしなかったのは、アキトが悪い。それでも、自分達が健全な人生を歩んでいる間にテンカワ夫婦……特にアキトの歩んだ凄惨な時間を思えば、彼女の口はその動きを止める事しか出来なかった。

 リョーコが何も言えなくなった事に焦ったのか、第三の声がナデシコCから割り込んできた。

「アキトさん! 例えそれでも、もう終わった事なんですよ! いつまでも――囚われないでください。貴方はまだ三十にもなっていません、人生はこれからです」

「サユリちゃん……か」

 アキトは通信に割り込んできた女性に目を向ける。大人びた、黒髪をポニーテールにした背の高い女性はテラサキサユリ。かつてナデシコAでアキトと肩を並べて料理をした、アキトと同じくコック長ホウメイの弟子、五人そろってホウメイガールズのリーダー……ちなみに現役アイドルでもある。

 幸せな時代に抱いていた夢の象徴の一人である。

「私は……私は貴方の身に何が起こったのかは何も知りません。でも、まだやり直せます! ネルガルとルリちゃん達の力があればなんとでもなります!」

 それは犯罪だよ、サユリちゃん……

「それでも……俺は……」

 アキトはバイザーに触れる。その感触も感じられない事を改めて思い知り、新たな絶望を胸に抱く。

「帰って……そして俺に何をしろと……? サユリちゃん、俺にはもうやりたい事も、やれる事も、何も無いんだ。戦場以外ではね……俺はもう、コックが出来ない」

「……でも、それでも! 残酷な事を言っているのはわかっています。それでも……」

 自分でも何を言っているのかわからなくなっているサユリ。彼女のような女性にとって、アキトのくぐってきた人生は重すぎた。彼の想いを覆すだけの言葉が生まれてこない。

 五感の全てを失い、新婚旅行中に妻を奪われ、目の前で自分と同じ火星人の屍を山と築かれた男に……何が言える? 自分が夢をかなえた事が、人生を充実して生きている事が、輝かしい未来の可能性が開けている事が……正当な努力の結果が、そんなはずも無いのにまるで引け目のように思えてしまう。

「帰ってきなさい、アキト君! あなたが逃げ回ると言う事は、ラピスも当たり前の社会から遠ざけるという事なのよ!」

 そう叫んだのは、アキト、ユリカと並んでこの世ではもう数少ないA級ジャンパーであり、アキトの人生を狂わせたボソンジャンプの第一人者……説明オバさんアイちゃんこと、イネス・フレサンジュ博士。 

 彼女は自分が卑劣な事をしているという自覚があった。アキトの優しさにつけ込むという卑劣な行為をしている自覚はあった。それでも、彼を取り戻す言葉を他に思いつけはしなかった……そんな自分に歯噛みしつつ、彼女は更に言葉を重ねる。

「その子はまだ十一歳なのよ、私がいっていいセリフかどうかはわからない。けれど、その子を戦艦の中で、戦火の中で育てていいわけはないでしょう!?」

「…………」

 アキトは戸惑っていた。イネスに指摘された事実、それは彼も常々感じていた事だからだ。 

「戦争が、血と涙がどれだけ人を荒ませるか、貴方もよくわかっているでしょう? その子はこれ以上そんな目にあってはいけない子よ!」

「…………」

 テンカワアキトが唯一感じていた現状に対する不満……それは自分がラピスを利用していると言う事だった。失われた五感を補うためにナノマシンをリンクし感覚を共有した少女、ラピスラズリ。

 彼女がいなければ自分は歩く事も出来ない……たとえそれが現実だとしても、彼女が自分に懐いていると言うことを利用して彼女を酷使しているのもまた、現実なのだ。

 ……アキトは気がついていないが、ラピスは一人新婚旅行のつもりでいる……酷使しているとか利用しているとかはアキトの思い込みに過ぎない……なにしろ、彼女はルリ達に追い付かれる度にアキトと自分の生活を脚色たっぷりで流して、彼女らが呆然としている隙にトンズラすると言う必殺技を三度にわたって仕掛けたツワモノである。

