・・・・・ある時、彼女は微笑みながら僕に尋ねた。




 「君は楽しいことは好きかな?」

 僕はうなずいた。

 「君は苦しいことは嫌いかな?」

 僕はうなずいた。

 「じゃあ、君はここが好きなのかな?」




 ・・・・・・・・その問に、僕はなぜうなずくことができなかったのだろう?

 

 

 

ハーリー列伝
第二話

 

 

 

 ・・・・・・ドアの前に、二人の男が立っていた。


 「お前も、本当はわかってるんだろう?・・・セイジ」

 「・・・・・・・・」 セイジは沈黙する。

 「例え、この部屋が完全防音で、そして、厳重に鍵がかかっているとしてもだ」

 「だから何だ。アラン」

 「大丈夫なのか?本当に」

 「知るか。そんな事より、俺は、あの少年のほうが、心配だね」 セイジは、ため息をつく。


 「・・・・・・うっ」 アランは、口をつぐんだ。


 「お前だってわかっているんだろう?・・・・アラン。

例え、この部屋が完全防音で、そして、厳重に鍵がかかっているとしてもだ」


 「そ・・・それなら、なおさら所長が・・・・・」

 「・・・・本当に?本当にそう思っているのか?アラン?」


 「・・・・・・・」 アランは、沈黙する。

 「だから、俺は少年のほうが心配なんだ。」 そして続けて言った。「たぶん、所長は

彼を気に入っている。」


 「・・・・・彼がスパイだとしてもか?」 アランがつぶやく。


 「・・・・・俺の考えでは、あの子はスパイじゃない。

それに・・・・・だとしても、所長は懐柔するだろうさ。

その後、催眠術で聞き出すかもしれないがね」


 「・・・・・・そうだな。確かにそうだ」

 「心配しているのか?所長を」 真面目な顔で、セイジが言う。

 「・・・・・・いや。お前に感化されて、俺のほうも、少年が心配になってきた」

 くっくっくっく・・・と、セイジが笑う。

 「じゃあ、俺はこれで失礼する」 アランが出て行こうとした。


 「一応、言っておくが・・・・・」 セイジは言った。

 アランが振り向く。

 「・・・・・俺は、ここで何が行われているか知ってるし、お前も、もちろん知っている。

いや、おそらく……ここにいない何人かの人間も知っているだろう。

・・・・・だとしても、俺達は何も知らない」


 「わかってるさ。ただ、嫌な予感がしてるだけさ」 アランは肩をすくめた。「ただ、さっきは

所長だった。そして、今は少年・・・の、違いはあるがね」


 シュッ と、音をさせて、その場から離れていった。


 それを見届け、セイジはもう一度その「所長室」を見る。


 「・・・・ペル・アスペラ・アド・アストラ(困難を通じて、栄光を獲得するがいい)

