・・・・・全ては終わったこと。もはや、引き返すことのできない道。
ただ、俺を元の道へ引き戻そうと、ルリちゃんの声が耳から離れない。
聞くのはつらく、それでいてうれしくもある。
ただ、何時までもラピスをこんな俺の呪縛に付き合わせるつもりは無いのだがな・・・
・・・未練、だな。
「・・・ラピス、ジャンプの準備を頼む。」
「・・・うん、解ったアキト。」
「アキトさん!!」
俺は語る。
「・・・俺とユリカの道が交わる事はもうありえ無い。
そうルリ、君と同じ道を歩む事も無い。
もし、全てが・・・
よそう、それは言っても仕方が無い事だ。」
・・・・そう、全ては終わってしまったことなのだから。
『ジャンプフィールド生成完了しました!!』
「アキト、ジャンプフィールドが生成終了したよ。」
「ああ、解った・・・何処に、行こうか。」
一度、遥か遠くに行って見ようか?
・・・まだ誰も踏み出した事の無い領域に・・・ふっ俺には似合わないなそんな考えは。
自分の突拍子の無い考えに自嘲する。
「よし、ジャンプ先は・・・」
「させません!! アキトさん!!」
ドガッッッンンン!!!!!
突然の衝撃が、俺達の乗るユーチャリスを襲う!!
「くっ!! 何が起こったんだ!!」
『アンカーを打ち込まれたんだよ、アキト!!』
強襲用のビームアンカーを打ち込んだのか!!
このまま、ユーチャリスに乗り込んでくるつもりか、ルリちゃん?
しかし、事態は俺やルリちゃんの予想を、遥かに越えた事になる。
「アキト!! ジャンプフィールドが暴走してる!!」
ラピスが動揺をしながら、俺に報告をする。
・・・暴走、だと?
冗談では無い、これでは本当に未知の世界に跳んでしまう!!
「くっ!! ジャンプフィールド緊急解除!!俺がブラックサレナでアンカーを絶つ!!」
『駄目だアキト!! フィールドの制御装置にアンカーが直撃してる!!』
俺の提案はダッシュによって否定された。
何処までも運が無いな・・・俺も!!
「何!! このまま、暴走するしかないのか!!」
「アキト・・・ナデシコが。」
しまった、ナデシコとユーチャリスは繋がったままだ!!
「間に合うのか・・・!!ルリちゃん、早く逃げるかアンカーを切り離せ!!
このままだとナデシコCも、ユーチャリスのランダムジャンプに巻き込まれるぞ!!」
余りにもナデシコCとユーチャリスの距離が近過ぎる!!
「し、しかし、アキトさんが!!」
コミュニケの画面のルリちゃんが、珍しく慌てている。
こんな時に何だが・・・懐かしい表情だな。
「俺達は何とでもなる!!
ナデシコCの乗員全員が、ジャンパーの措置を受けているのか?
このままジャンプに巻き込まれたら、措置を受けていない者が全員死ぬぞ!!」
「!!!!ハーリー君!! 急いでアンカーを切り離して!!
ディストーション・フィールド緊急展開!!」
「はい!! 艦長!!」
『駄目だ!! ジャンプを開始したよ、アキト!!』
「くっ、フィールドは間に合わんか!! 済まんルリちゃん!! ナデシコのクルー!!」
その言葉を最後に、俺の視界は虹色の光彩に包まれた・・・
ヴオォォォォォォォォオオオンンンン・・・
時の流れに〜序章〜
第0話
THE LOST STORY
≪・・・さあ、そろそろ起きなよ。テンカワ=アキト君?≫
・・・・はっ?
ばっと飛び起きる。
「・・・・ここは?」
見たことも無いところだった。ただただ無限に続くかと思われる森が広がっている。
違和感があった。
そこには音が無かった。・・・いや、それはリンクのせいなのだろう。
それよりも、そこにある気配が、全て希薄だった。これだけの森には、
その存在だけで気配が流れているものだ。それなのに・・・
しかも、何も無いところからも、微弱だが、不思議な気配がある。ここは・・・・・
・・・・まてよ、リンク? ≪・・・ラピス!ラピス!!≫
切れていた。・・・・なのに、何故目が見えるんだ?
そっと木に触れてみた。触感もある。
・・・・・何故だ?
ぞくっ
思考を巡らしていると、不意に悪寒を感じた。ばっと振り返る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・やあ。」 ひょうしぬけするぐらいに、普通の男が立っていた。
「・・・あ、はい。」
・・・ふと、そこで不思議な違和感を感じた。
まて!今聞こえた?
風は吹いている。木々を揺らしている。・・・なのに、男の声は聞こえた。
≪「・・・さて、テンカワ=アキト君。君はいったい今、何を感じている?」≫
ぞくり
・・・・彼の声が、体に染み込んでくるように感じられた。・・・・今、俺の名前を?