 妙な知識を妙な人物から仕入れたらしい。

 事が終わったら急にお気楽になったな、キザロンゲ。

 後のアキトの報復は必至だった。

「そうです、アキトさん。このままではラピスが可哀想ですよ! 私に家族を教えてくれたあなたが、そんな事をしていいはずはありません!」

 ラピスの内心を一から十まで承知の上で先のセリフを言ってのけた『剛の者』イネスの尻馬に乗ったのは、ホシノルリ。

 連合宇宙軍少佐――最年少の美少女艦長、電子の妖精などなどの多くのあだ名を持った才媛として有名な彼女だがその実態は、ラピスの仕掛けたトラップ(仕掛けた当人は実に楽しんでいる)に、一度目ですぐさま嘘だと見抜きながらもあんまりと言えばあんまりな映像に三度も引っかかった、元同僚、養父にして現・想い人の黒い王子が絡むと日ごろの冷徹ぶりが一瞬で形を潜める、けっこうヘッポコなアレだった。

 もっとも、そんな所がかわいらしいと艦内での評判はむしろ以前よりも上昇中である。特に某操舵士には。

 表情も無く怒り狂う彼女の隣で涙ぐみながら必っっ死に息を殺すオペレーターの少年や、ご機嫌取りのためにルリ秘蔵のテンカワアキト・フォトライブラリから彼女のお気に入りをチョイスするAIからは、きっとかなり違う意見が出されるだろうが。

「彼女はアキトさんとのリンクを切って当たり前の十一歳の生活をすべきです! 戦艦の中での……大人しかいない生活がいびつな物であると言うことは私が知っています……」

 嘘つけ。

「ちょっと待てルリ! お前、それがどう言う事かわかってんのか!?」

 あわをくったのはリョーコを始めとする他の面々だ。当事者同士はむしろ静かに、冷静に、見詰め合っている。

 その異形を示す、黄金の瞳で。

「……ルリちゃんは、ナデシコでの生活を後悔しているのかい?」

 ハッキングをオモイカネにまかせてアキト説得に参戦したルリ。彼女はアキトの言葉にもちろん横に首を振った。

「いいえ。私はナデシコで始めて人形から人になりました。そのナデシコの生活を後悔するはずありません。でも……ユーチャリスはナデシコではないでしょう?」

 少女が思い描いていたのは彼女がナデシコの前に生きていた研究所の生活――……ただオモイカネというコンピューターにアクセスする……最初にした最年長のマシンチャイルドとして日々、研究員達の様々な試行錯誤にさらされ、データを取られていった。

 不満は無かった。

 不満に感じるほど心は育っていなかった。あの生活が当たり前だから、他の生き方など知らなかったから、何の不満を抱けよう。だが、その生活は紛れも無くいびつだったと、今ならわかる。

 アキトを知った今ならば。そして、そのいびつな生活はどこかラピスの今の生活に似通っている。

 一見しただけならば。

 何しろ相手はアキト依存症のラピス、そして根本的にお人よしで女子供に甘いアキトだ……女性にビシッという事が出来ればナデシコA時代のようなとんでもない事態にはなるまい。

 そんな二人ならば、少なくとも冷めた関係にはならない……大宇宙に二人きりの生活というのは、それはそれで十二分にいびつな境遇ではあるが。 

「……アキト君。確かに、ルリちゃんの言うとおり、ラピスとのリンクは切るべきなのよ……彼女のためにもね」

「ラピスのため?」

 首をかしげるアキトのバイザーに隠された目を覗き込み、

「……ええ。

 なにしろ、彼女の身体はもう限界に達しているだろうと言うのが私の見解なのだから……」  

「な……何だと!」

 仰天するアキト。

「……事実よ。ラピスちゃんはこれから第二次成長期を迎えつつあるわ。そんな時期にあなたの……男性の影響を受けたら体内のナノマシンがどんな行動を起こすと思うの?」

「……見当もつかんが……」

「でしょうね。だって私にも見当つかないもの」 

 さらっと拍子抜けさせるような事を言ってしまうイネスに、アキトは恐怖と後悔に硬直した顔に不機嫌のしわを寄せる。

「……おい」

「しょうがないでしょ? 貴方達がいつまでたっても捕まらないんだもの、調べようが無いわ。貴方達みたいなケースは他に報告例が無いしね。だから一から十まで推論になるんだけど……」