俺から見れば、十分うらやましいんだぞ、ボーイ(少年)?」
















 「・・・・あ、あれ?」 ハーリーは、ゆっくりと目覚めた。

 「ようやく起きた?」 ランは、ゆっくりと語る。「・・・貴方、壁にぶつかって、今まで気を

失ってたのよ。」

 ハーリーは、苦笑した。「そ・・・そうなんですか?」

 何となく、情けない。


 「・・・それでさ、仕事が増えたってわけ」

 「え、えっと・・・・すいませんでした。・・・・ランさん」

 「お、私の名前、覚えてくれていたんだ」 目が、少し細まる。

 「え・・・ええ。まあ・・・・ところで・・・あの・・・・」

 「なんだい?」


 「これは、何ですか?」 ハーリーは尋ねた。


 ハーリーの手首に、不思議なわっかみたいのがついていて、それがくっついていた。


 「それ、私が作った。磁力だよ、原理は」

 「どうして、それが僕の手に?」

 にこっとランは微笑した。「だって、逃げるんだもん。君」

 「に・・・・逃げませんから・・・外してくれませんか?」 ハーリーは懇願した。


 「そういえば・・・さ。研究手伝ってくれるんだっけ?」 ランは、笑みを崩さず言った。

 「・・・・・ゆ・・・・ゆってませ・・・・は、はい・・・・」

 ハーリーの手首が自由になった。 


 「ふふふ・・・・うれしいわ・・・でさ、ついでにあんたの憧れだか恋だかわかんないような

女・・・忘れない?」

 「・・・・・え?」 ハーリーは、訝しげに尋ねた。


 「キス・・・・・したことある?」

 「い・・・・いえ」 ハーリーは真っ赤になりながら答える。

 「そ・・・・」 ランは、うっすらと微笑した。

 「あ・・・あの・・・・ランさ・・・うぐ・・・・・」

 「・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・」



 「・・・・・・ぷはぁ・・・ラン・・・さん?」

 「・・・ねぇ。色々とお姉さんが教えてあげるよ・・・」

 「ま・・・・」 ハーリーは後ずさった。「え・・・ちょ・・・ええ?」


 くすっと笑って、ランがポケットを探る。

・・・・・・再び、ハーリーの手が拘束された。

 「ちょ・・・何を・・・・」 ハーリーは、もう真っ赤だ。


 「あら?いい事よ。」 そして、続けて言った。「大丈夫。うんと、気持ち良くしてあげるね」


 「ランさ・・・・うぐ・・・・・」

 再び、ハーリーは唇をふさがれ・・・・・・・


 そして、ぴちゃぴちゃと、いう音が聞こえ・・・・・・


 「あ・・・・・・・・」


 「ふふ・・・かわい・・・・・」







・・・・・・・・・・・・・深くは語るまい。



・・・・・・・・・・・・・また、語りたくもない。










・・・・・おまけ・・・・・

そこは、本の宝庫だった。

あらゆる本があるとされ、そして、同じ本は一つも存在しない。

名を、バベルの図書館という。


 「・・・うわぁ」 ごくりと、唾を飲み込むように、少女はそれを読んでいた。


題名は、『ハーリー列伝』


 「す・・・・すご・・・・」 緑色の瞳を持つ少女は、読む。

もちろん、そこには私が意図的に削除した場面が、克明に記されてあった。


 「ディア!何か、面白いのあった?」 むこうから、同じ年齢ぐらいで、同じく緑色の瞳を

持つ少年が、呼びかけた。

「う・・・うん。」 少女は答える。

「へぇ・・・どんな本?」 少年が尋ねる。

「ちょっと・・・黙っててくれる?ブロス・・・・」 少女は、微笑を浮かべて言った。


「な・・・何だよ」

「・・・面白い本は、自分で探してくれる?」



「わ・・・わかったよ」



少年が去ると、再び少女は続きを読み始めた。






「・・・・すご・・・・」














ごきげんよう、風流(かぜる)です。おまけの彼らは、火元さんの所の『イレギュラー』
からです。よかったら、そちらもどうぞ。


 後書き代理

 えっと、初めまして。風竜(かぜりゅう)と申します。以後、お見知りおきを・・・

 で、なんで私が書いているかと言いますと・・・後ろから覗いていたら・・・・


 「面倒くさい。後、お前、やれ」

 と、どっかで聞いたような台詞を言われたためです。

 さて、マスターが言うに、このSSは・・・・


 ほんのりダークでシリアスちっくなハイセンスギャグ


 だ・・・・・そうです。

 「ほんのりって何だよ・・・」 と、尋ねると・・・・

 「そこがみそだ」 と、言われました。


 ・・・・・最近、寒くなってきましたね。

 では、ハーリーの冥福を祈りつつ・・・・・



追記:ただいま、家を空けているため、メールは受信しても見れません。
    感想は、ここにお願いします。 kazeru70@hotmail.com


 

代理人の感想

 

これが第一歩か(爆笑)。