「そうだね。私が思うに・・・」 彼は可笑しそうに言った。
「君は、この世界に疑問を感じている。リンクもないのに、何故五感が戻っているのか。
ここはどこなのか。他のみんなは?そして・・・・・私が誰なのか。違うかい?」
ぞくっ
全くその通りだ。
何なのだ?この感覚は。彼の声が、まるで抗いがたい存在のように、感じられる。
「・・・・そうだね。じゃあ、私の正体から言おう。・・・・言うなら、私は神だ。」
・・・・・神?そんなものが本当にいるのか?
「疑っているね。まあ、無理も無い。・・・・ま、いるんだよ。ここにね。だから、君のことも良く
知ってるし、何が原因でここに来たかもわかっている。」
・・・・・彼の声、その存在が、大きくなっていく。何者も逆らえないかのように。
本当に・・・神なのか?
「・・・・あなたは・・・・」
「『Ben』と呼んでくれ。それが私の通り名だ。」
簡潔に答えた一言が、恐ろしいほどの圧力をかけてのしかかってくる。
「・・・・ま、君が感じている感覚。ここはとある『可能性』が満ち溢れている場所なんだ。
何もかもが、希薄なのは、それが確定していないからだよ。
別の言い方をすれば、君が感じている『何も無いのに、そこにあるかのような感覚』、
・・・これは、私達が考えているアイディアとか、没ネタと言うことになるのかな?」
「なあ、Ben、今・・・・・」
「さて、それでここに君が一人しかいないのは、存在が一番確定した君を呼んだためで、
特に意味は無い。」 気のせいか、少しあせっているようにも感じられた。
「リンクが切れているのに、君が五感があるのは、君自身もここではぼんやりとした存在に
過ぎないためだ。さて、他に質問はあるかな?」 一気にまくしたて、にこっと微笑む。
「じゃあ、さっき言った・・・」 俺は言いかけた。
・・・・・がっ。恐ろしいほど圧力がかかる。
・・・・声が出ない。くっ!「あなたは・・・・」 力をふりしぼる・・・・・・・だめだ。
「・・・・質問はないようだね。」 ふっと圧力が消えた。
彼は少しの間の後、続けた。
「・・・さて、君がどうしてここにきたか・・・それは君の強い願望のためだ。
私には聞こえた。君の魂の叫びが。
そう、『もし全てがやりなおせるならば・・・・・』と、いう・・・・」
俺は、はっとBenの顔を見る。
彼は、好青年っぽい表情で続ける。
「『ならば、私はその願いに答えてやろう。』そう思って、ここに来た。
さあ・・・・・」
Benは、俺に何かを差し出した。長い筒状のものだ。
「・・・受け取り給え。これで、君は戻ることができる。」
・・・・これをつかめば、俺はやり直せる。
そう、あんな事も、ユリカもあんな目に会わせる事も無くなる。
俺には力がある。知識がある。・・・・それなら、できるはずだ。
俺は、決心し、それをつかんだ。
Benは微笑して言った。
「・・・・よろしい。君は選んだ。過去を未来とすべく、君は選んだ。
・・・・・例え、どんな苦難が待ちうけていようと、君はやりとげるよう、がんばるがいい。」
その言葉を最後に、俺の意識はとだえた。
「・・・・そう、例えどんな『苦難』が待ち構えていようとね。
今まで起こったことが、より悪い結果になったとしてもだ・・・・・・」
彼は笑った。その世界をゆるがすような、それでいて透明な笑い声を・・・・
「テンカワ=アキト。お前は、所詮私の手の中で踊る一人にしか過ぎないのだ。
お前が考えることも、行動も、全て私の手の中にある。
お前が幸福をのぞむのなら、私は絶望へと叩きこもう。
それにより、成長していく姿を私は描こう。
最終的に、幸せを得られるかどうかもな。
・・・・・・それが、物語というものだ。」
Benはそうつぶやき、そしてふっと真面目な顔になって
「私は壮大な物語を描いて見せる。
例え、仲間内から、『外道』とか、『ダーク』とか、『魔王』などと、罵られようとも。
・・・・・あまり罵られたくはないけどさ・・・・
・・・まあ、それが私の使命であり、趣味なのだから・・・・・」
Benは弱々しく言った後、その姿からは想像も出来ないような、鋭い『気』を放った。
「・・・・・・・さあ、物語をはじめよう。」
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ATOGAKI
ごきげんよう、風流(かぜる)です。
ええっ?「Fall in Angel」はどうしたかって?いいじゃないですか。
火元さんの所に「イレギュラー」があるんですから・・・・ああっすいません。物投げないでください。
で、これは何なのかと言うと・・・・・これがフィクションであれ、ノンフィクションであれ、
まあ、どうでもいいと思いませんか?作家の魂が感じられれば、それでいいと思いますよ。
彼らの想いが、作品をより高度に魅せるのでしょう。それが全てです。
後は、感じたままのことを・・・感じてください(爆)
それでは、ごきげんよう。
代理人の感想
代理人代理の報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・代理人は笑い過ぎて死んだもようです。
再生するまでは数時間を要するものと思われますので、
まことに勝手ではありますが今回の感想はお休みさせていただきます。
それではまた、ごきげんよう。