 死の危険は恐らくないだろうが……最悪の場合、アキトに引きずられて、彼女まで感覚を失う可能性もあった。それを告げた瞬間、アキトの顔色が目に見えて変わる。

「……リンクを切れば……いいんだな?」

 暗黒の世界の恐怖を誰よりも良く知っているアキトの搾り出すような言葉が通信網に乗ってナデシコC、ユーチャリス、各エステに届く。

「アキト!?」

 ユーチャリスからこの数年共に歩んできた少女の、まさに意外といった声が聞こえてくるのを聞きながら、アキトは黙って首を振る。

 地球に帰るのは辛く、悲しい。幸せだったころの事を、もうけして手が届きはしないのだと思いつめる事になるのはわかりきっていた。暗黒の世界に還る事は、きっとあの囚われの記憶を……鬼憶を蘇らせるだろう。

 だが……それでも……ラピスを自分と同じ暗闇に放り込むわけにはいかなかった。 

 例えそれが、アキトに依存しきって生きているラピスを、悲しませる事になったとしても……

「イヤ、アキトカラ離レタクナイ! ソレに、リンクヲ切ッタラアキトノ方コソズット寝タキリノ生活……」

 テンカワアキトはラピスラズリと五感を共有して生きている。ラピスラズリはテンカワアキトにその壊れかけの心を包まれて生きている……ラピスはそれを永遠と思っていた。

 お互いを、共に支えあい生きていく……まさに理想の関係なのだろうと、ラピスは考えていた。

 それが途切れてしまった……どうしようもない、自分の身体のせいなのだから……それでも納得などはいかないけれど……アキトの心が伝えてくるのだ。リンクは切る、と。

 あるいは男は疲れていたのかもしれない。あがき、あがき、己と敵と、そして他人の吐いた血反吐に塗れながら生き続ける事に。何もかも放り出し、楽になる安易な道に走るきっかけを……欲しているのかもしれない。

「…………それでも、お前まで俺と同じ目にあわせるわけにはいかん」

 言葉からも、心からも伝わらないそれを、ラピスが感じたのは疑心暗鬼ゆえだろうか? それとも……?

「デモ、アキトノ身体ハ?」

 例えそれが暗黒の記憶だとしても。

 例えそれが恐怖に満ちていても。

 ……それでも……この緩慢に、確実に滅びへと向かう逆らいがたい緩やかな流れに乗り続ける事に、アキトが未来に恐怖を抱いているとしても、何の不思議があるだろう。

「……お前のためだ、仕方ない……」

 苦悩を振り切るように決断の言葉を口にするアキト。しかし、この妖精はアキトの本音がラピスのためだろうが逃避だろうが、どっちにしてもアキトを逃がすつもりなんかこれっぽっちも無かった。

「大丈夫ですよ、ア・キ・トさん♪」

 ルリが二人の間を流れる深刻な空気を木っ端微塵にするくらいに明るい声で割り込んだ。はっきり言って、かつて同居していたアキトでもこれほど明るく弾んだ声をあげるルリなど見た事がない。ましてや、このシチュエーションである。

 ――ナンダカトッテモ嫌ナ予感ガスル……

 ラピスはニュータイプ並みのカンを働かせた。長い宇宙での生活は彼女を人の革新たる道へと歩ませたのだろうか?

「私がアキトさんとリンクすればいいのです♪」

「絶対ニダメ――――――ッ!」

 ラピスとのリンクを切らなければならない理由は、彼女の身体が今後の肉体的に不安定な成長期にリンクによって悪影響を受ける恐れがあるからである。身体がずいぶんと出来あがってきた自分なら何の問題もない。

 さらには、マシンチャイルドとしての実力は名実共にナンバー1な自分ならばラピスよりもより正確かつ繊細な感覚の復活を約束することが出来る。

 唖然とする一同をほっておいて、以上の事をアキトに能弁に告げるルリ。何とも舌の回りのいい事である……昔の彼女からは想像できない。

「要スルニ私カラアキトヲ取ッチャオウッテ言ウ事デショ!」

「いえ、八方丸く収まる手段を提示しただけですよ?」

 しれっと言うルリ。確かにこれなら八方丸く収まる、恐らくは現時点での最善手だろう。しかし、内心ではとんでもない映像を送ってきたラピスの事を、心の底から根に持っているのだったりもする。

 ……一体どんな映像を送ったんだ、ラピスラズリ(もうすぐ十二歳)。

 もちろん、ルリはけしてユリカに成り代わろうだとかそう言った事をたくらんでいるのではない。 彼女が考えているのは、戸籍上や肉体での(!)関係が結べない以上、リンクによって精神的な繋がりを得ようと考えたのだ。

 そうでもしなければ、目の前で繰り広げられるアキトとユリカの関係を享受できるとは思えなかった。何しろ、自分の抱いている感情を自覚した彼女は、かつての未熟な子供ではないのだ……ユリカがアキトに甘えるのを加減するなどあるはずも無いし。

「私、少女ですよ。あの時から」

 ……ちなみに、ラピスの事は無視。二年の長きにわたってアキトと一心同体の彼女は少しくらい寂しい目にあわせてもルリ的にはオッケーなのである。どうせアキトがラピスをほっておくわけもないだろうから、彼女の心のバランスも崩れる事はないだろう、と考えたのだ。

「……アキトさん」

 妖精の懇願を込めた視線に……

「……わかったよ……ルリちゃん……投降……するよ……」

 復讐鬼は、ついに折れた。

 その後……もちろんラピスはこねられるだけの駄々をこねて、終いにはハッキングによって世界恐慌まで起こそうとしたのだが、ルリ、ハーリー、オモイカネの連合によって見事阻止。

 アキトに取り押さえられ――抱きしめられ――不機嫌と上機嫌の忙しく交錯するラピスにイネスがささやいたある一言によって、彼女は泣く泣くリンク切断を承知した。

「このままアキト君の影響を受け続けたらホルモンの流出にかなりの影響が出て、間違い無く……」

「……間違イ無ク……ナニ……?」

「大平原の小さな胸で生きていく羽目になるわね」

 彼女は腕を組んで自分を見下ろすイネス、そしてネルガル会長秘書、エリナ・キンジョウ・ウォンの肉体のある一部分を見上げた。

 彼女は敗北を悟った。

「…………」

 かくして、アキトはルリとリンク。技術の向上に加えて、肉体が完全ではないにしろ思春期を半ば以上過ぎたルリとのリンクは未成熟なラピスとのものよりもより強く、そして繊細な感覚をアキトに与えた。

 味覚もわずかながら取り戻したアキト……素直に喜ぶべきか悩む彼の手を握り締めるルリに、そっと微笑みかけるだけの余裕を彼は取り戻しつつあった。

 すねて、いじけて、ふてくされて、駄々をこねて、最後に泣く。ラピスをなだめるのに費やした労力に、その余裕もかなり減ってしまったが。

 泣きながら殴りかかってきたリョーコ、何故だか複雑な……というか、視線で人を殺せたら、という目でこちらをにらんでくるどこかかつての副長を思いおこさせる少年を除けば、おおむねナデシコクルーは、今のクルーも昔のクルーも関係なく、暖かく穏やかに迎え入れてくれた。

「帰って……来たのか? 俺は……やり直せるのか?」

「ええ。そうですよ、アキトさん……やり直せるんです。例え形は変わっても……時代は変わっても……場所が変わっても……もう一度、やり直せるんです」

 自分の胸に身体を預け、ようやく訪れた安息の時を逃すまいとしっかりと背中に手を回してくる少女の言葉に、男は数年ぶりの希望を見出していた。

 軍や政府の目をごまかすために名を変えなければならないだろう。顔も変えなければならないかもしれない。

 不自由な生活にはなるだろう。

 だが、味覚はわずかながらも蘇った。

 クリムゾン・グループからルリ、ラピス、ハーリーがハッキング(違法)して手に入れた、アキトの人体実験のデータによって潰えかけていた寿命も、再び正常に戻る兆しを見せ始めていた。

 涙ながらに、歯を食いしばりながらもそのデータ―をイネスに差し出したルリ。一目見て髪を逆立てながらも、目を潤ませながらも、完調を約束したイネスの顔を、クルーは忘れないだろう。

 そのあまりの凄惨さに……レポートの一文字一文字から感じられる悪意と愉悦に……ハーリーとラピスは打ちのめされ、データの触りを見たリョーコを始めとしたクルー一同は、火星の後継者が入獄している刑務所に殴り込みをかけてくれようかと、かなり本気で企んだ。

 最後は無け無しの理性が何とか彼らを押し止めたが……ちなみにその理性は人の形をしていて、プロスペクターとか、ホウメイとか言うらしい。

 それを聞いたアキトは、いかにもナデシコらしいと苦笑しながら、かつての師匠、ナデシコ食堂料理長ホウメイと、サユリを始めとするホウメイガールズお手製の料理を味わった。

 そう、味わった。

 限りなく薄い味覚でも感じられる本来は料理とは言えない濃すぎる味の料理……健康にも気を使われたそれを食べた時、アキトは込められた物を思って、不覚にも泣きそうになった。

 それ以前に、泣きながら自分に飛びついてきたサユリ達と黙って一発背中を叩いたホウメイにも、胸に熱く迫るものを感じたが。

 失われた五感、つきかけた寿命、壊されたはずの家族、無くした居場所……その全てを、彼は取り戻せるのか。

 胸に抱いた者が……胸の奥に生まれた物が……ついでに背中に感じる複数の視線が(覗きはナデシコクルーの十八番である)暖かかった。最後の一つは熱かったが。

 

 だが、儚い希望はあえなく潰えた。

 


 

 アキトは黙って背を向けると、ユリカの病室から静かに退出した。その背中を追って、連合軍の制服を着た初老の男が幾分騒々しく走ってきた。

「お義父さん……いや、ミスマル提督。忘れてしまった俺に、父親と言うものを思い出させてくれて、ありがとうございました」

「アキト君!?」

 ドアの前に佇むアキトはこちらに顔を向けようとはしなかった。

「これからの事……よろしくお願いします。たぶん、もうお目にかかる事はないでしょう」 

「待ちたまえ、アキト君! 娘は……ユリカは錯乱しているだけなのだ! すぐに元に戻る! ここで諦めては……頼む! ワシに孫を抱かせてはくれんのか!」

「その子供の父親が……俺である必要が、もうなくなったんですよ……」

 そこにいたのは、アキト。

 ミスマルユリカの父、ミスマルコウイチロウ。

 そして、かつてアキトに慕情を抱いていた幾人もの女性たち……ホシノルリ、イネス・フレサンジュ、スバルリョーコ、テラサキサユリ。

 『火星の後継者』事件の折に、約二年、公私に渡って彼を支えてきたエリナ・キンジョウ・ウォン……かつてのナデシコA時代、一時はユリカ以上にアキトに近づいた人気声優メグミ・レイナード。

 かつてアキトを愛した女性たちは、今日その想いに再びしっかりとケリをつけ、新しい生活のスタートとするはずだった。

 かつて娘を奪われた父親は、ようやく帰ってきた愛娘の笑顔と共に、二人の愛娘と、一人の孫娘と、一人の息子が作った新しい家庭に腰を落ち着けるはずだった。

 そして男は……失った物全てを取り戻せるはずだったのだ。

 だが……

「もうよしましょう……壊れた物にすがるのは……俺がいなくなれば……テンカワアキトというパーツをあなた達の幸せに組み込む事を諦めるだけで、全ては丸く納まるんです……」

 絶望に満ちた言葉と共に、打ち砕かれた心を抱きしめて男は消える。

 その背を呆然と見つめていた女達は、やがてお互いに顔を見合わせ、脱兎のごとくアキトを追いかけ始める。

 最初にリョーコ、次いでサユリ、イネス。それぞれの日ごろの運動量が良くわかる順番にアキトを追いかけ始める三人。そして、あえてこの場に残った四人目が、五人目と六人目に背中越しに声をかける。

「エリナさんとメグミさんはここにいてください! アキトさんをここに連れ戻すのは……ここに来させた私達の義務です……」

「「ちょっと、そんな勝手な話……!」」

「お願いします!」

 振り返ったルリの目に映るもの……そしてそれが向けられた先にいる人物に目を向け、二人は不承不承うなずいてしまった。

「……私だって、冷静でいられる自信はないのよ……?」

 エリナは最もここ数年のアキトのそばにいた女性(ラピスは子供の範疇である)なのだ。それがこの状況でわめく、ユリカをののしると言った事をしないだけで、むしろ驚くべき事だろう。 

 呪詛の言葉は、大人になりきってはいない少女の口から、止めようとしながらも決壊した堤防から溢れる様に……

「あんまりですよ、ユリカさん……どうして……アキトさんの希望を一言で打ち壊すような真似をするんです……?私は……あなたを嫌いにはなれないけれど……けれど……怨みます……!」 

 言葉は、頭を抱えて、こちらに背を向けてうずくまるミスマルユリカにぶつかり、空しく弾ける。

 ルリはそのまま、振り返りもせずに駆け出した。

「ふ……は、はあ……ぜいぜい……も、もっと日ごろ運動しておくべきでしたね……」

 階段下り四階分に病院の庭を一気に五十メートル斜めに横断して、息も絶え絶えなルリだったが、遠く、木漏れ日な中で、何とか追いついたリョーコにタックルされたアキトが目に入ると、疲れた身体にムチを打って走り始めた。

「「「「アキト(さん)!」」」」

 リョーコ以外は全員息も荒く、声も聞き取りづらかったのだが、それでも黒い王子を引き止めるだけの力はあった。

「もう……いいだろう? みんな……」

 その声に力はなく、リンクをしているルリのみならず、全員が、アキトは追いつかれたのではなく追いつかせたのだと言う事に気がついた。

 彼はもう、諦めたのだ。

「ユリカは結論をくだした。それでお終いだ。やっぱり妄想だったのさ、俺が……受け入れられるだなんて……」

「何言ってんだよ! ふざけるなよ! 艦長がお前を否定するなら、俺が肯定してやる! 俺はお前がテンカワアキトだって言う事を知ってる! 誰にも……もう、艦長にだって否定させやしねぇ! だから……逝くなよ……」

 最後は涙声となったリョーコがその顔を見せないがためにうつむいて、アキトの胸倉をつかんだ。2度と逃がさないかのように。

 だがアキトはそっと彼女を押し離した。リョーコの顔が絶望に歪む。

「それでもね……俺はここにはいたくない……なくしたものを見つめて生きていける程、俺は強くないんだよ……」

 例え目の前にあっても、取り戻せない。届かない……それは辛かった。

「なら、ここでなくてもいい……せめて、私達の前から消える事はやめてください! ここでないどこかで、誰もあなたを知らない所で生まれ変わって生きてみるのもいいかもしれないじゃないですか! そんな……今にも消えて無くなりそうな顔で行かないで……」

 サユリの言葉に、アキトは何かに気がついたような顔をする。

「……俺は、もう消えて無くなりたいのかもしれない……」

「そんな!」

「……アキト君……」

 能弁なイネスも何を言っていいのかわからなく、ただ男の名を呼ぶ事しか出来なかった。優しい言葉をかける……アキトの心を小揺るぎもさせられないだろう。厳しい言葉をかければ、ただ無意味にアキトの心をえぐるだけだろう。

 かつてのアキトを逃走させていたのは、あるいは妻を護る事も、助ける事も出来なかった己に対する忸怩たる想いと、巻き込むまいとしていながらも結局は力を借りた娘に対する申し訳無さ。そして意地だったのかも知れない。

 だが、今の生気のないアキトをそれでも動かそうとしているのは、ただの空っぽな絶望なのだ。

「お兄ちゃん……」

 イネスの言葉はアキトの胸に届き、彼を泣きそうな顔で微笑ませた。

 それだけだった。

「無くしたはずの私は……ここにいるわよ? まだ……あなたの身体を直す可能性はある……いいえ、私が治してみせる。それでも、留まってはくれないの……?」

「……すまないな、アイちゃん……君には迷惑をかけてばかりだ……」

 アキトにはもう……優しい言葉も、厳しい言葉も……なにもかも、受け止めるだけの力が残ってはいなかった。彼は最後に……泣き笑いの顔で最後の少女の黄金の瞳を覗き込んだ。

「ルリちゃん……俺の渡したレシピ……持ってるよね? いつかさ、君が子供を産んだ時に、お袋の味の一つに加えてくれると、嬉しいな」 

 ルリは何も言えなかった。ただ、リンクするお互いの心が、何よりもはっきりとお互いの心を伝えた。

 ルリの心は泣き叫ぶ幼女であり。

 アキトの心は粘ついた闇に足元からものすごい速さで包まれていった。だが、その心は闇ごと虹色の光に包まれていこうとしている。

 ルリはアキトの思惑を悟った!

「さよなら……」

「なんて、言わせない!」

 後になって思い返してみても、その時のルリは一生で一番俊敏だった。その場の誰もが意見を一致させている。

 何しろ、いかに無気力であったとはいえ、復讐のために骨身削って己を鍛え上げ力を手に入れてきたアキトの不意を見事につき、ボソンジャンプで逃亡しようとしていたPrince of darknessを見事に捕まえて見せたのだから。

 一瞬ならず虚を突かれたその場の面々も、アキトの意図に気がつくと先を争ってアキトにしがみつく。

「へへ、最後は結局力押し、か! ナデシコらしいぜ!」

「ウェイトレスでアイドルの私まで力押しのキャラクターだったんですか!?」

「スバルリョーコ! 知性派の私までそっち方面に巻き込まないでよ!」

「……って、言ってる場合か!? 離れろ! 今の乱入でイメージが壊れた――どこに飛ぶのかわからんのだぞ! って、おいこら、ルリ! 笑ってる場合か!?」

 アキトはそれまでの雰囲気など一体どこにいったのか、大慌てで4人を引っぺがそうとする。その内心を感じるルリにはおかしくて、嬉しくて仕方がない。あまりの喜びに、どれだけ叱られても笑みは消せそうにない。

「笑うしかないですよ、アキトさん。だって……あなたはこんな時でも、私達の事となると、あっさり昔に戻っちゃうんですから」

「…………ッ!」

 その言葉に微笑む者達は、誰もアキトから離れようとはしなかった。むしろますますアキトにしがみつき、恐怖もなく、ただ、これだけは譲れないと言う力を腕に込めて……青年はおたつき、その顔は出会った頃のままで……

 そう。結局はあの時のままで――……

「だから好きなんですよ、あなたが……」

 そして虹の光は五人を飲み込み、粒子となって消え去った……全ては、音もない世界の出来事……

 


 

 その後の調べで――

 ミスマルユリカの狂乱は『火星の後継者』の残した傷の一つの形なのだと知れた。

 遺跡を自在にするために組み込んだA級ジャンパー、ミスマルユリカ。その彼女にイメージを伝達するために……まあ、なんとも馬鹿馬鹿しい手段を取った訳だが。

 その強烈な刷り込みが、もともとユリカの中で強く根を張っていた“テンカワアキト”を完全に固定し、変わり果てたアキトを否定させる事となったのである。

 専門のカウンセリングとイネスを欠いたネルガルの医療スタッフの手によって、彼女は復調した。

 そして最初にした事は……泣く事だった。

 彼女は覚えていた、自分がアキトに投げかけた言葉全てを。

 そしてエリナから聞いた。ラピスから聞いた、アキトの境遇を。自分がただ心地よい夢を見ていただけの時に、アキトがどれほどの苦痛と絶望を味わい、そして自分を助け出すために仲間と共に尽力してくれたのかを。

 それを木っ端微塵にしてしまったのは自分。

 情けなかった。つらかった……そんなユリカを見ている事が辛く、アキトがルリ達共々失踪して一年、ユリカが完全復調してから半年、コウイチロウはユリカに再婚を勧めたが、彼女はガンとして首を縦には振らなかった。

 その後、ユリカは完治から一年で再び軍に入り、ナデシコBを駆ってマキビハリ、タカスギサブロウタ、ラピスラズリ共々『電子の妖精』と『Prince of darkness』の探索を三年半に渡って続ける。しかし、四年目にハーリー、ラピスによる遺跡の解析により、五人があの日ランダムジャンプでどことも知れぬ場所に旅立ち……二度と帰っては来れないところへと言ってしまった事に泣き崩れる事となる。

 誰も自分を責めない事が、彼女にはとても辛かった。

 その後、主に火星の後継者を始めとする木星の主戦派を鎮圧する任務につき、妖精の母、守護女神とまで呼ばれる。

 最終的には中将にまで昇進。

 義娘、ラピスのナデシコE艦長就任を切っ掛けに退役、オブザーバーとしてラピスの支えとなった。

 ラピスラズリ共々、生涯を独身で貫き、木連、地球の交流と平和のために尽力する。

 ……享年61歳。最後まで若々しく、美しいままでの最後を迎える。

 その全力でかけぬけた一生、充実した人生にふさわしく、数多くの大切な人達に見守られながら微笑んで最後を潔く迎えた彼女の胸に、しかし、たった一つの心残りがある事は、彼女に近しい者達しか知らない。

「たった一言。アキト達に謝りたかったな……」

 その後……ラピスラズリの手によって作られていた想いを込めたビデオディスクが、エリナの下、ネルガルボソンジャンプ研究班へと届けられ、誰もが知るSクラスの資料として保管される。

 いつの日にか……ジャンプの全てが解明された時に――

 

 ……かの人たちの下へ……届け、心に……

 


 

 人の数だけ想いがあって……

 想いの数だけ物語があって……

 だから、物語はまだ、終わらない……

 そして西暦2195年……ナデシコ、翔ぶ……!

 

 

to be continue.......


 

 まず最初に謝罪とお断り。

 ユリカファンとラピスファンの方、とんでもない話を書いてごめんなさい。

 アキトとユリカがくっつく事はありません。

 メグミと言う可能性もありません。

 ミナト、ヒカル、イズミも可能性はなしで、更にはホウメイと言う線もありません。

 多分エリナとラピスもないでしょう。

 これは、最初のニ名はテレビ版でアキトとくっついたから――ユリカはもちろん、メグミもです。

 メグミは付き合っただけですけれど……そういえば、一部に熱狂的なファンがいるんだよな、この御方は……

 以上、上に挙げた名前の方々がアキトとくっつかなきゃ嫌だ! という方は読んでもあまり楽しくないでしょう、それをまず初めにお断りしておきます。

 アキトはもちろん強いです。これだけが絶対に譲れません! 

 

 次回タイトルは……「ミツバチを襲わんとする花々」かな?

 この後、時間逆行した五人はそれぞれの場所で目を覚まします。ボソンジャンプがあるから、エヴァと違って無理なく逆行できるなぁ♪ キャラも熱血が多いから動かしやすいし!

 逆行は精神のみ(ありがちだな)で、それぞれがそれぞれの目的のために動きだします。アキト以外の目的は全員同じです。アキトは一人シリアス路線を貫こうとしますが……このナデシコがそれを許すはずもない!

 基本は、アキトパートシリアス。その他のパートはギャグ、という方針です。

 

 本作品は、元々はサイト「魔法の扉」にて掲載していたものですが、「魔法の扉」の閉鎖によりこちらに移動してきました。掲載許可を下さった鋼の城さん、およびBenさん。そしてこれまで掲載してくださったゆっきーさん、及び神音さんに感謝します。

 ありがとうございました。

 

 

実は今回初めて読んだ代理人の感想

む、ムゴイオープニングですねぇ(爆汗)。

 

 

アキト君ずったずた。

 

ユリカもずったずた。

 

エリナも

 

ラピスも

 

メグミも

 

コウイチロウも

 

ずったずた。

 

 

ハーリーくんに到ってはルリを失った悲しみを

まともに描写してすらもらえない(爆)。

つくづく不幸やねぇ、キミ(苦笑)。

 

 

 

 

・・・ついでにサブもこっそり不幸(爆)。